G.O.E 〜第14話 【反抗の黒、伝えられぬ言葉】〜
Added 2020-10-02 09:54:18 +0000 UTC床に胡座をかいて座るオウンが、自分が創り出した怪人が負けたのを感じ取り、呑気に呟いた。 普通なら罰を与えるところだ。 こいつは俺の前に現れてから何体かの怪人を創ったが......正直ライトやレフトのものより明らかに強い。 こいつは俺の瘴気無しで......あれだけの怪人を創り出せる。 つまり、ライトやレフトとは違って、奴は大量の瘴気をその身に宿しているということだ。 未だに謎な部分が多い男だが、力があることだけは確かだ。 「次はどうしようかなぁ......あまり時間はかけたくないし」 おもむろに立ち上がり、ウロウロと歩き回るオウン。 そして、何かを思いついたかのように手を叩くと、俺に早足で近寄ってきた。 「ねぇねぇ」 「......なんだ」 「ちょっとさ、手伝って欲しいんだよね」 「手伝う?」 「そう。君が持つ大量の瘴気で創ってほしいものがあるんだよ」 「武器とかならお前の瘴気だけで充分だろ」 「違う違う、そんなんじゃないよ!」 眉を八の字に曲げ、首を大げさに振るオウン。 イラつきを覚えながらも、俺は何が欲しいのかを聞いた。 「僕が創ってほしいのはね、空間なんだよ」 「空間だと? どれだけの瘴気を消費するか分かってるのか?」 「分かってる、だからお願いしてるんだよ」 「......空間を創るほどの瘴気を使うとなると、俺はしばらく実体化できなくなる。俺にそれをさせるだけのメリットがお前にあるのか?」 ...まるで、鳩が豆鉄砲を食ったような顔で見るオウン。 そしてニヤリと笑い、俺に顔を近づけた。 「ないと思う? 君ってそんなバカじゃないよね?」 「......」 ......全力を出せれば、こんな奴一瞬で消滅させることができるのに。 だが、今の俺には不可能だ。 こいつが1人で創り出した怪人の強さ...... 俺ではあれだけの怪人を創ることができない。 普通に考えても、こいつの言う通りにすることが最善の選択だった。 「......いいだろう。その代わり、必ず成功させろ」 「分かってるよ。じゃあこういう空間をーー」 ・ ・ ・ ・ ・ ウィルがゆっくりと目を閉じる。 玉座に腰掛けるその体が瘴気となって霧散し、高く舞い上がる。 そして、この空間に漂っていた全ての瘴気がそれに続く。 まるで1匹の龍がそこに存在しているかのような...... そんな威圧感と重厚感がこの場を支配する。 そのあまりの強大さに、息がつまる程だった...... ・ ・ 「......なんてね」 ようやく消えた。 もちろん僕では特殊な空間を創りだすことはできない。 だけど......本当の目的は、ウィルをこの場からしばらく退場させること。 「......ふふっ。僕は今までの奴らと違って甘くはないよヒーローども」 ここからは僕の独壇場だ。 やりたいように、やらせてもらう。 ** 閑静な街中に響き渡る、1発の銃声。 アスファルトが砕ける鈍い音、そして聞こえるのは何者かの悲鳴。 「はあッ‼︎」 威勢のいい掛け声の後、突如として現れる炎の壁。 それは雪崩のように道路を突き進むと、最後は小さな焔となって消えた。 「......やったか」 炎の後ろから現れたのは、色とりどりのスーツに身を包んだ男達。 「よし、勝ったぁ!」 「頑張ったね」 ガッツポーズを決める奏多に、優しく笑う育也。 怪人にトドメを刺した強力な一撃ーー。 肩を大きく上下させている蒼太のそばに蓮がやってくる。 「大丈夫か?」 「あぁ...ありがと」 ・ ......最近急に怪人が強くなった。 直接戦っているから分かる。全員が感じてるはずだ。 だから倒すのにも一苦労するわけだけど......。 「あれ、もう終わっちゃった?」 背後から聞こえた声に振り向くと、黒いスーツを着て、変身した涼が立っていた。 「涼くん遅いよ! すげぇ大変だったんだから!」 「悪い悪い、練習中で気づかなくてさ」 その軽い口調からは、あまり反省している感じはしないけど...... 恐る恐る蓮を見ると、案の定涼を睨みつけていて、軽く息を吐いてから彼に向かって歩き出した。 「おい涼」 「ん?」 「最近遅れてくることが多いな」 「しゃーねえだろ、こっちも忙しいんだよ」 「......怪人が急に力を増してきているのはお前も分かっているはずだ。俺たちがやられたら終わりなんだぞ?」 「分かってるよ悪かったって......勝ったんだからいいじゃん。なぁ奏多?」 「え...うん、まぁ......」 奏多と肩を組み、歩き出す涼。 蓮はその後ろ姿をただじっと見つめていた。 「まぁ涼もあんな感じだけど悪気があるわけじゃないだろうし」 蓮の肩に手を置いてそう言うと、深く息を吐いて俺に向き直る。 「......もういい」 蓮と前より一緒にいるようになって気づいたけど...... 蓮って喋りに関しては不器用なんだよなぁ。 言いたいことをきつめの口調で言っちゃうところがあるし。 涼も涼で、素直じゃないし。 一緒に戦うとなれば気が合う2人なのに......。 ・ ・ 数日後......博士からの連絡で基地に呼び出された俺たちは、大きな会議室へとやってきた。 俺以外の3人は既に着席している。 ......涼の姿はない。 ガチャリ、と扉が開き全員が視線を向ける。 入ってきたのは博士ではなく大山支部長だった。 「おはよう、そのままで結構だ」 俺たちの前......巨大なモニターを背にして俺たちを見る大山さん。 ザッと見渡すと、片眉を吊り上げた。 「四天王寺くんはどうした?」 「遅れてくると思います。すみません」 蓮が眉間にしわを寄せながら、頭を下げる。 「...そうか、まぁいい。今日集まってもらったのは合同ミーティングのためだ」 「合同ミーティング?」 「あぁ、一ノ瀬くんはこれが初めてだったね」 そう言った大山さんが、俺に軽く説明をしてくれた。 G.O.Eは日本にいくつか支部があり、そこにいるヒーロー達と不定期に情報交換をするらしい。 どのような怪人が現れたか、犠牲者はどれくらい出てしまったのか、証拠隠滅はしっかりできているか...... ともかく、大山さんへの報告がてらに俺たちも他の支部と交流をしよう...ということらしい。 ・ ・ 「......さて、今回はこの辺にしようか」 あれから小一時間ほどモニター越しに色んな人たちと話をして キリのいいところで大山さんがそう言い、合同ミーティングは終了した。 「ではみんな、これからもよろしく頼む」 ・ 大山さんが部屋を出て行き、ほとんど入れ替わりで博士がやってきた。 「あれ、どうしたの博士?」 「それがね〜」 奏多はただ質問しただけなのに、何故か隣に腰を下ろす博士。 肘をつき、重ねた手の甲にあごを乗せ横目で俺たちを見る。 「涼くんがね、今日がパンツのメンテナンス日だっていうのに来ないのよぉ。ほら、私も意外と暇じゃないから」 「へぇ......暇じゃないんだ」 「ちょっと奏多くん、なにその言い方」 そのとき、部屋の扉が勢いよく開く。 「おい博士! こんな所にいたのかよ」 片手に黒の競パンを持った、ジャージ姿の涼が入ってくる。 軽い足取りで歩く彼の前に、すかさず蓮が立ち塞がった。 「...なんだよ?」 「最近やけに遅刻が多いな。怪人が出た時も、会議も」 「...しゃーねぇだろ。俺大変なんだって」 こめかみをかきながら、苦虫を噛み潰したような表情になる涼。 「お前は大学で勉強しかしてないのかもしれないけど、俺は水泳もやってんだぜ? しかもかなり真面目に」 言葉を返さない蓮。 少し間を置き、ため息をついてから口を開いた。 「じゃあ水泳一本に集中したらどうだ? 最近はお前が来る前に怪人を倒せているし、いてもいなくても変わらない」 「は?」 「おい、蓮ーーッ」 肩にかけていたカバンを下ろし、蓮に近づく涼。 完全に怒っている涼と、無表情の蓮が睨み合う......。 「どういう意味だそれ、辞めろってか?」 「そうしてもらっても構わない」 一瞬、息を吸う涼。 次の瞬間には競パンをテーブルに勢いよく叩きつけていた。 「じゃあやめてやるよッ‼︎」 そう言い残して、部屋を出ていく涼。 「涼くんっ!」 その後を育也が追いかけていく。 俺は蓮に近づいて声をかけた。 「...言い過ぎだろ。あんな言い方ーーッ」 「あぁでも言わないと......変わらないだろ。やる気がないのにいつまでもいられても迷惑だ」 「あら、私はいてもらってもーー」 「博士は黙っててッ」 奏多と博士の会話も気にせず、蓮はイスに座って黙りこくっている。 いつもは頼りになるその背中は......今はやけに小さく見える。 ーーめちゃくちゃ落ち込んでんなぁ。 言葉下手が最悪な形で発揮されたな......。 どっちも素直じゃないんだから...はぁ......。 ・ 「涼くん!」 早足で歩く涼くんに何とか追いついて声をかけた。 振り返った彼は嫌そうな顔をしていたけど......放っておくわけにもいかない。 だって同い年だし...ここに入った時期も一緒だし...。 ヒーローとして頑張っていたのは、お互いがよく分かってるから。 だから涼くんが惰性で遅刻してきてないことも知ってる。 それと、プライドが高いっていうか頑固っていうか......変な意地があるのも知ってるし。 「......本当に辞めちゃうの?」 目を逸らして、口ごもる涼くん。 何かを言いたそうに口を開きかけたけど、すぐに閉じられた。 「......悪い、練習があるから」 それだけ言うと、涼くんは背を向けて行ってしまった。 足早で離れる背中に......僕はこれ以上声をかけることができなかった。 ** とある廃屋の一室。 窓枠に腰掛け、月の光を浴びて輝くスナイパーライフルを磨く男。 口笛のメロディーが不気味に響き渡る。 扉が開き、1人の青年が入ってくる。 床に倒れる何十人もの男たちの間を歩き、窓枠の男の前で足を止める。 「うん、ちゃんと機能してるね」 「あぁ、すごいぜこの銃弾...あとこれか」 男が懐から小さな紫色のリングを取り出す。 「そりゃそうだよ。どれだけの瘴気を使ったと思ってるの」 へぇ...と興味なさそうに呟く男。 その後すぐに、「あっ」と思い出したようにオウンを見た。 「なぁオウン様、そいつらどうするよ」 「...そうだねぇ」 振り返ったオウンの視界には...... 無様に喘ぎながら、己の精を吐き出す男たち。 異様に膨らんだ睾丸が、さらに不気味さを醸し出す。 「せっかくだから使うか。一般人だったらヒーローたちも手は出せないだろうし」 「オーケイ」 「...ったく頼むよ。君には期待してるんだから怪人くん」 「任せときなよ。ヒーローどものアヘ顔を見せてやるからよ」 オウンに対してウィンクする怪人。 ......オウンの唯一の悩みといえば、自分の作り出す怪人は全て個性が強すぎることだった。 ・ ・ 涼が辞めると言って出ていってから3日......。 育也も博士も連絡は取れないらしい。 アプリのトーク画面を開いてはみたものの......一文字も送れない。 あんなことを言った手前、謝るとか......そういうのは言いづらいし。 「......はぁ」 「どした?」 「うわっ!」 背後からいきなり声をかけられて振り返ると、蒼太が立っていた。 「何でそんな驚くんだよ」 「いや......別に」 「珍しくため息なんかついてさ......涼のことだろ?」 「......違う」 「何でそこで嘘つくんだよ!」 蒼太は向かいのイスに座り、何冊か教科書を取り出す。 「まぁいいや。それよりこれ、教えてくれよ」 「あぁ」 蒼太と待ち合わせていた理由は、教科書の分からない部分を教えて欲しいと言われたからだ。 「ここなんだけどーーッ」 蒼太が教科書を開いた同時だった。 全身に感じた悪寒。 もう蒼太も慣れたものらしい......怪人が現れたということだ。 「...マジか」 「後で教えてやるから。行くぞ」 ・ ・ 怪人が現れた詳しい場所を博士から教えてもらった。 途中で育也、奏多と合流してからその場へと向かう。 ......ただおかしいのは、周りにいる人たちがあまりに普通すぎることだ。 怪人が現れればまずは逃げ出す人たちの群れとぶつかるのに、今日はそれがない。 「...本当に怪人いるんだよね?」 奏多の問いに返事ができるものはない。 変身しようにもできず......かといって怪人の姿も見えない。 競パンの故障かとも思ったが......博士の技術だけは確かだ。 ・ 4人で少し速めのペースで歩いていると、突然全身に小さな衝撃が走った。 「なっ......⁉︎」 急に全身が涼しくなり、違和感を覚えて下を見る。 さっきまで確かに服を身につけていたはずなのに、今の俺は何も着ていなかった。 変身に必要な競パンさえ消えてしまい、全裸の状態だった。 「ちょ、何これ⁉︎」 他の3人も見ると、同じように全裸になっていた。 「......人もいなくなってる」 育也の言葉で気づき、辺りをすぐに見回した。 先ほどまで聞こえていた騒音が一瞬にしてなくなり、この場にいるのは俺たち4人だけ。 ーー別の空間に移動した? 見た目は先ほどと変わらないが......明らかにこの場所は異質だ。 「何だよこれ......変身できないぞ」 「それが奴らの狙いだな」 変身できないとなると、怪人と戦うのは難しくなる。 特に今回は何の準備もしていない。 ......最悪の状況だ。 こんな最悪な状況にも関わらず、立て続けに問題は襲いかかる。 道の先......曲がり角から姿を現した4人の男。 何かから必死に逃げているのか、よろけながらもこちらへ向かってくる。 俺たちと同じように全裸の状態だ。 変身していないとはいえ、放って置くわけにもいかない。 「大丈夫ですかッ」 ゼェゼェと息を切らしながら、男たちは俺たちの前で崩れ落ちる。 それぞれに1人ずつ駆け寄り、状態を確認する。 肩を上下に大きく動かし、かなり疲労しているのは見てすぐ分かった。 ......どんな怪人に出会ったんだ? 「...た、助けてくれ」 「一体何があったんですか?」 「......苦しい」 「え?」 顔を上げた男は、突然右手を俺の股間へ伸ばした。 「おいッ⁉︎」 俺のイチモツに触れ、ゴソゴソと手を動かす。 慌てて離れ、自分の股間に視線を落とす。 「...これは......?」 イチモツの根元に、いつの間にか紫のリングがつけられていた。 それは勝手に縮こまり、根元を締めつける。 「くそ、なんだこれ⁉︎」 蒼太の声で他の3人も見ると、同じようにリングをつけられていた。 「......助けてくれよ」 地面にうずくまっていた男たちがゆっくりと立ち上がる。 その瞳は光を宿しておらず、誰一人として正気でないことは一目瞭然だった。 「お前たちを倒せば解放してくれる......」 「な、戦う気かよ⁉︎」 「どうする蓮くんッ?」 奏多が俺を見る。 ......倒されるわけにはいかないが、かといって相手は一般人。 変身していないとはいえ、俺たちが相手をすれば怪我をさせてしまうかもしれない。 「おらぁぁッ‼︎」 答えを出す暇もなく、男たちが飛びかかってきた。 「くそッ」 咄嗟に体を引き、振り下ろされた腕をかわす。 どうやって対処する......? 一人でいくら考えても、答えが一向に出てこない。 こんな時に涼がいてくれれば......あいつならどんな答えを出した? 『じゃあやめてやるよッ‼︎』 涼の言葉が、こんな時に頭の中を駆け巡る。 くそ、どうすればーーッ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 吹く風と共に流れてくる軽快なメロディー。 口笛を吹きながら、怪人は悠々とスナイパーライフルを組み立てていた。 「お、やってるやってる」 ......ビルの屋上から、一旦手を止めて眺める怪人。 操られた男たちと争う...4人の男。 「あいつらがヒーローか」 ライフルを組み立て終え、スコープを開けて目を当てる。 照準の真ん中に......男たちと戦う4人を捉える。 「動くなよ......狙えないだろ」 舌打ちをし、スコープ越しに動きを追い続ける。 そしてようやく、1人の男が掴み合いになり動きを止めた。 「ほいきた、1人目」 重い音が響き渡った瞬間、銃弾は男の胸を貫いた。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ーーバァァンッ‼︎ 空間を駆け抜けた銃声。 視界の端で、誰かが倒れるのが見えた。 「ーーッ⁉︎ 蒼太ッ‼︎」 アスファルトに倒れたのは蒼太と、掴みあいになっていた男。 「うあっ......‼︎」 「蒼太、大丈夫かッ⁉︎」 「あぁ...イ、イクッーー」 何故かビンビンに勃ちあがっている蒼太のイチモツ。 同時に倒れた男の方を見ると、同じように勃起し、そして射精していた。 「イクッーーあ、なッ?」 だが一つだけ違ったのは......蒼太は射精しなかったことだ。 「何で⁉︎ あぁッ、あッ‼︎」 射精しようとビクビク勝手に動くものの、その先端から漏れるのは透明な液体のみ。 血管が浮かび上がった蒼太のイチモツは、元々のデカさと相まって更にインパクトが強くなる。 グロテスクとさえ思えるそれを握りしめて、蒼太は大声で喘ぎ始めた。 「イケないッーーぁ、無理ッ‼︎」 「蒼太...どうすれば」 「頼む蓮ッ、イかせてくれッ‼︎ アァッ...」 その表情に苦痛を浮かばせ、涙目で俺を見上げる蒼太。 必死に訴える蒼太の体に、新たな変化が現れた。 イチモツの下の袋......睾丸が肥大化し始めたのだ。 風船を膨らませるように、驚異的なスピードで大きくなっていく。 そして蒼太の玉は、バスケットボールほどのサイズまでになった。 「イけないッ......ぁぁ...おかしく...なるッ」 「蒼太、おい!」 パンパンに張り詰めた玉は微かな光沢さえ持ち、蒼太の内股を押し広げ、ガニ股のポーズにさせた。 「アァッ...ァ......」 「......蒼太?」 なんだ、一体蒼太の体に何が起きてるんだ? ......蒼太の視線が徐々に定まらなくなり、小刻みに体を震わせ始める。 開きっぱなしになった口端からよだれが垂れ、地面へと零れ落ちた。 「蒼太、しっかりしろ!」 「イケ......イ、イクッ」 うわごとのように呟いた蒼太が、一際腰を高く突き上げる。 その瞬間ーーホースで放たれた水のような勢いで、蒼太のイチモツから精液が飛び出した。 常識では考えられない量と勢いで蒼太の上半身を一瞬にして白く染め尽くし、地面へと一気に広がっていく。 「アッ...ガッ......ウアッ...」 精液が顔にかかり、口に入っても、それを気にすることもなく喘ぐ蒼太。 精液を吐き出したせいなのか、異常に肥大化していた玉は元のサイズに戻っていた。 ......しかしそれはまたゆっくりと膨らみ始める。 「ァ......」 微かに喘ぎながら、イチモツに手を持っていき、シゴく蒼太。 思わずつられて見ていると、濁った白に紛れる紫色を見つけた。 ーーあれは。 男たちにつけられたリング......。 あれのせいで蒼太はおかしくなったのか? 「蓮くんッ‼︎」 育也の声が聞こえ顔を上げた瞬間、目の前には緑の壁が広がっていた。 直後ーーコンマ数秒遅れて再び聞こえた銃声。 育也の作り出したバリアに銃弾がめり込んでいた。 視線の先見えた小さな光。 雑居ビルの屋上で、陽の光を反射する何かがある。 ......あいつが蒼太を狙撃したのか。 「こんな広いところじゃ相手の思うツボだ、一旦逃げよう」 「...でも、蒼太がーー」 「蓮くん‼︎」 育也が俺の手を掴み、強引に立ち上がらせた。 バリアを張りながら、足早に後ずさる。 「蒼太くんは今は無理だよ。何とか態勢を立て直してここから出る方法を考えようッ」 何度も響く銃声。 育也のバリアに次々と衝突する銃弾。 路地裏に逃げ込むと同時に、更なる銃弾を防いだ瞬間バリアは砕け散った。 ** 「ひとまずここなら安全かな......奏多くん大丈夫?」 「俺は大丈夫......蓮くんは?」 「......俺も大丈夫だ」 どうして...... どうしてこうなった? こんな姿じゃ、怪人とまともに戦えない。 それに向こうは遠距離から狙撃できる。 手も足も出せない......まさに絶対絶命だ。 「蓮くーーッ」 突如銃声が聞こえ、育也が体を前後に揺らした。 前に倒れそうになったのを地面に両手をついて何とか逃れたが、育也は荒い呼吸をしていた。 「育也ッ⁉︎」 「くッ......逃げてッ‼︎」 四つん這いの育也の股間で、勃起するイチモツ。 顔をしかめながら、育也は俺たちに視線を向けた。 彼の背後に緑の壁がゆっくりと展開されていく。 銃声が再び聞こえたが、そのバリアが銃弾を防いだ。 「逃げて......長くはもたないからッ」 「......行こう、蓮くん」 「......ッ」 ......育也までッ でも、今の俺たちにできるのは逃げることだけ。 最後の時まで......逃げ続けることだけ。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「あーぁ。お前のせいでまた逃したじゃねえかよ」 壁にもたれかかる育也を見下ろし、大きくため息をつく怪人。 ......蒼太と同じように射精することができず、その睾丸はありえないほどに巨大化していた。 体を跳ねさせながら、定まらない視点を何とか怪人に向ける。 「お前...ァ、なんかに......」 「ちゃんと話せよ」 「...うぁッ......みんなは負けたりッーー」 「......仲間を庇ったことは素晴らしいことだと思うよ」 「......ぁ」 ......何とか繋ぎとめていた意識が...ついに壊れた。 「がァッーーうッ...‼︎」 間欠泉のように吹き出した白濁液は育也の頭から降り注ぎ、壁も地面も......白一色に染め上げる。 脈打つ肉棒は、何度も何度も頭を超えるほどに精液を吐き出し続ける。 「うわぁ、すげぇ」 未だに漏れ続ける精液。 白目を剥き、すでに意識をなくした育也を少し見ていたかと思うと 怪人はつまらなそうにその場を後にした。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 心地よい喧騒に満たされた喫茶店の中で、涼は携帯の画面をじっと見つめていた。 育也と博士からの連絡が何件も届いているが、それに返信はしていなかった。 気まずいし......何より自分はもうヒーローを辞めたんだ。 「......ん?」 携帯をしまおうとした涼が、その動きを止める。 画面には『博士』の文字。 物隙博士から電話がかかってきたのだ。 数コール鳴った後、涼はため息をついてそれに出た。 「...はい」 『涼くん⁉︎ 今どこ?』 「は?.....何だよ急に」 『助けて欲しいの!』 「...なにがあったんだよ?」 『怪人が現れたから蓮くんたちが向かったんだけど、突然反応が消えちゃったのよ。変身もしてないの!』 「......だから?」 『きっと怪人の罠に違いないわ......いま頼れるのは涼くんだけなの』 博士の言葉を聞き、しばらく黙る涼。 しかし第一声はおおきなため息をだった。 「俺は辞めたんだって博士。もう関わる気は無い」 『そんな涼くん......一緒に頑張ってきた仲間じゃ無い』 「他当たってくれ」 その一言で、涼は電話を切った。 それとほぼ同時に、1人の若い男がテーブルにやってきて、涼の前に座った。 「なに、電話してた?」 「いや......別に」 「何だよ、テンション低いな」 涼とは違い、日によく焼けた男はテーブルの上のアイスコーヒーをひとくち飲んだ。 「......健成、愚痴聞いてくんない?」 「愚痴? 涼が愚痴なんて珍しいな」 健成、と呼ばれた男ははにかんで涼を見る。 その笑顔に微笑み返してから、涼は自分の胸の内を話し始めた......。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「どう思うよ。俺が悪いのかこれ?」 「うーん......難しいな」 「難しいか?」 「理由があるとはいえ、遅刻を連絡しなかったお前が悪い。まぁ、言い過ぎた向こうも悪いと思うけど」 「......うん、まぁ」 「それにお前の性格だとさ...どうせ変な意地はって謝れなかったんだろ?」 「意地なんか......」 「絶対張ってる。お前の今の顔見れば分かる」 運ばれてきた料理を頬張りながら、健成は涼を見る。 「後悔してないのか?」 「え?」 「だって、水泳やってるのに入ったサークルなんだろ?」 ......G.O.Eの事は話せない。だから大学のサークルとして健成には話したのだ。 「...うん」 「てことは相当楽しかったから入ったんだよな? なのに、喧嘩して辞めるなんて......そんな辞め方で後悔しないのかなと思って」 「でも......今更戻りづらいだろ」 「簡単だよ。お互いに謝ればいいんだ」 ......謝る。 それが解決方法なのは分かっていた。 だけど 健成の言う通り......自分の中の変な意地が邪魔をしていたんだと思う。 後悔していないのかと言われれば......してる。 危険な場所ではあったが、他の4人と一緒にいる時間は楽しかった。 戻れるなら戻りたい。 勢いだけで基地を出て行った自分は本当にバカだ。 どうして俺はあの時......たった一言を言うことができなかったのか。 ・ 健成の言葉を聞き、俯く涼。 しばらく考え......彼は立ち上がった。 「健成、ちょっと行くところができた」 「そうか」 「......悪い」 「気にすんな。あ、じゃあ今度なんか奢れよ」 「......わかったよ。じゃな」 ーー俺は本当に良いダチを持った。 心の中で最大級の感謝をしながら、上着を手に取り、急いで店を出る涼。 携帯を取り出し、物隙博士へと電話をかけた。 『涼くん⁉︎ やっぱり助けてくれーー』 「いいからさっさと場所教えろ!」 『ま、待ってね。いま場所を送るわ』 もうかなり時間が経ってるはずだ。 怪人の罠にかかったならやばいことになってるかもしれねぇ。 『パンツはどうするの? 変身しないとーー』 「あとで持ってきてくれ、切るぞ!」 通話を切り、送信された地図を見る。 「...何だよすぐ近くじゃねえか」 これなら走ればすぐに着く。 ...にしても、これだけ近くで怪人が現れてるっていうのに、どうして誰も避難していないんだ。 普通ならここら辺だって人はいなくなるはずなのに......。 「......妙だな」 嫌な予感しかしなかった。 最近怪人が強くなってきていることと何か関係があるのかーー? ・ 怪人が現れた場所の近くまで来たが、相変わらず周りの人たちは普通だ。 不審に思いながら道を歩いていると、突然周囲の喧騒が止んだ。 ハッと気づいて辺りを見ると、先ほどまであれだけいた人たちはいなくなっていて...... 風が急に冷たくなったと思って体を見ると、俺は服を何ひとつ着ていなかった。 「は?」 なんだこれ......わけがわかんねぇ。 辺りに人はいないからこの格好を気にする必要はないけどさ。 「......そうか」 変身しなかったんじゃなくて、できなかったんだ。 入ったら衣服が消える空間ってことか......。 趣味の悪い罠仕掛けやがる。 これで怪人に襲われたらたまったもんじゃないな。 「......さて」 この空間のどこかに蓮たちもいるはず。 まずはあいつらと合流することが先決だと思い動き出し 早速人影を道の向こうに見つけた。 ......道に横たわっていることに嫌な予感はしたが 案の定、その予感は的中した。 「......蒼太」 倒れていたのは2人。 知らない男と、異常に玉が肥大化した蒼太だった。 名前を呼んでも反応はない。 全身を異常な量の精液が覆っているというのに、その顔には惚けた笑顔を浮かべて 必死に右手を動かすその姿に、もうどうすることもできないと理解した。 ......ただ、他の3人の姿がない。 ということは怪人から逃げたということだ。 ......なんとか無事でいてくれればいいんだけどな。 ** 蓮くんの手を強く引っ張って、近くにあった衣服店に駆け込んだ。 なるべく外から見えない位置にしゃがみ込んで、壁にもたれさせて蓮くんを座らせる。 「はぁ......ぁ」 「蓮くんーーッ」 ......勢いよく勃起した蓮くんのイチモツは、まるで生きているかのようにビクビクと震える。 徐々に膨らんでいく玉が、まるでカウントダウンのように俺を焦らせていく。 ...俺を庇った蓮くんの腕に、怪人の銃弾が当たった。 その場から急いで離れてこの店に隠れたはいいものの、俺にはどうすることもできない。 蒼太くんや育也くんと同じように、蓮くんが狂ってしまうのを待つことしかできなかった。 「...これさえ、外れればッ」 どうして銃弾に当たるとこんな状態になるのか。 理由は分からないけど、俺たちのイチモツの根元につけられた紫のリングが原因なのは何となくわかった。 だから蓮くんのリングを外そうと試すものの、どれだけ力を込めても外れなかった。 「かな......た...ッ、逃げろ」 「無理だよッ、蓮くんを置いていけないッ」 この状況俺1人じゃどうにもできない。 蓮くんがいなきゃーーッ。 「にげッ......か...イクッ‼︎」 蓮くんのイチモツが一際大きく揺れたかと思うと、尿道の脈打つのが見えて そして想像を絶する量の精液が吹き出した。 「あ......そんなッ」 喋らなくなった蓮くんは 俺のことなんてもう意識にないのか、未だ吹き出し続ける精液を頭に被りながら、自分の肉棒を一心不乱にシゴき始める。 「蓮......くん」 ......こんな事考えちゃいけないのに 蓮くんが普段は見せることのない痴態を 俺の目の前でこんなにも堂々と見せつける。 白く汚れた...蓮くんの顔と体。 綺麗に割れた腹筋の溝を、粘ついた白濁液が滴り落ちる。 普通ではありえない姿が......俺の中の欲望を掻き立てる。 どこを見ているか分からないその表情はめちゃくちゃエロくて ......俺のチンコは自然と勃ちあがっていた。 蓮くんから目が離せない。 逃げなきゃいけないのは分かってるのに 蓮くんと一緒に俺のチンコをしごいたら どれだけ気持ちがいいんだろう。 蓮くんの姿を見ただけで、先走りをダラダラ垂らす俺の肉棒に手を伸ばす。 ーーその時だった。 背後でカチャリ、と金属音が聞こえた。 「はい終わり」 発砲音が聞こえ、俺の意識は一瞬にして飛んだ。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 蒼太を見つけた後、すぐに育也を見つけた。 蒼太と同じように意識はない。 どうすることもできないと思い、すぐに路地裏を出た。 少し歩くと、扉が開きっぱなしの店を見つけた。 そこに入ってみると...見つけたのは蓮と奏多。 ......しかしもう手遅れだった。 壁にもたれかかる蓮と、床に倒れる奏多。 2人とも...蒼太たちと変わらぬ姿でそこにいた。 ......俺がいれば、こんなことにはならなかったのか? そんな自信はないけどさ。 ただ、やることは決まった。 自分でも意地っ張りなのは分かってる。 そんな俺が謝ろうとしてるんだ。 「......ケンカの続きは助けてからだぞ、蓮」 手間かけさせやがって......。 さっさと助けてやるよ。 ・ 店の奥から物音が聞こえて、2人の男が姿を現した。 入り口からも1人の男が入ってきて、俺は3人に挟み撃ちにされた。 「何だお前ら?」 ......この場にいる全員が全裸ってのも変な状況だが 今何となくピンチなのは理解してる。 「おらぁッ!」 二人組のうち一人がタックルしてくる。 それを軽くかわし、俺は三人の姿が見えるように素早く距離をとった。 ......見た所戦闘員ではない。 てことは普通の人間ってことだ。 おそらく蓮たちはこれが理由でやられたのかもしれない。 一般人はケガさせられないからな。 「逃げんなぁッ!」 「...でも俺は違うぜ」 闘牛と同じ要領で横に動き、すかさず首に腕を回して力を込める。 「は、離せッ」 「大人しくしないと怪我すんぞ」 気道を圧迫し、ギリギリまで締め上げて意識を奪う。 動かなくなったのを確認し、床に下ろして他の二人を見た。 警戒しているのか、その動きは少しゆっくりだ。 「どうした、かかってこい」 「く、くそぉっ‼︎」 「引っかかってんなよッ」 繰り出された拳を手のひらで受け止め、腕をひねって背中に持っていく。 たかが一般人に、いつも怪人を相手にしてる俺たちが負けるはずがない。 ......蓮は慎重すぎるんだよ。 「後で説教だなこれは」 さっきと同じように男を気絶させて、最後の一人と対峙する。 どれだけ待っても一向に近づいてこないので、こちらから近づいていく。 「く、来るなぁ!」 「はぁ? お前怪人に言われて俺を襲ったくせにそりゃーー」 腕を伸ばせば届く距離。 「ないぜッ」 右腕を引き、顔面めがけて容赦無く拳を突き出した。 男はそのまま後ろに倒れた。 鼻血を出して気絶してるけど......どうせ後で記憶処理するから大丈夫さ。 倒れた男を見下ろしていると、奴の手の中にあるものを見つけた。 それは紫色の小さなリング。 そういえば最初に倒した男......タックルしてきたように見えたけど、俺の股間に手を伸ばしているようにも見えた。 「......ッ!」 すぐに振り返って蓮と奏多を見る。 二人のイチモツの根元を見てみると、思った通り紫のリングが取り付けられていた。 おそらく蒼太と育也にも付いていたはずだ。 ......この状況から考えるに 俺が倒した男たちは、俺たちを油断させるためのもの。 油断した俺たちにあの紫のリングを取り付けることが怪人の目的。 だとすると次は......? ーーッ⁉︎ 店の奥で金属音が聞こえ、すぐさま振り返った。 俺に銃口を向けるコートを着た男......いや、怪人。 「捕まえたぜ」 発砲すると同時に体を倒したが、間に合わなかった。 肩に銃弾が当たり、俺は後ろに吹き飛ばされた。 「まずいッーー」 不意打ちされたこの状況で戦うのはまずい。 俺は急いで開きっぱなしだった扉から外に出て、急いで近くの路地裏へと駆け込んだ。 そこから更に入り組んだ道を進み、あの店から距離を取る。 もう大丈夫だろうと思われる所まで逃げて、大きく息を吐いて壁にもたれかかった。 「ーーあッ⁉︎」 腰に突然衝撃が走り、次に感じ慣れた感覚が走った。 ......視線を下ろすと目に入るのは勃起した俺のチンコ。 ドクドクと、不安定な間隔で精液を吐き出していた。 地面に落ちた白い塊を見て、ため息をついた。 「くそッ......」 快楽に包まれながら、さっきの怪人の行動をなんとか思い返した。 ーーあの銃弾を受けてから射精が止まらなくなった。 そしてあのリング......膨張した睾丸。 原理は分からないが、リングをつけた状態で怪人の銃撃を受けると 意識をなくすほどの快感を味わって、蓮たちのようになるってとこか。 リングをつけられなかったのはいいけど......これじゃ怪人の攻撃は避けられない。 どうやって倒す? 武器もない。 スーツもない。 あるのは......。 自分の右手を見下ろして、目の前の壁を見た。 「......賭けるか」 俺たちを射精が止まらない状態にするだけでも充分な妨害のはずだ。 わざわざリングをつける必要はない。 でも怪人は一般人を使ってまでつけようとしてきた。 ーーつまり、リングをつけることが奴にとっては重要ってことだ。 そこに勝機は......ある。 ・ ・ ・ ・ ・ 「あぁ、せっかくの獲物を逃したぜ」 スナイパーライフルをハンドガンに持ち替え、街中を歩く怪人。 口笛を吹きながら歩く怪人は、左手に持つリングを見て舌打ちをした。 「ったく、こんなめんどいのさえなけりゃさっさと終わったのによ」 ......狙撃の自信ならあった。 だが、オウンの命令により絶対にこの紫のリングをつけろと言われているのだ。 さっき逃した男、銃弾は当たったように見えたが......リングをつけなきゃ意味がない。 怪人は心の中で悪態をつきながら悠々と歩く。 そんな彼の前に、涼は突然姿を現したのだ。 「お⁉︎」 ギンギンに勃起したチンコを右手で握り、左手を怪人に向けて伸ばす涼。 「あぁ......もっと気持ちよくしてぇッ」 口をだらしなく開き、よだれが垂れるのも気にせず涼は怪人にゆっくりとした足取りで近づく。 「おいおい、こいつ簡単に堕ちすぎだぜ」 怪人は笑った。 探す時間が省けたことと、これでオウンに叱られないという思いから、自然と笑みが溢れたのだ。 「まぁいいや。こっち来いよ、このリングつけたらもっと気持ちよくなれるぜ」 「ぁッ......お願いつけてッ!」 涼の肉棒から、歩くたびに零れだす精液。 情けない喘ぎ声をあげながら、少しずつ...少しずつ涼は近づいていく。 1メートルもない距離まで来ると、怪人が左手を涼の股間へと伸ばす。 ーーしかし それより先に、涼の左手が怪人の右腕を掴んだ。 「おいおい、そんな焦らなくても大丈夫だぜ?」 ーー快楽に堕ちた人間は哀れだなぁ 目の前の涼見て笑みを浮かべる。 「あぁ......そうだな」 だが......若干低くなった声色に、すぐに怪人は顔をしかめた。 「あ?」 俯けていた顔をあげる涼。 その顔には、先ほどまで見せていた情けない表情はみじんも残っていなかった。 「お前ーーッ」 「悪いな、これが俺のやり方だ」 右手に風の塊を作り出す。 吹き荒れる風を一つにまとめ、怪人の腹に勢いよく押し付けた。 「ぐあッ⁉︎」 すぐさま風を解放し、全力で放つ。 目を開けていられないほどの風が周囲に迸る。 少しして目を開けると、怪人は目を見開いて俺を見つめていた。 ......風はそれこそ弾丸のように怪人の体を貫通し、どてっ腹に大きな風穴を作り出していた。 「く、くそぉーーッ」 目を見開く怪人の顔が黒く変色し、そして砂になって崩れ始める。 最後はあっけなく崩れ落ち、砂埃が舞い上がった。 勃起していた俺のチンコも、次第に射精が止まり静かになっていく。 これで蓮たちも元に戻ったはずだ。 「......はぁ」 怪人を倒したという喜びよりも この後のことを考えると......めちゃくちゃ憂鬱になる。 「まぁでも......やっぱ俺がいないと、ダメだよなあいつら」 そう言葉にすることで、自分を誤魔化して... 俺は蓮たちの下へ向かった。 ** 博士から、蓮が目を覚ましたと連絡をもらったのは次の日の夕方のことだった。 水泳の練習を早めに切り上げて基地に向かい、ミーティングルームに入ると、病衣姿の蓮が座っていた。 「......おう、体調は平気か?」 「あぁ」 蓮の前の席に座って、肩にかけていたカバンを下ろす。 『簡単だよ。お互いに謝ればいいんだ』 健成の言葉がふと蘇ってきた。 分かってる。 謝んなきゃ始まらないのは分かってるけど...... いざ言おうと思うと、なんでか口が動かなくなる。 簡単だ。 悪かった、そう言うだけでいいのに。 ・ 「......悪かった」 先にその言葉を言ったのは、蓮だった。 「涼のおかげで助かった......お前がいなければ、今頃どうなっていたか」 「俺は...別に。俺一人じゃ絶対倒せなかったし。そういう意味じゃチームワークっていうか」 ーー何言ってんだおれ。 「......きつく言い過ぎたと思ってるんだ。それに、今回のことで再認識した。涼が俺たちには必要だってことが」 蓮は俺の目をじっと見ながら、しっかり言葉を紡ぐ。 「もし......お前がいいなら、もう一度ヒーローとして戻ってきてくれないか?」 頼む、そう言って頭を下げる蓮。 そんな姿を見て......俺は少しイラついた。 結局俺はガキで、蓮は大人なんだなって。 こいつはすぐに謝れるのに...... 俺は変なプライドが邪魔をして、たった一言さえ言うのに時間がかかる。 「......お、俺も、その...あの時は......悪かった」 「じゃあ戻ってきてくれるのか?」 「......うん」 「そうか、ありがとう!」 ......なんでかなぁ。 一歳しか違わないのに、どうしてこいつはこんな大人なんだ? まぁ......こいつを越えるためにも、もうちょいヒーローを続けてみるかな。 ** 時間は少し遡る……。 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 「蓮......くん」 奏多に気づかれないよう、ゆっくりと近づく怪人。 さらにその後ろに……オウンは立っていた。 彼の瞳が捉えるのは 己が作り出した怪人でもなければ 快楽に堕ちていく蓮でもない。 ......その瞳は 仲間に発情する純粋な青年に向けられていた。 ほくそ笑むオウン。 「良いおもちゃになりそうだな」 ......ウィルにこの空間を作らせたのは、ヒーローたちの素顔を知るためでもあったのだが 思いがけない収穫にこぼれる笑みが抑えきれなかった。 「......確かめてみるか」 自分の中の推測を確信に変えるため オウンはその頭の中に次の計画を考え始めた。