NokiMo
ジェニファー
ジェニファー

fanbox


G.O.E~第23話#3【聖なる夜の案内人】~

勝手も知らぬ建物の中を、育也と奏多は全力で走る。 どれだけ角を曲がっても、通路が途切れることはない。 あてもなく行動することがこれほどに怖いと感じたことはない。 それでも、もといた部屋から離れなければいけなかった。 蒼汰が身を挺して逃がしてくれたのだ。 この犠牲を無駄にするわけにはいかない。 もう何度目か分からない角を曲がった時、ついに今までとは違う光景が目に入った。 一つの扉が突き当り、丁字路に分かれている通路の中央にあったのだ。 「扉だ…ッ」 奏多が噛みしめるように呟き、育也は何も言わず頷いた。 「行こう」 走り出し、武器を構える。 万が一敵がいれば一気に攻撃を仕掛ける。 アウェイな場所にいる自分たちには、とにかく先に動くことが求められる。待っていては相手の思うつぼになってしまう。 扉を勢いよく蹴破る。 金具が軋む音が轟き、直後に静寂に包まれる。 そこは先ほどの部屋とは明らかに違った。 辺り一面クリスマスツリーが置かれていた。 丁寧に装飾まで施されたものがいくつもだ。 二人はこの異様な光景に呆気にとられたが、それだけでは終わらなかった。 素早く動いた人影が、ツリーの間に見えたのだ。 二人は身構え、慎重に歩みを進める。 クリスマスツリーの高さは育也の目線とほぼ変わらない。 つまり180センチはあるということだ。 視界の悪さに加え、そこら中に敷き詰められるように置いてあれば嫌でも動きが制限されてしまう。 それでもこの部屋を出ようとしないのは、ツリーのはるか向こう側。 扉が僅かに見えたからだった。 後戻りするよりも、先に進む方がここから脱出できる可能性が高いと感じたのだ。 二人は目を合わせ、お互いの意思が同じであることを確認して、この空間にいる何者かの対処を始めた、というわけだ。 「あっ」 聞こえた声は先ほどの怪人とは違う。 若い男、ということしか想像では分からない。 声のした方へ向かうと、うずくまってこちらを見る二人の男がいた。 一人はワイシャツを着た、奏多と同じくらいの歳の少年。 下に履いているズボンから察するに、おそらく制服姿なのだろう。上着はどこかに落としたのかもしれない。 程よく焼けた肌と、適度に整った短髪。ワイシャツの上からでも腕の筋肉がある程度確認できる。 そしてもう一人は灰色のタートルネックを着た、こちらは育也と年が近そうな青年だった。 右耳に輝くピアス、無造作に見えてしっかり整えられた髪。 おそらくクリスマスデートに向けて準備したのだろうが、不幸な事にこんな事態に巻き込まれてしまうとは…。 「えっと、あなたたちは?」 育也が聞くと、タートルネックの方が恐る恐る口を開いた。 「あんたたち…あのサンタの格好した男の仲間か?」 「え、違うよ」 奏多がすぐに否定する。 青年が言うのが、あの怪人の事だというのはすぐに理解できた。 「ここに連れてこられたんですか?」 「そうだよ。気が付いたらこんな所に」 「あなた達だけですか?」 「他にもたくさん男の人がいた。でも、急に悲鳴が聞こえて、慌てて逃げ出したんだ。この子が後ろにいたから一緒に逃げて、ここに隠れてた」 ワイシャツの少年は不安そうな視線を育也たちに向ける。 「他の人たちは?」 「分からない。何が起きたかは見てないんだ。ただやばいと思って逃げたから」 「そうですか…」 「そうだ、二人の名前は?」 奏多が聞くと、二人は不安そうにしながらも名前を教えてくれた。 ワイシャツの方がカケル、タートルネックの方がユウリ、と言うらしい。 「あの……二人は、何でそんな恰好を?」 カケルに聞かれて、二人は思わずお互いを見た。 改めて自分たちの格好を気にしてみると、確かに普通の人たちから見たらおかしく映るかもしれない。 いわば遊園地のショーや、日曜の朝のテレビの中にいるようなスーツを着ているわけだから。 「僕たちは二人が見たサンタの格好をした怪人と戦っているんです。でも今は仲間がやられて、とりあえずこの建物から脱出しようと思ってて」 「脱出?」 「どこか外に通じる出口とか見てないですか?」 「俺は見てない」 ユウリが首を振るが、カケルは違った。 「俺、その…怪人? とかいうのが外から入ってくるの見たよ。間違いない。確かに外が見えた」 「本当? そこまでの道覚えてる?」 奏多が聞くと、カケルは微妙な表情で首を傾げた。 「うーん、必死に走ってたから…多分、行けるかな?」 「それでもいい。闇雲に走るよりもずっといいよ。ね、育也くん?」 「うん……。それよりカケル君。怪人が来たのを見たってことは、男の人たちが何をされたか見たんだよね?」 「え…。うん、見たよ」 でも、とカケルは言葉を紡ぐ。 「何をされてるかは分からなかった。突然上からプレゼントの箱が落ちてきて、それに皆捕まったんだ。中にいる人たちが急に声をあげて、それで皆パニックになって…」 「なるほどね。ありがとう、嫌な事を思い出させちゃったね」 プレゼントの箱が落ちてくる。 先ほどは見なかった攻撃だ。 やはりあの怪人は、まだすべての力を見せたわけではないのだ。 「ユウリ君はどうする? ついてくる?」 育也に聞かれ、しばらく考え込んでいたユウリだったが、諦めたようにため息をついた。 「どうせここにいたって捕まるのは時間の問題だろ。俺も行くよ」 「よし。僕たちから絶対に離れないで。もし怪人が現れたら、すぐに逃げて」 「分かった……」 いきなり怪人だなんだと言われて、普通だったら訳が分からず素直に受け入れるのは難しそうなものだが、二人は既に異様な光景を見てしまっているのだ。 だから育也と奏多の突飛な格好も、おかしな説明も受け入れるしかないのだ。 それでも今はこの二人についていった方が良い。 本能がそう告げている。 そう思わせるのも、育也と奏多がヒーローとして選ばれたその本質に由来するのかもしれない。二人の纏う空気が、自然と人を安心させ、頼りにさせるのだろう。 育也たちが入ってきた扉とは反対の方から出て、カケルとユウリの案内で通路を進む。 先ほどと比べれば随分ペースは落ちたが、確実にカケルとユウリが協力して記憶を手繰り寄せ正しい道を進んでいる。 僅かに周囲の温度が下がってきているような気がする。 確かに外に近づいてきたのかもしれない。 「確か…この先を曲がれば」 カケルが足早に先へ進む。 後を追うと、四人はようやく目的の場所へとたどり着いた。 そこは構造的におそらくエントランスだった。 育也たちの左右から階段が下へと弧を描いて伸びており、先ほどの部屋とまではいかないが、階下には多くのクリスマスツリーが置いてある。 四人は周囲を警戒しながら、ゆっくり階段を降りていく。 足音を立てない様にそっと動き、階下までたどりつく。 上から見た時は気づかなかったが、ツリーの中には装飾されていないモノもあった。 装飾があるのとないの……一体どういう違いがあるのかは分からないが、ここの雰囲気と相まって気味が悪く見える。 「あの扉、あそこから外に出れるはず」 ショウが指さした先には、木製の分厚い両扉があった。 風の音が聞こえ、僅かに揺れている。 確かにあの扉の向こうは、外に通じているようだ。 「よし、すぐにーーッ」 一歩踏み出した足。 直後、足元が巨大な黒に覆われた。 上を見た瞬間、ドサッという音と共に辺りが暗闇に包まれた。 ショウから聞いていた攻撃…プレゼントの箱に囚われてしまったようだった。 「うわ、これは…ッ!」 奏多の声が聞こえ、育也は構えた。 「奏多くん! 壊して外に出るよ!」 「分かった!」 銃弾を放つと、意外にも箱は簡単に壊れた。 それもそのはず。あくまで自分たちを閉じ込めていたのはプレゼントの箱。ただの紙であるはずなのだ。 銃弾が穴をあけ、奏多がそこをハンマーで強引にこじ開ける。 すぐさま外に飛び出ると、二人の後ろにいたショウとユウリは未だ箱に囚われていたままだった。 「助けて!」 手前にあった箱からカケルの声が聞こえた。 内側から叩いているのか、前面が揺れている。 「育也くん、助けないと!」 「分かってる。けど…ッ」 銃口を向けるが、すぐには引き金を引けなかった。 カケルがどこに立っているのか分からないのだ。下手に撃てば当たってしまう。 逡巡し、育也は面の右端に銃弾を放った。 わざわざそこに立つことはないだろうと勘で放ったが、悲鳴も何も聞こえないから大丈夫だったのだろう。 すかさず奏多が穴を広げると、倒れ込むようにカケルが現れた。 床をはいずり奏多の足元まで這い出ると振り返った。 カケルを閉じ込めていた箱は溶けるように消えていく。 閉じ込めていた材質からは想像もできない光景だが、今更怪人の為すことに説明を求めることはない。 ユウリも助け出そうと構えた二人だったが、一足遅かったようだった。 箱が溶けてなくなり、最初に見えたのは見えたのは灰色のタートルネック。 しかし胴体の膨らみは普通のそれではなかった。 手足が収まっていたはずの部分は破れ、黄色く煌めく何かが見えていた。 手足の先は尖っており、頭部は未だ滑らかな形状を保っていたが、縦に細く伸び始めている。 そのまま膨張は止まらず、生地の破ける音が静かな空間に響く。 「ちょ、何が起きてるの?」 「…わからない」 ユウリだったころの面影はなくなり、そこにできたのは巨大な星だった。 それはクリスマスツリーの装飾でよく見るものによく似ていた。 ツリーの頂点によく置かれているアレだ。 膨張はいつの間にか止まり、今度は縮み始める。 それは急速に小さくなっていくと、手のひらに乗るサイズにまでなってしまった。 その光景を、三人は黙って見ていることしかできない。 あの箱の中で何が起きた? ほんの少し閉じ込められただけで、ユウリはあの星に変わってしまった。 もし自分たちも脱出せずにあのままだったら……。 育也は寒気を感じた。そしてもう一つの可能性に気づく。 今までに見た大量のクリスマスツリー。 それについていた飾りはすべて…変えられてしまった人たちなのではないか、と。 「よくできてるだろ?」 上階から聞こえた声に慌てて視線を向ける。 そこにはあのサンタ怪人が余裕な笑みを張り付けて佇んでいた。 階段をゆっくりと降りながら、その視線はしっかり三人に向けられている。歪んだ口元から覗く歯が、いやに不気味に感じられる。 こめかみを伝う汗の感触を、いやに強く意識した。 出口はすぐそこにあるというに、育也は壁際まで追い詰められているような切迫感を味わっていた。 「あの箱に人間を閉じ込めて、ツリーの飾りにしていたんだ。大勢の人間を保存しとくには、小さくするのが一番だからな」 「…育也くんッ!」 その声で育也は我に返った。 荒れる呼吸を何とか整え、強く怪人を見返す。 「別に姿が変わるまで閉じ込めておく必要はないんだ。箱の中にいた方が変化が早いだけで」 三人の前に仁王立ちになり、腕をくむ怪人。 顎を上げ、見下ろすように育也たちを睨みつける。 「一度あの箱に入ってしまえば、もう終わりなのさ」 「う、うわぁ…ッ!?」 怪人の言葉を合図にしたように、カケルが突然声を上げた。 見てみれば、その腹部が大きく丸く膨らみ始めていた。 ワイシャツがパツパツに膨れていき、隙間からは肌色が見える。 「な、なにこれぇっ! いや、助けて!」 大きく丸く膨らむ腹を両手で抑え、涙目で育也たちを見るカケル。 しかし、こうなってしまってはどうすることもできないのだ。 動こうにも動けない2人。 その間にもカケルのお腹はどんどん大きくなっていく。 「やだぁ、いやだぁ…ッ」 首筋に僅かな違和感を感じ、育也は目を向けた。 肌色の中にシミのように青色が浮かびあがっていたのだ。 それは徐々に広がり始め、顔…ついには全身をも染めていく。 腹部だけであった膨張は、気付けば全身を均等に膨らませていた。 ボタンが弾け、チャックが開く音が聞こえた。ベルトがついに限界を迎え、大きな音を立てて金具を飛ばす。 衣服はもうその役割を果たせず、大きな布切れとなって床へ落ちる。 全身青一色に染まったカケルは頬を膨らませ、ひょっとこのように口を突き出し、その目は焦点が定まっていなかった。 「んんぅぅ…ッ、ぶふぅぅ…ッ」 とても滑らかな形状だった。 一面には凹凸一つなく、ツヤツヤと煌めく球体がそこに出来上がっていた。 頭が飲み込まれ、苦しむ声が聞こえなくなると、ようやく膨張は止まった。 そして先ほどと同じように急速に縮み始める。 …手のひらサイズのオーナメントが、床に空しく転がっていた。 怪人はそれを拾うと、懐にしまった。 育也たちを見てニヤリと笑う。 「お前たちだって中にいたんだぜ。すぐに脱出してからなのか、ヒーロー故に耐性があるのかは知らねえが、ゆっくりと…俺の力はお前たちを蝕んでるぜ」 カケルとユウリを助けられなかった。 これほど自分達に不甲斐なさを感じることはないだろう。 だか意気消沈している時間は2人にはなかった。 怪人の言う通り、時期に自分達もああなってしまうのだろう。 「…どうしよう、このままじゃ」 「戦うしかない。ここで勝たなきゃ、全部無駄になる」 「勝つ? ここでか? この屋敷の中では俺様の力からは逃れられない。お前たちのスーツもあの赤いやつみたいに破いてやるよ」 「…いま、なんて?」 奏多が信じられない、といった表情で呟いた。 「お前たちを逃した赤いやつな。スーツは壊れないとか言っときながら、簡単に破れたぜ。今頃お仲間と楽しくやってんじゃねえか?」 スーツが破られた? そんな、このスーツが壊されるなんて…一体どうして…。 そして、育也はある一つの可能性を思いつく。何故スーツが破られたか、そして先ほどの怪人の発言。 確かに今は絶対絶命の状況であることに変わりはない。 だが、勝ち目がないわけではない…のかもしれない。 出口はすぐそこにある。 そこまで、いければーーッ ・ ・ ・ ・ ・ 小さな勝ち筋の光に気づいた瞬間、自分の体に違和感を覚えた。 筋肉が痙攣しているような、不思議な感覚。 それは前兆だった。 そして変化は、カケル君と同じように腹部から始まった。 「うぅ……がぁ…ッ」 ぴったりと体に張り付いていた緑のスーツが、ゆるやかに膨らみ始めた。 「あ、そんな…ッ」 呼吸が苦しいような気がする。 鍛えたはずの腹筋は綺麗に消えてなくなり、腹の表面は歪みひとつなく、綺麗な曲面を作り出している。 …そしてこれもスーツを着ている弊害だ。 股間に収まっているイチモツが勃起していく過程さえも隠さず怪人に見せつけてしまう。 「おぉ…スーツを着たままってのもエロくておつだなぁ」 と、怪人は何度も頷く。 「育也くん…まずいよ、このままじゃッ」 「わかってる…ッ」 隣の奏多くんの体も、同じように変化していた。 腹は僅かに膨らみ、股間には大きくテントが張っている。 幸いな事に、ユウリ君やカケル君ほどの速度では変化していない。あの箱に入っていたのがかなり短時間だったからだろう。 それでも確実に体は大きく、膨らんでいる。 このままではクリスマスツリーの飾りになって終わりだ。 ……それまでに、何とか奏多くんだけでもここから。 ・ ビールっ腹のように突き出たスーツの腹部は重い。 普通通りに動こうと思っても、どうしても邪魔に感じてしまう。 自分の体だというのに…。 「お、なんだ、やる気か?」 それに股間の昂ぶりも動きを止める一因になっている。 濡れた亀頭がスーツと擦れ、ほんの少し動いただけで意識が持っていかれそうになる。 これではまともに動けない。 スーツに浮かび上がる黒いシミ。 それはどんどん広がっていく。 「ほら、どうした? このままじゃお前らも丸くなって終わりだぞ」 怪人が一歩ずつ、足音をわざとらしく轟かせながら近づいてくる。 「…ぐッ、んんぅ……」 逃げなきゃいけないのに、体が言うことを聞かない。 気持ち良さと、苦しさと…全部がごっちゃになって訳が分からなくなる。 「…ッ! 育也くん!」 両膝をついた僕の側に、奏多くんが駆け寄ってくる。 しゃがんで、覗き込むように僕の顔を見る。 全身の筋肉が痙攣して、動けない。 何とか目だけを彼に向けた。 この間も膨らみ続ける腹。 いや、感覚で分かる。他の場所も徐々に膨れてきている。 奏多くんの体の変化は…僕ほどじゃない。 腹は出ているがまだ動けそうだ。 「立って、逃げないと!」 「……うん、わかってる」 何とか片膝をつく。 その衝撃でイチモツが震える。 溢れ出す我慢汁の量が増し、視界に火花が散る。 その瞬間に理解した。 ……だめだ、僕はもう動けない。 「奏多くん…」 「なにッ?」 「……君だけでいいから、ここから出るんだ」 「え、何いって…ッ」 「いいから、お願いッ!」 「何をごちゃごちゃ言ってやがる!」 怪人が両手を上に向け、勢いよくこちらに振り下ろす。 どこからともなく吹き出した風が、大量の雪を伴って襲いかかる。 「やばいッ」 奏多くんが咄嗟に身構える。 最後の力を振り絞って、右手を前に伸ばす。 緑のバリアが狭い範囲だが展開される。 …一人くらいなら、守れる大きさだ。 「走って…」 「え?」 「扉まで走って、外に出るんだ! 外に出ればきっと体の変化も止まるはずだから…ッ」 「なんで、そんなこと育也くんに分かるの?」 「いいから! 早く行けッ!」 分かんないよ。 確証なんかないんだ。 でも、これに賭けなきゃ僕たちは負けるんだ。 「頼む…奏多ッ」 「……分かったよ」 立ち上がり、後ずさる奏多くん。 僕が作り出したバリアから外れないルートを…扉へと続く一直線の道を進み始める。 「んふぅ……くそぉッ…」 丸く膨らんだ腹を片手で支えながら、奏多くんは入り口に向かってひた走る。 「逃がすかッ!」 怪人が後を追おうと一歩踏み出す。 その足元に、銃弾が一発。 怪人は動きを止めて、僕を恨めしそうに睨みつけた。 「てめぇ…ッ!」 「動くな。お前はそこに…んっぷッ……いろぉ…」 膨れ上がる腹に体は耐え切れず、ついに尻もちをついてしまった。 スーツが際限なく膨らんでいく。 もう変身が解除されていてもいいはずなのに、その様子はいつまでたっても変わらない。 まさか、本当にスーツの強制解除機能が働いていないのか…。 「あーあ、お前のせいで間に合わないじゃねえか」 手足が飲み込まれていく。 大きな球体となりつつある僕の側に立ち、怪人は無愛想に呟いた。 ビリっと聞きたくない音が聞こえた。 どこかが破れてしまったようだ。しかし、こんな姿になってしまってはそれがどこかさえ分からない。 「はぁ……しゃーねえ、お前で遊ぶとするか。おい、お前ら!」 怪人が振り返って、上階に向かって声を張り上げる。 何とか視線だけそちらに向ければ、そこには見慣れた仲間の姿があった。 ほぼ全裸の格好の蓮くんと涼くん。 そして、引き裂かれた赤いスーツを身に纏った蒼汰くんだ。 マスクは剥がされており、素顔が晒されている。 その顔は夢うつつなのか、呆けたように笑みを浮かべている。 蓮くん達に支えられるようにして階段を降りてくると、僕の目の前までやってきて止まった。 「みんなに…ぅぅ…ッ、何を…ッ」 「今更聞いてどうすんだよあほが。そろそろそのスーツも限界だろ?」 「んんぅぅッ!?」 それはあまりにも突然の出来事だった。 すぐそばで、スーツが裂ける音が聞こえた。 いくつにも別れた緑の破片が、ハラハラと床へと落ちていく。 全裸になった僕の体は所々が緑色に染まっていた。 僅かに残っている肌色だけが、僕が人であるという証であるはずなのに、それすらも緑は徐々に侵食していく。 「あーぁ。もうお前じゃ見れないよな? この元気に濡れたおちんぽはよぉ」 「んんッ!?」 自分の股間がどこなのか、この体の感覚ではもう分からなかったが、怪人が何かしたのかひと際熱く脈打つモノを感じた。 僕を見上げる蒼汰くん達の視線が辛い。 以前、怪人の攻撃で巨大な風船にされたことはあったが、僕一人だけがあの時のような姿になり、それをみんなに見られているのはあまりにも屈辱的だ。 「大きくなるとこっちも元気になるなぁ。弄りたいだろ?」 ひょっこりと顔を覗かせるように僕を見上げる怪人。 せめてもの反抗として、何も言わずに目をそらす。 「素直じゃないねぇ。しゃーねえ。お前ら、出番だ」 その一言を皮切りに、物言わぬ人形のように立ち尽くしていた蒼汰くんたちが動き出した。 鈍い動きで僕に近づいてくる。 僕の視界ギリギリ、真下にやってきた3人はモゾモゾと動いているが、何をしているかまでは分からない。 「な…なにを…ッ」 「なぁーに、気持ち良くしてやるってんだよ」 「んぅ…ッ、ぁ…」 頬が膨れて上手く話せない。 何となくは分かる。 3人がいるのはさっき怪人が立っていた場所だ。 そこで僕がされたことを、忘れるわけがない。 「あぁッ!?」 ソコに触れられた瞬間、意識が飛びそうになるほどの衝撃を感じた。 今なら分かる。 ダラダラと涎を垂らし、喜んでカリ首を跳ねさせている自分のイチモツの姿が、容易く想像できる。 そして3人はそれを一緒に、イヤらしく弄んでいるんだ。 「これが見えないなんて可哀想だなぁ。せっかくだから説明してやろうかぁ」 僕の視界に映るところまで怪人は移動すると、にやにやとゲスい笑みを浮かべていた。 水っぽい粘着質な音が下の方から聞こえてきて、それと同時に痺れるような気持ち良さがじんわりと、染みるように全身に広がっていく。 「三人が舌を出して、お前のいきりたったチンコをぺろぺろと舐めてるぞ。竿の両側、亀頭の先っちょ。穴から漏れてくる汁を一滴漏らさず舐めとってるぜ」 「やめろ…ッ…んふッ」 「おぉ、赤い奴が亀頭を口にいれて吸い始めたぞ。お前の我慢汁は相当うまいんだなぁ、えぇ?」 ジュボジュボと吸い込む音が…やけに響く。 意識が飛びそうになるほどの強い快楽が、とめどなく溢れて止まらない。 体が膨張しているのかどうかさえ分からないのに、それでもこの感覚だけは変わらない。 頭が真っ白になる。 視界が一瞬暗転して、情けない喘ぎ声が口から漏れる。 「んほぉぉ……ッ、あぁぁ///」 「おわぁ、すっげぇ…赤い奴は大変そうだ。お前のチンコが口の中でビクンビクン跳ねて、サイズは普通なのにしゃぶるのがめちゃくちゃ大変そうだ」 全身を蝕む快楽に当てられて、意識が混濁とする。 無様な姿で凌辱されているこんな状況だというのに、もっと快楽を求めている自分がいる。 怪人の実況が、それに拍車をかける。 理性が溶けるように消えてなくなっていく。 自分のチンコを、皆がどんな風に舐めまわしているのか。 蒼汰くんがどんな表情でしゃぶっているのか。 想像してしまうと、にやついてしまうのを止められない。 もっと気持ちよくしてほしい。 もっとどんな風になっているのか、怪人に教えてほしいとすら思ってしまう。 「うッ…んほ…ッ、んんぅ///、もっと…ぉ」 「なんだって?」 あぁ…聞こえているくせに…ッ。 焦らさないで。 もう僕には、時間がないのに…。 「赤い奴の口はべちゃべちゃだ。お前のカウパーなのか、あいつのよだれなのかもう分かんねえな」 なぁ? と怪人は僕を見る。 「お前は今どんな気持ちなんだ? 仲間の口で気持ちよくなって、その口をてめえのちんこから出る液体で汚してんだぜ? どんな気分なんだよ、教えてくれよ!」 「んんッ! んおぉ///、うほぉぉ…ッ」 股間に感じる熱がより一層高まる。 肉が膨らむのが何となくわかった。 何度も味わったこの感覚。 どれだけ強がったって…。 どれだけ理性を保とうとしたって…。 この瞬間だけは どんなに強く美しく、紳士的で逞しいオスでさえも 「んおッ…いッ、いく…ぅ///」 一匹の下品な獣に成り下がる。 震えている。 分かる。 自分のイチモツが喜びに打ち震えている。 その鈴口から、温かい蒼汰くんの口の中へ 薄汚れた白濁液をぶちまけている。 止まらない。 何度何度も、その躍動が股間を迸って絶えることがない。 「おっほほ…すげえな、赤い奴の口からこぼれ出してるぜ。どんだけ出してんだよお前」 もう視界はまともに目の前の景色を認識しない。 白目を向き、喘ぐ僕の姿は…どれだけ無様で滑稽なのだろうか。 体が膨張している。 それでも射精は止まらない。 一瞬ひんやりとした感覚を覚え、そして誰かがイチモツを握りしめた。 「おわッ、お前三人の顔面にザーメンぶちまけてんぞ。見せてやりてえなぁ」 …あぁ。 僕が、三人の顔に? そんなことするわけないのに。 するわけないのにッ/// 想像してしまうと、チンコが痛いほどに張り詰める。 顔が飲み込まれる。 それでも射精は止まらない。 皆の顔を汚している罪悪感、背徳感。 普段なら味わう事のない感情が、僕の興奮に火をつける。 「んんッ///、お…ッ、おぁ///」 「まぁしばらくしたらまた元の姿に戻して、気持ちよくしてやるからよ」 こだまするように遠のく怪人の声。 声を出す間もなく、僕の意識はそこで途切れた。 ・ ・ ・ ・ ・ 怪人の足元には、小さな緑色のオーナメントが転がっていた。 それを拾い上げると、つまらなそうな視線を向ける。 「……」 何も言わずそれを後ろに放り投げると、蓮と涼は嬉しそうにそれを追いかけた。 蒼汰はその場に座り込み、育也の精液で汚れた顔を拭うこともせず、ぼーっと床を見つめている。 「後を追いかけるか…いや」 自分の力の種は割れてしまっているかもしれない。 育也が奏多だけを逃がしたことで、怪人はそう考えていた。 怪人が屋敷の外で扱える力は雪を降らせることだけだった。 袋に閉じ込めて奴隷化させる力、強風を巻き起こすこと、装飾品に変える力。 それだけに限らずだが、怪人がこの屋敷の中で最大限の力を発揮できるのはここが瘴気で作られた異空間だからだ。 つまり、奏多が脱出した扉の外と、この屋敷内は別空間なのだ。 そしてそれは、蒼汰たちのスーツの強制解除機能が作動しなかったことと関係がある。 あくまでスーツの強制解除は同じ空間内に存在する場合にのみ発動するもの。空間として別次元への転送はできない。 そのため蒼汰と育也のスーツは転送されず、破壊されてしまったのだ。 もう充分男たちは集めた。 ヒーロー四人も手中に収めた。 後を追うよりも、できるだけ集めた男たちからエナジーを集めることが最重要事項だと、怪人は認識した。 それが彼の仕事なのだ。 ウィルの為に、彼がなすべきことは最初から、一つだけだ。 ・ ・ ・ 足を大きくМ字に開き、苦しそうに顔を歪めている涼。 歯を食いしばり、全身に力を込めて首筋をのけぞらせる。 「んんぅッ!!」 ひと際大きく声を漏らしたかと思うと、露わになったケツの穴から緑色のオーナメントが吐き出された。 淫液に汚れ、床をむなしく転がっていく。 それが仲間であったことなど気にせず、涼はただのおもちゃとしか認識していない。 「次は俺だ!」 オーナメントを手に取った蓮が、何の躊躇いもなくそれを自分のケツの穴にあてがう。 「あぁ///」 喘ぎ声を漏らしながらそれを飲み込み、ため息を漏らして天井を見上げる。 「おぉおぉ…相変わらずそれで遊ぶのが好きだなお前らは」 怪人が傍らに立ち二人の様子をつまらなそうに見ている。 その足元には白目を向き倒れている蒼汰がいる。 時折体が痙攣し、その腹は焼いた餅のように大きく膨らんでいる。 奏多が脱出してから丸一日が経過していた。 男たちのエナジーを集めるのは戦闘員たちに任せ、自分はこのエントランスで暇を過ごしていた。 もちろん暇な事が一番の理由ではない。 外の世界からこの屋敷に入れるのはあの両扉だけ。 ヒーローたちは必ず仲間や一般の人間を救出しに来る。 つまり、ここで待っていれば必ず出くわす。 この屋敷の中でなら、自分は負けない。 その絶対的自信が、怪人にこのような行動をとらせていた。 「いつ来る…? いつでも来い雑魚ヒーロー共が」 すぐにこいつらのように間抜けな姿にしてやる。 射貫くように両扉へ視線を注ぐ。 何の変哲もない扉だ。 それに違和感を感じたのはほんの一瞬だった。 わずかに膨らんだように見えた。 そう認識した直後、扉は爆発し吹き飛ばされた。 爆音が空間中に轟き、怪人は身構える。 見えたのは黄色いスーツだった。 「ふん。のこのこと一人……なに?」 最初に見えたのは黄色いスーツだけだった。 だがその背後に、オレンジと紫のスーツに身を包んだ二人が立っていた。 「なんだ、そいつらは?」 「偶然こっちに来てたら助けてくれって言われたもんでよ。悪く思うなよサンタさん。お前が悪さするからいけないんだぜ」 オレンジのスーツに身を包んだ六車祐希。 指先を怪人に向け、余裕そうに呟いた。 「さっさと助けよう。今回は犠牲者が多いから」 紫のスーツを着ているのは七海翔だ。 祐希とは反対に落ち着いた様子で、奥に立つ怪人を見据えている。 「二人とも気を付けて。あいつはこの中じゃ色んな力を使えるみたいなんだ」 「あぁ大丈夫。小細工させずに倒すから。圧倒的な力でな」 「え?」 「奏多くん、どいてくれる?」 翔の言う通り脇に移動する奏多。 祐希が右手を、翔が左手を怪人に向ける。 身を寄せるように近づいた二人。 その手に一筋の光が迸る。 バチバチと音を立てて、いくつもの電流が二人の腕を包み込む。 「なんだその力は…ッ」 「二人合わせて一つだ。俺らはな」 「悪いけど、もう終わりだよ」 二人の腕の一直線上に、蒼汰や蓮と涼はいない。 ……いるのは怪人だけだ。 「くそ、俺は…ここでは最強のはず、なのにッ!!」 「じゃあな」 祐希が呟く。 とたん二人の腕に留まっていた電撃が勢いよく放たれた。 大きな束となり、空間を突き進む電撃。 床を焦がし、空気を焼く。 凄まじい音を立てながら猛スピードで迫るソレをかわすほどの余裕は怪人にはなかった。 瞬く間に光に飲み込まれた怪人。 光が一瞬にして消え失せると、あとには何も残っていなかった。 ・ 怪人が消えれば、その力に影響を受けていた人間は元に戻る。 装飾品に変えられた人々、操られた者も。 「はぁ……んおッ!? き、きつい…ッ!?」 М字に開いた足が一気に硬直し、目を見開く蓮。 元に戻りかけていた影響で巨大化したオーナメントが勢いよく吐き出される。 大きく息を漏らす蓮。 その瞳に光が宿り、周囲の光景を認識し始める。 目の前には自分と同じような格好をした涼。 そばには腹が僅かに膨らんでいる全裸の蒼汰。 そして遠くを見れば、奏多とそして見慣れるスーツを着た二人。すぐにそれが祐希と翔だと理解するのと同時に、自分が何をしているのかも理解してしまった。 「ち、違う! これは……ッ」 三人から向けられる気まずそうな視線をその身に受けながら、蓮は股間を両手で隠した。


Related Creators