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【8、エピローグ】男は全員マッパになれ!~アソコで見分ける犯人捜し~

[山下り:父子の本音]


次の朝、俺とリョウスケはペンションからチェックアウトして山を下っていた。昨夜のこともあり、俺は気まずくて息子とまともに話すことが出来ていなかった。否、昨日の一件の後だからこそ、俺はきちんと話さなければならない……休憩地点に着いたタイミングで俺は息子に話を切り出した。


「あの、さ……父さん、リョウスケに話さないといけないことがあるんだ」

「……うん」

「……実は父さんは、ゲイではないんだ!」


無人の休憩所には俺の声が響き、息子は目を丸くしてこちらを見つめ返してきた。


「……えっ?」

「……ん?」

「いや、えっ、違うの?」

「そう、違うんだ。父さんはただ、ゲイ向けのエロビデオを見るのにはまってるだけで、別にゲイではないんだ!」

「ふーん……でも、昨日は管理人さんにあんなことシてもらって、嬉しそうだったけど?手なんか握っちゃってさ、管理人さんも困ってたよ」

「いや、あれはただ……父さんはああいうことをする時、手を繋いでないと不安で集中できないってだけで……」

「なにそれ?むしろその事実の方が知りたくなかったよ……」

「こんな父親でリョウスケはイヤかもしれないけど、その、これからも父さんは何も変わらないから、心配しなくて大丈夫だからな!」


息子は少し大人びた風に小さくため息を吐いた。


「今は多様性の時代だよ?別に父親がゲイでもゲイビ好きでも嫌いになったりしないよ。僕だってもう子供じゃないんだ……父さんだって性欲ぐらいあるのは理解してるし、誰にだって人に言いたくない性癖の一つや二つあるし……」

「……じゃあ、リョウスケはこんな父親でも大丈夫、ってことか?」

「大丈夫、っていうか……昨日の夜、僕の事を庇ってくれた時とか、素直に嬉しかったし……その、頼りにしてるよ」

「……リョウスケ……」

「その代わり、彼氏でも彼女でもいいけど、そういう人が出来たら僕にも紹介してよね。いきなり一緒に住むとかはナシだよ!」

「うん、そうする!それと、男を連れてくることはないから心配するな!」

「だから、どっちでもいいって……そろそろ行かないと、日が暮れる――」


俺はやっと肩の荷が下りた気がして、上機嫌で残りの帰路を息子と二人で辿った。息子の寛容さに感謝する日が来るとは、人生なにがあるか分からないもんだなぁ……。

[山下り:カップルの本音]


私は彼氏の背中を見ながら山道を下っていた。朝からカズヤくんはいつもの優しい彼だったが、やはり昨日のことが気になっているのか、どこか距離を感じていた。私は正直、ようやく彼のおちんちんを見れて、触れて、嬉しかったのに……。


「……ユキちゃんさ……」

「なに?」

「その、昨日のことは忘れてくれないかな?いや、別にイヤだったとか、そう言う事じゃなくて……僕が照れくさい、っていうだけなんだけど……」

「……忘れないよ、私」

「えっ?」


大好きな彼氏の頼みでも、こればっかりは譲れなかった。


「私、カズヤくんに謝らないといけない。前にエッチの経験ないって言ったけど、あれ嘘なんだ。実は私、結構経験あって、だから早くカズヤくんとそういうことしたいってずっと思ってた。昨日、カズヤくんは恥ずかしくてイヤだったと思うけど、私はカズヤくんの気持ちよくなるところをやっと見れて、すごく嬉しかった」

「ユキちゃん……」

「だから、それを無かったことにしたくない。もし忘れたいなら、もっとああいうことをして上塗りしていこ?もしカズヤくんがいいなら、だけど……」


私はいきなりカズヤくんに両手を掴まれた。


「も、もちろん!したいに決まってる!これまで根性なくて、ゴメン……次会う時までに、色々準備しとくから!」

「……うんっ!」


カズヤくんはすっぽんぽんにされて気の毒だったけど、あの男たちがペンションに押し入ってきたことに私は少しだけ感謝していた。だって、これからは遠慮せずに彼氏のおちんちんを好きなだけ見たり触ったりできるんだもの!私は期待に胸を躍らせ、彼と手を繋いで山道を歩き続けた。

[山下り:先輩後輩の本音]


「おーい、大丈夫かー?」

「ふぅ、ふぅ……ちょっと、休憩していいですか、先輩?」


ベンチに降り積もった紅葉を地面に掃き落とし、俺は腰を下ろした。先輩も隣に座り、バックパックから水の入ったペットボトルを取り出した。昨日の今日だったが、俺たちは普段通りの調子に戻っていた。もしかしたら先輩はあれを無かったことにしたいのかもしれない……なら、俺もぶり返すのは野暮というものだ。ただの仕事の後輩として普段通りに振舞わなければ……。


「なぁ、後藤」

「はい、なんです?」

「……今度、お前のも手コキさせろよ」


……この人、全然なかったことにするつもりなかったー!


「――えっ?!ど、どういうことですか?!」

「いや、だって、俺だけしてもらってフェアじゃないじゃん?」

「え、ちょ、ちょっと待ってくださいよ!その、昨日のあれ……俺なんかにされて、気持ち悪くなかったんですか?」

「はぁ?あんだけぶっ放したのに気持ち悪かったわけないだろ?むしろ、スゲー嬉しかったけど。あれ、お前もその気があると思ってたんだけど、違った?」


俺は一瞬頭が真っ白になった。え?なに、このBL漫画みたいなベタな展開?


「だ、だって、先輩ノンケでしょ?前に彼女がいたって……」

「あぁ、俺ってどっちでもイケるクチだから、男でも全然圏内。っていうかさ、その気がないのにサシで旅行に誘ったりしないって」

「で、でも、一度も手を出されたりとか、なかったですし……」

「そりゃ、お前メッチャウブそうだったから、プラトニックでもいいかな、なんて。でも、昨日のお前、結構エロかったし、そっちも欲しがってるのかな、って。昨日俺のシコりながら、お前も勃ってただろ?」


進展が目まぐるしすぎて俺は思考が追い付いていなかった。それでも、嫌な気はしなかった。


「あ、あの……本当に俺なんかでいいんですか?先輩なら、もっといい人とか見つかるでしょ?」

「……お前なぁ……」


気づくと先輩の顔が目の前にあった。触れるだけのキスをされたと気付いたのは唇を離された時だった。


「後藤、お前自分がどんだけ可愛いか分かってないだろ?」

「は?え?ちょ、今の、えっ?」

「やっぱめっちゃウブじゃん。まっ、俺結構淡泊な方だから、ゆっくり慣れていこうな。今度お前ん家泊まらせろよ」

「……え?なんで?」

「だから、ローション手コキしてやるって」

「え、えー?!」


なんだかよく分らないが、俺は先輩と同僚を超えた関係になってしまったようだ。もしかして、これって昨日の裏切り者探しのおかげだったりするのか?どうにせよ、今の俺は憧れの先輩と二人っきりで手を繋いでいるのだから、これはハッピーエンドなのだろう。


俺と吾味先輩は浮かれ気味に山を下り、これまでとは明らかに違う日常へと戻っていった。

[管理人の本音]


「あーあ、皆帰っちゃった……」


宿泊客たちが全員チェックアウトを済ませて帰ってしまい、ペンションにはつかの間の静寂が訪れた。


「千家さん、なんか寂しそうですね」

「あっ、百田くん、おはよう。そう、なんかねー……名残惜しいというかね……」


まるで昨夜の出来事が夢だったかのように僕はいつも通りの朝を過ごしていた。でも、僕の右手には硬いアレの感触、左手は市川さんに強く握られた時の感触が鮮明に残っていた。そう、あれは夢じゃなく紛れもない現実。無論、昨夜不在だったバイトの百田君には秘密だが……。


「……市川さん、また来てくれないかなぁ……」

「あれっ、市川さんですか?先輩なら双葉さんの方がタイプだと思ってましたけど」

「いやぁ、彼もよかったけど、子持ちのパパも脂が乗ってていいなぁって……ん?っていうか、僕がコッチの趣味って話してないよね?あれっ、もしかして僕ってそんなにあからさまだった?」

「まぁ、俺もお仲間なんで、大分前から気付いてましたよ」

「なんだぁ、そうだったんだ。僕って本当にそういうの鈍くてさぁー」

「ふふっ、案外市川さんもお仲間だったりして」

「まさかぁ、彼子持ちの既婚者だよー」


まぁ、どちらにせよ、もうしばらくは彼のことは忘れられそうにもなかった。


「よし、今日も満室の予定だ!忙しくなるよー!」

「はい、頑張っていきましょう!」


今日も今日とて「千家ペンション」はいたって平和だ。僕は期待に胸を躍らせ、その日の宿泊客名簿を今一度確認した。



「男は全員マッパになれ!~アソコで見分ける犯人捜し~」(了)


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