「え、宿が空いてない?」
飛行島浮上3000日の祭りに出席しようとしていたセツナとトワは、困惑していた。
確かに飛行島にはいつもより沢山の冒険家がごった返していて、宿が一杯だというのもわかる雰囲気である。
「そうなのよー。でももう一つの宿のほうなら空いてるわ。あんたたち、そっちに入ってくれない?もちろん宿泊費は取らないわ。」
キャトラが申し訳無さそうに言う。
飛行島には二つの宿がある。一つは一般冒険家向けの安価な宿で、もう一つは高級宿だ。高級と言っても外装の豪華さではなく、そちらには大人向けのサービスがつくという。
セツナ達もその存在はなんとなく知っていたが、もちろん利用したことはない。
「まさか、そこで働けっていうんじゃないでしょうね。」
高級宿では女性冒険家達が何人か交代で働いており、男性客に接待を行っているという話だ。
「大丈夫、一晩だけよ。あんたたちならきっとできるわ。」
キャトラがウインクする。
「大丈夫なわけあるかー!あたしは絶対やらないからね。」
セツナが激怒する。
「そういうのは私もちょっと……。でも困りましたね。他に宿が無いのは…」
トワもうつむいて困ったような顔をした。
「参ったわねぇ。今夜はお客さんが一杯来てて回らないのよ。ルカとティナなんてもう、朝からずっと何人も相手してるからそろそろ限界なのよね。お願い。あんたたち二人ずつ、いや、一人ずつでもいいから相手してくれない?良いでしょ」
「良いわけ、あるかー!」
セツナが激怒した。
*
宿の中はいくつかの個室に分かれていたが、内装は高級宿には程遠く、壁が薄くて隣の声も筒抜けだった。
そして四方から、女性のあえぎ声と、肉のぶつかり合う音が聞こえてくる。
「こ…こんなことまでするなんて…」
"接待"と表現がぼかされていたが、中身はただの本番行為を伴う売春だった。
そんな場所に来て、自分だけしないと言うわけにもいかず、結局セツナも侵入を許してしまっていた。
「んくっ……」
好きでもない相手のそれを自分の体内に導き入れるというのは強い嫌悪感が伴う。
だが身体の方は勝手に受け止めようとして、潤滑によって迎え入れた。
通常コースは120分が基本だが、混雑シーズンは60分コースしかないらしい。
会話や前戯にあまり時間をかけられないので、展開が早く、すぐに挿入のステップ進んでしまう。
冒険家というのは数多の戦場をくぐり抜けてきたような猛者も多く、筋肉質でがっしりとした身体をしている男たちが多い。
そんな男に正面から突き上げられると、さすがのセツナも悲鳴を上げた。
「そ…それ…だめっ……!」
力強く深いストロークに、セツナの細い身体は耐えきれず、全身をくねらせてその衝撃を受け止める。
やがて一番奥にどくどくと熱いものが注がれるのを感じた。
「あ……なかに……」
*
「結局一睡もできなかったんですけど!」
「身体がもうべとべとです……」
「あんたたち、ご苦労様!よくやってくれたわ。」
キャトラが爽やかな笑顔でトワとセツナをねぎらう。朝陽が突き刺さるようにまぶしい。
「なにが一人ずつさ。結局5人も相手することになったじゃない!」
「私は6人です……」
60分のため回転率が早く、一人終わったと思ったらすぐに次の客がやってきて、ほとんど休む暇もなかった。
「ふたりともお客さんの評判良かったわよ。明日もお願いしたいわね。」
「やらないよ!」
セツナはキャトラに怒鳴る。
「しかもみんな遠慮なく中に出してくるしさ…。こんなんじゃ出来ちゃうよ…」
客は冒険家とあって、何人かは顔見知りだった。次会うときはどんな顔したらいいのかわからない。
「アラ?セツナ。あれは使わなかったの?」
「そうですよ、セツナ。ちゃんと避妊をしなくてはダメです。」
「へ?」
「60分コースはオプション料金取ってないから、ゴム使っていいのよ。」
「そんな……聞いてないよ、そんなこと。」
「伝えてなかったカシラ。次回からはちゃんと使っていいわ。」
「だから次は無いってば!」
セツナは激怒する。
「いっぱい出されちゃったんですね。セツナ。それじゃあ綺麗にしないと…」
「そうね。今なら温泉が空いてるから、ふたりとも身体を洗ってらっしゃい。」
「セツナの隅の隅まで、全部綺麗にしてあげますよ、ふふふ」
「トワ……なんか目が怖い。」
徹夜明けに入る熱々の温泉は全身に染み渡るようだった。