【第十一話・エピローグ】
―冬―
ジューダス事務所、本社ビル。
7番会議室【シュウ☆ゾー・ルームっ】。
この部屋には今、シュウ☆ゾー君と、事務所の社長であるジュダさん、僕の兄さんのカイ、そして僕(リクだよ)がいる。
シュウ☆ゾー君の過去の話……その出来事を全て聞いたあと、兄さんと僕はとても大事な事を話してくれたシュウ☆ゾー君に感謝を伝えた。もちろん複雑な気持ちでいっぱいだった……だけど、真実を語ってくれたシュウ☆ゾー君の気持ちに応えたかったから。
けれどどうしても、僕はシュウ☆ゾー君に聞きたい、いや、聞かなければならない事があったんだ。
『打ち合わせの途中だったかな、シュウ☆ゾー?
今日もDoしてるかい?ツインズ達』
ジュダさんは見た目や言動はちょっと不思議だけど、いつも気さくに話しかけてくれる。所属アイドル達からの信頼も厚い、理想的な事務所社長だ。
「やあジュダさん。ツインズ達に、ボクの……昔話をしていたところさ☆」
シュウ☆ゾー君とジュダさんは普段からとても仲が良い。
その理由も……今なら判る。
「もうすぐ始まる夢銀河デスティニー☆ツアーに向けて、ねっ☆」
え??
「「夢銀河デスティニー☆ツアー??」」
兄さんと僕は思わずハモってしまう。もう次のツアーの話をするなんて、やっぱりシュウ☆ゾー君は常に夢銀河の先の、更にその先を見ている…………なんて、普段の僕なら感心するところだけど、この時は違ったんだ。
「そうさ、ボク達の目指すべきところ、夢☆運命の目的地。そこへのジャーニー☆支度は整った。これからボク達トライクロニカは新たな夢銀河☆ツアーへと旅立つのさっ☆ もちろん、夢銀河ツーリスト達と一緒にね☆」
「シュウ☆ゾー君! ひとつだけ聞かせてください」
僕は次のツアーの話よりも、どうしても聞きたい事があった。
たぶん兄さんも同じ気持ちだったとおもう。
「なんだい、リク?」
「シュウ☆ゾー君は……後悔していないんですか?」
「リク!」
僕のストレートな物言いに驚いたのか、兄さんがとっさに僕の肩を掴んだ。
だけど僕は止まらなかった。シュウ☆ゾー君が全てを話してくれたのだから、僕だって全てを……今思っている疑問を正直に伝えたい!
そう思ったからだ。
「本当は今でも、Amatelastの音楽を……アダムさん、イヴさん、ロムさん達と再びバンドをやりたいと願っているんじゃないですか?」
「ないよ」
シュウ☆ゾー君は僕の目をまっすぐ見つめながら、躊躇することなくそう答えた。
「シュウ☆ゾー君……」
「願っていないよ」
彼は自ら確認をするかのように、ゆっくりと優しく、もう一度そう答えた。
「シュウ☆ゾーくん………」
僕の肩を掴む兄さんの手から力が抜けていく。
不思議だった。
僕達はシュウ☆ゾー君の口から「後悔はある」と聞きたかったのだろうか?正直判らない……Amatelastの、残されたメンバー達への想いを今も胸に抱いていて欲しかったのか?それとも、彼らの事より僕らの事を考えていると、そう解釈して喜ぶべきだったのか?どうしても聞きたい事だったはずなのに、あっさりとシュウ☆ゾー君は答えてくれて。
僕は……判らなくなってしまった、自分の気持ちが。
シュウ☆ゾー君は、そんな僕と兄さん(たぶん僕達はすごく困惑した表情をしてしまっていたとおもう)を見つめながら、優しく……とても優しく語り始めたんだ。
「リク、カイ。聞いてくれるかい?
ボクはね、こう思うんだ。世の中にはどんなに願っても叶わない夢だってある。自分ひとりだけの力ではね。けれど、自分以外の誰かとだったら?その誰かと一緒にだったら?ミューモンには無限の可能性と、それぞれの夢がある。だったらボクは、みんなの夢を……夢へと至る銀河に架け橋を渡す、それがボクの役目なのかもしれない。
ボクがアイドルになったのはね、夢の架け橋になりたかったからなのさ。
ボクが流星のように、銀河に夢の架け橋を紡いでいくことで、全てのミューモンの夢が無限に輝く。その夢達の中からひょっとしたら、とびっきりのイチバン星が生まれることだってあるかもしれない。
キミ達ツインズのようにね。
ミューモンはひとりじゃ生きられない。ひとりぼっちはとても寂しくて、哀しいからね……。
ボクらの命そのものである音楽は、ひとりで創ることだってできるけど……誰かと共に創り、誰かと共に紡ぎ、誰かと共に歌い、誰かと共に奏で、誰かと共に聞き、誰かと共に高め合う。そうすることで、よりいっそう輝く。音楽ってステキだよね、だからボクは音楽が大スキなのさ☆
その気持ちはずっと変わらない。これまでも、これからも、永遠にね。
……本当はね、ずっと誰にも……そう。キミ達ツインズにも話すつもりはなかったんだ。ボクの過去を話してしまったら、2人は離れていってしまうんじゃないか……そう思ったら怖くて、とても怖くて。いままで言い出す事ができなかった。
けどね、ボクの本当の事を話して、それでもボクに付いてきてくれるのなら……
いや、違うね。2人がボクと並び立ちトライクロニカを続けてくれるのなら、ボクには怖いものなんて何もない。その時こそ、ボクの夢は現実になる。約束を果たすことができる。そう思ったのさ。
カイ。リク。いつも独りよがりでワガママなボクで、ごめんね。
こんなボクだけど、
これからもトライクロニカとして、
仲間として、共に音楽を続けてくれるかい?
これはボクからキミ達2人への、告白だよ……☆」
「シュウ☆ゾー君……」
「シュウ☆ゾーくん……っ」
兄さんと僕は、溢れる涙をこぼすまいと必死に耐えながら、シュウ☆ゾー君の顔をみつめていた。
初めてかもしれない。その時のシュウ☆ゾー君の表情は……とても不安げで。
僕よりずっと年上のシュウ☆ゾー君だけど。その時だけは、初めてジューダスに入所してきた新人アイドル候補生の、あどけない少年のようだった。不安と希望が入り混じった、そして少しの照れくささもあるような。
あの時のシュウ☆ゾー君の表情を、僕達は一生忘れないだろう。
兄さんと僕だけが見た、宝物のような……真実の表情を。
そして僕は溢れそうな涙を引き続き必死にこらえながら、兄さんはもうボタボタと大量に涙をこぼしながら(兄さんは僕よりも代謝が良いから涙の量も多かったんだと思う)、兄さんと僕はこう答えたんだ。
「「はい!!シュウ☆ゾー君(くん)!!」」
「ありがとう……カイ、リク」
シュウ☆ゾー君はそう言って、とびっきりバツグンでちょっとかわいさもある(僕の口から彼をかわいいだなんて、とてもおこがましいけど、その時だけはそう思った)最大級のビンビン☆スマイルを見せてくれた。
それまで窓の外を見ていたジュダさんは、何も言わず1枚の書類だけをデスクに置き、7番会議室から去っていった。その書類には、ツアーの概要がびっしりと書かれていた。
それから僕達トライクロニカの3人は、次のツアーに向けての打ち合わせに夢中だった。気づけば次の仕事への移動時間ギリギリで。7番会議室を出た後、屋上にあるヘリポートへ颯爽と駆け上がり、シュウ☆ゾー君のプライベート☆夢コプターで現場へ向かったんだ。
僕達3人の夢銀河☆トークは、現場に到着するまで一瞬も途切れる事はなかった。
★★★★ ☆☆☆ ★★
―それから何度目かの、春―
【夢銀河デスティニー☆ツアー・シリーズ-夢君色☆HEAVEN-】最終日。
「さあイこうかっ☆ カイ、リク☆」
「「はい!!シュウ☆ゾー君(くん)!!」」
僕達トライクロニカは光輝くステージへと向かう。
そこで待つのはたくさんの夢銀河ツーリスト達はもちろん、音楽が大好きな全宇宙のミューモン達。
そして…………☆
※最後までご愛読ありがとうございました!感想コメントをお待ちしています!このあと、作者あとがきがあります。そ〜ゆ〜の読みたくないな〜ってロッカーさんはスッ飛ばしてくださいね☆
【あとがき】
月刊SHOW BY ROCK!!をご覧のみなさん、こんにちは!
10ヶ月に渡る連載に、最後までお付き合いいただきありがとうございました!
リクくんの多大な夢銀河☆力(ぢから)を借りる事で無事に完結まで辿り着く事ができ、今はハッとしてホッとした気持ちで、夢銀河☆ホットミルク・いちご味をグビグビ飲みながらこの文章を書いています。
今回のEpisode of Amatelastの物語ですが、様々な理由によりまとまった形でお届けできる機会が中々無く、どこかで書ききらないと一生みなさんにお届けできるチャンスがないかも?と、ある日の雨の道玄坂☆路地裏で思い立ちました。そして、当時まだ企画段階だった【月刊SHOW BY ROCK!!】のイチ・コンテンツ「短編小説」として提案し、執筆に挑戦させていただきました。たぶん多くの方が今さら遅いよ、Sinを償わせてやる、故にレジェンド・オブ・何故今アマテラ?と感じられた事と思います。お届けするのがこんなに遅くなってしまってごめんなさい。本職の物書きの方が書くステキな文芸作品と比べたら、至らない部分もたくさんあったと思います、力不足でごめんなさい。ですが長年の謎だった部分は、いろいろクリアにできたのかなと思います。この短編小説を書くにあたり、ベースとなったプロットがあります。それは、初代音ゲーアプリでたぶん初めてのイベント限定ブロマイド「追憶の衝動!シュウ」様(かわいいミニキャラの絵ですよ★)が登場するよりも前から、なんとな〜〜く構想がはじまり、TVアニメ1期の企画が始まった頃には、愁・ロム・アダム・イヴ、彼らの物語が私の脳内ではなんとな〜〜く大枠だけ(各シーンが脳内小宇宙に点在するみたいなかんじです)出来上がっていました。そこから数年間のあいだに、様々なお仕事を通じての経験や、様々な現場で出会った方々から受けた学びや、様々な作品を共創させていただいた体験などから、少しずつ肉付けをしていき、プロット(ストーリーのざっくりとした原案みたいなもの)という形で一旦脳内イメージを文書としてまとめたのがたぶん2020年頃です。そのプロットを元に小説とは別の形で世に出したいという個人的な夢もありましたが、残念ながら様々な状況の変化や色々な事情によりその夢は実現できていません。ですが、文章と挿絵のみで構成されデジタル媒体で展開する短編小説という形で表現したからこそ、尺や予算や人やスケジュールなどなど……様々な制約に縛られる事無く、プロットを膨らませる形で書きたいエピソードを自由に書く事ができました。愁とロムとアダムとイヴ。作中の現在ではそれぞれの道を歩み既にア○サー????の彼ら4人も、Amatelast時代は青春していたんだよね、楽しかったんだよね、輝いていたんだよね、バカ言い合える仲間ってイイよね、というAmatelastの日常部分をみなさんにお届けできた事を、何よりも嬉しく思っています。書いていてイチバン楽しかったのは海回(深夜ドライブ&相撲☆)と激辛麻婆豆腐のシーンです。
これからもトライクロニカ、シンガンクリムゾンズ、défendu aube、そして全宇宙の全てのバンド達み〜んなに、栄光あれ!と願っています。
そしてリクくん、貴方がいてくれたからこそ、この短編小説が成立しました(小説化にあたり誰目線で書くかの部分がイチバン悩みました)。ホントにほんとにとってもサンキュっ☆
最後に、これまでSHOW BY ROCK!!に関わってくださった全てのショウバイロッカーのみなさん、スタッフのみなさん、関係者のみなさんに厚くお礼申し上げます。SHOW BY ROCK!!の世界はこれからも終わることなく続いていきます。
引き続きの応援を何卒宜しくお願い申し上げます。
みなさんの未来がこれからもRock!!で輝きに満ちた世界でありますように☆
2022年12月 SHOW BY ROCK!!の中のデザイナー(●´ω`●)♪
★おまけ「追憶の衝動!シュウ」様ブロマイドの当時のお姿をパシャリ★
©2022 SANRIO CO., LTD. SHOWBYROCK!!製作委員会M
劇団kabrock
2022-12-21 05:23:17 +0000 UTC