【手記】『ヤクのあしあと』が「情報提供」記事を載せる気がないワケ
Added 2019-12-05 01:01:07 +0000 UTC今年から創刊した雑誌『ヤクのあしあと』は、今までと一風変わった登山雑誌としてちょっぴり新聞やラジオなんかで取り上げられたりもした。
開始時は、どれだけ売れなくても見向きもされなくても、とりあえず当初のコンセプトを崩さずに1シーズンは発行して様子を見ようと思っていた。
規模も流通もミニマムにも程があるので、爆発的に売れた!なんてことはもちろん無いのだが、それでも一定の評価を頂き、今後もこのコンセプトを守ったまま継続・進化させていきたいと考えている。
コアとなるコンセプトは「情報提供」を極力少なくして、「楽しい」のストーリーをメインにすることだ。
一応、創刊号に掲載している刊行の辞を転載しておく。
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登山に対して、「私にとっては縁のないもの」という認識を抱く人は少なくないと思います。かくいう私も、実際に山に登り始めるまで、自分が山登りにハマるだなんて想像すらしていませんでした。それは、漠然と登山に対し感じる偏ったイメージに起因していたように思われます。「危険」「修行」「挑戦」「ストイック」エトセトラ・エトセト……。それらのイメージは間違っているわけではありませんが、偏っていますし本質ではないと個人的に感じています。山への関わり方は人によって多種多様。ただし、多くの
山仲間たちに共通している感情がひとつあります。それが、「山は楽しい」ということ。
本誌創刊にあたり、いくつかコンセプトを設けました。登山技術知識ハウツー等の「啓蒙・情報提供」という立場をとらない。既存の登山メディアがとりあげないような、変わった側面からの山の魅力や、山の様々な楽しみ方をしている人々に焦点をあて、その面白さを共有する。山にまつわるクリエイティブを支援し、表現の場とする。そしてなにより、登山の「楽しい」を伝えることを第一義とする。
紙面も限られた極めて小規模な雑誌ではありますが、だからこそお伝えできる、本誌ならではの世界があると信じております。この雑誌が、山に興味がなかった人の足を山にいざなう、トレース(あしあと・ふみあと)になれば幸いです。
平成30 年12 月30 日 まだら牛(山のよろずや ヤクの小屋)
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なぜ「情報提供」をこの雑誌が嫌うのか。
理由は複数あるのだが、そのうち一つ、打算的な部分での理由を記しておこうと思う。
ぶっちゃけると、この時代においてもはや「情報提供ビジネスモデルはオワコン」だと思っているからだ。
モノの価値は需要と供給のバランスで決まる。
供給量が多いものの価値は下がる。
そしてインターネット社会がこれだけ発達した今、「情報」は爆発的に増えている。
SNSにより誰もが何かを発信できる状態になった今、「情報を発信したい人」も爆発的に増えている。
爆発的に供給が増えているということは、つまりは価値が爆発的に落ちていっているということだ。
ビジネス的に見て、価値が落ちているものにかけるのは得策ではないと思う。
だから、極力やらない。もちろん、他にも理由があるのだが、やらない理由の一側面はそれだ。
情報提供を、やるなら「特定の届けたい人に」「届けたい明確な何か」がある時か、あるいはその情報がストーリー性を帯びるときだけだ。
『ヤクのあしあと』はよく分からない雑誌だと言われる。読んで欲しい対象やマーケティングがよく分からない、と。なぜ売れるのかわからないけどなんか売れる、とカモシカスポーツの店員さんにもほぼ毎回言われる(笑)。
「どこにターゲットを置いてるんですか?」という質問に対して、聞かれる相手によって答える内容は変えているのだけれど(全部説明するのめんどくさいしね)、僕の本心としては、『ヤクのあしあと』というストーリーを欲してくれるであろう人々、というのがアピール対象の層だ。
僕が思う『ヤクのあしあと』というストーリーとは、今のところ大きく3つ。
①今までの登山メディアから取り扱われることのなかった、インドア・ニッチ・オタクカルチャーと登山文化との架け橋。
②登山の楽しみ方のバリエーションを序列ではなく、並列で語る。挑戦的・スポーツ的登山と、華やかな(山ガール文化などの)ハイキング・トレッキングの2極化ではなく、もっとグラデーション豊かな山文化を広める。
③登山や山に関わる人の視点や言葉を通して、既存の社会通念や一般常識と思われている固定観念をぶち壊し、より楽しい人生を提示する。
小さすぎる規模にたいして、目指しているものがでかすぎる気もするのだが、まあそれくらいの方が夢があっていいじゃないか、とも思うので、このまま突き進もうと思う。
来年からの記事の打ち合わせも進めてるんですが、既にめっちゃ面白い企画がいくつも上がっていて僕自身が楽しみです。