リネアはレクトと一緒に温泉旅行に来ていた。
「いい雰囲気の宿だね。キアラも来れたらよかったのに」
「うん。」
リネアは微妙な笑顔で相槌を打つ。
キアラは急にピザ屋のバイトのシフトが入って、来れなくなってしまった。
しかしリネアは知っている。キアラは始めから自分のぶんの予約をしていなかったことを。
今日はリネアの誕生日。あえて二人きりにしようだなんて、全く、余計なプレゼントをしてくれたものだとリネアは思う。
(でも、せっかくだから、楽しまなくちゃね)
友達の計らいを無碍にするわけにはいかない。キアラの分まで楽しもう。そしてこの埋め合わせはいずれ……。
「参ったな…」
「え?」
部屋で一息ついて、そろそろお風呂にでもと思った頃に、レクトが困った顔をしていた。
「ここのお風呂、混浴なんだってさ。」
「そうなの!?」
全くキアラはなんて余計なことをしてくれたんだろう。しかも温泉の効能が「子宝の湯」だとか、あまりにも狙いすぎている。キアラがピースをしながらニヤリと笑う笑顔が浮かび、なんとも小憎たらしい。
リネアは思考を巡らせる。どうしよう、混浴だなんて。裸で触れ合っているうちに……もしかしたら一線を越えてしまうかも…。そして…!
「リネアが先に入ってきなよ。僕は後から行くからさ。」
レクトはごく当たり前のようにそう言った。
「そ、そうだよね。……わかった。それじゃ、お先に」
リネアはそそくさとお風呂に向かう。そう、レクトはそういう人だった。なんという鈍さ。でもそれがいいところでもある。
ともかく一日は長いので、焦らずにじっくり行こう。どうせお風呂に入ってしまえばもうあとはすることがない。それからゆっくり距離を縮めていけばいい。
リネアは大浴場の扉を開けた。
*
露天風呂は岩風呂になっていて、大きなお風呂と、岩陰になっている小さなお風呂があった。とりあえず誰もいないようでほっとするが、リネアは小さなお風呂に入る。岩陰があるので、万が一誰か入ってきても隠れられるはず……。
「いいお湯……」
全身の力が抜けていく。やっぱりお風呂はいいものだ。
なにも遠慮なんかせず、キアラも一緒だったら良かったのに。これまで3人で仲良くやってきたんだから。そしてレクトも……。
(もう少し積極的でもいいんだけどね。)
思案に耽っていると、がらりと浴場につながる扉が開いた。
レクト!?ちょっと早いんじゃない?
と思ったら、全く知らないおじさんが入ってきて、硬直する。しかもあろうことか大きいお風呂ではなく、狭くて小さいこちらに入ってくる。
「おや、美しいお嬢さん。奇遇だね。」
にやりと笑うその顔に、嫌な予感しかしない。
こっち来るな来るなと目線で訴えたのだが、効果は無かったようで、一緒に湯船に浸かることになる。いま出ていったらあからさまかなと思いつつ、適当なところで切り上げてさっさと出ていこうとした。
「あの…」
しかし湯船の出口のところにおじさんが座り込んでいて、出ることができない。身体を隠せるものは小さなハンドタオルしか無く、お風呂を出ようとするとどうしても裸体を晒してしまう。そのうえで、湯船から出ることができないという最悪な事態。
「まあ、ゆっくりしていきなよ。せっかくの混浴なんだからサ」
偶然なんかじゃない。明らかに自分の身体を狙っている。それを確信した時にはもう手遅れで、懐近くまで密着されていた。
「ち…近寄らないでください…」
だが男は全くひるまない、その手が胸に伸びてきて、遠慮なく鷲掴みにする。
「や……、人を呼びますよ!」
そう言った瞬間、ガラリと扉が開いた。
良かった、誰か来てくれた。
しかしその人物はこちらにはやってこず、もう一つの大きい湯船の方へと入っていく。
「リネアー!あれ?もう上がったのかな」
それはまさかレクトだった。助けてもらおう。レクトならこの状況、すぐに助けてくれるはず。
助けを呼ぼうとしたリネアの口を、とつぜん唇で塞がれた。
「……ッ!」
男はリネアをおもいきり抱きしめて唇を奪う。そして舌を入れてくる。こんなところをレクトに見つかったら!
レクトに絶対に見られたくない気持ちが、助けを求めることよりも上回ってしまい、おもわず口をつぐんでしまった。
「あれはあんたの彼氏かい?」
男は囁くように耳元でたずねる。首を横に振る。すくなくとも”まだ”そうではない。
「じゃ、遠慮なく。」
「ん……っ!!」
男の固くなったそれが、ぬるりと入ってくるのを感じる。
岩に押し付けられて身動きが取れない。それに声を出したらレクトにバレてしまう。それで口をつぐんで、声を出さないように手で押さえる。
「ふう……いい湯だな」
隣の浴場ではレクトが呑気につぶやいているのが聞こえる。
ちょうど岩陰になっているのと、温泉の湯が絶え間なく落ちてくる水音にかき消されて、まだ気がついていないようだ。
リネアがこんなところで知らない男とセックスしているのを知られたら、純情なレクトは幻滅してしまう。絶対にバレてはいけない。
そう思い、リネアは必死にそれを耐えていた。男のそれは遠慮なくリネアのそこをえぐるように突き上げてきて、力の逃げ場がない。
ただ自分の快楽を貪るように、男は一方的に動き続け、リネアのそこを使い続ける。そしてピストンのペースがひときわ高まったと思うと、男は鼻息荒く痙攣するようにその動作を止めた。
「……ッ!!!」
たっぷり10秒は射精の動作が続けられ、男が引き抜くと、湯の中にどろりと白濁がこぼれ落ちる。
それをリネアはただ口を閉じて耐え続けていた。
「部屋に来たら続きをしてやるぜ」
男はそう言い残して去っていった。
誰が行くものですか!リネアは鋭い視線でその背中を睨みつけながら、目で追いかけた。
「あれ、リネアいたんだ。」
ようやっと気がついたレクトが、大きい湯船のからこちらにやってくる。
「ちょっと、レクト…!」
「ああ!ごめんごめん!リネアが遅くてさ、ちょっと心配しちゃったんだよ。見てない!何も見てないから」
レクトは大慌てで踵を返して離れていく。
まさかあれを見られた…!?リネアは背筋に寒気が走る。
いや、あの反応はそうじゃないはず。よく考えたらタオルがどこかにいってしまって、裸で立っていた。そりゃあレクトも逃げていくはずだ。
大丈夫、一番まずいところは見られていないはず……。股下に男のそれがどろりとこぼれてくるのを感じながら、リネアは冷たい風に当たっていた。