旅人の俺が辺境のクソ宿の中居になって旦那さまと愛し合うまで
Added 2022-07-17 00:48:16 +0000 UTCエッチ要素はあんまりないです。 「18時にお夕飯ですね。承りました」 私の名前は古橋里美です。 20歳にして運命の人、運命のお仕事と出会うことができ、こうしてたまにいらっしゃるお客さまを相手に充実した毎日を送っていま……って、違う違うっ!私は、じゃなくってお、俺はっ……! 「おー、多少はマトモになってきたか。まあ、お前はまだまだ完璧な中居には遠いからな。持ち前の経営スキルも使ってせいぜいきりきりと、この俺のために働けよぉ」 「はいっ、旦那様!」 私、大好きなこの中居というお仕事で、旦 那様のために一生懸命頑張ります!……ああっ!もうっ!また意識が引っ張られて……! 「あのー、ちょっといいすか?」 「あ、はい!ただいまっ!」 こんな最悪な宿で死ぬまで献身させられ続けるなんて絶対に嫌だ!! そう思う私の本心に反して、この身体はこの宿のためにと今日も元気よくお仕事に務めるのでした。 ××× 俺の名前は古橋里志。20歳にして現在進行形で旅人をやっている者だ。 この歳で旅人なんてアホらしいと誰もが思うことだろう。だからあらかじめ少し弁明しておこうと思う。 高校卒業後、若気の至りというやつか、俺は勢い任せにたったひとりで起業した。無論、何も無策で大学進学や入社という一般的な道を捨てたわけではない。 そして実際、収入だけで言えば俺は相当上手くいった部類に入っていたと思う。 だから当時の俺は、まあけっこう浮かれていたのだ。自分の努力がそのままお金に変わるあの感覚が面白くて、つい極めるところまで極めてみたいと欲張ってしまった。 結果、持ち前の体力と根性に物を言わせて無理のある仕事さえ請け負い始め、そしてほぼ休み無しの生活を1年ほど続けた頃に、過労で入院する羽目になった。 入院中に俺は考えた。自分が何のために仕事をしているのか。 俺の場合仕事は決してつまらないものではなかったし、別にお金を稼ぐことだけを目的に働くのだって全くおかしな話ではない。 ただ、そうは分かっていても、それから仕事をする俺の手は度々止まってしまうようになった。 「旅に出よう」 ふとそんなことを考えた。 まるで自分探しの旅みたいで馬鹿馬鹿しいと今でも思うが、幸いなことに数年は遊び呆けていても問題ない程度のお金が手元にあったし、ただ時間を無意義に浪費したとしても、それはそれで面白いかもしれないと開き直って、俺はさっそく長旅に出た。 北から順に南下していった。目的地のない自由気ままな一人旅だった。 旅先で目にするこれまであまり意識を向けてこなかった物がいちいち新鮮で心惹かれた。 ただ、当て所ない旅にも当然気分を悪くする時というものがある。今晩泊まることにしたこの宿の衛生観の著しい欠如も、そのうちのひとつだった。 最南端にたどり着いたら、違うルートでまた北国に向かうのもありかもしれない。そんなことをぼんやりと考えていた矢先だった。 九州のとある離島、ここでそんな俺の旅路は不条理にも潰えることになる。 ××× 「あー?ああ、君が今日泊まるっていう」 「古橋です。今日はお世話になります」 宿主さんの愛想は正直に言って良くなかった。まあ俺もこれで結構な数の民宿を利用してきたので、この程度のことに今さら目くじらを立てることもないのだが。 「ふぅん、悪くないねぇ……家にあるもんは適当に使っていいぞ。じゃ、俺は寝てくるから起こさんでくれよな」 それからも宿に対する感じの悪さは後を絶たなかった。 とにかく部屋がすこぶる汚い。 部屋の隅には害虫駆除用の罠があって、あろうことかフタは開けられてそのまま。当然粘着シートにはヤモリや大きな蜘蛛、そして黒くて光沢のあるあいつも息絶えていた。客が泊まるというのにほったらかしとはどういう了見なのだろう。 ドアノブも異様なほどにベトついているし、ベッドの上ではアリが隊列を成している。 さらに夕食では食事がほとんど材料の状態で出され、これから宿主さんが調理するものかと思っていたら、なんと客である俺にすべて任せて風呂を浴びに向かう始末。戻ってきてようやく俺に水の一杯も出したかと思えば、氷を素手で掴んでコップに放り込んできた。 極めつけは宿主のあの態度。 「はぁ、東京からねぇ。あっちは可愛い子が多いから、東京からの客ってんなら俺はぜひ若い姉ちゃんに来てほしかったな」 そうすれば気分よく晩酌してもらえたのにな。そう言いながら宿主は俺の目の前で酒を呷った。 「君もね、見てくれはいいから明日が楽しみだよ」 最後にそんなよく分からない一言を呟いて、贅肉に歪んだ笑みを浮かべながら立ち去っていった。 「なんなんだこの宿は!」 人を馬鹿にするにも程がある。こんなところに泊まりたくなんてないぞ俺は! 「今すぐキャンセルして別の宿を……」 と言いかけて気づいた。 まず別の宿を探そうにも電波が通っていない ためスマホは使うことができない。 この集落に他の宿屋なんて存在しないし、隣の集落まではバイクで1時間近くも掛かる。 さらに夜の帳が下りたこの時間帯にもなると、悪路はともかくイノシシが怖い。 「……くそっ、今日はここで泊まるしかないか」 腹立たしさに軽く地団駄を踏んでみると、部屋の壁に張り付いていたヤモリが驚いてカサカサと逃げ出した。 ××× 翌朝、このオンボロ宿に当てられたのか、奇妙な倦怠感が身体にまとわりついていた。 「ふぁ……」 あくびもどこか不調そうに甲高く響いた。これはあれだろうか。やはり衛生面に難のあるこの宿の食事が原因だろうか。 とりあえず顔を洗おうと触りたくもないドアノブの端を極力接触面積が少なく済むよう摘んで回す。 そして洗面所に入ると、そこには見慣れない女性がいた。 パチパチと大きな目を瞬かせた彼女は寝ぼけてでもいるのか、不思議そうにこちらをぼんやりと見つめてくる。 彼女の髪の毛に目が行く。ぼさりとした長髪からしてやはり寝起きのようで、しかし彼女の端正な顔立ちに相まってそれが妙に愛らしく感じる。 と、そこで俺は気づいた。 初めは彼女が部屋を間違え、さらにあのクソ宿主が鍵を渡し間違えて、そんなレアケースが重なった結果、彼女が俺の部屋の洗面所に佇むことになったのだと考えていた。 ところが、彼女の一挙一動に目を向けていると、そこにひとつの法則性を見つけた。 俺と同じ動きをしているのだ。 俺が身体を身じろがせると、彼女も身体を身じろがせ、俺が左手を上げてみせると、彼女も左手を上げてみせた。 どちらか一方がふざけて真似っ子をしているわけではない。 お互いそんなくだらないことをする歳ではなさそうだし、なにより俺たちふたりの動くタイミングが全く同じなのだ。未来予知でもできない限り、真似っ子しようにもどちらか一方は数瞬遅れて然るべきだろう。 なんとなく嫌な予感がして、俺は額の汗を拭った。 するとその際に袖が触れたのか、前髪の位置がズレて、そしてはらりと俺の視界に垂れてきた。 「……」 ……いやいや、え?前髪?俺の?そんな馬鹿な。 俺は長旅に身を置いてこそいるが、散髪は定期的に行っている。そもそも移動距離が長いため、便宜髪は意図的に常に短くしているのだ。 そんな俺の前髪が、どうしてこんなにも長い? こうなるといくら鈍感な人間であっても察しが付いてくるというものだ。無論、荒唐無稽かつ非科学的な推測には違いない。しかし同時にこれが正解なのだという直感が今の俺にはあった。 すなわち、今鏡の向こうで俺の感情をそのまま代弁したかのような表情を浮かべるその女性こそが、まさしく今の俺なのだというーー 「ほー、えらい別嬪になってくれたなぁ」 当たり前のようにノックひとつせずドアを開け、ずけずけと客室に入ってきたのは件の宿主だった。 「宿主さんっ!これはいったいなんなんですか……え?」 俺は愕然とした。 自分の口から発せられた、鈴の音のようによく澄んだソプラノの声に、というのもある。 しかしその最たるは、"俺は「あんたっ!これはどういうことなんだ!?」と、たしかにそう言葉にしたはず"だったのに、意味合いこそ違わなくとも、まるで毒気を抜かれた、それこそ今の俺の姿によく似合いそうな控えめな口調に勝手に変換させられてしまっていたことだ。 「くはは、いい反応だ。さて、お前のその俺好みな可愛い顔に免じて、特別にお前が知りたいだろうことを話してやろうかね」 そして宿主が始めた話は、あまりにも馬鹿馬鹿しく、それでいて今の俺を絶望させるものだった。 というのも、この宿には昔から呪いが掛けられていて、延べ宿泊客数が1000人の倍数に達するごとに、その時宿泊していた客を、その時点でこの宿に最も必要な人材へと変えてしまうのだという。 さらに、そんな人材としてするべき行動を、本人の意思を無視して無理やりに取らされてしまうという最悪のおまけ付き。 そしてその呪いは、再び1000人の宿泊客を泊めるまで終わらないのだそう。 「で、ですがどうしてそれで私は女に……それに口調も先ほどからずっとおかしくなって直らないのですが……!」 「うちの宿は昔っから汚ねえ汚ねえ言われてた からなぁ。男の俺より衛生観念のしっかりした女中なんかが必要って判定でもされたんだろ。口調なんかは、そのついでに礼節を叩き込んでいい接客をしてもらおうってことなのかもしれんな……いや」 宿主は顔をずいと近づけてきて、こう続けた。 「この宿にもいい加減跡取りが必要だって、俺に従順な女がいるべきだって、そう神様が考えてるのかもしれんなぁ?」 「……っ!」 俺は思わず一歩後ろに引き下がり、それから、 「でも、宿主さんとなら、私……」 もじもじと両手を下腹部で揉み合わせ、一歩前に進んで満更でもなさそうに上目遣いをし始めた。 「って、なんでっ!?どうして私……!!」 「あっはっは!なるほどなるほど……この宿におけるお前の役割、大体予想の通りだな。これからが楽しみじゃないか、なあ?」 そして嫌らしい目で、宿主は俺を舐め回すように矯めつ眇めつしてくる。 「寝癖を残しながらもしっとりとした、腰にまで届く緑の黒髪。品のいい薄い眉。俺に熱を向けるつぶらな瞳。よく伸びた愛らしい睫毛。柔和な童顔。くふふ……」 そう呟きながら、宿主は俺の顔を無遠慮に撫で回す。不快極まりないが、この身体は俺の意思に反して宿主の蛮行を受け入れるように微笑み返す。 「染みのない色白の肌。喉仏のない細首。筋肉が落ちてはんなりした腕と脚。俺と作る子のために脂肪を蓄えて膨らんだ胸!横に広がった尻!そんでこの」 「きゃっ……!」 「男に、俺に使われるために作られた股の割れ目!どうだよ、差すべき側から差されるべき側に回った気分は!?これから毎晩……いや、閑古鳥の鳴くこんな宿じゃどうせ客は1人も来ん!夜だけじゃねえで一昼夜、お前のここ、楽しませてもらおうかぁ!!」 そしてこの日から、私は自ら労働力を、そして身体をこの人に捧げることになり、さらに呪いの侵食によって意識すら度々この宿の中居、そしてこの人の良き妻であるべきかのように精神を蝕まれてしまうようになってしまいました。 ただ、いつまでもこんな状態に甘んじている私ではありません。 この呪いから解放される条件は、この宿に再び1000人のお客様を集めること。きっとそれを達成するには並大抵の努力では足りません。実際旦那様も既に不可能と考えていらっしゃるようで、それはもはや奇跡のようなものなのでしょう。 ですが私にだって若輩ながら起業して培ってきた能力というものがあります。私にあるもの全てを発揮して、私は絶対に元の私に戻ってみせます! と、そんなこんなで本日も幸せな……いえ、最悪な毎日を愛する……違いますっ!憎むべき旦那様と過ごすのです。 ××× 「ーーそんでこれが自分で立案しときながらいざ水着姿でPRするってなると恥ずかしくなって胸元を両腕で隠す母さんだ」 なにやら聞き捨てのならない雑談がされている気がします……けれど今はお仕事を優先させなくては。 「あれー、なんでこの写真のパパとママ、裸なのー?」 「あ?これか?これはなー」 「旦那さまっ!」 まったくこの人ったら!年端もいかない子どもになんてこと教えようとしているんでしょうか!というか、いつの間にそんな写真をお撮りになられていたのですか!? けれど私が抗議の声を上げても彼は顔色ひとつ変えずに、 「ははは、どれだけ怒ろうが母さんはな、こうして俺に乳首を撫でられりゃあ……」 「ぁん……やめっ、ふぁ……」 途端に身体が火照り出し、本能が彼を求め始めてしまいます。 私の身に掛けられたこの呪いは留まることを知らず、今はもう身も心も旦那様に支配されてしまっています。どう足掻こうが、この人に従うことを自ら望んでしまうのです。 「失礼いたします……」 お仕事も娘もそっちのけに私は旦那さまの一物を取り出し、そして割れ物を扱うかのように優しく、真心を込めて愛撫します。するとそれは徐々に大きく、そして硬く変わり私に向かって屹立しました。 ああ、なんて凛々しく愛おしいのでしょう。私はこの素晴らしき男根に喘ぎよがるため生まれてきたのではと錯覚さえするほどに。 「くくっ、結局あんだけ威勢よく宿を再建だなんだ言っといて、俺との色欲に溺れて仕事がお留守になっちまってんなぁ?」 下卑た笑みを浮かべながらそんな嫌らしい話の振り方をする彼に、私はにこりと微笑み返します。 「申し訳ございません……ですが私は今、貴方といられて幸せです……今日も私を、たっぷりと可愛がってくださいませ」 「ねーママ、これはー?」 私たちが情事を始めようとしたその時、娘が新たに1枚の写真を見つけてきたようでした。 「誰、これー?」 そこに写るのは目的もなく旅を続けていたひとりの男性。 あの人の悪趣味で男として最期の1枚と、隠し撮りされていたかつての私。 「この殿方はね、旅人さんだったんですよ」 「旅人?旅をする人ー?旅って、面白いのー?」 そんな疑問を浮かべる無垢な娘に、私はこう教えてあげました。 「このお宿での生活と比べたら、まったくつまらない日々を過ごしていたものですよ……んっ♡」 私、このお宿に嫁げてとっても幸せです。