ビルの隙間を縫うようにある路地裏の駆ける男女の姿があった。
先行するの灰色のスーツズボンが良く似合うボーイッシュな雰囲気の女性だ。
キリリとした目元と柳眉、シャープな顔立ちと漆黒のショートヘアが良く似合っている。
均整のとれたスタイルの持ち主で、ジャケットとブラウスを盛り上げるたわわな胸の膨らみ、恐ろしいほそ括れた腰とは対照的にムッチリしたヒップに、後を追う青年も目のやり場に困っている。
特に性的な目で彼女を見ようものなら、鉄拳制裁されるのをよく知っているからなおさらだ。
彼女の名は黒瀬 忍(くろせ しのぶ)。県警の少年課に所属している彼女だが、先月までは捜査課にいた敏腕刑事であった。
ある事件を捜査していた彼女は、女を食い物のしていた男を過剰防衛によって病院送りにしてしまった結果、配属を変えられてしまったのだった。
その容疑者の父親が政界に顔が効く人物であり、上層部に圧力をかけてきた結果であった。
本日は、本来なら繁華街で行われるハロウィンのパレードの警備に着く予定だった。
だが、街中で見かけた顔にピンっときた彼女は相棒の静止を効かずに持ち場を離れていた。
「本当に、ヤツがそんなんですか?」
「えぇ、国際警察からまわってきた手配書と同じ顔よ」
フィリップ・モレール、首狩りボマーと呼ばれる欧州で連続爆破事件を起こしていた指名手配犯である。
元はフランス外人部隊に所属していた人物で、退役後は傭兵として戦地を点々としていた。
爆発物の専門家でもあり、テロリストを施設ごと吹き飛ばしたりしていた彼は、爆破に魅入られてしまったようだ。
いかに芸術的に人を爆死させるかということに拘りはじめ、傭兵部隊を追い出されたあとは、その標的を民間人へと移していった。
その人物がこの国へと密かに入国したとの情報が国際警察からもたらされていたのを、彼女は少年課に配置変えされる前に見ていたのだ。
「先輩、本当に見たんですか? でも、持ち場を勝手に離れちゃマズイですよ」
「うるさいなぁ、ならアンタは残ってりゃよかったでしょう?」
「そんな事すれば、なぜ目を離したってボクが課長に叱られますよ」
独断専行も多い彼女の監視役を後輩である高田 大地(たかだ だいち)を指示されていた。
その事は彼女も知っているからこそ、有効活用する。
「なら、早く戻れるようにアンタも探して……ほら、アンタは右に行ってッ、ワタシは左に行くからッ」
通路も突き当り左右に分かれていた。返事も聞かずに彼女は左の通路を全力で走り去っていく。
それを見送った相棒は、大きなため息とともに指示された方へと向かうのだった。
「感が冴えてる……というよりも、どうやら誘われているみたいね」
しばらくして、カンカンと非常階段を登る足音が聴こえていた。
現場に到着した時には、古びたビルの三階にフードを被った人物が入っていくのを辛うじて見つける。
その人物が扉をくぐる寸前に、チラリとこちらを見ていたのだ。
「銃がないのが悔やまれるわね」
目的の扉に取り付き、懐から特殊警棒を取り出す。剣道の有段者である彼女が持ては十分すぎる武器となるだろう。
扉の中は静まり返り、人の気配もない。倉庫として使用されているらしく、左右に棚がならび、無ハロウィングッズの入った段ボールが大量に積み上げられている。
その中を不意打ちを警戒しながら、彼女は足音を忍ばせて進んでいく。
すると、部屋の奥に人影を発見した。
(ヤツなのか?)
椅子に座っているらしく。背を向けた状態だ。奇妙なのはその頭部のシルエットが異常に大きいことだろう。
そして、近づくとその理由をあきらかになる。
(ハロウィンの仮装?)
オレンジ色のカボチャの頭をもったチャック・オー・ランタン、その仮装をした人物がそこにはいた。
身体を紫のローブで覆い、椅子に座っている。近づいても動く気配はなく、追跡に気づいてたわりに反応が奇妙であった。
「うッ、うぅぅ……」
その身体が小刻みに揺れ、かすかに唸り声が聴こえるのに気づく。
慎重に頭部のカボチャへと手を伸ばすと、それをゆっくりと持ち上げてみせる。
すると、そこには目的である指名手配犯の男ではなく、気の弱そうな女性の顔があった。
口を粘着テープで塞がれ、涙目で見上げている。ローブを広げてみれば下着姿で両手が前で縛られているのが確認できる。
「……やぁ、その様子だと女刑事さんなのかな?」
ノイズ混じりの声が彼女の首元から聴こえてきた。確認すれば、女性の首には奇妙な金属製の首輪がはめられいた。
デジタル表示板が埋め込まれており、時刻らしい数字が表示されてる。その首輪から音声は流れていた。
「くッ、どこにいるの?」
「おっと、動かないことだ。首輪が見えるだろう? それには爆薬が仕込んである。ちょっとでも変な動きをしたら……ボンッだ!!」
「――ヒッ」
男の言葉に女性がビクッと肩を震わせる。彼女自身も事前に首輪には爆薬が仕込まれているのを教えられていたのだろう。顔面が蒼白になって震えている。
その反応をどこかで見ているのだろう。忍び笑いが続いて聴こえている。
「怯えている姿を愉しむなんて、噂通りに趣味の悪い男ね」
「あぁ、愉しみ過ぎて傭兵部隊からも追い出されてしまったよ。同じ殺すなら愉しんだ方が有益なのになぁ」
爆破事件を起こしてきたモレ―ルだが、その全てが被害者に爆弾を装着して恐怖を味あわせての爆殺であった。
首狩りと呼ばれる所以となったのがこの首輪型爆弾で、恐怖で涙する被害者を周囲に見せながら、指向性の爆薬によって首だけを吹き飛ばしてみせるのだ。
「さて、マダム、まずは名前を聞かせてもらえるかな?」
余裕綽々といった相手の様子に苛立ちを感じさせられる忍であったが、冷静になって頭を冷やす。
(大地がこちらに来るまで時間を稼がないと……今にみてなさい)
「黒瀬……黒瀬 忍よ」
「ウィ、忍か……よい名だね。さて、忍にはこちらの指示に従ってもらおうか……あぁ、断ればどうなるかは、わかるよねぇ?」
「……くぅッ、わかったわよ」
顔が見えずとの、相手が愉快そうに笑っているのは気配で分かる。それに腹を立てつつも、いまの彼女にはそれに抗うことはできないのだった。
(少しでも時間を稼がないと……)
怯える女性を落ち着かせようと、手を握りしてて見つめる。
OLだろうか。黒髪の女性は華奢な身体を恐怖で震えるのを止められずにいた。
首に爆弾が仕込まれて、いつ爆発するかわからないのだから当然といえば当然だ。
「大丈夫、絶対に助けるから」
周囲をそれとなく見渡して、棚の上にカメラが設置されているのを確認する。
恐らく他にも仕込まれているだろうから死角でなにかするのも難しいだろう。
「では、まずは武装解除といこうか、警棒とポケットのモノをすべてテーブルの上に置いてもらうよ」
「わ、わかったわ……」
手にしていた警棒を置くと、懐から警察手帳に無線機、財布とキーケース、そしてハンカチと私物のスマートフォンを取り出す。
無線機に関しては電波が妨害されているのか、ビルの周囲にきた時点で通話ができなくなっていた。
それはスマートフォンを同様で、密かに相棒にメッセージを送ろうとして失敗していた。
「これで全部よ」
「貴女を信用してますが、、念のために服を脱いでもらいましょうか」
「なッ、なにを言って……」
「目の前に下着姿の女性がいるんです。脱いだ服は可哀そうな彼女に着せてもいいですよ」
半裸姿で不安げに見上げてくる彼女を見ると、強固に拒否しつづけるわけにもいかなくなる。
背格好も同じぐらいだから、胸元さえ気にしなければ着れそうだ。
「……わかったわ」
「ご、ごめんなさい」
「いいの、貴女が悪いわけじゃないわ」
脱いだ上着をテーブルに置くと、ベルトを緩めてズボンを脱いでいく。
黒いストッキングに包まれた美脚が露わになる。そこにカメラ越しに強い視線を感じさせられる。
(落ち着け、ワタシ。直で見てみたいと誘い出せればチャンスじゃないの)
弱みを見せまいと自分を鼓舞してズボンを脱ぎ終えると、目の前の彼女に手渡す。
両手を縛られた状態で苦心しながらも、脚を入れていくのを手伝って上げる。
そうして、自分を与えると、今度はブラウスのボタンへと手を伸ばす。
だが、流石にそこでは躊躇してしまう忍であったが、カメラのレンズは冷たく輝くだけで、無言の圧力がくるのみだ。
その沈黙のプレッシャーに人質の女性の方が泣き出しそうな状態だ。
忍は諦めて、ボタンをひとつ、またひとつと外していった。
すると、ライトブルーのブラジャーに窮屈そうに収められた双乳が現れる。
深い谷間をつくる乳房は重たげで、量感もタップリだ。
脱いだブラウスを受け取ろうとして、両手が縛られていることに改めて気がつかされる。
「確かに、それでは着れませんね。いいでしょう、両手の縄は解いて構いませんよ」
結果として、人質の拘束を解くことができたのは行幸だろう。
胸元のゆったりしてしまうのに戸惑いながらも、服を着れたことで少しは気持ちが落ち着いたのだろう。彼女の震えは止まっていた。
「さぁ、脱いだわよ」
「では、貴女はもう一歩も動かないで下さいね。代わりに彼女に働いてもらいます」
新たな指示は人質だった女性に告げられていった。
棚の荷物にまぎれて隠されていたカバンを見つけ出し、その中身を取り出していく。
そこには手枷などの黒革の拘束具と、ローターと呼ばれる淫具が詰め込まれていた。
両手を背後で組まされた忍に、彼女は指示に従って拘束具を装着していく。
「……うッ」
「ご、ごめんなさい」
「だ、大丈夫よ」
重ねられて手首に巻かれる手枷は容赦なく締め付けられていた。肌に吸い付くように枷の革が柔肌に密着する。
続いて二の腕にも、同様に枷が装着されると、二の腕と手首、首輪の後ろにあるリングとを十字を描くようにベルトで繋げられる。
引き上げられた手首は、これでもうピクリとも動かせない。とどめとばかりにカキンと小さな南京錠で手枷が施錠までされてしまう。
(これじゃ、アイツが目の前に来ても大したことはできないわ……)
予想以上に激しい拘束に、忍に焦りが見えはじめていた。
だが、彼女への拘束はまだ終わりではなかった。
足首にも同様に革枷が装着されたのだ。お互いが五十センチほどの鎖で繋がれているので走ることは不可能で、もちろん蹴り技も無理だ。
そうして、どうにか立っている状態の彼女の太ももをひとまとめにするように幅広のベルトが巻かれていく
「ちょ、ちょっと……」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
音声に指示されるがままに女性は拘束を追加してしまう。
そして、最後の仕上げとばかりに口に詰め物をしようとするのだった。
「や、やめ――ぐぅ、うぐぅぅ……」
唇を割って強引にボロ布が押し込まれてしまう。
普段の彼女なら簡単に振りほどいて防ぐこともできただろう。
だか、厳重な拘束によって立っているのもやっとの状態なのだ。
大した抵抗もできずに口腔がパンパンになるほど詰め物を押し込まれてしまう。
「ん、んぐぅ……」
吐き出せないように銀色のダクトテープが口へと貼り付けられると、さらに追加でその上からグルグルと髪を巻き込むのも構わずに巻きつけていくのだった。
「ふぅ……まぁ、こんなもんかな」
仕事をやり遂げたとばかりに笑顔を見せる女性に、忍は違和感を感じた。
そして、それが決定的となるのは彼女が首に装着されていた金属性の首輪へと手を伸ばしてことだった。
――カシッ
ロックが外れるような音がして、呆気ないほど簡単に彼女の首から首輪が外されていた。
「んんッ!?」
「あ? あぁ、これ施錠されてなかったから……でもね、こうすれば、もう外れないよ」
手にしていた首輪を今度は忍の首へと近づける、今度はロックされる音が室内に響いた。
――ピピッ……
施錠されると同時に電子音が鳴るのが先ほどとの違いだろう。忍からは見えないが喉部分に表示されていた時刻がカウントダウンを開始していた。
「はーい、これで、もう外せなーい。ちなみにカウントダウンも再会しているからね……あと二十分てところかな」
「んんーッ!?」
「もう、わかったかなぁ? アタシは協力者なんだぁ。ちょっとしたイベントを開催中でねぇ。活きがよい駒が欲しかったのだけど、忍さんが来てくれてよかった~。やっぱり美女の方が見栄えが良いから盛り上がるんだよね~」
気弱で真面目そうなOLといった雰囲気は消えており、ケラケラと笑う彼女からは弱者をいたぶる嗜虐者の空気が漂ってくる。
「さぁ、死にたくなければゲームに参加してね。まぁ、嫌ならここで首が吹き飛ぶらしいけどね」
嫌がる忍にジャック・オー・ランタンの仮装を被せると、倉庫から連れ出す。
そうして、エレベーターで降りた正面では大勢の人が参加するパレードがまさに横切っているところだった。
「さぁ、あの中に参加して、指示された場所まで移動してもらうわよ。ただし、助けを呼んだり、仮装を脱がされたらゲームオーバーだからね」
愉しそうに微笑む彼女は、ブラジャーのカップを下げて乳首にワニ口クリップを噛ませていく。
「――うぐぅ」
「うふふ、乳首が押しつぶされてジンジンするでしょう? でも、それもすぐに気持ちよくなるよ」
クリップに吊るされたローターの電源ボックスをストッキングに押し込むと。同様にショーツの中へもローターを忍ばせていく。
陰核と秘唇へと位置を合わせて、同じく電源ボックスもストッキングに差し込むと一斉に電源をいれてみせる。
「むぐぅぅッ」
「あら、感じやすい体質? 気をつけてね。倒れたら起き上がれないから、それもゲームオーバーになるよ」
淫具の振動に悶える忍の耳に、指示を伝えるインカムを押し込むと、その背を押してパレードへと合流させるのだった。
くすお
2023-11-01 10:37:53 +0000 UTC