「ああっ、チクショオ。アキ姉ちゃんで抜きてぇなぁ!」病室にもかかわらず思わず声に出してしまう。
こんなに沢山の彼女の裸が目の前にあるのに、こんなに俺の息子は元気なのに、俺は射精出来ないでいるのだ。
と、そのとき、
「検診でーす。よろしいですかぁ?」
と突然予定外の時間に看護師さんが廊下から尋ねてきた。俺は慌ててタブレットを閉じた。
看護師さんは特に断りもなく、さっさと部屋に入ってきた。しかしその姿に俺は一瞬言葉を失った。
「ばぁ!驚いた??ていうかちょっと大丈夫?今日実家に帰ったら、ひどい怪我で入院してるって聞いたから…。」
まさか……???
アキ姉ちゃんだった。
彼女はそのまま俺のベッドに腰掛けた。おしりが俺の腰辺りに当たっていることなど気にもしていないようだったが、俺は違った。勃起が収まらない。さっきまで見ていた彼女の裸身が脳裏にチラつく。
「ちゃんと動くようになるの?」
俺の左側に腰掛けていた彼女は右手右足を見ようとより身体を近付けた。俺は自分のナニが当たるのではないかと気が気でなかった。
「あ、あ…あの、うん、それは大丈夫だよ…あ、です。で、でもいきなりどうして?」
「あ、ゴメンね、こんな時間に。もう寝るところだった?受付で無理聞いてもらっちゃって。ウフ、有名人特権ってヤツ?」
彼女の答えは俺の質問とは微妙に食い違っていたが、それがいかにも彼女らしくて可愛いかった。
「でも安心した。顔色も良さそうだし。またちょっと大きくなったかな?前にTVで出会ってなかったら分からなかったよォ。」
「ア、アキ姉…明穂さんこそ、お変わりなく。」
目の前の彼女の存在を実感として感じ始めた俺は途端に緊張した。それに対して彼女はアキ姉ちゃんのままで、言葉を繰り出した。
「ヤダぁ、アキ姉ちゃんでいいわよ。あっ、でももう三十路前のオバサンにお姉ちゃんもないか。今日はお休みを貰ってね。久々に実家をブラブラしたんだけど…本当にみんな昔のままだったな。…変わったのは私だけ…」
彼女の表情が一瞬曇った。そんなことはない、アキ姉ちゃんは昔のままだ。変わってしまったのは俺のほうで…でも俺は言葉が出なかった。
「あ!でもすんごい変わってるとこもあったよ!『柏屋商店』!ホラ、二人でよくあんみつ食べたでしょ?」
俺はただぎこちなく頷いた。
「あそこがスゴくお洒落なカフェになってたの!でもね!メニューにまだあんみつが残ってて!それを頼んだら昔とおんなじ!さくらんぼが沢山のっかってて、美味しかったなぁ!」
そしてお店の画像でも見せたかったのだろうか?おもむろに彼女は
「ちょっといい?」
と俺のタブレットに手を伸ばした。
それは今この病室で『俺にとって1番ちょっとよくないもの』だった。
「あ!いやそれは!…」
半身をまともに動かせない俺は彼女の行動を止めることなど出来るはずもなく、ロック画面をスワイプした彼女は小さくキャッと叫んだ。
それは今回の写真集の中でも一番淫靡な一枚だった。ページも終盤、彼女は高級ホテルのベッドの上で一糸まとわぬ姿で身をくねらせている。大きく上に反った顔の目はうつろで乱れ髪と少し開いた唇が容易にコトの最中を連想させた。豊かな胸は左右で違った印影を作り、開かれた足の付け根には黒い茂みがハッキリと写っている。その下の秘部にギリギリ掛かりそうなところで写真は切られていた。
俺は今この幸せな瞬間も、いやそれどころかアキ姉ちゃんと過ごした過去も全てが台無しになったのだと思った。一体どんな気分だろうか?可愛い幼なじみから性の対象として見られる気分は。だが彼女の言動は意外なものだった。
「………ヤダ、わざわざ買ってくれたの?わたしの写真集。言ってくれたら紙の本なら送ったのに。あ、でもオバさんに見つかったらマズイかな?」
そう言いながら彼女は自分の写真集をスワイプでペラペラとめくった。
「これこれ、私のお気に入り。」
とタブレットを俺に差し出す。
それは、海外映画のように、泡で満たしたバスタブの中で彼女が無邪気にはしゃいでいるカットだった。たしかにそのシチュエーションも、スッピンのようなメイクも直接的に俺の想い出と繋がる一枚で、さっき俺もめくる手を止めたカットだった。
「よくこうやってお風呂に入ったよね。どう?あの頃より、ちょっとはオッパイおっきくなったでしょ?それともオバサンになっちゃった?」
「そ、そんなこと…」
「あ〜あ、あの頃に戻れたらなぁ…」
そう言いながら彼女は上半身をベッドに倒れ込ませた。それはちょうど俺の股間の辺りで、彼女のほっぺに布何枚かを隔てただけで勃起した俺の陰茎は密着していた。
自分の頭の血の気が引き、悲しいことに股間には本能的にどんどん血が集まっていくのを俺は止められなかった。
さすがにアキ姉ちゃんもこれには気付いたようだった。
「えっ、…トシくん??」
「こ、これは、あの…その…」
俺は観念して、言い訳がましくも、その理由を彼女に話した。彼女の写真集で射精しようとしたことはなんとか誤魔化して伝えたと思うのだが、それは嫌悪感を持たれても仕方のない言い訳だった。
だがまた彼女の反応は違っていた。
「それって…大変なことじゃない」
その表情は心底俺の心配をしてくれているように見えた。
「先生に言ったほうが…って、…言いにくいよね?トシくんぐらいの年頃じゃね…」
少し長い間があった。
と突然彼女は俺の布団をまくりあげた。
「よし!お姉ちゃんに見せてみなさい!」
「えっ、ええっ?!」
瞬く間に布団は剥ぎ取られた。姿を現したのはより生々しくパジャマにテントを張った俺のイチモツだ。恥ずかしさのあまり俺は左手で股間を押さえたが、彼女は尚も俺のパジャマとパンツに手を掛けてくる。
「ちょっとアキ姉ちゃん!それはさすがに…」
突然彼女は俺に睨みを返し、ピッとタブレットを指差したあと、芝居がかった口調でこう言った。
「ほほォ、私のは見ておいてアナタのは見せられないと言う?
それって…理不尽だと思いませんか!?」
このポーズと台詞はよく知っている。彼女主演で大ヒットとなった連続ドラマ『家裁弁護士徳山聖子』で毎週彼女が使う決め台詞だった。
彼女の迫力に押され、俺は抵抗するのを止めた。
パジャマとパンツを同時に降ろされたとき、俺の陰茎はそれに引っかかり、外れた後はその勢いで下腹にペシリと当たり、後は振り子のようにしばらく揺れた。
アキ姉ちゃんは特に動じることもなく、グロテスクに青筋立ててそそり立つそれをすぐ側でマジマジと見つめていた。
「そっかぁ…そうだよね。背だってこんなに伸びたんだもん。ここだって大人になるよね。」
そうやって彼女に品評されることはとても恥ずかしかったが、それ以上に俺は興奮していた。今彼女のいるこの空間に勃起した俺の剥き出しのナニが同時に存在する事実、完璧に美しい彼女の顔のすぐ側にある醜い肉棒のコントラストは、大理石の床に糞尿をブチまけるような倒錯感と卑猥な空気が漂っていた。
『この絵面はオカズになるな…』
そんなヤボな事を考えていたそのときだった。
「先生、こんなとき私には何が出来るんでしょうか?!」
また彼女が1人芝居を始めた。その言い回しは彼女の大ヒット映画『ハードデイズナース』で演じたドジっ娘看護師だとすぐに分かった。
「なるほど、分かりました。では、早速…やってみます!」
言うが早いか彼女の右手は俺の茎の根元に添えられた。
「え…?」
不意の出来事に俺の頭は真っ白になる。しかしそれは次に起こった出来事に比べればまだまだ可愛いものだった。
アキ姉ちゃんは俺の男根を咥え込んだ。
事の事態を理解出来たのは俺の目の前で女神の横顔が上下に数回グラインドしたあとだった。
「ア、アキ姉ちゃん!!」
唾液に濡れた俺の陰茎から口を離した彼女がこちらを見る。
紅潮した頬と少し乱れた髪に俺はまた見惚れてしまう。天使のような顔が小悪魔のように笑う。
「…イヤ?」
「い、イヤとか、そ、そんなんじゃなくて。」
不敵な笑みがさらに強くなり可愛い悪魔はささやいた。
「私の裸で興奮してたくせに。」
俺の心を全て見透かした彼女はアキ姉ちゃんというよりもさっきの写真集から飛び出してきた林明穂だった。だがまたそこから天使のアキ姉ちゃんが顔を出す。彼女は優しく微笑んで言った。
「いいからお姉ちゃんにまかせなさい。」
目の前で林明穂とアキ姉ちゃんが混じりあった。
ヌチュッ、ズチュッ…。
滑った空気が彼女の口と俺の竿との隙間から漏れ、静かな夜の病室を満たしてゆく。灯りは外の通路の蛍光灯が差し込むくらいだが、彼女の輪郭はハッキリ見て取れる。
俺は今アキ姉ちゃんにフェラチオをしてもらっている。
その事実だけで射精をしてしまいそうにも思うが、同時に憧れの幼なじみからあまりにかけ離れた行為への違和感や、一体誰にこんなことを教えられたのか?という嫉妬心がそれを遅らせた。
だが実際に彼女のそれは非常に上手なものだった。玉、裏筋、カリの溝へと這い回る濡れた舌、ときおり漏らす喘ぎ、何かを懇願するかのように見つめてくる瞳…俺の興奮は段々と有名芸能人の流出ビデオを見ているような優越感と共に高まっていった。
「あっ、お、俺もう…」
彼女は咥えたままいいよと頷き、艶めいたピストン運動を速めていった。
チュピュッ、ジュパッ、ヌプッ…
「ウッ、ウグッ、アッ、アッ…」
猥雑に漏れる音にも、彼女の喘ぎにもリズムが出来、快感がゾワゾワと俺の体を駆け上がる。思わず俺は左の手を彼女の後頭部へと回してしまったが、彼女はそれを払い除けることなく受け入れてくれた。より奥へ刺さる俺の亀頭の苦しさに涙目になった彼女と目があったとき、俺の興奮は頂点に達した。
俺は彼女の口内に大量にブチまけた。
その精液を吐き出すこともせずに彼女は全て飲みこんでくれた。その際に彼女は咳ごんでしまったのだが、そのことを「ゴメンなさい」と小さな声で謝った。
その仕草に俺は強くアキ姉ちゃんを感じてしまい、途端にひどく申し訳ない気持ちになった。
「いや、そんな…あ、ありがとう。」
「…うん」
彼女は本当に優しく微笑むとまだヒクつく俺の陰茎を優しく握り、絞り出した精液も丁寧に舐めてくれた。
今度こそ俺はアキ姉ちゃんにフェラチオをされているみたいでまたひどく興奮を覚えてしまった。
「フーッ」と溜息をもらした彼女はそのままゆっくりと俺の横に、怪我を気にしながら寝そべってきた。
その端正な顔はいまや俺の顔から数cmしか離れておらず、表情がハッキリと見てとれるほどだ。
彼女は微笑みながら、ずっと俺を見つめていた。それは姉が弟を見つめる慈愛の笑みのようでもあり、男をイかせた女の達成感と照れ隠しの笑みのようにも見えた。
「ねェ…」
彼女が沈黙を破った。
「…キスしていい?」
俺は驚いたが動揺まではしなかった。今このゆったりと揺蕩う時間の中に、その言葉はごく自然に響いたからだ。
俺は彼女を左手で引き寄せ、そのまま二人はくちびるを重ねる。最初はそっと、次には深く。互いは舌を絡ませ、またほぐれては互いの口内を這わせた。
チュポリ、ジュポリと唾液の糸引く粘った破裂音が俺の口内から鼓膜を揺らした。「ウ…ウン、ぁむ、あっ…」彼女の小さな喘ぎと共に。
激しい口づけは止むことなく続き、俺は自由の利く左手で彼女の乳房を掴んだ。
「アン…!」一際大きく彼女は喘ぎ、身体をビクリと揺らした。糸を引いた彼女の舌は俺の口内から抜かれ、彼女は虚ろに息を荒げている。尚も服の上から俺は彼女の乳房を掴んだ。
「はあっ…はっ…もう、そんな事したら変な気分になっちゃうよ…」
彼女は天使のような照れ笑いを浮かべながらも、その左手を淫靡に這わして俺の未だ硬直したペニスを握りしめた。
「まだ、全然カチンコチンだね…ねェ、どうしようか?トシ君は…どうしたい?」
「はだかが…僕は…お姉ちゃんの裸が見たい。」
まるで小さい子のおねだりみたいな言い方に彼女は小さく笑い、あやすように言葉を返した。
「わかった…」
最後のパンティを脱ぎ終え、俺のベッド脇に立った彼女を、通路から漏れる灯りが後光のように照らす。それは今しがた見ていた林明穂の写真集から本人が飛び出してきたようにも映るが、微妙に印象が違う。今俺の目の前にいる人は、カメラの前に堂々と裸身を晒す芸能人ではない。恥ずかしそうに、両の手で胸や秘所を隠したがっている幼なじみのアキ姉ちゃんだ。
「何年ぶりだろうね?こうやってお互い裸になるなんてね…。」
「キレイだ…」
「あんまりジロジロ見るな。」
そう言いながら彼女は横たわり俺の身体と密着した。
「こうしたら見えないでしょ?」
うん、見えない。その代り彼女の柔らかい肉の暖かさと重さを全身で感じ取れる。それはこの上の無い幸せだった。
また深いキスが始まり、その後彼女の舌は俺の体を這い回る。耳へ、首筋へ、乳首を優しく噛んだかと思えば、次第に下へ、腹の上を一筋に滑ったあとは、いよいよ俺の亀頭の溝を数周し、再び俺のモノは彼女に飲み込まれた。
このままこの快楽にただただ身を任せたい欲望に駆られながらも俺はひとつの提案をした。
「ア、アキ姉ちゃん!」
ペニスを咥えながらきょとりとこちらを見た彼女が可愛いかった。
「ぼ、僕も…お姉ちゃんのを…舐めたい。」
「えっ?ヤダぁ、恥ずかしいよォ…」
なるべく役者みたいに俺は返した。「で、でもそれって、理不尽だと、お、思いませんかッ?!」
吹き出したお姉ちゃんが今度は観念する番だった。
「あっ、待って。これだと右手に当たっちゃう?」
「え、平気、平気。もっとこっちに足を…痛えっ!」
「ゴメンっ!大丈夫?ほら、だから言ったのにィ。」
さっきのムードは何処へやら、動かせない右手と、右足のなか、体位を決めるのは難しく、裸の俺達はぎこちなく身体を絡ませては色気の無い問答を繰り返した。だが俺にはそれがとても嬉しかった。まるでアキ姉ちゃんとはしゃいだあのお風呂場での時間がよみがえったみたいだったから。
それでもなんとか69の体勢を取れたときには、この世で1番見たかったモノが俺の眼前に現れた。薄暗い闇の中に浮かんだ白桃…その溝をたどれば一段と深いクレバスにたどり着く。それは美しい人はひたすら細部まで美しいのかと感嘆するしかないような、淫靡にして清らかな、アキ姉ちゃんの秘密の薔薇だった。
「もう、あんまり見ないで。そこはそんなにジロジロ見るものじゃな…ぃ、あああぁんっ」
彼女が言い終わらないうちに、俺は彼女の溝一直線に舌を這わせた。彼女の味を初めて知った俺はその歓喜の欲望に任せ、媚肉の花弁を一枚また一枚と剥がす。
「あん…あっ、あっ、ぅああん…あん!」彼女が思わず反り返る。「はぁ、はぁ…もぉ…!」お返しとばかりに、俺のを頬張る。
彼女の華から溢れる甘い蜜をすすりながら、俺の舌はいよいよその割れ目の端へ、一番敏に感じ入る所に達した。
「ううううっ、うっ…っぅん!…ぁあああああんっ!」耐え切れず、彼女は俺の陰茎を離し、大きく天を仰いだまま硬直し、痙攣した。
この体勢を取ってもらったのは、彼女の秘所を見たいという欲望ももちろんあったが、実をいうと俺もアキ姉ちゃんを気持ちよくさせたかったからだ。
弟はいつも姉と同等の立場に立ちたがるものだから。
「はあぁっ、はっ、はっ…」糸の切れた人形のようにダラリと俺の上に倒れた彼女のアナルに突然口づけてみる。
「うんっつ!」彼女の身体がビクリと揺れる。呆けたような表情で紅潮した顔をこちらに向けた彼女は寝そべったまま体の向きをこちらに変え始めた。いつの間にか俺たちは汗だらけで、ねっとりと滑るようにアキ姉ちゃんの顔がこちらに近付いてくる。止まることなくそのまま彼女の舌が俺の口の中へと伸びる。もう俺たちは内も外もヌルヌルのネバネバだった。このまま溶けてひとつになってもいいと思った。
何本ものいやらしい糸を引きながら、彼女の舌は俺の口から離れ、つぶやいた。「トシくんのエッチ…」その後彼女は俺の首に手を廻し、一度強く抱きしめてから耳元で囁いた。「気持ち良過ぎてお姉ちゃんはもうガマン出来ない。」最後の辺りの言葉はそのまま彼女の舌の上に乗っかり俺の耳にねっとりと貼り付けられた。
いよいよ彼女は仰向けの俺の上に馬乗りになる。右手で俺の竿を握り、自分の肉ヒダを近付ける。お互いが少し触れただけで彼女は「うんっ…」と喘いだ。熱り立った俺の肉棒が彼女の肉襞に包まれていく。「はァ…うんッっ!」彼女がどんどん腰を落としていく。「あっ…あっ…」やがて俺のものは完全に彼女のものに包みこまれ、彼女の重みを感じ取れるようになった。
「うううぅん…はぁァッ」顔を真っ赤にしたアキ姉ちゃんは照れたように微笑み、ゆっくりと腰を上下させる。まるで俺のイチモツをじっくりと吟味するかのように。「ああぁっ、ハァ…ハァっ…気持ちいいよォ、トシくん…ウッん、ウッ…ハッ、ハッ」徐々にそれはスピードをあげる。「ああぁん、ぅあああァん…」
目の前で快楽に溺れたアキ姉ちゃんの顔と乳房が揺れていた。
俺はと言えばなんとも不思議な想いを感じていた。この今夜世界で一番幸運な男としての悦楽を満喫しようと、汗と唾液と肉の宴へと身体が没頭するその一方で、頭の中はどんどんと白く澄みきっていく。そのスクリーンに映し出されるのは桜の舞い散る散歩道でそよ風に髪をなびかせる彼女、入道雲と青い空に麦わら帽子とワンピースで飛び込んでいく彼女、そしてお風呂場の中、僕の髪を丁寧に洗ってくれる彼女…今目の前ではその彼女の汗に濡れたオッパイが上下に激しく揺れていた。「あん!ああん!はぁっ!あんッ!!」彼女は林明穂なのだろうか?伝説のアイドルとして数々のヒットを飛ばし、また女優としても華々しいキャリアを積んだ一流芸能人と俺は今セックスをしているのか?彼女と噂になった数々の有名人と同じように。そしておそらく今の俺と同じような体位で死んだ映画監督と同じように。
いや、違う。俺は…俺は、
林 明穂の本名は小林明代だということを知っている。
彼女が林明穂になるずっとずっと前から。
無理矢理に俺は上半身を起こす。右手がズキリと痛む。でもそんな事今はどうでもいい。俺は彼女を左手で強く強く抱きしめた。
「えっ?ハァ…ハァ…トシくん?…ハァ…」
「…お姉ちゃん…アキお姉ちゃん…お…ぼ、僕…お姉ちゃんのことがずっと好きだった。どうしてどこかに行っちゃったの?僕、僕はずっとアキ姉ちゃんと一緒にいたかったんだ!うえええぇん!!」なんとも情けなく俺はそのまま彼女の胸で泣きじゃくった。彼女は俺を優しく抱きしめて、頭をずっと撫でてくれていた。小さい頃にしてくれたのと同じように。
「トシくん…。そうだね、私どうして行っちゃったんだろうね。ずっと…ずっと一緒にいればよかった。でも私…私はもう…うぇ…うぇぇえん。うわああぁん!」
彼女も俺の頭を抱きかかえたまま泣き出した。まるで子供みたいに。
散々泣きはらした俺達は互いの顔を見た。涙でくしゃくしゃになった彼女の顔はせっかくの美貌が台無しと言いたいところだが、とてもとても愛おしかった。林明穂はその大量の涙でどこかに流されて、すでにそこにはアキ姉ちゃんしかいなかったからだ。
どちらからともなく二人はキスをした。俺はゆっくりと彼女を突き上げる。俺の背中を彼女の手が滑る。激しくはない、ゆったりと、優しくて、そして熱い愛を俺達は交わした。微笑みながら。お互いを求めて。愛しんで。慈しんで。二人の欲望が同時に果てても、しばらくは抱き合ったままでいた。
見回りの看護師さんがやって来たのはギリギリセーフと言ったところで俺達はその直前に元通りの格好になっていた。
「すみませんがそろそろお見舞いの方は…」
「あっ、いや本当に申し訳ありませんでした。すっかり昔話に花が咲いてしまって…。では、失礼いたします。」
そう言ってアキ姉ちゃんはそのまま部屋を出て行こうとした。その去り際の呆気なさに、俺はひどく寂しい気持ちに襲われる。と思ったら「あっ?あれっ?スマホ、スマホ?私のスマホどこにやったかなぁ?」とお姉ちゃんはキョロキョロとし出した。俺も慌てて周りを探す。「あっ!」と俺を指差して彼女がツカツカとこちらへやってくる。そして俺にのしかかるような姿勢を取ると看護師さんに分からないように俺にキスをした。ご丁寧に舌まで入れて。そのまま彼女は自分の胸ポケットからスマホを取り出して看護師さんに向き直ると「あった!あった!ありました!」と見事な一芝居を打ってみせた。「じゃあね、トシくん。お大事にね…。」口では神妙そうに言いながら、ペロリと舌を出して笑う彼女を俺は見逃さなかった。
そしてあの夜から十月ほど経ち、林明穂の復帰主演映画『姉弟』が公開された。低予算、小規模ながらかなりの話題となっているのは、写真集に続き彼女がその美しい肢体、加えて大胆な濡れ場を惜しげもなく披露しているからに間違いはないが、実の姉弟の禁断の愛というテーマがヨーロッパの方でもアート系映画としてウケているらしい。マスコミも彼女の復活を大々的に取り上げていた。この映画の内容、そして公開時期を考えると、ちょうど俺達が過ごしたあの一夜は撮影の真っ最中ではなかったのか?だったらあれは全部演技だったのか?俺は彼女のちょうどいい練習台だったのか?……
…そんなことまでは流石に聞けないが、とりあえずメッセージを送ってみる。
『映画面白かったよ』
『えっ?!見たの??』
『初日の最前列』
『バカ!エッチ!変態!!』
『えっwでも話もすごく良かったし』
『私とトシくんみたいだから?』
『俺あんな相手役みたいに格好よくない』
『妬いてんの〜??そうかな?私はトシ君の方が好きだよ。トシ君、大好き🖤🖤』
『なに急に?』
『いいじゃんwちょっと明日からフランスに映画の宣伝行かなきゃなんだけど、それ終わったらまた休み取れそうなんだ』
『へえー』
『取れそうなんだ!!発表もその辺りにしようかなって考えてるんだけどね』
『うん、かまわないよ。アキ姉ちゃん』
『ちょっとお姉ちゃんはもうやめようよ。違うんだし。』
『姉さん女房?』
『バカ。もう知らない。』
林 明穂の本名は小林明代だということを俺は知っている。そんな本名なんてネットでもどこでも探せば転がっているだろうって?そうだな。そりゃ、そうだ。
しかし、小林明代が数日前にひっそりと田村明代になったこと。これはまだ僕と彼女と僕達の両親以外には、あまり知られていない真実だ。
完
カルチューン・C・ラブ
2020-06-15 13:50:48 +0000 UTC