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G.O.E 〜第11話 【最後の覚醒】〜

「くそッ‼︎」 自らが作り出した怪人の消滅を感じ取り、ウィルは玉座の肘掛けに拳を叩きつけた。 「やっぱり俺の怪人じゃダメか......」 ウィルが内に秘める瘴気は膨大ではあったが、彼は今まで自ら怪人を作る事はしなかった。 それは何故か......? 彼の作る怪人には、物理的な戦闘力が皆無なのである。 特殊な力を付加する事は可能だが、いざ肉弾戦の戦いになるとあっさり倒されてしまうのだ。 だから今まで彼は部下に瘴気を与え、戦う事のできる怪人を作らせてきた。 そして部下の失敗続きに呆れ自ら怪人を作ってみたものの、案の定倒されてしまったというのが結果だ。 ......結果は分かったのだ。 ならばやる事は1つしかなかった。 「ライト」 「はっ」 ウィルに呼ばれ、柱の陰からライトが姿を現わす。 跪き、こうべを垂れる彼の姿をその瞳に焼き付けるようにしばらく見下ろし そしてゆっくりと口を開いた。 「......お前に瘴気を与える。怪人を作り、エナジーを集めて来い」 「かしこまりました」 「だが分かってるな......これは最後のチャンスだ。もしまた失敗すれば俺はお前を見限るぞ」 「......承知しております。必ずやエナジーを回収し、あのヒーロー共を倒してみせましょう」 「......ふん」 ウィルが手を向ける。 放たれる瘴気がライトを包み込み、そして吸収されていく。 立ち上がったライトは僅かに頭を下げると踵を返して歩き出した。 ・ 小さくなるライトの背中を見つめながら、ウィルは確信した。 きっとあいつは俺の命令を無視して自分のやりたいようにやるだろう。 ......自分に対する忠誠心がライトにあるのは分かっているが、それでいえばレフトの方が忠誠心は大きかった。 ーー何故俺はライトの好きにさせるのか。 ふと浮かんだ疑問に目を伏せた。 『教えてあげようか?』 自分以外誰もいないはずのこの空間で聞こえた声。 顔を上げて辺りを見渡しても、誰の姿も見つけられない。 「...またか。何なんだお前は?」 誰もいない空間。 ウィルはゆっくりと視線を横に動かし、恐る恐る口を開く。 『僕が彼の事を好きだから、君も楽しんでいたのさ』 返事など無いだろうと思っていたウィルは、思わず肩を震わせて宙を見つめた。 「どういう意味だ?」 『さぁね。どうでもいいじゃないかそんな事』 「......ふざけやがって」 そう呟いてしばらく待ってみても、もう返事はなかった。 この俺に干渉できる存在がいる。 その事実はウィルに微かな恐怖心を植えつけた。 だが彼は目を閉じ、玉座に深く腰掛けた。 そんな訳のわからない事に恐怖するよりも、今の彼にはやるべき事があるのだ。 ライトの行動を......行く末を、見届けてやるという大事な事が。 ** 『どうして?』 ・ ・ ・ ・ ・ この言葉がずっと俺の頭を埋め尽くしている。 ......ミーティングルームのイスに1人で座り、紙コップ片手にため息をついた。 最近ずっと考えてる。 どうして俺には何の力も発現しないのかって……。 蓮くんは氷、涼くんは風、育也くんはバリア、蒼汰くんは炎。 ......俺には武器しかない。 育也くんは武器を持ってはいないけど、武器なんかなくても充分強いし......。 後から入ってきた蒼汰くんには先を越された。 ーーどうして俺だけ......。 1番年下。1人だけ高校生。力はない。 皆との違いがいくつも頭に浮かんで……俺の中の劣等感を大きくしていく。 思い返せば...... 俺の目の前にはいつも誰かが立っていて 皆はいつも俺を守ろうとしてくれてた。 何かとバカにしてくる涼くんだって......戦闘の時は守ろうとしてくれる。 ......俺は守られてばかりで、何の役にも立てていない。 その事実がどうしても頭を離れない。 俺が皆と一緒にヒーローとして戦う事に意味があるのかな......。 守られて足を引っ張るだけの俺に ......ここにいる資格はあるのだろうか。 いっそ俺なんかいなくなった方が皆もやりやすいんじゃないかな。 そんな考えが脳裏を何度もよぎった。 ・ 「奏多くん」 聞こえた声に顔を上げると、物隙博士がいつの間にか背後に立っていて、俺に黄色の競パンを差し出した。 「はい、メンテナンスは終わったわよ」 「...ありがとうございます」 それを受け取ってカバンに入れて俺は立ち上がる。 今日は日曜だから学校もないし、どこかに遊びに行く気にもなれない。 ーーこのまま家に帰るか......。 博士に軽く会釈して横を通り過ぎる。 「奏多くん!」 扉に手をかけた時、何故か博士に呼び止められた。 振り返ると、口元に薄い笑みを浮かべた博士が俺を見ていた。 「元気ないわね。何かあったの?」 「...そんな事ーーッ」 突然警報が鳴り響いた。 スピーカーから流れてくるのは怪人の出現場所。 俺はカバンに視線を落として、博士を見た。 「あら......まぁ相談ならいつでものってあげるから、頑張ってきてね奏多くん!」 「......うん」 無理に笑って頷いて、俺は部屋を出た。 競パンを穿いて変身すれば、俺はガーディアンイエロー......足手まといなヒーローだ。 ......大丈夫。 皆がいれば......それでも俺はヒーローなんだから。 ** 怪人が現れたのは公園の中だった。 公園とはいっても、休日には多くの家族連れがピクニックに来るような大きな公園だ。 入り口で待ち合わせた俺達は、怪人が出現したとされる森の中へ足を踏み入れた。 「森の中っていってもよ、広すぎるだろ」 「だよな。これじゃどれだけ時間がかかるか」 涼くんと蒼汰くんの会話を聞きながら、周囲に視線を走らせる。 何か物音が聞こえることもないし、木の陰から飛び出してくるかもと警戒してみても、その気配もない。 ......2人みたいな余裕が俺にはない。 きっと2人は自分の強さに自信があるから。 蓮くんと育也くんだって...周囲に目を向けてはいるけど、どことなく余裕が感じ取れる。 ......ビビってるのは俺だけってことだ。 ・ 「待て、何か聞こえた」 蓮くんのその一言で全員が動きを止めた。 耳を澄ますと......聞こえたのは小さな銃声。 こんな静かな森の中で銃を撃つのは...怪人しかいない。 「行くぞ、こっちだ」 蓮くんの先導で銃声が聞こえた方へ向かう。 どうやら怪人が持っている銃は連射できるものらしい。 細かいパパパッ、という音が段々大きくなってくる。 「......あれだな」 蓮くんが立ち止まって指差した先にいたのは 銃口を上に向けて発砲している軍服を着た怪人。 俺達のことに気づくと、ゆっくりと銃を降ろしてニヤリと笑った。 「待ちくたびれたぞ」 「だったらこんな森の中に出てくんじゃねぇよ」 涼くんの悪態を聞いても、怪人は笑みを絶やさず俺達を見続ける。 「ふん、ほざけーーッ」 怪人が呟きながら、銃を持った右手が微かに動かされる。 「皆下がってッ!」 育也くんが叫んで一歩前に出た。 俺達の前に緑のバリアが展開すると同時に、怪人が銃の引き金を引いた。 放たれる銃弾は育也くんのバリアに防がれて、全て地面へと落ちていく。 ......この程度の攻撃じゃバリアが壊れることはない。 向こうももう理解しているはずなのに、それでも銃撃をやめようとはしない。 「あいつ何がしたいんだ?」 「......奴は俺の為に働いてくれている」 涼くんの独白が少しの間宙を漂い......それに誰かが答えた。 ーーえ? そして全員がすぐに気づいた。 今喋ったのはーーこの5人じゃない。 「うあーーッ‼︎」 「貴様の相手は俺だ」 「ラ、ライト⁉︎」 蒼汰くんの叫び声に振り向くと、あの怪人とは違う軍服を着た白髪の男が立っていた。 確か今ライトって......。 じゃあこいつが......蒼汰くんが1人で戦ったていうむちゃくちゃ強い怪人。 ライトは蒼汰くんの首に腕を回し、引きずるように移動して俺達から距離を取る。 そして2人は、ライトが出てきたであろう黒い煙の中へとその姿を消していく。 「てめぇッ!」 涼くんがすかさず追いかけようとしたけど、蓮くんが腕を掴んで引き止めた。 「おい、蓮ッ!」 「罠だ!」 蓮くんが叫んだ瞬間、2人と俺達の間の地面が突然爆発した。 爆発は一瞬にして左右へ広がっていき、大量の土煙を巻き上げていく。 木の幹が爆発し、地面が抉られ、土台を失ったいくつもの大木が目の前に倒れて更に土煙を舞い上げる。 茶色一色だった視界がようやく元に戻った時にはもう、倒れた木々によって向こう側を確認する事さえできなかった。 「蒼汰くんがーーッ」 「......奴らの狙いは最初からこれだったんだ」 「その通り」 銃撃はいつの間にか止み、育也くんがバリアを消した事で怪人の姿がはっきりと見えるようになる。 ......その顔には何かを達成したみたいに笑みを浮かべていた。 「私の任務は...ライト様とガーディアンレッドの戦いを邪魔させない為に、貴様らの足止めをする事だ」 「足止めだと?」 「この辺りに仕掛けた地雷のセンサーをオンにした。下手に動けば貴様らが吹き飛ぶぞ」 「くそっ」 涼くんが舌打ちして辺りを見回す。 一見普通の地面に見えるけど......地雷が埋められてる。 あの威力だ。 スーツを着てたとしても、かなりのダメージを食らうだろう。 「さぁ、私達も戦おうか」 怪人が再び銃を構えた。 「貴様らを足止めしろとは言われたが、生かしておけとは言われてない」 それってつまり、俺達を殺すって事? そんな、どうすれば...... この状況を打破するなんて方法なんてーーッ。 ・ 「...奏多」 不意に呼ばれて顔を上げると、俺を見る蓮くんの顔があった。 「大丈夫か?」 「......う、うん」 「......とにかく、こいつを倒さなければいけないな」 蓮くんと涼くんが武器を呼び出し戦闘態勢に入る。 俺もそれに習って武器を手に持ったはいいものの、動き出す気にはなれなかった。 足はセメントで固められたみたい動かす事が出来なくて、ハンマーを持つ手は微かに震える。 ーー怖い。 今までの怪人とは毛色が違う。 こいつはエナジー回収を前提にしてない。 俺達を本気で潰そうとしてる。 ......足手まといの俺が...あんな化け物を倒すヒーローになんか......なれっこない。 「さぁ、いくぞォッ‼︎」 怪人が引き金に指をかけ、銃口を俺達に向けて走り出す。 「さっさと終わらせるぞ!」 蓮くんに続いて、涼くん...育也くんも走り出す。 ......このままじゃダメだ。 本当は怖くて、今にも逃げ出したいっていうのに 俺は引きずられるように足を踏み出して、皆の後に続いた。 ** 「おいッ、離せ‼︎」 ライトに強引に引きずられ、視界が黒い煙に包まれる。 だけどすぐに暗闇の中から抜けて、光のある世界へと戻ってきた。 辺りの景色はさっきいた所とあまり変わらない。 ......つまり、少し離れた所に連れてこられたって事なのか。 「喚くなッ......」 俺を捕らえていた腕が離れ、すぐさま振り向いて構える。 乱れた帽子と服を整えながら、ライトは俺を一瞥する。 剣の柄に手を置いて、ゆっくりと引き抜いて切っ先を俺に向けた。 口元に薄く浮かべる笑み。 わずかに開いたその隙間からは、抑えきれない闘志が溢れ出しているように見えた。 「この時をどれほど待ったか」 まっすぐ向けられる瞳は確かな光を宿している。 俺は剣を手の中に呼び出し、腰を低くして構えた。 ・ ーーッ⁉︎ その時、 どこからか爆発音が聞こえた。 ここからそんなに離れてはいない。 おそらく蓮たちだ。 「向こうが気になるか?」 俺の様子が気になったのか、ライトは表情を変えずに訊いてきた。 「だったら俺をすぐに倒せばいい」 「......そうさせてもらうッ!」 ライトの強さは嫌というほど味わった。 決しておごりはしない。 何歩か踏み出し、剣を振り上げライトの顔面めがけて刃を叩きつける。 ライトはそれを微笑みながらも俊敏な動きで右に避け、剣の切っ先を突き出した。 速い。 けど、今なら見える。 顔を動かして紙一重で回避し、振り下ろした刃を横にして腕を引く。 ライトは俺の剣に擦りつけるように刃を当てて、力を込める。 俺の刃はライトの脇腹まで迫ったが、それが傷をつけることはなかった。 無数の火花が俺達の間に散り、同じタイミングでどちらも大きく距離をとる。 若干乱れた帽子を整え、ライトは俺を見る。 相変わらずその口元には薄い笑みが貼り付いているが、その表情は先ほどより余裕がないように見えた。 「......本当に強くなったな。戦ったのは一回だけだが分かるぞ。以前のお前なら、これだけで息を切らしていたはずだ」 「褒めてくれてありがとよ」 「ふん」 体力的には疲れてはいない。 だけど……今の小競り合いで俺の中の何かがごっそり持っていかれたような、精神的な疲労感がある。 「なぜ炎の力を使わない? それを使えばもっと有利に戦えるだろう」 「......」 あの時の俺との大きな違いは、やはり炎の力だろう。 ここは障害物も多く、地形も平坦じゃない。 うまく使えば、きっと有利に戦えるはずだ。 ーーでも。 「いいや。お前は剣だけで倒す」 蓮たちの所へは早く向かいたい。 ......だけど 俺の中のライトに対する恐怖心を消すには…… いや。 恐怖というよりは…… ……意地、なのかもしれない。 こいつには、剣だけで勝たなきゃいけない気がするんだ。 「そうか。良い心がけだ」 「......ッ⁉︎」 そう呟いた直後、ライトの纏っていた空気が一変する。 「なら俺も全力で相手をしなければな」 これがこいつの本気......。 ……この時のために俺は、蓮と一緒に修行してきたんだ。 ーー死闘。 これからここで繰り広げられるのは、本気の殺し合いだ。 「さぁ、行くぞォッ‼︎」 ライトの肩でなびくコートが風を切る。 鈍く光る刃が、線となって襲いかかり それを俺の赤い刃が受け止める。 刃を押し合いながら、お互いの顔が近づく。 ライトの目には、ギラついた光が宿っている。 ......きっと今の俺の目も、ライトと同じなんだろう。 望んで戦うわけじゃない。 でもこいつに勝つには、こいつと同じステージに立たなきゃいけない。 必ず……勝つ。 そして、蓮たちの所へ必ず戻ってみせる。 ** 火花と共に放たれた弾丸が、木々の間を飛び交う。 「奏多ッ!!」 涼くんに腕を掴まれ、木に隠れるように引っ張られた。 木の裏側には何十発もの弾丸が当たり、表皮を削る生々しい音がやけに耳に響く。 「ボーッとすんな!」 「……ッ、ごめん」 いつもより低い、切羽詰まった涼くんの声。 マスクをしていても...その表情が焦りに染まっているのが分かる。 こんな涼くん、普通じゃありえない。 ……涼くんがこんな風になってるのに、俺がどうにか出来るわけがない。 俺じゃ……何の力にもなれない。 「無理だよ涼くん……ッ」 「は? 何言ってんだお前?」 「俺……何もできないよ」 逃げたい。 死がすくそばまで迫っているこんな危ない場所から……逃げたくなった。 今まで重かった足が突然軽くなり、1歩後退するとそのまま2歩、3歩と流れるように動く。 「待て奏多ッ!!」 右足に感じた違和感。 いつもより深く沈む足と 何故か下がり始める視界。 「えーーッ?」 「くそッ!」 俺の手を掴んで引っ張った涼くんは、俺と入れ替わるように視界から消える。 地面に尻餅をついた俺が見たのは、地面に空いた大きな穴に落ちていく涼くんの姿だった。 「涼くんッ!」 慌てて起き上がって手を伸ばしても、もう遅かった。 暗くて見えない穴の底へ、スーツを纏った涼くんの姿は消えた。 「そんなッーー」 「誰も罠は地雷だけとは言ってない。貴様らが来る前に、他にも仕掛けさせてもらった」 怪人の声が聞こえたけど、今の俺に気にしている余裕はなかった。 穴の先は真っ暗で何も見えない。 もしかなりの高さがあったら、例えスーツを着ていても涼くんは...... 「ーーッ!」 穴の中から何かが出てきた。 それはゆらゆらと揺れながら、ゆっくりと昇ってくる。 ーーあれは。 「離れろ奏多ッ」 横にやってきた蓮くんが俺を立たせて、強引に穴から引き離した。 「蓮くんッ⁉︎」 「大丈夫だ、涼は死んでない。ただ......」 ......穴の中から出てきたのは、ピンク色の煙。 あれは見たことがある。 敵に捕まった涼くんを助けに行った時に、俺と蓮くんが浴びてしまった煙だ。 ということは、もう涼くんはあの時の俺みたいになってるのか......。 「涼はもう動けない。俺たちだけでなんとかするしかない」 そんな...... 無理だよ。 4人でも厳しかったのに、涼くんがいなくなって まともに戦えるのは蓮くんと育也くんだけだ。 「さぁ、どうする? 俺の銃弾を避ければ罠にかかる。罠を気にすれば銃弾に当たる。逃げ場はもうないぞ」 「...2人とも、大丈夫?」 遅れてきた育也くんが小声で聞いてきた。 ......でも俺は、なんとか頷き返すことしかできなかった。 「涼くんは?」 「ダメだ」 再び穴を確認してみると、煙はもう見えなかった。 前もそうだったけど、あの煙はすぐに消えてしまうらしい。 「そう......でも大丈夫。銃弾は僕のバリアで防げる。2人は罠にだけ気をつければーー 「おっと、そうだったな。ガーディアングリーンはバリアを使えるんだったか」 育也くんの言葉を遮り、おもむろに銃を下ろした怪人は、ズボンのポケットに手を突っ込んだ。 取り出した手の中にあったのは、小さな機械だった。 怪人がニヤリと笑い、黒いボタンを親指で押す。 瞬間、足元から微かな震動を感じた。 ーー全員がすぐに気づいた。 そして1番に動き出したのは育也くんだった。 「2人ともッ!」 育也くんが俺と蓮くんを突き飛ばし、直後彼の足元からピンク色の煙が噴き出した。 地面に触れ広がろうとする煙。しかしそれを遮るように緑の壁が展開した。 俺たちを助けるためにわざとバリアを......。 「うっ! ゴホッ......」 育也くんの姿が煙に覆われ、見えなくなっていく。 バリアの中からは育也くんの咳しか聞こえない。 ピンク色が徐々に消え、ドサッという音が聞こえたと同時にバリアは消失した。 「あ......ッ、はぁッーー」 地面の上には緑色の競パンだけを身にまとった育也くんが倒れていて、その顔は赤く火照り、胸は速く上下していた。 ビクビクと震え、窮屈そうに競パンを押し上げるイチモツの先っぽには 透明な雫が付着していて、ヘソの下を淫らに汚していた。 「育也くんッーー」 何も考えず、ただ駆け寄った。 苦しそうに呼吸する育也くんに触れようとすると、弱々しい声で拒絶された。 「さわら...あッ...ないで。我慢できなく......なっちゃう...から」 そう呟く育也くんの右手はゆっくりと股間へと伸びていく。 しかしそれを左手がグッと掴み、腹筋に押しつけた。 この煙を吸った時の感覚は今でも覚えてる。 体が突然熱くなって、気持ちよくなること以外何も考えられなくなる。 肌の感度も急激に上がって、自分を気持ちよくさせてくれるものなら何でも求めるようになってしまうんだ。 「どうすればーーッ」 「スキありだッ!!」 ーーしまったッ 振り向いた瞬間見えたのは銃をこちらに向ける怪人の姿。 発砲されたのを確認し、避けようとしたがすぐに止まった。 このまま動けば、育也くんに当たる。 今彼を守れるのは......俺だけだ。 「うあっ!」 背中に銃弾が直撃し、続けて何十発も襲いかかる。 「グァァッッーー!」 あまりの痛さに背中を仰け反らせた。 一瞬呼吸が止まり、視界が白く濁った。 痛い......こんな痛み今までに感じたことがない。 もしスーツが強制解除されれば、俺はーー。 「かな......たッ」 震える声で育也くんが呟いた。 前を見れば、そこには俺を見つめる育也くんがいて...... どうしてかな。 こんな時だっていうのに...... 育也くんの火照った顔 苦しげに呼吸するたびに上下する胸 俺を見つめる潤んだ瞳 そして 痛いほどに張り詰めたイチモツは 先端から透明な汁をただこぼし続けていた。 「バカ...こんな時にッーー」 自分で吐き捨てた。 でなければ不意に生まれた欲望に飲み込まれそうだったから。 でも......そんなものは勝手に消えた。 すぐに死の恐怖が蘇ったからだ。 「うっ......ッ...!」 背中に無限に浴びせられる銃弾。 もう背中の感覚なんてなかった。 これ以上意識を繋ぎ止めてられない。 ......俺にはもうどうすることもできない。 結局俺はーーみんなの足手まといでしかなかった。 ・ 「しっかりしろ奏多ッ‼︎」 その声が聞こえた瞬間、背中に感じていた全ての感覚が消えた。 銃弾が何かに当たる鈍い音が聞こえる。 ゆっくり振り向いて見てみると、俺の前に立っていたのは蓮くんだった。 彼の前に造られた氷の壁が、銃弾を防いでいた。 「立てるか?」 「ごめん俺......」 「...どうして謝るんだ?」 「だって......涼くんも育也くんも...全部俺のせいだ。俺が足手まといだからーー」 「奏多......」 「育也くんと涼くんを連れて逃げて......俺が盾になるよ。それぐらいなら俺だってーー」 「ふざけたことを言うなっ!」 蓮くんは俺の両肩をがっしりと掴んで、マスク越しに俺の目をじっと見つめる。 「足手まといなんかじゃない。涼と育也のことだってお前だけのせいじゃないだろ」 「...俺はーー」 ......。 少しの間が空き、蓮くんがゆっくりと口を開く。 「前に蒼汰も...俺に弱音を吐いたことがある」 「蒼汰くんが?」 「でもどうだ? 今のあいつは強いだろ?」 穏やかな声で話す蓮くんの背後で、氷の壁にヒビが入るのが見えた。 「蓮くん、氷がーー」 「いいから聞け。どうしてお前が自分のことを足手まといだと思ったかは分からない。でもな......」 1発の銃弾が氷を貫いた。 まるでドミノの壁が崩れるように氷が勢いよく砕け散り、無数の銃弾が俺たちに襲いかかる。 「くっ......ッ!」 蓮くんは俺を庇うように抱きしめて、全ての弾丸をその身1つで受け止める。 「やめて蓮くん!」 「俺たちはお前のことを1度だって足手まといだと思ったことはない」 ......どうして どうして笑ってるの? 笑みを浮かべることすらできないはずの痛みなのに どうして俺に笑顔を見せられるの? 「奏多......お前は必要な存在だ。お前がいなくなったらッ......ぐッ......」 「もうやめて蓮くん......お願いだからッ」 「蒼汰も、涼も、育也も......お前も、俺には必要だ」 俺を抱きしめる蓮くんの力が弱まっていく。 それに比例して、声も弱くなっていく。 「もし...まだ信じきれないなら、俺だけでもいいから......信じて...くれ......」 銃弾は止まない。 蓮くんの意識が途切れてもーー ーー止むことはない。 ・ 「ふん! 仲間を庇うとは素晴らしいな! なら貴様から死ぬといいッ‼︎」 信じてくれと......蓮くんは言った。 だったら俺がするべきことは1つだけだ。 「......やめろ」 空っぽだった四肢に力がみなぎり始める。 さっきまで感じていた痛みが不思議と消えて 手に持っていたハンマーの柄を握りしめた。 「蓮くんを傷つけるなぁッッ‼︎‼︎」 全身に感じた振動。 地面が大きく波打ったと思った瞬間、蓮くんの背後の地面が大きく盛り上がる。 怪人の放つ銃弾が、その分厚い土の壁を貫くことはなかった。 「これは......」 気を失った蓮くんをゆっくりと地面に横たわらせて、立ち上がって大きな壁を見つめた。 もしかしてこれは......俺がやったのか? 「これが俺の力...?」 試しにもう一度...... 足元の地面に視線を下ろし、盛り上がるよう念じると、ボコッと小さな山ができた。 ーーやっぱりこれは俺の力だ 「蓮くんのおかげだよ」 小さな声で呟いた。 蓮くんが身を挺して俺を守ってくれたおかげで俺は力を手に入れた。 ......俺をまたヒーローにしてくれた。 ・ それから...俺気づいたんだ。 ずっと前から感じてた蓮くんに対する気持ち。 今までそれがなんなのか......分からなかったけど いや、分かっていたけど否定していたのかもしれない。 ......俺は蓮くんが好きだ。 ** 土の壁の前に出て、怪人と対峙する。 「なんだ? 怯えていた情けない男じゃないか」 「......もう怯えてなんかないよ」 「ふん。どうやらおかしな力を手に入れたようだが、そんなものでこの私に勝てると?」 「勝てるさ。特に俺の能力はあんたと相性がいい」 「なんだと...?」 こいつとの戦いで1番厄介なのは地面に仕掛けられたトラップ。 それさえなければ、俺1人でだって倒せるはずだ。 ーー意識を集中させる 「......ッ」 頭が痛い......。 手に入れたばかりの力を無理に使おうとしているせいなのか 最初は頭だけだった痛みが徐々に下へ広がっていく。 ーーでもッ こんなの...さっき感じた痛みに比べればーーッ‼︎ 足元から目に見えない何かが広がり、地面に埋められた罠の場所と数を把握する。 その数50以上か......。 これだけを設置するのは随分大変だったはずだ。 だけど......全部破壊させてもらう。 ハンマーを軽く地面に打ちつけると、そこから亀裂が入り一瞬にして広範囲に広がっていく。 そこかしこで爆発が次々と起こり、仕掛けられていた罠を強制的に発動させる。 「な、まさかこんなことが...ッ!」 爆発が止み、離れたところでピンクの煙が発生するのが見えた。 「さぁ、これで罠は無くなった」 俺がそう言うと、怪人は目を見開き、歯を剥き出しにして俺を睨みつける。 こめかみには何本も筋が浮かび、怒りに震える腕で銃口を向ける。 「これで俺を追い詰めたつもりか? 人間ごときが...おかしなスーツを着ただけで私に勝てると思うなぁッ‼︎‼︎」 ーー勝てるさ。 このスーツを着てるからじゃない。 皆がいるから、俺は戦える。 皆がいるからーー 「絶対に勝つッ‼︎」 怪人の前に巨大な壁を作り出し、視界を遮る。 その隙に一直線に進み、さらに力を発動させる。 地面が少しだけ盛り上がり、それに足を乗せると同時に先の地面がより高く伸びていく。 地面を階段状に盛り上げて、それを一気に駆け登る。 ハンマーの柄を握りしめ、最上段から飛び降りた。 この間は2秒もなかったはずだ。 だが怪人はすぐさま俺に向けて銃口を向ける。 あぁ、分かってたよ。 こいつはこんなことでは動じない。 だけどーー。 怪人の足元の地面にヒビが入り、直後深く陥没した。 「なにっーー⁉︎」 身体が斜めになり、怪人が視線を一瞬地面に向ける。 ......例えこれが少しの隙しか生み出せなかったとしても この距離なら必ず俺の方が速く届く。 「くそッーー」 怪人が再び見上げた瞬間、俺のハンマーは奴の頭に振り下ろされた。 ** 「はぁぁぁッッ‼︎」 弾かれた剣が宙を舞う。 数回転し、地面に突き刺さると同時に膝をついた。 死闘......。 互いに傷を負いながら、それでも腕を動かし剣を振るった。 死の恐怖と謎の高揚感を同時に感じながら戦い...... 膝をついていたのは ーーライトだった。 ・ 「はぁ...はぁ...まさか俺が敗れるとは」 切り裂かれた服の中に見える... 真っ白な肌からは血がダラダラと流れ出している。 それは地面にまで垂れて広がり、このままでは死んでしまうことは誰が見ても明らかだった。 「さぁ、俺を殺してくれ」 「ライト......」 「頼む。俺はお前に殺されたいんだ」 震える体に無理やり力を込め立ち上がったライトは、肩にかけていたコートを落とし、頭に乗せていた帽子も投げ捨てた。 「さぁ、準備はできた」 「俺はーー」 「......俺を殺すために戦ってはいなかったか?」 ライトの目が細められ、僅かな光が宿る。 そしておもむろに笑みを浮かべた。 「甘いな。戦いの果てにあるのは死のみだ」 ......ライトは確かに敵だ。 倒さなければいけない存在だ。 だけど、俺のこの手は動かない。 だって俺は......こいつを殺すために戦ってきたわけじゃないから。 じゃあ俺は何のために......? 「なぜ俺はお前のような甘ちゃんに負けたんだろうな」 「......死ぬ必要はないだろ? 俺...お前が悪い奴には思えないんだ」 ーー風が吹く。 ライトの白い前髪を揺らしたそれに......寒気を感じた。 笑みを浮かべたまま、ライトは目を閉じる。 「......次会う時は、もう俺ではない」 「お前、なに言ってーー?」 直後、ライトの背後から黒い煙が発生した。 それは彼の体を一瞬にして包み込み、その中へ飲み込んでいく。 「頼む......次は必ず殺してくれ」 再び開かれたその瞳には ーーもう光はなかった。 何故だろう。 どうしてライトはあんな悲しい笑顔を浮かべていたんだ? 俺は......あいつを殺すべきだったのか? 俺はーー。 ・ ライトの姿が無くなった瞬間 遠くから連続で爆発音が聞こえた。 ーー蓮たちだ。 とにかく今は......あいつらの所に戻るのが先か。 ** 怪人の身体が、灰になり崩れていくのを見届けた。 初めて1人で倒したとか、色んな思いはあったけれど 今の俺の頭を占めていたのは......蓮くんだけだった。 ・ ゆっくりと息を整えてから辺りを見渡すと、地面に空いた穴が見えた。 「......そうだ」 それを見た瞬間涼くんのことを思い出した。 あの時は何もできなかったけど...今なら俺の力で助け出せる。 穴の中の地面を盛り上げて涼くんを地上に持ち上げる。 そこにいたのは、育也くんと同じように煙を吸って動けなくなった涼くんだった。 「はぁ......奏多か」 「ごめん涼くん、俺を庇ったせいで」 触れたら刺激してしまうから、なるべく触れないようにしたいんだけど 育也くんと涼くんを転送で基地に運ぶには近くにいなきゃならない。 「涼くんガマンしてね。すぐだから」 「あぁんッ... 触んなって......ッ」 「仕方ないでしょ、お願いだからガマンしてよ!」 「無理言うなってッ......」 涼くんをお姫様抱っこして蓮くんたちのところへ運ぶ。 だけど、涼くんって見た目細いのに水泳で筋肉ついてるから結構重いんだよね......。 「揺らすな奏多ッ! ヤバいから、マジで...!」 「しょうがないでしょ......っ、重いんだもん!」 くそ、ちょっとずつしか進めない。 この振動があの煙を吸った者にとってどれだけ辛いかは分かるけど......。 「やばい奏多。我慢できない」 「ちょ、ダメだってば!」 涼くんの体の熱がスーツ越しにも伝わってくる。 不意に股間に目をやれば、そこは痛いほどにパンパンに張り詰めていて、テラテラといやらしく濡れていた。 「涼くんダメだよーー」 「悪いもうダメだッ‼︎」 涼くんが全体重をかけてきて、支えきれなくなった俺は地面へ倒れた。 馬乗りになった涼くんは体を......というか主に股間を俺のスーツに擦り付け始める。 「涼くん......ッ!」 「少しだけ...ッ! な?」 「ダメだって!」 限界まで勃ち上がったイチモツを俺の太ももに擦り付けて キスをしようとしてるのかマスクに唇を思い切り押し付けてくる。 「どいてってば、涼くん!」 「一回だけイかせてくれ。そしたらやめるから......ッ」 絶対やめないじゃん 特に涼くん絶対やめないじゃん! 「やめて‼︎」 「奏多?」 俺を呼んだ声に顔を向けると、赤いスーツの蒼汰くんが立っていた。 戻ってきたってことは...あのライトとかいう怪人を倒したんだ。 スーツが相当傷ついてるからかなり激しい戦いをしたらしい。 ......って違う! 「助けて蒼汰くんッ!」 「えっ? 何か思ってたのと違うけど......まぁいいか」 蒼汰くんが涼くんを引き剥がそうと肩に手をかける。 すると涼くんは今度は蒼汰くんを押し倒して体を密着させてゆっくりと動き始めた。 「おいッ...涼......ッ!」 「もう誰でもいいから......一回だけでいいからイかせてくれッ‼︎‼︎」


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