「マナ・ドーリス中尉、只今着任しました。」
「うむ、ごくろう。」
マナはこれまで技術将校として特殊な任務に就くことが多かったが、この度は一般の潜水艦部隊に転属になり、アルダーソン中佐の艦に6ヶ月の期限付きで乗船することになった。
アルダーソン中佐とは、海軍の中でもそれなりに名の知られた名将で、部下からも慕われているという。だがなぜ慕われているかについてまでは、マナも情報を掴んでいなかった。
ただ前任者が休暇のため退艦となり、その代わりの要員としてマナが召集されたと聞かされていた。
「君は衛生科の副科長として配属されることになった。詳しいことは衛生科長のグレッグ大尉に聞いてくれ。」
「はい!」
マナは姿勢を正して敬礼し、艦長室を後にする。その後姿を見て、中佐はにやりと笑う。
「少々身体が小さいようだが、あれに務まると思うかね?少佐。」
「頑張ってもらうしかないでしょう。」
副艦長も同じ顔で笑った。
海軍の艦船、とりわけ潜水艦は、その指揮系統が非常に重要である。
船務科、航海科、水雷科、機関科、補給科、衛生科の6つの科に分かれ、一日三交代で任務にあたる。
艦長は中佐クラスが、各科の長は大尉クラスが担い、その下に多くの一般士官が働いている。この船にはおよそ50人の将校と水兵が乗船しており、マナを除けば全員が男だった。
任務期間中、ほとんど浮上することなく海中で過ごすため、そのストレスは大きく、食事は全軍の中で潜水艦が一番豪華にされているという。
それでも性に関する部分は解消する場がないため、不満が溜まりがちだった。
「艦長が話がわかる人で良かったです。」
「なに、これも部下たちのためだ。」
アルダーソン中佐の艦の士気が高く維持されているのは理由があった。
それは三大欲求のうち、性の部分を解消する方法も設けていたからだ。
船員たちには全員、一週間に2個のコンドームが配られる。これを使って性欲を発散していいことになっていた。
中には男同士で解消するモノ好きもいるが、基本的には紅一点の、衛生科の副長にそれは集中する。それを提示された場合、断ってはいけないという規則だった。
「く…ああ…ああ…!大きい……!」
狭い艦内にマナの声が響く。それを見てまわりも滾ってきたのか、順番待ちの列が増える。
一日の業務を終えた水兵たちが、一眠りするまえに一発抜いておきたいという需要が多く、交代直後のタイミングが殺到しやすい。
一人当たり20分までという制限があり、コンドームは必ず使わなくてはならない。
またキスや胸を揉むなどのセクハラ行為は禁じられている。
そのため手早く終えるために最初から激しいピストンがされることが多く、小さな体のマナには負担が大きかった。
50人の船員に2枚ずつそれが配られるため、1週間でのべ100回要求されることになり、1日あたり15人は相手する計算だ。それが6ヶ月間続く。
コンドームを使うとはいえ、避妊率は100%ではない。前任者は女性だったという。彼女が休暇を取ったのもひょっとしたら……。マナの脳裏にある予想が浮かぶ。
そして自分もそうなってしまうのだろうか。
「へへ、博打でごっそり増やしたからよ。毎日使わしてもらうぜ。中尉。」
次の順番が回ってきた筋肉質の男は、10枚近いコンドームを持っていた。水兵仲間からふんだくったのだという。
艦内で賭博までもが横行しているとは、どんなに自由なんだろう。
通常の軍の規律では考えられないことである。
艦長のアルダーソン中佐が部下たちに慕われているという理由を、マナはその身で味合わされることになった。