郵便事業をしていたルカ達が、奴隷商人に売られようとしていた少女を助けたことが始まりだった。
少女を解放する交換条件として、ルカが身代わりとなった。
もちろん、タダで捕まるつもりはない。この後開かれる闇市場での違法な奴隷売買を根こそぎ撲滅するつもりである。
身代わりとなったルカは奴隷商人によって装備を奪われ、服を脱がされ、下の毛もつるつるにされて、他の奴隷たちと共にブラックマーケットの特設会場に並べられた。
そしてどこからか集まってきたたくさんの裕福そうな男たちが奴隷たちの値踏みを始める。
(あの子達は何をやっているのですか……!)
打ち合わせでは、ブラックマーケットが開幕する直前に大きな爆発音があり、リスティ達と自警団がなだれ込んでくるはずだった。
だがとっくにマーケットは開かれているのに、一向に音沙汰がない。
「ほう、これはなかなか。天使とは珍しい。」
裸で吊るされているルカを見て、一人の富豪らしき男が近づいて来る。
「さすがコステロ様!お目が高い。こちらは天使といってもただの天使じゃありやせん。大天使でして!大変珍しいものであります。」
「ふむ……2500万Gか。流石に値が張るな。」
「それはもう、激レア品でありやすから!これを逃したら手に入りませんですぜ、お客様。」
ルカは、まるで人をモノのように扱う物言いにカチンと来たが、〈失声のルーン〉で喋ることを封じられているので何も言うことができない。
「それに、随分反抗的な目をしてるじゃないか。今にも噛みついてきそうだな。」
「こちら、急に手に入ったものですから、まだ未調教でして。お望みとあれば〈記憶除去のルーン〉でいったん人格をリセットしてからお渡しすることもできますぞ。」
「ふむ、こういう気の強そうな娘を1から調教するのも面白いものだがな。だが手に負えなさそうならそうしてみるか…」
冗談じゃない、記憶なんて消されてしまったら……にわかに恐怖が渦巻き始める。
「もう少し詳しく見ていいかね」
「どうぞどうぞ!ぜひお手を触れて確かめてみてください!きっと気に入りやすぜ」
富豪の手が、ルカの身体に近づいてきた。
*
「あれぇ?ここだと思ったんデスけどね~……。誰もいませんね。」
「びし。これ、……地図逆向きですよ。こっちが北です。」
「痛ったぁ!あれ、逆デスか?」
二人が到着するまでは、もう少しかかりそうだった。