G.O.E~番外編6-1【絶対敗北!恐怖のカジノマスター】~
Added 2021-11-30 03:29:14 +0000 UTC人が溢れる場所には、自ずと喧騒が生まれる。 喜びによる笑い声や、恐怖による叫び声が、この場ーーカジノでは混在していた。 煌びやかな内装、豪華な装飾が施された設備、ポップで軽い曲がBGMとして喧騒の裏に流れている。 ディーラーがカードを配り、それをテーブルにつく人々が受け取る。 途端に1人の男が崩れ落ち、体を震わせて声を上げた。 「お客さま、周りの方の迷惑になりますので、大きな声を出すのはお控えください」 「ふざけんな! 俺をどうするつもりだ!」 「どう……面白いことをおっしゃられますね」 ディーラーが困惑していると、崩れ落ちた男の側に黒服に身を包んだ男が現れた。 柔和な笑みを浮かべながら膝を曲げ、男に顔を寄せる。 「負けたのだから、マスターのコレクションになっていただきます」 ハッとして男が黒服を見る。 「俺は……来たくて来たんじゃない! お前らが勝手に…ッ」 「それでも、一か八か賭けにのったのはあなたではないですか」 「だって、そうしなきゃ俺は……」 「ともかく、負けたあなたにもう選択肢はないんです」 そう言った次の瞬間には、敗北した男の着ていた衣服だけが床に落ちていた。 黒服は気にすることなくそれを漁り、その中から一枚のカードを取り出す。 そのカードには後ろ向きで膝立ちになり、ケツの穴を両手で広げ、情けない泣き顔をこちらに見せる……先ほどまで確かに目の前で服を着ていたはずの男の姿があった。 「ふん」 服を乱雑にかき集め黒服は立ち上がると、ディーラーに変わらぬ笑みを見せた。 「引き続きお楽しみください」 笑顔を客たちにも向け、その場を離れていく。 対照的に、客たちの中に笑顔を浮かべている者は一人もいない。 皆誰もが恐怖に染まりながら、今の男の後を追わないように、必死にこのカジノで生き抜くことしか考えていない。 カジノの奥、赤く重たい幕を通り抜けると、そこはこのカジノを仕切るカジノマスターがいる空間になっている。 そこからマスターはカジノ全体を監視し、負けた者たちに不思議な力を使いコレクションの一つへと変化させている。 黒服は哀れな男の成れの果てであるカードを献上するためやってきたが、肝心のマスターは一人の若い男とゲームに興じていたのだ。 「で、何で俺だけこんな所に連れてきたんだ?」 「……もちろん、君が特別だからだよ」 灰色のスーツの襟を正しながら、マスターは笑う。 漂う威圧感や雰囲気に似合わず、彼の見た目は若い。 整えられた髪を撫で、その瞳に妖しい光を宿す。 「特別? 俺が何だと思ってるんだよ」 若い男はシニカルな笑みを浮かべ、向かい合って立つマスターを睨み返す。 黒服は不思議に感じていた。 このカジノに連れてこられた男たちはみな必ず戸惑い、恐怖し、何が起きているか分からぬままゲームに参加させられる。 なのにどうして、こんなにも落ち着いてマスターと対話できているのか。 まるで、こんな状況には慣れっこだといわんばかりの態度。 あの笑顔がそれを物語っている。 「そうだね。例えば、最近噂のヒーローの一人だったりして」 マスターの言葉に、男は何の反応も示さない。 変わらず笑みを浮かべたままだ。 しかしマスターはそれで何かを察したらしい。 ゆっくりと口端を吊り上げ、「ふむ」と声を漏らした。 「どうやら当たりみたいだね。だって君は匂いが違う」 「今日は香水はつけてないけどな」 「意味は分かってるだろ? まあいい、名前は?」 「……ブラックとでも呼んでくれ」 「そう。じゃあブラックくん、君がここに来たのが幸か不幸かは分からないけど……僕にとっては確実に喜ぶべきことだ」 「男たちをここにさらって、ゲームに負けたらあんな訳の分かんねえものに変えやがって。精液を奪うことが目的なんじゃねえのか?」 「精液……ふむ、確かに魅力的ではあるけど、僕が興味があるのはやはり男たちが負けて、抵抗できずに無様な”モノ”に変わった姿かな」 「……良い趣味してるな」 「どうも」 マスターが指を鳴らす。 すると二人の間にテーブルが現れた。その中央には、トランプの箱が置かれている。 「カジノにはいろんなゲームがあるけど、やはり馴染みがあるのはトランプでしょ」 「俺がゲームをやると思うのか?」 「やる以外には選択肢はないよ。この空間では僕の作り上げたルールが絶対だかたね」 「ルール?」 「暴力は禁止、ゲームには絶対参加、負ければ僕の物に、勝てばここから出られる」 「……単純で分かりやすいルールだ」 「でしょ?」 「ようは勝てばいいんだな」 「その通りだよ。そこのキミ」 マスターは棒立ちで見ていた黒服に声をかけた。 彼は慌てて声に反応し駆け寄る。 「キミにこのゲームのディーラーをお願いしたい」 「か、かしこまりました」 そう言って黒服は二人の間に立ち、慣れた手つきでトランプを開けて配り始める。 「何のゲームをするんだよ」 「ポーカーでいいかな。ルールは分かるでしょ?」 「あぁ。イカサマすんじゃねえぞ」 「滅相もない」 マスターと黒服は一瞬視線を合わせる。 「ただ……僕は強いよ。ゲームも…運もね」 ・ ・ ・ ブラックが手札を開示し、それに合わせてカジノマスターも手札を見せた。 数回のゲームの後、最後のゲーム。 ……ブラックはまたしても負けてしまった。 「…なッ」 「あぁ、涼くん。君の負けだね」 「なんで名前を…」 「君が持っていた学生証を見たんだよ」 そう言ってマスターは涼の学生証を懐から取り出し、見せつける。 「荷物が無くなっていることを気づかないと」 ブラック…いや、涼は悔しそうに唇を噛み締める。 「…おかしいだろ。どうしてお前の手札ばかり、毎回スリーカード以上なんだ」 「言ったでしょ。僕は運も強いんだ」 「ふざけんな。このディーラーとイカサマしてんだろッ」 「ふふ」 マスターが笑い、ディーラーもつられて笑った。 反して涼には笑みを浮かべる余裕はなかった。 ゲームに負けたということは、自分も他の男たちのようになってしまうことを意味していたからだ。 「では涼くん、君も僕のコレクションになるんだよ」 「イカサマしたゲームで勝って嬉しいのか?」 「……何か勘違いしてるみたいだけど」 マスターが指を鳴らす。 「な、なんだッ、体が…」 涼が服を脱ぎ始める。 しかし彼の表情は戸惑いを表している。 どうやら彼の意思に反して、体が勝手に動いているようだった。 力を込めて抵抗を試みてはいるが、それは無駄骨に終わる。 「まず僕は…イカサマをしてはいけないというルールは作っていないし、別に正々堂々としたゲームをしたいわけでもない。君のようなイカした男を負かして、自分のモノにしたいだけなんだよ 「てめぇ、ふざけんなよッ!」 服を脱ぎ捨てながら涼はマスターに叫ぶが、全裸になってしまってはその行動も滑稽に見えてしまう。 床に座り込み、両手を両足の膝の裏へ回す。 足を顔の方へ引き上げるように持ち上げ、ちんぐりがえしの体勢になっても、涼はマスターを睨みつけている。 「あぁ…そそるポーズで睨まれると興奮してきちゃう」 カジノマスターの灰色の股間が急速に盛り上がる。 片手でそこを抑え、味わう様に奥歯を噛みしめる。 「くそ、こんな所で…ッ!」 「大丈夫。モノになっている間は、ずっと気持ちいいから」 恍惚の表情で涼を見て、垂れたよだれを袖で拭う。 そのまま指先を重ね、間髪いれず鳴らす。 瞬間、涼の姿は消えた。 元いた場所には一枚のカードが落ちていた。 黒服がそれを拾い上げ、マスターに差し出す。 「そそる姿だよ涼くん。……これをオカズにシコるかな」 盛り上がった股間を撫で、マスターはにやりと笑う。 彼の持つカードには…… 先ほどと同じようにちんぐりがえしの体勢の涼がいた。 萎えていたはずのイチモツは最大限まで勃起し、ケツの穴がしっかりと開かれよく見えるようになっている。 先ほどの反抗的な表情とはうってかわり、にやけた笑みを浮かべてだらしない顔の涼がそこにいた。 マスターがそんな卑猥な姿の涼に口づけすると、カード自体が僅かに震えたようにも思えた。 「じゃあ黒服くん、表は任せたよ。僕はしばらく一人で楽しんでいるから」 「かしこまりました」 黒服は頭を下げ、再び眩しく煌めく表のステージへと戻っていった。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 涼と連絡が取れなくなって二日が経った。 別に二日ぐらい連絡が取れなくてもいいじゃないか、と思うかもしれないが、これは俺たちにとってはかなりの問題だ。 物隙博士は定期的に俺たちと連絡を取り合う。 それに個人的な理由があるのかどうかはさておき、俺たちの安否確認が主な理由なんだと思う。 怪人たちはいつ現れるか分からず、万が一怪人の手に堕ちていた場合もその位置を特定できる可能性が高い。 そして今回はまさに、その状況になりつつあるのだ。 「涼くんが最後にいたのはここ」 博士が示したのは都内のとある路地裏。 何てことはない。どこにでもありそうな普通の道。 怪人が現れたという情報はない。 しかし、涼の競パンのGPSがこの地点を最後に消失したらしいのだ。 「涼からは連絡はなかったんですか?」 蓮の質問に、博士は頷く。 「なにも。確認した時にはここで反応が突然消えたのよ」 「なるほど」 「涼くんって前もこんなことなかった?」 「だね。もしかしたらまた別の空間に繋がる場所があるのかも」 奏多と育也の会話を聞いて、俺は前に奏多の言っていた前にもあったことを思い出した。 確か涼が怪人に捕まって助けに行った時に、捕らえられていた人たちを発見したんだっけ。 確かにあの時も涼の反応が消えてGPSで位置を特定してたはずだ。 「とにかく四人で向かってもらえる? 何があるか分からないから必ず変身しておくこと。周辺の人払いは済ませておくからね」 「助かります」 蓮の一声で、俺たちは立ち上がった。 ・ ・ ・ ・ 目標の路地にたどり着き、周辺を探してみたが涼の競パンどころか怪しい扉さえ見つけられなかった。 G.O.Eの人たちが一般の人たちの避難は先に済ませてくれている。 なのでここに誰かいればそれは確実に涼がいなくなったことに関わりがあるわけだが、そんな人は見つからない。 「本当にここに涼くんいたんだよね?」 「博士が言うにはな。あと調べてないところはないか?」 「ゴミ箱の中も建物の隙間も見たよ。特になし」 「そうか…」 考え込むように蓮が腕を組む。 怪しそうなところは一通り手分けして調べた。 ……ということは、残っているのは怪しくないところってことだよな? 「店の中とか…?」 「店?」 「うん。閉まってる店とかあったから。その中はまだ見れてないだろ?」 「確かにな。入ってみるか」 「え、どうやって入るの? 鍵かかってるんだよ?」 「……うちの偉い誰かが弁償するさ」 「蓮くん、最近大胆だよね」 「誰かさんに影響されたのかな?」 育也と奏多が二人して俺を見る。 マスク越しに、笑みを浮かべているのが見える。 「おい、なんで俺を見るんだよ」 「別にぃー? 蒼汰くんのこととは言ってないもーん」 「おい、行くぞ」 「はーい」 奏多が逃げるように蓮に続く。 「まぁ、悪い意味じゃないから」 と、育也は俺の肩を叩いて歩いて行った。 「…悪い意味じゃないって、じゃあどういう意味なんだ?」 答えの見つからない疑問が、進みながら脳裏にまとわりつく……。 ・ ・ ・ 蓮は鍵がかかった喫茶店のガラス扉を叩き割ると、躊躇なく入っていった。 「あーあ…」 俺たちも続いて中に入る。 そこでようやく気づいた。 曇りガラスで中が見えず、外に置いてあった看板だけで喫茶店だと思っていた。 しかし内装は喫茶店とは程遠いものだった。 テーブルやカウンターなどは一切なく、暗闇に包まれた空間が奥へと続いている。 「当たりだな」 俺の呟きに、蓮が頷く。 「行くぞ。充分警戒しろ」 空間を照らすのは、入り口から差し込む僅かな光のみ。 横には壁があるようにしか見えないが、ここはすでに怪人が作り出した空間の中だ。 何が起き、何をされるかは分からない。 しばらく進むと、どこからか楽し気な音楽が聞こえてきた。 人がたくさんいるであろうと想像できるほどの喧騒が微かに伝わってくる。 暗闇の中を進んでいくと、小さな光が漏れる何かを見つけた。 近づいてみるとそれは、分厚い幕だった。 どこからそれが垂らされているのかは分からないが、いやともかく。 この分厚い布切れ一枚の先に、大勢の人たちがいる。 それは捕まっている人たちなのか、はたまた怪人なのか。 「開けるぞ」 蓮の声に、無言でうなずく。 勢いよく横に開くと、強烈な光が俺たちを包み込んだ。 先ほどよりも喧騒と音楽が大きくなり、静寂に満たされていた空間から一瞬にして移動してきたような錯覚に陥る。 視界がようやく慣れてきて、目の前に広がっていた異常な光景に気づく。 ルーレットの盤上をボールがカラカラと回る音。 トランプを高速でシャッフルする音。 至る所に設置されたテーブルに、数多の男たちが席に着き、必死の形相でゲームの行く末を見守っている。 「これって……カジノ?」 「だね。けど、なんでカジノ?」 「考えても分かるわけない。とにかく怪人を探そう」 俺たち以外の人たちは至って普通の格好をしている。 なのに変身した状態の俺たちに何の興味も示さないのは、やはりおかしい。 ……それほどゲームに集中しているという事なのだろうが、やはりその状況は怪人によって作り出されていると考えるのが妥当だろう。 何よりもまずいのは、こんな所で怪人と戦闘になれば…俺たちはまともに戦えない。 捕らえられた人たちを傷つけるわけにはいかない。 しかし、そんな俺の考えは杞憂に終わる。 「おやおや、これはまた珍しいお客様だ」 四人の前に、灰色のスーツに身を包んだ若い男が現れた。 見た目は蒼汰たちとそんなに変わらないように見える。 しかしその身に纏うオーラは異様に重く、謎のプレッシャーを与える。 「お前がここにいる人たちを閉じ込めているんだな」 「……あぁ。君らがヒーローか」 「なに? どういう意味だ?」 「ヒーローに会うのは初めてだ。今までは都市伝説のようなものだと思ってたから」 「都市伝説? お前、エデンの怪人じゃないのか?」 「エデン? なんだいそれは?」 「ちょ、これってどういうこと? あいつはエデンが作った怪人じゃないの?」 奏多の問いに答えを出せる者はいない。 しかしあいつから放たれる雰囲気は確かに怪人のソレだ。 「確かに怪人みたいなものかな。何故かこの力を手に入れてから自分の欲望を抑えきれないんだ。まぁ、抑える気もないけどね」 「……どうする?」 小声で呟く奏多。 変身している間は通信ができるから、どれだけ小声で話しても声はしっかり聞き取れる。 相手は怪人のはずだけど…エデンとは関係がない? いや、あいつの言う事を鵜呑みにはできないけれど……。 どうも嘘を言っているようには見えない。 「ともかく! ここに来たんだったら君たちもゲームをしなければいけないよ」 「ゲーム?」 「そうさ! ここはカジノだからね。ゲームでしか、物事の勝敗はつかないよ」 「俺たちが黙って従うと思うのか?」 「……彼も同じことを言ってたよ」 そう言って男が上着の内ポケットに手を入れる。 そこから取り出したのは一枚のトランプ。 俺たちに見せるように伸ばされた腕。 その紙の中には、探していた涼の姿があった。 「あれって…涼くん?」 「あぁ。でもあの姿は……」 ちんぐりがえしの体勢でだらしなく笑う涼がそこにいた。 ここからでも見える勃起したイチモツがやけに立体的で、その体には飛び散った精液が白く見える。 「やっぱり君たちの仲間か。ヒーローってのは本当に良い匂いがするんだね」 「そいつに何をした?」 「ゲームに負けたから、僕のコレクションになっただけだよ」 「じゃあなおさらゲームをするわけにはいかないな」 蓮が左手に剣を召喚し、それを見て俺たちも各々の武器を手の中へ呼び出す。 しかし怪人はそれを見ても慌てる様子は見せず、むしろ笑みを大きくした。 「戦うのかい、ここで?」 「そのつもりだ」 「ふむ、残念だな。本当はゲームをするつもりだったんだけど……見せしめの為にその黄色い子を」 男が中指と親指の腹を重ねる。 パンッ、と軽い音が響く。 「え…」 育也の声が聞こえ、視線を向ける。 隣に立っていたはずの奏多が消えており、代わりに足元に黄色い何かが落ちていた。 それは四角い薄い袋に入っていた。 中に黄色く丸い薄い膜のようなものが入っている。 見慣れたものだ。 それは……コンドームだった。 こんなことありえない。 けれど、奏多はコンドームにされてしまったのだ。 「お前ッ、元に戻せ!」 育也が怒鳴り、銃口を向ける。 「僕はこのカジノを支配するカジノマスター。この空間では僕が絶対で、僕の決めたルールを守らなければいけない」 言い終えると、俺たちに向かって歩き出すカジノマスター。 「ゲームには絶対参加、負ければ僕の物に、勝てば出られる。そして重要なのが、暴力は禁止」 俺たちのすぐ目の前で立ち止まり、挑発するような笑みを浮かべて顔を寄せる。 「戦おうという意思を抱いただけで、このルールに反することになる。だからその黄色い子を、僕は指を鳴らしただけでコンドームに変えられたんだよ」 「……つまりそれは、ルールに従ってさえいればお前の力の影響は受けないという事だな?」 「その通り。青いキミ。とても聡明だね」 顔を離し、振り返るマスター。 横顔を俺たちに覗かせ、ギラギラとした光を宿した目を向ける。 「さぁ、ゲームをするつもりなら僕についてくるんだ。特別に、僕の部屋で戦おう。正々堂々ね」 そう言い残し、歩いていくカジノマスター。 俺たちは顔を見合わせる。 もうこの空間に足を踏み入れた時点で、引き返すことはできない。 人々が囚われていることも知り、そして仲間を二人もモノに変えられてしまっては、引き上げることなどできるはずもないのだ。 「行こう」 俺が先に歩き出し、蓮と育也が遅れて続く。 育也は大事そうに奏多であった…いや、今でも奏多ではあるのか。 意識があるのかは分からないが、苦しくないようにと配慮しているのか、手のひらの上で大事そうに黄色いコンドームを持っている。 「なぁ、それ…本当に奏多なんだよな?」 「分からないよ。でも、あの状況的にそれ以外考えられないでしょ?」 「今更こんな状況を不思議に思っても仕方がない。あいつらはなんでもありだ」 「……そうだな」 「こちらへ」 振り返ったマスターはワインレッドの幕を横にずらし、俺たちをその奥へといざなう。 されるがまま足を進めると、そこは何もない空間だった。 ただ一つ。 意味ありげに広範囲にわたる一か所だけが天井のライトで照らされている。 マスターはその光の手前まで足早に進むと、両手を叩いて俺たちに向き直った。 「さぁ、どんなゲームをしようかな? ブラックジャック、バカラ、ポーカー、ビッグシックス……いや、やはりここはカジノクイーンで遊ぼうか」 指を鳴らす。 光の中心に、大きなテーブルが出現する。 テーブルには赤と黒で交互に色分けされた数字が記されており、テーブルの端にはルーレット盤が付属している。 どこからか現れた黒服の男がテーブルを挟んで向こう側に立っており、両手を広げ俺たちを賭けの場へといざなう。 「誰が参加する? このゲームに」 お互いに顔を見合わせる。 俺はルーレットなんて実際にやったことはないけれど、ルールはなんとなく分かる。 ようは賭けた数字の所と同じ箇所にボールが止まればいいんだよな? 「俺がやろうか?」 なるべく頭を使わないゲームの時にやったほうがいい気がするし。 「……このゲームは」 蓮はマスターの方を見て、少し声を大きくする。 「別に複数人が参加してもいいんだろ?」 「あぁ、構わないよ。君たち三人でまとめて来てもいい。そっちの方が勝率も高くなるだろうし」 こっちにしてみればそれは絶好の提案のように聞こえる。 しかし蓮はすぐに返事はしなかった。 考え込んでいるのかしばらく無言だったが、俺の肩を叩くとこっちに向き直った。 「…なに?」 「俺とお前でやろう」 「え、育也は?」 「保険で残ってもらおう。一番最悪なのは俺たち全員がゲームに負けることだ。相当運が悪いか、もしくはイカサマをされたりしてな」 「なるほど…」 「分かった。二人とも気を付けてよ」 「あぁ」 「任せとけ育也。ここで勝ってさっさと終わらせてやるからよ!」 「どうやらプレイヤーは決まったようですね? ではこちらへ」 マスターがテーブルの左側に立ち、俺と蓮が右側に立つ。 いつのまにかテーブルには大量のチップが並べられていた。 灰色のチップの束はマスターに、赤と青は俺たちに。 黒服はチップを配り終え姿勢を正すと、腕を組んだまま俺たちを見る。 「一人100枚のチップです。全部で10回ゲームを行い、最後に一番チップを持っていたプレイヤーの勝ちです。また、チップのかけ方を今回はシンプルにさせていただきます」 「シンプル?」 「はい。一つはストレートアップ、いわゆる一点賭け。もう一つはオッドイーブン、奇数か偶数の数字に賭けるものです」 「まぁそっちの方が考えることは少なくて楽だよな」 「もちろん配当は異なります。ストレートアップは36倍、オッドイーブンは2倍です」 「そんなに違うのかよ!?」 「それはそうでしょ? 当たる確率があまりにも違いすぎる」 マスターが呆れたように首を振る。 んだよこっちは素人だぞ。 「いらつくな」 蓮にポンポン、と背中を軽く叩かれる。 ……なんか、あやされてる子供の気分なんだけど。 「もう一つのルールとして、BET…つまり賭けるチップの最低枚数をわたくしが宣言します。そのため、宣言の枚数以下の場合は手持ちのチップ全てを賭けていただき、賭けられるチップが無くなった段階で終了です」 「終了というのは俺とこいつ、どちらかが無くなったらか?」 「いいえ。あなたがたの場合は両方のチップが無くなるまで続きます。ただし、無くなったほうはその時点でゲームに参加できません」 「つまり! 君たちは二倍のチップというハンデを持って僕と戦うわけだね」 「イカサマはしないだろうな?」 「失敬だな。イカサマだなんて」 マスターはにやりと笑って腕を組み、黒服に目配せする。 それを見て黒服は頷き、 「それではゲームを始めさせていただきます。」 と右手に小さな白いボールを持った。 「今回の最低BET枚数は10枚です」 「え、もう始まるの?」 「こんな説明にグダグダ時間を取っても仕方ないだろう?」 「まぁ…確かに」 「じゃあ僕は、黒の10に20枚」 「20!?」 いきなり最低BET枚数の二倍? いやでも……これぐらい強気に出た方が良いのか? 「俺は奇数に25枚」 蓮は”Odd”と書かれた部分にチップを移動させる。 「赤いあなた、どうされますか?」 「えっと、俺は…じゃあ赤の16に15枚」 「ノーモアベット! それでは参ります」 黒服は高らかに宣言した後、ボールをルーレット盤へ投げ入れる。 カラン、と軽妙な音をたてて、ボールは残像を残しながら回っていく。 少ししてボールの動きが緩慢になる。 そしてそれは、黒の13の穴にポトリと落ちた。 「あぁ、惜しい。隣に賭けていればなぁ」 マスターは悔しそうに舌打ちする。 しかし、この状況で勝ったのが一人いる。 「おめでとうございます青いあなた。2倍ですので、50枚ゲットです」 「やったな!」 「気を抜くな。運が良かっただけだ」 「うんうん。運は大事だよねぇ。それじゃあ次のゲームにいこうか」 俺は外しちゃったけど、蓮が当ててくれた。 マスターが80枚、俺と蓮で合わせて210枚。 少しずつの差だが、このままいけば勝ち越せる。 意外と楽なんじゃないかこのゲーム? ・ ・ ・ ・ ・ それからゲームは思っていたよりも順調に進んだ。 相変わらず俺のチップの稼ぎは悪かったが、蓮は無難にオッドイーブンで稼いでいき、マスターは逆にチップを消費するばかり。 「それではラストゲーム、最低BET枚数は50枚です」 いよいよラスト10回目のゲーム。 マスターの持つチップは40枚。 否応にも全てを賭けなければいけない。 対して俺は70枚、蓮が340枚だ。 ……あれ、俺弱くね? 「そうだねぇ……じゃあここに」 そう言って手持ちのチップをすべて、赤の14に移動させるマスター。 どういうつもりだ? これで外れたら、もうあいつの負けが確定する。 いくら一点賭けすることでしか勝ち目がないとはいえ、あんなにすんなりと数字を決められるものなのか? ……まぁ、今深く考えたって仕方がない。 こっちは二人とも50枚以上あるし、めちゃくちゃ有利なゲームであることに変わりはない。 俺でもわかる。 無理に賭ける必要はない。 「70枚、オッドで」 蓮は淡々とした口調で告げる。 「じゃあ、俺は50を、黒の10」 差し出されたチップをしっかりと確認し、黒服は「ノーモアベット!」と声を上げる。 流れるような動作でボールを投げ入れる。 回転するルーレットを、ボールが疾走する。 これに勝てば、涼も奏多も、囚われている人たちも助け出せる。 ……なのに。 どうしてカジノマスターはあんなにも余裕そうなんだ? 腕を組み、不敵に微笑んで盤面を見下ろしている。 こう言っちゃなんだが、負ければ今までの努力は水の泡になるんだぞ? こいつらの味方をするつもりは毛頭ないけど、こんなに焦らずにいられるものか? カランッ、とボールが跳ねる音がした。 視線をルーレット盤に戻す。 数回小さく跳ねて、再び転がり、そして跳ねる。 白いボールが落ちた場所はーー。 「…そんなッ!」 「赤の14。マスター、おめでとうございます」 「嘘だろ」 これには蓮も声を漏らさずにはいられなかったらしい。 俺たちは一緒にマスターを見る。 「40の36倍、1440枚です」 「一千!?」 「あーらら、僕ってとんでもない強運だなぁ」 「こんな事が……」 「以上でゲームは終了です。数える必要もないですが、マスターが1440枚、あなた方が合わせて220枚。マスターの勝利です」 「イカサマじゃないのか、これッ」 と、俺はマスターを睨みつける。 こんな結果がありえるのか? 最後の最後で、逆転なんてーー。 「これがギャンブルです。何が起きるか分からない。まさか自分たちが負けるなんて、思いもしなかったんでしょう?」 指を鳴らす。 瞬間、俺の体が硬直した。 「負け惜しみはよくないね」 「くそッ……」 手足の指先ひとつ動かせない。 隣の蓮を何とか見てみれば、同じように気をつけの姿勢で微動だにしていなかった。 「さてさて、君たちをどうしてやろうか?」 テーブルが消え、黒服が何も言わずに空間の奥へと姿を消す。 広くなった空間で、マスターは俺たちを見定めるように周囲を練り歩く。 「カードにしたり、サイコロにしたり、チップにしたり…色々と変化させてきたけど…うーん」 俺たちの全身を、上から下まで、舐めるように見るマスター。 そして思いついたように、「あッ」と声を出す。 「君たちのそのぴちっとしたスーツを見ていたらいいことを思いついたよ」 「……どうする気だ」 「こうするんだよ」 再び指が鳴る。 俺の体に変化はない。 じゃあ誰にーーッ。 慌てて蓮を見てみれば、身体的な変化はなかった。 しかしその姿勢は気をつけのポーズから四つん這いへと変わっていた。 「な、なにを…ッ」 「まあ待ってよ」 蓮の頭上に…何もないはずの空間に、ドロッとした粘着質な液体が生み出された。 深い青色をしたそれは重力に従い蓮の体に落ちると、全身を伝うようにして包み込んでいく。 「ぁぁ……」 蓮のか細い声がわずかに聞こえた。 抵抗しようとしているのか、体が震えている。 しかし、この空間でのカジノマスターの力があまりにも強大なのは身に染みて理解してしまっている。 ……俺も、蓮も、どうすることもできない。 「ぁはぁ…なんッ、これは…ッ」 どうしてだ? 謎の液体に体が覆われているだけで、蓮は何故か気持ちよさそうな声を漏らす。 あの液体…瘴気でも混ざっているのか? いや、だとしたらもっと反応は顕著になるはずだ。 「んんぅ…ッ、か、体がぁ…」 「蓮! しっかりしろ! 気をしっかりーー」 もう顔も体も見えない。 見えるのは液体に包まれて四つん這いになる人の形をした何か。 蓮のくぐもった声が聞こえるが、それが苦しんでいるのか喘いでいるのかは分からない。 ・ そして次に蓮に起きた変化は、目を疑うものだった。 今までしっかりと形を保っていた頭部がどろりと崩れ落ち、足元へと吸い込まれるように動き始めた。 次に腕の部分が溶けて吸収され、ついには上半身がすべて床に落ち、膝の間へと集まっていく。 そこでひとつになり、何か細長い物を形作っていく。 元の体の部分で言えば、股間になるんだろうか。 そこで細長い物と言われたら……俺の頭の中には一つしか思い浮かばない。 股間部分に、立派に反り返った青いイチモツが現れた。 膝から先の部分もいつの間にか消失しており、おそらくそこもあのイチモツを作るための一部となったのだろう。 正直言って蓮のイチモツよりはでかい気もするが、おそらくマスターの想像が含まれているのだろう。 立派な竿とぱんぱんに膨らんだ玉が形成され、蓮の体だったものは今ではお尻の部分しか残っていなかった。 「お前……何をしたんだ?」 「見たら分かるでしょ、オナホにしたんだよ」 「は?」 「ケツ型のオナホさ。ついでに他の体の部分を使って立派なおちんちんをつくらせてもらったよ」 「てめぇ、ふざけんなよ…元にーーッ」 「君も今から変わるのに、何を言ってるの?」 気づいた瞬間、俺の視界が真っ赤に染まった。 ・ ・ ・ ・ 「あぁ、そんな……」 ルーレットのゲームに負けた二人は為すすべなくマスターの力に囚われてしまった。 マスターの言葉を借りるのであれば、蓮くんはケツ型のオナホにされてしまった。 謎の液体に包まれたかと思えば、そのまま蝋燭のように体が溶け始め、ケツの部分に勃起したイチモツと張り詰めた大きい玉がついたオナホに。 そしてその変化は蒼汰くんにも表れる。 赤い液体が彼の頭上から突如として降り注ぎ、彼の体を一瞬にして覆っていく。 「ぁ……うぁ…」 手を体の横に添えたまま、動けない蒼汰くんは体を震わせるだけ。 股間部分が大きく盛り上がっているのが見えたが、液体はそれすらも覆い隠していく。 ついにつま先まで液体に包まれると、その体は次の変化を始める。 蓮くんの時と同じように、上半身が崩れ始めた。 徐々に、ゆっくりと下に蒼汰くんが小さくなっていく。 …正確には小さくなっているのかは分からないが、その体が異常な変化をしていることは明らかだ。 床へと広がった赤の液体が、ある瞬間から中心に向かって集まり始める。 そこに出来上がったのは、不覚にも見慣れたものだ。 蓮くんであったケツ型オナホについているものより確実に大きく、太く…。 そして浮かび上がる脈やぶらぶらと揺れる玉はやけにリアルさを醸し出している。 僕でも分かる。 あれはディルドだ。 蒼汰くんの体は、あの一品の男根に集約されてしまったのだ。 床に転がるディルドとケツ型のオナホ。 カジノマスターはそれらを見下ろすように立つと、笑って僕を見た。 「ほら、頼もしかった君のお仲間もこの通り。アダルトグッズになって終わりさ」 「……次は僕がゲームをする」 「だろうね。緑色の君が、最後の砦なんだから」 そう言って指を鳴らすカジノマスター。 マスク越しに見ていた視界がやけにクリアになり、体に感じる風通しが良くなったことに気づいて、慌てて下を見た。 案の定、着ていたスーツは消失し、僕は全裸になってしまっていた。 「これは…ッ」 「君にはその恰好でゲームをしてもらう」 「これに何の意味があるんだよ…」 「おっと、まだ終わりじゃないよ。ほらよく見て」 そう言ってマスターが指さす先は僕の股間。 もう一度視線を落とせば、そこは何の前触れもなく急速に勃起していく。 「なッ!?」 「もうカジノゲームにも飽きてきたし、少し趣向の違う事をしよう。僕ももうそろそろ興奮が抑えきれそうにないしね」 この位置から、布ごしでも分かる。 カジノマスターは勃起している。 僕を強制的に勃起させたのとは違う。 あいつは僕たちを見て、蓮くんや蒼汰くんをあんな姿にすることで…興奮している。 「クイズに答えるだけでいい。全部で100問。無事100問目まで答えることができれば君の勝利だ」 「答えるだけ? 不正解でも?」 「そうだよ」 「それは…ゲームになってない気がするけど」 「もちろんただ答えるだけじゃないよ。何のために君を勃起させたと思ってるの?」 「…え?」 「君のその手にあるコンドーム。それをつけてもらおうか」 「…なッ」 だってこれは…奏多くんなんでしょ? それを、その…自分のモノにつけるなんて…。 「不正解、もしくは5秒経過すると君は射精する。仲間の中に君の精子をぶちまけたくはないだろう?」 歩みを進めながら、僕の前までやってくるマスター。 股間の昂ぶりを見せつけるように手を後ろに回し、背筋をピンと伸ばして僕を見据える。 「さぁ、つけなよ」 「…そんな」 「拒否権はない。分かるだろ?」 「……ごめん、奏多くん」 彼に聞こえているのかは分からないけど、あいつが定めたルールに逆らえばその時点で終わりだ。 こんないかれたルールに、僕は従うしかない。 封を破り、手に黄色いコンドームを持つ。 感触は知っているものと何ら変わらない。 それを亀頭の先にあてがい、少しずつ根元に向けて伸ばしていく。 この黄色く薄い膜が奏多くん…? なんか、そう考えるとちょっと興奮してきてしまう自分もいる…。 「しっかりつけれたかい?」 「…あぁ」 「よし。ではクイズを始めよう」 いつまでも萎えることのない僕のイチモツ。 ぷくっと膨らんだコンドームの先っちょ。 こう見たら本当に、ただのコンドームだ。 「第一問、富士山の名前の由来は?」 「え、富士山?」 「さぁ5秒経つ前に答えてねぇ」 「そんな、え、由来?」 「ほらほら、4秒、3秒……」 まずい、分からない…ッ。 「2秒、1秒…はい、残念」 「…あ」 「まったく、答えられないなんてダメじゃないか」 「…最初からいきなり難しいクイズを出すなんて、難易度が高すぎる。 それにそっちは答えを本当に知ってるのか?」 「当たり前じゃないか。竹取物語ってあるだろ、かぐや姫のお話だね。かぐや姫が月に帰った後、悲しみに暮れた帝が不老不死の秘薬を日本で一番高い山で焼いたと言われている。不死の山、それが転じて富士山さ」 「…なるほど」 確かに言われてみれば納得できる答えだけれど。 …にしても一問目にしては難しすぎる。 「それに由来には諸説ある。だからそのどれかを答えてくれればよかったんだよ。別に難しくはないと思うけどなぁ」 「うッ…」 「じゃあ君、答えられなかったから景気づけに一発出しとこうか」 股間に感じた微かな熱。 それが爆発するように膨れ上がり、自分のイチモツに耐えがたい快楽が与えられる。 「う…あぁ…ッ」 根元から何かが押し出されるような感覚を覚え、それが一気に鈴口へとたどり着く。 間髪入れず飛び出したそれはコンドームの中へ飛び出すと、先端の液だまりを膨らませた。 ……とてもじゃないが僕の意思で我慢できるようなものじゃない。 奏多くんに対してこんな事、したくないのに…。 「あーらら。出しちゃったねぇ、結構出たねぇ。え?」 「う…うるさいッ」 あぁ…頭がくらくらする。 なんだこの感覚。何かが、変だ…。 ふらつく足に力を込め、グッとふんばる。 「ふふ。いつまで強がっていられるか見ものだね。それでは第二問。アメリカ合衆国の州は、いくつあるでしょ?」 「州? え、いくつだ…」 「適当に言ってみたら? 時間ないんだし」 「くそ…48!」 「あぁ惜しい。正解は50だよ」 「なッ」 「それじゃあもう一発、いってみよう!」 「んはぁ……ッ」 腰ががくがくと震える。 今まで何十回と射精してきたというに、この感覚には未だに慣れない。 またしてもコンドームが膨らんでいく。 僕の出した精液で…先ほどよりも大きく。 …この状況が僕に追い打ちをかけているのかもしれない。 負けてはいけない状況で負けてしまい…敵の目の前で痴態を晒しているこの状況。 奏多くんの中に射精しているという、このシチュエーションを…楽しんでいる自分がいるのかもしれない。 …まただ。 頭がぼーっとする。 風邪を引いたときのような倦怠感だ。 「どうしたどうした、三問目いくよ?」 「…ッ、さんもん…め…」 「ルーレット盤にある一番大きい数字はなに?」 「数字……」 さっきの僕の位置からはルーレット盤の中までは見えなかった。 これも当てずっぽうで言うしかない。 思い出せ…さっき皆が賭けていた数字。 そこから考えるんだ。 「あと2秒だよ」 「……40」 「残念、36だ」 「……ッ!」 「ほら、出しなよ」 「…ぁ、うああッ!?」 あぁ……止まらない。 体の奥底から湧き出る精液が、どくどくとコンドームを…奏多くんを満たしていく。 いけない。ダメなのに。 頭では分かっているのに、がに股に開かれた足を閉じることはできず、考えることが億劫になってきて……。 ーー射精の快感に呑まれそうになる。 「…だめだ」 ここで負けたら、何もかも台無しだ。 気をしっかり持て。絶対に諦めちゃいけない。 「……意外ともつなぁ」 「…え、何?」 「いや…。それじゃあ四問目だ。カジノのスロットマシンにおける大当たりの事を英語で何というでしょう?」 「大当たり……」 待てよ、聞いたことがある。 確かこれは…ジャックポットだ。 「わかった、答えはーー」 ”あぁ…ッ!! もっとほしいッ!” 「えッ…」 突然聞こえた声に、言葉を続けることができなかった。 「ざんねーん、答えられなかったねぇ」 「そんな…今の声は…」 「声? あぁ、君のお仲間の声でしょ」 「僕の……仲間?」 じゃあやっぱりあの声は。 あの聞きなれた声は、奏多くんの声だったのか。 「よーく、耳を澄ましてごらんよ」 もやがかかったみたいに考えることが難しい今の僕の意識は、マスターの言葉通りに意識を空間へ集中させる。 すると、またしても奏多くんの嬌声が頭の中に響く。 『すごい…育也君のザーメンでいっぱいだぁ…。 俺の中がぁ、全部育也君のぉ……」 間違いなくこれは奏多くんの声で。 それは確実に、コンドームになってしまった彼の状況を表していた。 …ぁ、喜んでいる? 奏多くんは、僕のチンコを包み込んで、中で射精されることを、喜んでいるのか? 「さて、答えられなかったから射精しないとね」 「んんッ…!?」 びくんと揺れたイチモツが、またしても勢いよく精液を吐き出す。 コンドームの液だめは確実に許容量を超えている。 歪に膨らんだそれは、不気味に僕のイチモツの先にぶら下がっている。 「……奏多くん…」 『またイッちゃったんだ育也君……。あぁ良い匂い。育也君のザーメンすっごいどろどろしてる』 「やめて…奏多くん…ッ」 頭がおかしくなる。 ダメなのに、ダメなのに。 気持ちよくなっちゃダメなのに。 『まだ欲しいよ育也くぅん……もっと俺の中にザーメン出してよぉ……。もっとパンパンにしてぇ…ッ』 いやらしい奏多くんの声が、彼の姿のイメージと共に僕の頭の中を支配する。 「…聞こえるかい?」 「……ッ」 いつの間にかカジノマスターはすぐ目の前までいた。 近づいてきたのに気づかないほど意識は混濁していて、彼の言葉を完全に理解することはもうできない。 「こんな感じになるんだなぁ」 僕のイチモツの先。 水風船のように膨らんだコンドームを指先で突かれる。 「今ね、君の意識や記憶…まぁ簡単に言えば人格がすべて精液となって出てきているんだよ」 背後に回り、耳元に口を近づけられる。 「出せば出すほど、君は意識が朦朧としてくる。もう四回も出した。きっと簡単なクイズですら、今の君じゃ答えられない」 「……クイズ…こた、える」 「無理だって。仲間の声も聞こえるようにしてあげた。そんな今の君じゃ、本能で感じ取れる性欲だけしか求めることができないさ」 「…クイズ、出す。いっぱい、出す」 「はははッ! そうだね、もっと出そう! 君のすべてが、その哀れなゴムの中に溜まるまで!」 ・ 育也くん 君はもう何もできない。 育也くん …あれ、僕は何をしていたんだ? 育也くん もっと出してよ。 …え? 俺と一つになろう? …奏多くん。 そしたらずっと一緒だよ。 俺が君を包み込んであげるから。 だから 「奏多くん、イっちゃう…よ…」 はやくザーメンになった君を、俺の中にぶちまけてよ。