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孤独な水鶏
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【没ネタ】放置された街に放置された男

~作者より~ お久しぶりです。 本来は久しぶりになってはいけないのですが、申し訳ありません。 今回は、できたてホヤホヤの没ネタです。 こういった法則性のあやふやな話は、定期的に書きたくはなるのですが、後々つらくなることを思い出すと、とたんに気力がなくなってしまうといいますか。 かといって、普段投稿している作品が厳密なルールに則れているかというと、甚だ疑問ですが……。 (登場人物の名前は、某作品へのオマージュということでひとつ) ~以下本文~ その死体を見つけたのは、まだ少しでもレベルの高い女性を求めていた頃、駅近くの裏通りにある高級クラブを訪ねた時のことだった。 入り口の前では絵に描いたような強面の店員兼ガードマンらしき男が立っていたが、やはり全裸で無表情のまま大きなチ○コをグルグルと振り回している。 その横を通って店に入ると、ボーイも男性客たちも同じく全裸でチ○コを振り回し、ホステスたちはガニ股で腰を前後に振っていた。 しかし、見える範囲にいる女たちのレベルがやけに低い。明らかに選別が行われていて、それに外れた者だけが残っているようだ。 その考えは正しく、一番奥にある一番豪華な個室のカーテンを開けると、全裸の美女たちに囲まれて一人の男が絶命していた。 全裸で座ったまま、大の字の形になって死んでいて、その腰の上に美女の一人がまたがって体を上下に弾ませている。男のチ○コはすでに抜けていたが、死の間際か瞬間か後に発射した白濁液はすでに乾ききっていた。彼女たちは丸一日、この哀れな死体を見つめ続けていたようだ。 どうやらこの男が元凶、もしくは自分に幸運をもたらしてくれた人物で間違いなさそうだが、相変わらず脳裏には中途半端な命令文がこびりついたままだった。 『この街の人間は  の命令に  服従する  』 おそらくこの最初のスペースには、この男の名前なり何なりが入っていたはずだ。それが死んでしまったことで、命令文に空白が生じただけではなく、自分のようなバグが発生してしまった。そのおかげで、 「とりあえず全員死体から離れて、壁際に並んでスクワットしろ」 と言えば、美人ホステスたちはぞろぞろと壁際に移動して、後頭部で手を組み、ガニ股になってスクワットを始める。 要は、この街の人間は誰の命令にも従うようになっているのだ。ただそんな良いことばかりではなく、別の問題も多々あるのだが、それについてはまた後で話そう。 自分が意識を取り戻したのは今からちょうど二十四時間前の夜十時頃だった。 他の男性たちと同じように、全裸でチ○コを振り回していたのだ。 場所は○○駅に停車中の電車内で、7時2分発の電車にギリギリ乗れた直後から記憶がなく、まだ発車していないということはもう四時間近く全裸でいたことになる。 それに気づいたのもあわてて服を着て腕時計を付けてからで、正気に戻った直後は全裸のまま周囲の状況にただただ呆然としていた。 満員ではないもののそれなりに乗客がいたのだが、その老若男女全員が全裸になって、無表情のまま男は腰を回してチ○コを振り、女はマ○コを見せつけるように前後に動かしている。 自分はその光景に純粋な恐怖を感じ、頭にこびりついた『この街の人間は  の命令に  服従する  』と、スーッと消えかかっている『全員全裸になって腰を振れ。男はチ○コグルグル振り回せ』という言葉に混乱を極め、ただ無我夢中で足元の服の海から自分の下着やスーツや靴を見つけ出し、着ながら開いたままのドアから外に出た。 しかしホームにいる人間たちも全員同じ状態だった。よく見る駅員も清掃員のおばちゃんも、何の魅力もない女子高生も賢そうな小学生男子も、みんな全裸で腰を振っている。 どこかに座って落ち着こうとベンチの方を見ると、ガタガタと揺れているベビーカーの隣で、お腹の大きな女性がバルンバルンと音が聞こえそうなくらい激しく腰を揺らしていて、逆に一周回って落ち着くことができた。 その隣のベンチに座り、目の前の電車内で相変わらず乗客たちが痴態を繰り広げているのを確認してから、頭を抱える。 何をどう考えても、脳内にあの二つの命令が直接届いてから自分は意識を失っていた。四時間も疲れることなく腰とチ○コを振り続けていたようだ。そして目が覚めてからは、二つ目の命令が完全に消えて、一つ目だけが中途半端に残っている。 『この街の人間は命令に服従する』? じゃあ例えば、自分が「止まれ」と言ったら……。 ピタッと妊婦の動きが止まり、ベビーカーも静かになった。しかしその奥にいる男は動き続けているし、電車内もそのまま。声が届く範囲の人間が従うようだ。 こういう呼び方でも通じるのか試してみる。 「妊婦さん、俺の前に立て」 すると無表情のまま裸足で移動し、自分と電車の間に立った。 「四股を踏め」 別に太っているわけではなくお腹が大きいだけなのだが、なんとなく言ってみると結構本格的に四股を踏み始める。自分の方にその知識がないので、完全に彼女側の知識か、そうでなければこれにも超自然的な作用が働いている。 彼女は四股を踏み終えると、再び直立姿勢になってからガニ股になり、最初と同じように腰を振り始めた。 「え」 正直驚いた。どうやら命令は上書きされるシステムだが、終わりのあるタイプの命令がすべて完遂されると、最初の命令に戻ってしまうらしい。その証拠に「止まれ」と言っただけの赤ん坊はまだ止まったままだ。最初からそう設定されているのか、最初の命令が自分より上の効力を持ったままなのか。 それならばこんなのはどうだ。 「妊婦さん、正気に戻れ」 「……」 「命令に従うのをやめろ」 「……」 「名前と年齢は?」 「芦原七美、二十七」 突然明瞭な答えが返ってきてまたびっくりする。 「住所は?」 「○○県○○市○○町○○団地○号棟○○○号室」 「なぜ自分が全裸で腰振っているのか説明しろ」 「……」 「お腹の子のことは心配じゃないんですか?」 「……」 「通っている産婦人科の名前は?」 「○○○○医院」 「いちたすいちは?」 「に」 「寒くはない?」 「……」 全裸で腰を振る妊婦との問答で、なんとなく大雑把な法則は見えてきた。 「そこの自販機で水を買ってきてください」 彼女はまた腰振りをピタッと止めると、ホーム上に放置されていた彼女の物と思われるバッグの中から財布を出し、自販機まで歩いていった。命令口調じゃなくても通じるようだ。 ピッ、ピッ、ゴトンと音が聞こえる。ICカードで買ったらしい。 全裸の妊婦が戻ってきてペットボトルの水を差しだしてきた。「買ってきてください」としか言ってないのに、買った物を自分に渡してくれという意図まで理解している。 それを受け取ると、彼女は財布を落として再び腰を振り始めた。なんて面倒くさい設定をしたのかと呆れてしまうが、自分も全裸でチ○コを振っていた当初よりは、二百パーセントは落ち着いて水を飲むことができていた。


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