先週に引き続き、こちらはBOOTHで販売中の「ハダカノシゴト~男性露出恥譚集①」より書き下ろし作品の「裸の蔵人」のサンプルです。少しでも興味を持っていただけたら嬉しいです!
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――蔵人(くらびと)……酒の製造に従事する者。
――杜氏(とうじ)……酒蔵を統括する最高責任者。
――製麹(せいぎく)……蒸米(麹米)に麹菌を繁殖させて麹を作る作業。
――醪(もろみ)作り・仕込み……酒母に麹、蒸米、水を加えて発酵させ、日本酒のもととなる「もろみ」を造る工程。
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【如月ケンタ】
今でも時折思い出す幼い頃の記憶がある。
大人たちの目を盗んで幼い俺はそこに忍び込んだ。蒸し暑くてほんのり甘い香り、自分の身長の何倍もある大きな樽の数々、広い空間に響き渡る蔵人たちの低い声。樽の影から顔を覗かせると、木造の脚立に上がり長い棒で樽の中をかき混ぜる男たちの後ろ姿が見えた。彼らは一糸纏わぬ姿で作業に集中しており、剥きだしの締まった尻をガキに見られていることに気付かなかった。子供ながらに、俺はそんな光景にブリーフの中が窮屈になるのを感じた。
「あっ、お前また忍び込んだのか?ダメだろ、ここは子供の遊び場じゃないんだ」
振り向くと細身で短髪な若い男が腰に手を添えて立っていた。彼も他の蔵人たちと同様に素っ裸で、華奢な体格には似つかわしくない立派な男根を硬くして上に向けていた。ふっくらと露出した先っぽと張り詰めた裏筋は紅潮した頬と相まり、男の昂りを示していた。
「おいソウマ、お前もそろそろ一発キメてこいよ!さっきから我慢してンだろ?」
「はい!こいつ連れだしたら厠に行ってきます!」
「おっ、ケン坊来てたのか!おっちゃんたちと一緒にすっぽんぽんになるか?ガハハッ!」
「ほら行くぞ、ケンタ」
俺は男に抱えられ、汗ばんだ地肌と密着したまま仕込み場から連れ出されてしまった。
「ここに来るのはお前がもっとデカくなってからな」
そう言い残し、男は俺の頭をわしゃわしゃと撫でてから厠のある小屋へと去っていった。裸のまま駆けていくそいつの後ろ姿は、何年も経った今でも強烈に俺の記憶に刻まれていた。
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セミの叫び声と容赦なく突き射す日照り――熱気で歪むコンクリートには逃げ水がキラキラと浮かんでいた。汗を垂らしながら帰る田舎道には日よけが一切なく、手のひらを目上にかざしたとてほんの悪あがきに過ぎなかった。堪らずに手に持ったポリ袋からアイスバーを取り出し、包みを破いて豪快にかじりついた。
「なぁなぁ、お前聞いたことある?」
「なんだよ?」
前から向かってくる男子小学生二人の会話が聞こえてきた。
「この辺りの酒蔵でさ、オッサンたちが裸で働いてるって噂」
「はぁ?裸って、チンチン丸出しってこと?」
「そう」
「えー、なんで?」
「さぁ、よく分かんないけど、兄貴がそう言ってた!」
「なんだよそれ、絶対嘘じゃん!」
「そうなのかなぁ……」
小学生たちは無邪気に笑いながら通り過ぎていき、すぐにその声はセミの声にかき消された。そりゃあそうだ、まさかそんな酒蔵があるわけがない。だが、もしそんな酒蔵が存在するとしたら、俺みたいなやつにとっては楽園なのかもしれない――そんなことを考えながら、俺は脇道に逸れ、緩やかな坂道を上った。
けものみちのように細く、雑草が茂った道をしばらく辿ると、古めかしい酒蔵の裏口が見えてきた。そして、その脇に置かれたベンチにだらしなく腰かける人影も。
「おいおい、外でなんつー格好してンだよ!」
「おぅ、ケンタおかえりー」
「おかえりじゃねぇよ……」
その男はタバコ片手に全裸で一服していた。脱力して投げ出された脚には男らしいすね毛が茂っていたが、股間はまるでガキみたいにツルツルで眩しかった。チラリとそいつの股間を覗くと、相変わらず立派なブツがだらりとぶら下がっていた。
「いつもの格好だろ?ケン坊は今更なぁに照れてんだ」
「照れてねぇし!ウチのこと知らない奴に見られたらどうすんだよ」
「心配しすぎだって。仕込み場が暑すぎんだよ、マッパで涼まないとやってられねぇって」
こんな調子だとそりゃあ噂の一つや二つ流れても仕方がない。間抜け面で股間を扇いでいるこの男の名は霜束ソウマ――この「霜束酒造」の跡取り息子で、俺の叔父だ。叔父と言っても、俺の母親と彼は歳の離れた姉弟で、ソウちゃんは叔父と言うより歳の離れた兄貴という感覚だった。再びソウちゃんのイチモツに目をやると、半分だけ顔を出した先っぽからは白濁した体液が垂れかかっていた。
「もう処理してきたのか?」
「あぁ、なんなら本日二発目。蔵人の精力舐めんなよ」
「ドヤ顔うぜー……アイス、今食べないなら冷凍庫に突っ込んどくけど」
「あぁ、そうしてくれ、俺もそろそろ持ち場に戻らねぇと」
俺は仕込み場の引き戸を開き、頭だけを中に突っ込んだ。慣れ親しんだ甘い発酵臭と重い熱気がいつも通り俺を出迎えてくれた。
「みなさんお疲れっす!アイス買って来たんで、冷凍庫に入れておきますよ!そう、アイスアイス!一人一個ずつね!」
脚立に上がり、巨大な樽の櫂入れをする逞しい男たちは笑顔で手を振り、礼を返してくれた。ほとんどの蔵人たちはソウちゃんより年配だったが、その格好は同じだった。どの男も一糸纏わず裸足で、陰毛だけがキレイさっぱり剃り落されていた。
「戻りましたー!」
俺の真横を通り過ぎてソウちゃんは持ち場に戻っていった。その後ろ姿は昔より幾分逞しく恰幅を増していたが、俺にとってはあの日と同じ、思い出のケツのままだった。
「遅ぇーぞ、ソウマ!俺もう我慢の限界だぁ!」
「スンマセン!ここは俺がやっとくんで、どうぞいってきてください」
「あんがとな、いってくる!」
急ぎ足で仕込み場を出るベテランの蔵人は立派な男根をいきり立たせており、ソレは歩を進める度に派手に揺れた。歳相応でない精力には毎度のことながら驚かされる。
「今日も酵母ちゃんたちは活発だねぇ、皆ギンギンだ」
後ろから声をかけてきたのは昔からウチで働いているソウちゃんの幼馴染、水無瀬リンタロウだった。麹室が持ち場のリンタロウは全裸ではなかったが、製麹(せいぎく)作業の正装、六尺褌一丁に白頭巾の格好で腕を組んでいた。
「ケンタもこっち手伝ってくれ。あんまりここにいるとお前もムラムラするぞ」
「へーい、すぐ着替えてくる」
ここの蔵人たちが触ってもいない男根を勃起させる理由は、ウチの酒蔵に代々引き継がれる特別な酵母菌にあった。醪(もろみ)の発酵過程でこの酵母は男を昂らせる物質を放出し、蔵人たちから出るフェロモンにより酵母はより活発化するらしい。精液からは汗や唾液の数十倍のフェロモンが放出されるため、蔵人たちは定期的に性処理をすることでこの相乗効果を更に促進させ、結果特有の味わいを誇る日本酒を作り上げるのだとか。蔵人たちが全裸で作業をするのはフェロモンの放出を妨げないためと、通常よりも高い温度を要する酵母菌に合わせて仕込み場を30度前後に保っているからだった。
俺は素早く褌に着替え、頭巾を後ろで結びながら麹室に入った。仕込み場と同じ暑苦しい空気に全身が包み込まれた。
「ケンタはこっちほぐして」
「了解」
俺は手袋をはめ、作業台に山盛りにされた熱々の米をほぐして平たくした。斜め向かいではリンタロウがすでに均等に解した米を細かい手つきでかき混ぜ、放熱させていた。
「ケンタってもう大学二年だっけ?」
「そうだけど」
「いくら実家だからって、夏休みの度に手伝いに来て偉いよなぁ」
「高校の頃からの習慣だから……」
霜束酒造は母方の爺さんが杜氏を長年担ってきた。ガキの頃から酒造に出入りしていた俺は高校生になった頃から酒作りを手伝うようになり、夏休みなどの長期の休みには日常的に通うようになった。他県の大学に進学した今でも、夏休みの間は帰省ついでに手伝っている。酒蔵の仕事はかなりの体力を要したが、作業は嫌いじゃなかったし、なにより……。
「ケンタくんにとったら、大好きなソウちゃんに会えるチャンスだもんなぁ」
図星を突かれた俺はリンタロウをギロリと睨んだ。
「リンタロウ、あんまその話はするなって」
「まぁまぁ、二人っきりなんだしさ」
「……リンタロウこそ、いつまでここで働くんだよ?ここの研究はもう終わってンだろ?大学の方、忙しくねぇの?」
前述のウチの酒蔵の秘密は、隣町の大学で研究者をしているリンタロウが解明したものだった。とはいえ、そんな内容を論文で発表できるわけもなく、表向きにリンタロウが研究しているテーマは別にあるらしかった。
「そりゃあ、恋敵として俺がいないとケンタも張り合いがなくて寂しいだろ?」
「……散々遊んでるくせに、よく言うよ」
「それとこれとは別だよ」
こんな片田舎でも、少し人口の多い隣町に出ればこっちの需要はあるらしかった(リンタロウ曰く)。俺自身も大学進学直後にアプリを通じて男と会ったりしてみたが、あまり性に合わなくてすぐにやめてしまった。
「ケンタは一途で健気だなぁ……」
リンタロウは平たくして少し冷めた米に麹の粉末を振りかけながら、悟ったような鬱陶しい口調で話した。
「俺、厠行ってくる」
「あれ、ソウマのこと考えてムラムラしちゃったか?」
「ちっげーよ!普通に小便だわ」
ふざけて笑うリンタロウを麹室に残し、俺は厠へ向かい外へ出た。褌一丁のため、素肌を撫でる外気が気持ちよかった。母屋とは別れている厠に入ると、すでに先客が二人いた。
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ここまで読んでいただきありがとうございました!
〆