この世界では15歳が成人とされているため、14歳以下である場合は、冒険家ギルドの登録にも保護者の同意が必要とされている。両親が居ない場合は後見人を立てて保護されていることが求められる。
ヨシュアとミレイユは両親がいないため、今まではカティアことカタリナ・T・アディソンが身元保証人となっていた。
だがエキドナ島事件の裁判が進むにつれ、カタリナも人体実験の責任を問われる裁判にかけられることとなり、後見人としての登録を抹消されてしまう。
困り果てた二人は代わりに後見人となってくれる人を探し、ヨシュアはイズネのいるアテル・ラナで、ミレイユは飛行島で預かることとなった。二人が一緒ではないのは、それぞれの外交ルートを通じてカティアの件を解決する思惑もあるらしい。
「よ……よろしくお願いします。お兄さん。」
以前からよく知っている仲ではあったが、そういえばこうやって二人きりで話すことはあまり無かった。思い返してみるといつもヨシュアの陰にいて、ヨシュアを通じて話しかけていたような気もする。
だからそう呼ばれるのもなんだかくすぐったい感じがした。呼び方が"お兄ちゃん"ではなく"お兄さん"なのは、ヨシュアとは区別する意味合いもあるのだろう。
「今日から家族になるわけだ、よろしく。」
「は、はい!」
ミレイユはともかく素直でいい子なので、すぐに打ち解けることもできるだろう。
*
その日の晩、風呂から上がって部屋に戻ると、自分のベッドの上にミレイユの姿があった。
ミレイユも風呂から上がったばかりなのか、服を着ていない。その髪からはふわっとシャンプーの香りがする。
「どういうつもりだ。」
「そ、その、勝手に入ってすみません。お礼がしたくて……」
「誰かにこうしろと言われたのか?」
「い、いえ、お金もないですし。あたし、こういうことぐらいでしかお礼をする方法がわからなくて…」
わずか13歳にしてそういう発想になるとは、今までどれだけ過酷な生活を送ってきたのかが窺いしれてしまう。
ヨシュアは一体何をやっていたのだろう。いや、案外気づいていなかったのかもしれないが。
「馬鹿なことは考えなくてもいい。家族なんだから。」
「そ、そうですよね……。すみません、あたし本当に勝手なことを…」
叱る代わりに、ぎゅっとミレイユを抱きしめた。
その肩は震えており、鼓動が高くなっていた。その身体は猫のように華奢で軽い。シャンプーの香りが鼻をくすぐる。
「安心してくれ。今日からミレイユのお兄さんなんだから。」
「は、はい……。」
抱きしめたままで鼓動が落ち着くのを待つ。しかし何分もずっとその体勢だと、さすがにミレイユももぞもぞと動こうとした。
「あの……ちょっと苦しいです……」
「こういう言葉がある。据え膳食わぬは男の恥だ、と。」
「ふえっ……?」
「女の子が覚悟を決めて床に身を委ねたのなら、それを受けぬは失礼なことだという意味さ。」
「ええと……、それって…」
何かを言おうとしたミレイユのその唇を、口で塞いだ。