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【手記】《盲目な存在》へ

(あまり面白い話ではない上に長いです) (『ゲンジボタルくん、東京を救う』のネタバレを含みます) (日々生きるのが辛い人にはちょっとだけ役立つかも? 役立たないかも?) 夏コミ頒布するクトゥルフ神話TRPG『ゲンジボタルくん、東京を救う』は、色々な社会問題を風刺したような雰囲気を醸しているが、シナリオ語りなどでも触れた通り、実のところ、モチーフにしたそれぞれの社会問題などに対して僕が特段なにかを主張しているものではない。 でも、それでも確かにあの作品が僕の極めて作家主義的な側面を含んだシナリオであるのは疑いようがない。それはただひとつ、《盲目な存在》というものについての描写がそれを担っている。 性格の悪い話だとは思うのだけれど、僕はシナリオで描写したとおり、「全ての人間は程度の大小はあれ《盲目な存在》である」と思っている。 (※僕の愛読書『アイの物語』(山本弘)で、介護用アンドロイド詩音が語った「全ての人間は認知症なのです」という言葉が思い返される) そして、その《盲目化》はインターネットで誰もが匿名で本音を主張できるようになった今、顕在化が加速していると思う。(盲目化が進行しているかとは話が別。目立ちやすくなって、社会がそれに引きずられやすくなっている、の意) 見たくなくても《盲目な存在》たちは毎日目に飛び込んでくる。慎重な人の意見は目立たず、盲目な人が発する意見の数ばかりが増え、世界中が盲目になっているかのような錯覚を覚えることもある。 「地獄への道は善意で舗装されている」なんて言葉があるが、僕は「盲目で舗装されている」と思っている。 こんな世界で正気でいるのは難しい。心を病まずに生きていくのは難しい。 なぜ難しいかというと、「良い社会、良い世界であってほしい、あるべきだ」という世界観を少なくない人が持つからだと思う。理想と現実のギャップに苦しむわけだ。 僕も、「世界は良くあるべきで、そうでないなら良くなっていくべきだ」世界観・宗教観に囚われていたが、今はもう、そう考えるのをやめている。 なぜなら、人は皆《盲目な存在》だからだ。完全に理性的で正しく品行方正な人間などたぶん居ないからだ。そんな人間が集まっている世界が、完全に良くあるはずも、良くなっていくはずもない。世界はただあるようにある。 それはまるで、童貞脳が「清純無垢な女性」を求めるように、無茶な負け筋の考え方だ。混沌としており基本的に汚い部分を多々内包しているのが人間であり世界だ。まずはあるように受け取り、認めるところから始めたほうがいい。それは「積極的諦め」みたいなものだ。 世界が混沌で、基本的にはしょうもないことが多いという前提に立つと3ついいことがある。 ひとつめは、世の中のしょうもないことに一々フェイタルなストレスを受けずに住むこと。精神的な安定は自分の人生を良くするため非常に重要だ。 ふたつめは、意味のない期待に裏切られずに済み、その結果、自分が起こすべき行動が明確になることだ。 「どうしてこの会社はこうなんだろう」「どうしてこの人はこうなってくれないんだろう」なんていう期待が、自分の身勝手な理想の押し付けであることを自覚でき、今の自分の状況を改善するために自分が何すればいいのかを自分の頭で考えられるようになる。 みっつめは、「綺麗なもの」が引き立つということだ。 世界はしょうもないもので満ちているが、たしかに「綺麗なもの」「美しいもの」「尊いもの」もたくさんある。これらが「しょうもない世界」の中で生まれた奇跡であることが、よりビビッドに鮮烈に受け取れるようになる。 減点法ではなく、加点法で色んなもの・人を見ることができるようになるとも言える。 「かくあるべき世界から程遠い今」という減点法的世界観を捨て、 「このようにある基本的にしょうもない世界に、自分が美しいと思うものを増やしていく」という加点法的世界観を取り入れると、かなり気持ちが楽になる。 実際に僕は楽になった。 『ゲンジボタルくん、東京を救う』を僕が書いたのは、世界中の人を《盲目な存在》で無くしたかったからではない。そんなのは無理なことだ。現実のめくらさんは世界に神のように偏在しており、今のところ倒す手段は見つかっていない。そもそも、僕の配信を見たり、シナリオを読んでくれる人の人数なんてたかがしれている。僕の作品が与えることの影響なんて、微々たるものだ。 じゃあなぜ、こんな危険球のシナリオをわざわざ書いたのか。 それは、あくまでも「このしょうもない世界」の中で、「僕の人生」をちょっと良いものにしたいと思ったからだ。 僕や僕のことを見てくれる人、つまり僕の周囲の人々に《盲目な存在》という「概念」を広めることで、「今、自分は《盲目な存在》になってはいないか?」という自問自答をするキッカケになれれば、きっと僕の周囲にきれいなものが増えるだろう、と思ったのだ。


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