就活セミナー?後日談
Added 2021-12-11 03:32:43 +0000 UTC平素より拙作をご愛顧いただき、誠にありがとうございます。 今作は『就活セミナー?』の後日談になります。たくさんの方々に本編をお読みいただけましたため、瑣末なものではありますが、せめていくらかの還元になればとおまけとして執筆いたしました。楽しんでいただけましたら幸いです! ーーー 今年も我が社の新入社員はなかなかに豊作だ。無論、かなりのインチキをしているわけだから、当たり前と言えば当たり前なことなんだけれども。 「はい……はいっ!ありがとうございます!今後ともどうぞよろしくお願いしますっ!」 そう笑顔で電話を切る彼女もまた、我が社期待の優秀な新入社員のひとりだ。 「やりました咲本先輩!〇〇社との案件、もうばっちしです!」 元気よく上司である私に成果を報告してくる彼女の名前は園部侑梨。 同じ大学を出たことや就活の際にガイダンスの講師として顔を合わせた関係もあってか、彼女は私にとてもよく懐いてくれている。 「なんて言うと、随分白々しくなっちゃうけどね」 「?なんです?」 「ううん、なんでも」 慶早大学を弊社の傘下へと収める計画は無事に終わり、表向きはこれまでと変わらないけれど、強力なバックを手にしたことでTS社の勢いはますます鰻登りだ。 その計画の果実第1号であるところの侑梨ちゃんは、当時こそかなりの抵抗を見せてきたけど、今では本心からこの会社に忠誠を誓って、一昼夜オフィスにて身を粉にして働いている。 「〇〇社との案件も大事だけど、今日の役員奉仕担当って侑梨ちゃんだったよね?」 案件成立にはしゃぐ彼女に水を差すのも悪い気はしたけど、念のため釘を刺しておく。 「その辺も抜かりなく!浅田さんの好みもしっかり確認して、今日は派手目な下着を付けちゃってますよ!」 「よし、上出来!」 入社したばかりの頃は恥ずかしそうに奉仕研修を受けていた侑梨ちゃんが、今では明るくその手の話もできる……あの初心な感じも、それはそれでいいものだったと思うんだけどなぁ。まあ、後輩の成長ということで素直に喜んでおこう。 「ところで、例の彼氏の件って結局どうなったの?」 私はふと以前話した侑梨ちゃんの元カレのことを思い出し、世間話の感覚でそう尋ねてみた。 「うっ……いや、彼にはけっこうキッパリと伝えてはいるんですよ?なんですが、向こうはいまだに未練があるみたいで……」 侑梨ちゃんには高校在学時、お付き合いしている男の子がいた。当時マネージャーをしていたサッカー部の子だ。 もっとも、侑梨ちゃんが大学に進学してからは疎遠になって別れてしまったらしいのだけれど、大学生活で新しく彼氏になった侑梨ちゃんの先輩が慶早大学の女子大化による改変で女子になったことが影響したのか、改変後の侑梨ちゃんは依然、高校時代の彼氏と関係を持ったままだった。 当然、弊社は女子社員の恋愛はご法度で、侑梨ちゃんが内定を受けた際、しっかり面接官の目の前で電話口に別れ話も済ませていた。 だというのに、向こうのほうが侑梨ちゃんに未練たらたらだそうで、今になっても電話が掛かってきたり、食事に誘われたりするそう。 「まあ、侑梨ちゃんの見た目と性格を考えちゃうと、唐突に別れを切り出されて「はいそうですか」とはならないよね」 その男の人の気持ちも理解できる。侑梨ちゃんは可愛くて身体のスタイルもいい。頭も良くって気配りまでできる。まさに理想の彼女だろう。女の私でさえ、男に生まれていたらきっと彼女に惚れていただろうと思えるくらい。 「もうっ、おだてたって何にも出ませんよ!あ、肩でもお揉みしましょうか?」 「出たじゃん。お願い」 背後に回り私の肩に手を置く侑梨ちゃん。 「わっ、先輩肩こりひどいですよ」 「やっぱり?もう50連勤くらいしてるから、そろそろ1日休んだほうがいいかも」 「そうですね。30日を超えてくると身体にガタが来て作業効率も悪くなっちゃいますし」 「けど人員も限られてるし……あと、会社のために働きたいって気持ちばかりが前に出ちゃうのよねぇ」 「それ、すっごくわかります!」 「というわけで、そろそろお仕事に戻りましょうか」 「はーい」 お互いデスクに再び向き合い、もう何本目になるかも分からないエナジードリンクを口に入れ、キーボードを打ち込む。 「そうだ侑梨ちゃん」 と、ひとつ思いついたことがあって彼女に声を掛けてみる。 「はい、なんでしょう?」 「その元カレって、けっこう優秀な子なの?」 その質問に、彼女は可愛らしく小首を傾げた。この子のこういうさりげない仕草が男の人を惹きつけてるんだろうなぁ。 「えっと、優秀というのがどういった意味合いなのかにもよりますけど、頭はかなりよかったですよ?サッカー部だけあって、体力もすごかったですし」 「そう。なら、その件は私に任せて」 「へ?」 「私にいい考えがあるの♪」 そして後日、我が社にまたひとり女子社員が中途採用された。 侑梨ちゃんの悩み事と私の過労問題は、これにて無事に解決だ。