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【TRPG】ゲンジボタルくん〜 あとがき全文公開【ネタバレあり】

「本書の内容はフィクションであり、実在するもしくは歴史上の人物、団体、地名、事件などとは一切関係がありません。また、本書は特定の思想、信条、宗教を擁護あるいは非難する目的をもって書かれたものではありません」と、巻末にお定まりの文言をしっかり謳っている以上、細かく明言などできるはずもないのですが、それはさておき本シナリオは読めば自明なとおり、平成末期に起きた出来事や社会問題をこれでもかというほど大量の“モチーフ”にして組み立てられています。 このシナリオは、TRPGのシナリオとしてはかなり出来が悪いと自分では考えています。それは、遊びやすさ(プレイアビリティ)への配慮が少ないことと、強すぎるシナリオの空気……というより灰汁が、楽しめる人の幅を限定してしまうためです。こんなシナリオを、自分の作品として世に出すことにはかなり逡巡がありました。特に、以前発表したクトゥルフ神話TRPGシナリオ「狂気山脈登山シリーズ」が、ありがたいことにそのゲーム性や参加者たちの中にドラマを生む構造で一定の評価を頂いた今だからこそ、その直後の作品として、こんなキワモノの、危険球なシナリオを出すことは、戦略的にというか、打算的に考えればやるべきではない事だと、今でも真面目に思っています。 それでも、なぜ発表に踏ん切ったのか。それは、明らかに「今しか書けない、発表できない」シナリオだからです。ものすごい速度で過ぎ去っていく今を切り取ったシナリオだからです。思いついちゃったんだから仕方がありません。これはもうアイデアが降ってきた時点で、打算などは捨てて勢いで出すしかないと思いました。 時代の空気感は、その時代を生きている人々にしか中々リアルには感じられません。そして時代の流れは加速しており、記憶はあっという間に風化してしまいます。本シナリオも、旬はおそらく一瞬です。保って半年だと思います。もし遊びたい、回したいという方はどうぞお早めにお召し上がりください。元来アクが強いシナリオです。旬を逃せばあっという間にエグみだけが残ったゲテモノとなってしまうでしょう。 このシナリオでモチーフにしたひとつひとつの物事や社会問題に対して、私は明確な意見や信条、判断基準を持ち合わせていません。なぜならば、往々にして物事は外野から見るだけでは取りこぼしている多くの事実があるからです。広く報道された一部の情報だけを切り取り、咀嚼し、「これがこの問題の本質だ」と理解したつもりになっても、おおよそそれは的外れな事が多いと個人的には思っています。 しかし、それでいてもなお、私も「時代の閉塞感」みたいなものは肌でヒシヒシと感じています。そしてこれは、おそらく個々人の義勇心や正義感などではどうにも動かしようのない、手に余るものなのだと思います。もちろん、個々の社会問題の解決に向けて真剣な議論や活動を行うことは重要です。しかし、空気感そのものを一気に吹き飛ばし解決するような神の一手はきっとありえません。……ところで、この“空気感”とやらは、まさにクトゥルフ神話における神話生物のようではありませんか?  圧倒的で理解の及ばない、異質で狂気を孕んだ強大な、それでいて実は身近な場所に潜んでいる存在。今回は《盲目のもの》にその空気感のメタファーとなってもらい、「全部妖怪のせいだ!」とばかりに電撃銃で打ち倒す……そんな現実では起こりえないフィクションならではの痛快なエンディングに、「これからの令和の時代は、今より明るい時代になるといいな」なんていう、ささやかな願いを込めています。 この物語が、少しでもプレイしてくれた方の心に晴れやかな気持ちをもたらしてくれれば、作者冥利につきるというものです。 でも、今作はちょっとコンセプトに準じすぎて受取手の方々にかなり甘えてしまったので、次はもっとちゃんと遊びやすくて楽しいシナリオを出したいと思います(笑)それでは、また。 二〇一九年七月  まだら牛


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