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恐怖の臭い♡ 後編

――意識が、ふっと浮上した。 まぶたを開けると、視界はぼやけ、光が水の膜を通ったように揺らめいていた。 「……どこだ、ここ……?」 喉が焼けつくように乾いていた。男は無意識に地面へ手を伸ばす。そこには細かい水滴が散らばっており、手のひらにたまった一滴をすくって飲み込む。 冷たいはずなのに、生ぬるい。体に染み込む感覚だけがやけに鮮明だった。 視界が徐々にはっきりしていく。周囲を見回した瞬間、男は思わず息を呑む。 「……ガラス……?」 自分が立っている場所は、透明な壁にぐるりと囲まれていた。円柱のように滑らかで、どこにも出口らしきものはない。 だが――異変はすぐに見つかった。 ガラスの向こう側に、巨大なピンク色が広がっている。 色だけでいえば、ただの肌色に近い。しかし、それは静止していなかった。 うねり、わずかに脈打ち、じんわりと湿った光沢がゆらめいている。 まるで――生き物の腹の内側にいるような光景だった。 「……なんだよ……あれ……」 背筋に冷たいものが走る。 ピンクの壁は、呼吸をしているかのようにわずかに伸縮し、かすかに震えていた。 その動きの中心部には、暗い溝のような縦のラインが見える。ゆっくりと、外へ、内へと吸い込むように蠢いている。 生きている。明らかに、生物のどこかだ――しかし信じたくない。 男が後ずさりしたそのとき――。 ドォン。 天井の向こうから重い振動音が落ちてきた。誰かが巨大な体を動かしたような衝撃。 そしてすぐに、 「――あら。ようやく起きたのね」 甘く、気だるく、聞き覚えのある女の声が、コップの外側から響いてきた。 男が見上げた瞬間、視界の上部いっぱいに巨大な顔が現れた。 全裸の女が、ソファに腰かけ、膝を曲げてゆるく股を開いたまま、その股間の真正面に置いたコップの中を覗き込んでいた。 その笑みは冷たく妖しく、完全に捕食者のものだった。 「ふふっ。眠っちゃうなんて、可愛いわね」 女の指先がゆっくりと近づく。コップの上縁をつまむようにして持ち上げると、男の体がふわりと浮き上がる。 「さ、外に出ましょうか。次はもっと面白いものを見せてあげる」 そのまま、女はコップを傾け―― 男の体をぽとんと、自分の股間のすぐ前へ落とした。 落下の衝撃は覚悟していた。しかし、男の背中を受け止めたのは、コツンとした軽い感触だった。ソファーの柔らかさが衝撃を吸収し、痛みはほとんどない。 「……助かった……?」 そう思った瞬間――胸の奥が凍りついた。 ソファに座った自分の真正面、わずか数十センチ先に、巨大な肉の壁が広がっていた。 否。 それが何であるかは、一度見ただけで理解できてしまった。 女の、むき出しの性器。 視界いっぱいに広がる大陰唇は、丘のように盛り上がり、中央の割れ目は湿った光沢を帯びてわずかに脈動している。生々しい色合いは、人工物ではありえない生の熱を放っていた。 「……う……そだろ……」 声が震え、喉がひゅっと閉じる。 目の前の裂け目は、自分の全身を丸ごと呑み込めるほど巨大だった。そこからゆっくりと、ねっとりした透明の液体が糸を引いて流れ、ソファの表面に垂れ落ちる。 男は反射的に視線を上へ逃がした。 すると――。 その上には陰毛が黒い森のように密集して広がっていた。一本一本がロープのように太く、うっすらとカールしている。 さらに視線を上げると、山のように盛り上がった腹部、そして左右に大きく張り出した胸がそびえる。胸は、呼吸に合わせてわずかに上下し、ふるりと揺れ動くたびに影が波立った。 ようやく、その上の顔にたどり着く。 ソファの上から見下ろす女は、楽しげに微笑んでいた。 「ふふっ。そんなに見つめられると、照れちゃうわね」 その笑顔は美しい。しかし、男にとっては救いではなく、捕食を楽しむ獣の微笑みにしか見えなかった。 「今のあなた……そうねぇ。五センチくらいかしら」 さらりと言い放たれたその言葉に、男の思考は一瞬空白になった。 「……ご……センチ……?俺が……?」 信じられない。信じたくない。 男は現実から逃げるように目を閉じた。何度も深呼吸し、心の中で必死に否定の言葉を並べ立てる。 しかし――目を開けても世界は変わらない。 目の前には、巨大に広がる割れ目。 後ろを振り返れば、ソファの端が切り立った崖のように迫り、ほんの数歩で転落してしまう。 左右も、前も、後ろも、逃げ場は完全に存在しなかった。 女はゆっくりと片手を股間へ添え、その指で自身の大陰唇をつつくように押し広げる。 「じゃあ……ここの臭い、しっかり嗅いでね♡」 ねちゃ……。 湿り気を帯びた粘膜が左右に引き伸ばされ、糸を引いて開いていく。内側の柔らかな肉の表面には透明な液体が光を反射し、細かな震えが伝わるたび、きらりと輝いた。 開かれた穴は、もはや洞窟だった。 深い奥へと続く闇が、男を飲み込もうとするかのようにぽっかりと口を開けている。 そして――音もなく、じわりと臭いが流れ込んできた。 甘く、湿り、発酵したような、女の性そのものの臭い。 足の臭いとも違う。汗とも違う。もっと濃密で、もっと生々しく、もっと逃れようのない臭気。 男は咄嗟に鼻を覆おうとしたが、手が震えてうまく動かない。 「う……あ……っ……ぐ、う……」 頭がくらりと揺れ、視界の端が白く霞んでいく。 女はその様子を楽しむように、さらに指で割れ目を開き――粘膜が、にちゃ、ぬちゃと音を立てて形を変えるたび、臭いが濃くなる。 「ふふっ……いい反応ね♡もっと嗅ぎなさい?」 巨大な股間が、またゆっくりと男のほうへ迫ってくる。 逃げ場はどこにもなかった。 巨大な股間が、地滑りのように迫ってくる。 それは近づいているというより、世界そのものが女の陰部に塗りつぶされてゆくような錯覚だった。 視界いっぱいに迫る肉の壁。粘膜がぬらりと光り、体温が空気を震わせるほど近い。 「や……だ……っ……!」 男は悲鳴とも声ともつかない音を漏らし、反射的に後ずさった。 だが、逃げるために踏み出した足が、ソファの繊維に取られる。 ソファの布地――その一本一本の糸が、男の腰ほどの太さになっていた。 繊維の谷は深く、段差は崖のようで、思うように足が前へ出ない。 「なんで……なんで走れない……っ!」 焦れば焦るほど、足はもつれ、女の陰臭は濃さを増して追いすがる。 吐き気がこみ上げる。目の奥が痛む。 だが――それと同時に、男は自分の股間に熱を感じていた。 恐怖と嫌悪が支配するはずの状況で、ありえない興奮が脈打っている。 「ちが……う、ちがうだろ……なんで……っ」 巨大な女の臭い。 圧倒的な支配感。 抗えない縮小の恐怖と、支配される快楽が同時に押し寄せ、理性が壊れていく。 振り向けば、女の股間は、さっきよりもさらに巨大だった。 いや――自分がまた縮んだのか。 距離感が狂い、世界が歪み、自分の存在が消えていくような感覚が襲う。 男は叫びながら、巨大な肉の洞窟から必死に逃れようと走った。 ソファの端――断崖が見える。 その先は暗闇に沈んでおり、底が見えない。 「うわああああああああ!!!」 足を取られながらも、男はソファの淵へたどり着いた。 迫る巨大な影。 広がる断崖。 選択肢は二つ。 迫りくる女性器の地獄に飲まれるか―― あるいは、落ちるか。 (……死んだほうが……マシ……か……) 涙を浮かべながら、男は身体を投げ出した。ふわりと浮く。重力が襟首をつかむように引っ張り、身体が落下を始める。下を見ても、かすんで地面が見えないほどであった。 「……あ……俺……死ぬんだな……」 暗闇へ吸い込まれていく。 だが不思議と、恐怖よりも安堵が勝っていた。 (もう……あれに……近づかれなくて……すむ……) 男はそっと目を閉じた。 股のすぐそばにいた五センチの男が、見る見るうちに小さくなっていくのを眺めながら、女は背筋を震わせた。 「ああ……最高……♡逃げながら縮んでいく姿って……どうしてこんなに興奮するのかしら……」 逃げる男は、もう昆虫どころか米粒より小さい。 ソファの上を必死に走るが、その姿はもはや点だった。 女は興奮を抑えきれず、指先で自分の濡れた股間をなぞる。 ぬちゃ……と湿った音が指に絡み、腰がびくりと跳ねた。 「はぁ……はぁ……どこまで小さくなるのかしら……♡」 小さな点――男はソファの端で立ち止まった。 その様子が可愛くて、女は笑う。 「崖よ?逃げ場なんてないのに……どうするのかしらぁ……」 そのときだった。 米粒ほどの黒点が、崖の外へ――ひゅ、と弾かれたように飛び出した。 「あらあら……ほんとに飛び降りちゃった……♡」 女の笑い声が、甘く震えた。 ――女はソファからゆっくりと立ち上がった。興奮で少し震える太ももを撫でながら、床を覗き込むように身を屈める。 「落ちたのよね……ふふ、どこに行ったのかしら……♡」 床に長い髪がさらりとこぼれ、女の影が巨大な楕円を描いて伸びていく。 ソファの縁から身を乗り出し、指で床をトントンと叩きながら、まるで迷子のペットを探すような緩さで視線を走らせた。 「あ――いた♡」 その声は、心底うれしそうだった。 床の上、塵の陰に米粒ほどの動く点があった。男だ。気絶しているが、胸がわずかに上下している。 「まだ生きてるんだ……ほんと、しぶといわねぇ……♡」 女は床に片手をつき、顔を近づける。吐息ひとつで男が転がりそうな距離だ。 「でも……逃げ場なんてないのよ?」 にこりと微笑むと同時、女はスッと立ち上がり、男の真上へゆっくりと移動した。巨大な足が左右から迫り、床の揺れとともに男の視界が影に沈んでいく。 そして女は、その場でゆっくりとしゃがみ込んだ。大地のように巨大な尻が降りてきて、男の頭上を完全に覆い尽くす。左右に広がる尻肉がたわみ、女は両手でその肉をぐいっと押し広げた。 割れ目が開かれ、湿った皺を刻んだ巨大な肛門が、男に狙いを定めるように真上へと迫る。 「うちにはね、あなたのほかにも、小さな小さな小人さんがいっぱいいるのよ……」 甘い声で囁きながら、女はさらに腰を落として肛門を近づける。 「だから――あなたもダニサイズにしてあげる♡」 薄い意識が戻る。ぼんやりとした視界に、天井の照明が滲んで見える。 (……生きて……る……?) 自分が落下したことは覚えている。しかし体は痛くない。むしろ、柔らかい埃の上に落ちたような感覚だ。 (俺……運……良かった……のか……?) だが、次の瞬間。 天井を覆い隠す巨大な円形の影が現れた。 黒く、皺があり、脈打つようにわずかに動いている。 (……え?) それは照明ではない。 家具でもない。 男の小さな視点では理解が追いつくことはなかった。 (……なんだありゃ?) その瞬間、世界が臭いで満たされた。 部屋のどんな臭いとも違う。女の足の臭いとも違う。 もっと濃厚で、腐敗と体温と肉の湿りが混ざり合ったような、完全な排泄の臭い。 鼻の穴にこびりつき、肺に流れ込み、頭の中を直接殴ってくるような悪臭。 「う、ぐ……っ……!く、さ……っ……!!!」 男がもがくより早く―― 頭上の円形が、めり……めり……と、わずかに盛り上がる。 肛門をすこし緩めると、内部に溜まっていたガスが出口を求めて蠢くのを感じた。 「ふふ……ちゃんと受け止めてね?」 女はゆっくりと腰を沈め、肛門をさらに男へと近づける。湿った皺がわずかに震え、その中心がぬるりと開く。内部の熱気が押し出され、むわりとした腐った卵のような、ねっとりと肌に張り付く悪臭が漏れ出す。 「……いくわよ……♡」 女の尻肉がぎゅっと締まり、完璧に男を包囲した状態で――肛門がゆっくりと、意地悪く、音を殺すように開いていく。空気が絞り出されるように震え、 すぅぅぅぅ…………っ……ぶも……っ…… と、湿り気たっぷりの、粘度のあるこれ以上ないほど臭そうなすかしっぺが、男めがけて静かに降り注いだ。 (や、やめ……やめろ……っ……!!) 祈るように目を閉じた瞬間――。 ぶぅぅぅぅうえええええぇぇ……もっ……べっ……! 世界が爆発した。 暴風が体を吹き飛ばし、皮膚に砂粒のような衝撃が無数に叩きつけられる。 鼓膜が割れるような低音。 肺が焼けるほどの悪臭。 「がッ……はっ……!!くさ……っ……死……っ……」 目を開けた瞬間、世界が変わっていた。 周囲の床の繊維が、洞窟の柱のように巨大化していく。 影が伸び、光が遠ざかり、全てが加速度的に大きくなる。 (違う……世界が大きくなってるんじゃ……ない……) 自分が―― さらに縮んでいく。 しゅるしゅるしゅるしゅるしゅる……!!! 肛門から吹き降ろされる熱風の中で、男の体は米粒から砂粒へ、そして――視認すら困難な点へと変わっていった。 屁を出し終え、満足げに腰を持ち上げると――そこにあったはずの米粒の姿はもうどこにもなかった。しかし、消えたのではない。あまりにも小さくなりすぎて見えなくなっただけ。 「あらあら……もう見えなくなっちゃったのね♡本当に、どこまで小さくなれば気が済むのかしら……?」 女は微笑み、尻を軽く揺らす。 「ようこそ――ダニサイズの世界へ。安心して……。一生、このお家で飼ってあげるから♡」 ―エピローグー あれから、幾日かが過ぎていた。いや、もしかすると数週間かもしれない。 時間の感覚すら曖昧になるほど、男は極限の小ささへと追い込まれ、生存だけを繰り返す日々を過ごしていた。 男は生きていた。 しかし、それは人としてではない。 彼の世界は、あの日、巨大な女の屁によって終わりを告げた。 そして今、目の前にあるのは――果てしなく続く床の大地だった。 男の視界は暗かった。いや、暗いように感じるのだ。 彼が見ているものは床の木目や繊維――それらが、山脈のような影をつくり、谷間には埃が岩のように積もっている。 (……まだ……生きてる……) 声を出したつもりでも、音は空気に溶けて消える。 何しろ、彼の体はもうダニサイズなのだ。肺の空気が世界に届くはずがない。 歩き出すと――ドン……ドン……ドン……と、遠雷のような振動が地面から伝わった。 (な、なんだ……!?) 振動は規則的で巨大。まるで世界そのものが跳ねているようだ。 次の瞬間、天井が揺れ、巨大な影が差した。 女だ。 裸足の足裏が、地平線の向こうから迫ってくる。ヒールではない、ただの素足。それでも――男にとっては大陸だった。 (近づいてきてる……踏まれる……!!) 焦って床の裂け目に飛び込むと、巨大な足が真上を通過し、風圧で身体が転がる。 振動がおさまると、代わりに――なにか柔らかい巨大物体が、空をふさぐように落ちてきた。 女の脱ぎ捨てた靴下だった。 ひゅん、と影が落ち、次の瞬間、山のような布の塊が床に衝突。巻き起こる衝撃風で男は吹き飛ばされる。 (うわ、わあああああああ!!) 転がりながら、鼻を突く刺激臭が漂ってくる。さっきまで彼が恐怖した女の足の臭い――その何百倍にも濃縮された靴下の臭気が、あたり一帯に立ち込める。 (くっ……この臭い……また縮みそうだ……) しかしこれ以上縮む余地が、彼に残っているのか。 しばらくして、どこからか声がした。 「……おい……そこの新入り……!」 (え?誰だ……?) よく目を凝らすと、絨毯の毛の柱の陰には――彼と同じく極小に縮められた別の男がいた。ひどく痩せ、擦り切れた声で続ける。 「ここに来たってことは……お前も、あの女にやられたんだな……」 (……仲間……が……?) その男は自分のほうを見つめ、諭すように話し始める。 「気をつけろ……昨日も一人……向こうの集落で仲間が……巨大なダニに襲われて食われた……。あんなもん、もうどうしようもねぇ……」 (だ、ダニに……食われた……?) 彼が震えていると、 ぎゅおおおおおおおおおお……ッ!! という、鼓膜を破るような咆哮が響いた。 「っ……!!?」 男は硬直した。しかし、隣の男は青ざめながらも、乾いた声で言った。 「気をつけろ……あれがダニの鳴き声だ……。バカみたいにでかくて、腹減るとなんでも食う……」 「ダ、ダニ……?そんな……」 「笑えるだろ?俺らからすればあいつらが怪獣で、あいつらからしたら、俺らなんてただのえさなんだよ……!」 その会話をかき消すように――世界が再び揺れた。 ズオオオォォォォォン……!!ズオオオォォォォォン……!! 「くっ、今度は、あの女か!!走れ!!」 二人は裂け目へと必死に走り出す。 その頭上を――世界を揺るがす巨塔が通り過ぎた。 空気がねじれ、大気そのものが押しつぶされる。地面は波打ち、床材の繊維が液体のように震える。 女の足――ただの足であるはずなのに、男たちにとっては天変地異の震源であり、大陸そのものが歩いているかのようだった。 落ちてくる影。地鳴り。爆風のような風圧。 ドンッ……ドンッ……と世界が震えた。 「ふふ……今日もかわいい小人さんは元気かしら……♡」 男の全身を震わすほどの彼女のその言葉が、世界にく響き渡る。 そう、この男の人生は――もう彼女の家のただの虫以下の住人として続いていくだけであった。 彼は震えた体を抱えながら、心の中でかすかにつぶやいた。 (……まだ……生きてやる……) それが希望なのか絶望なのか、自分でもわからないまま。

Comments

いつもよりは直接的な描写はすくないですが、気に入ってもらえるとは… ありがとうございます。

zexcy15

このシナリオが最高です!

Goose


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