ティナはヴィンセントの事務所で専属女優をしている。
なりたくてなったわけではないが、なんとなく流れでそうなってしまっていた。
専属男優はいまのところブラッドひとり。あとはカメラマンのレクト。
売上に対して人数が少なすぎるので、そろそろ新しい人材を雇うことになった。
「ということでティナ、専属男優を選ぶことになったんだが。」
ブラッドは事務所でくつろいでいたティナに話しかける。
「どうして私に振るの。」
あまり興味がなさそうである。
「関係ないことはないぞ。なんたってお前さんが選ぶんだからな。」
「私が?」
「そそ。なんたって専属男優だからな。一番共演する奴が選ぶのがいいだろ。身体の相性だってあるし。」
「そんなの知らない。」
「AV女優は星の数ほどいるが、AV男優はそれに対して驚くほど少ない。なんでだかわかるか?」
「なりたい人が少ないんじゃないですか」
「そんなことはない。希望者ならたくさんいるさ。でも務まらないのさ。結構ハードなんだぜ、この仕事。」
ブラッドが力こぶをしてみせる。彼は名うての男優の一人だが、それでもこなせる撮影の数は多くて週に3本くらいだ。
「どーだか」
「というわけで、20人ほどのAV男優候補が集まっている。どれも性欲とテク自慢のイケてる男たちばかりだ。これから一人ずつ相手して、ここから合格者を選んでほしい。」
「はああ!私がですか!?」
「あったりめーだろ。さっきそう言ったろ。容姿、テクニック、体力、絶倫かどうかなど、実践を通して総合的に判断してくれ。」
*
それからティナは毎日、午前と午後に分けて1人ずつ相手をした。
無論、全てのシーンを撮影している。
*
「こいつは力任せにガシガシするだけで全然気持ちよくない力馬鹿。こっちは見掛け倒しで早漏野郎、これはキスしたがるくせに口が臭い……。なるほどね。結構しっかりレビューしてるじゃないか。実に率直で素直な意見だな。」
「当たり前でしょ。仕事なんですから。」
「頼もしいぜ。ちゃんといい所と悪いところを見てるな……。でもなぁ…なんで全員不合格なんだ?」
「当然です。中出しした人は全部不合格です。」
「お前なぁ……。うちのレーベルの売りを知ってるか?」
「生中専門チャンネル……。」
「だろ」
「だからって、出されるこっちの身にもなってよ!撮影終わるたびに全部洗い流すの結構大変なんですから!」
「はは、できちゃったら大変だもんな」
「他人事みたいに言わないでよ!」
「というわけで、再試験を実施する。20人全員ともう一回やってくれ。」
「はあああ!?」
「当たり前だろ。お前が全部不合格にしちまったから。最初から選び直しだ。」
「別にやり直さなくても……。まあ、いいですけど。」
「お、意外と乗り気だな。」
「選ぶんならちゃんと選びたいです。そうしたらもうブラッドおじさんとしなくてもすむかもしれないですし。」
「お前、可愛くないなぁ。」
「あと、レクトさんを入れておいてください。あの人、撮ってるうちにだんだん暴走しそうになってきたから。」
「へいへい」
それから二周目の試験が始まった。