こちらの世界でどれほど事象を変化させても、元の世界には何も影響が無いことがエレノアにもわかってきた。
一度分かれてしまった世界は、再び交わることはない。ただ自分という特異点を除けば。
元の世界に戻るゲートが使えるのは一度きり。
アイリス様のいる世界は、既に自分とアイリス以外の人間は絶滅していると思われる。そして二人だけでは子を成すことができない。
元の世界をもう一度復興させるために、エレノアは二つのプランを考えていた。
一つはこの世界の闇の王子を連れ帰ること。アイリス様もきっと喜ぶだろう。自分は希望を持ち帰る騎士となる。
もう一つは、この世界の遺伝子を持ち帰り、未来の世界で産み育てること。自分は女王となり、世界を再興する礎となる。
だが第一プランは、こちらの世界の均衡が崩れかねないという懸念があった。既に闇の王子は単なる後継者から、闇の王そのものになりつつある。ここでそれを奪い取れば、新たな後継者を巡って争いも起きかねない。
それで、第一プランを考慮に入れつつも、着実に進められる第二プランを実行に移していた。
「あああ……ください、中に、なかに……っ」
どくどくと膣内に精が注がれるのを感じて、エレノアは身震いをした。
エレノアに種付けをしているのは、売春宿の客であり、知らない男。
しかし、できるだけ多くの遺伝子を集めるには、この場所は都合が良かった。
精子はせいぜい5日程度しか生きることができず、持ち帰るのが難しい。そのため、一度受精卵のかたちにして、着床する前に〈慈愛の檻〉に閉じ込めることで、妊娠を保留状態にすることができる。
然るべき時に元の世界に戻り、集めた受精卵を一つずつ開封し産み育てていく。それがエレノアの考えたもう一つのプランである。
一人の男から集めた遺伝子では、その子孫は血が濃くなってしまい、何らかの障害が生じるかもしれない。そのため少しでも分散する必要があり、日々様々な客が訪れる売春宿は最適な場所だった。
しかし知らない男に抱かれ、あまつさえ種付けまでされるという行為には、なかなか慣れるものではない。
身体はすっかり慣れてしまい、どんな相手でも快楽を感じられるようになっていたが、心がどんどん削れていく。
(愛が……欲しいです)
第一プランも決して諦めた訳ではない。
この世界の闇の王子を討つことに意味がないことがわかってからは、連れ帰ることに目的をシフトさせていた。そうして色々観察しているうちに、どことなく惹かれていくようになった。
この計画はアイリス様の願い、……いや自分の願いなのかもしれない。
たとえ本人を連れ帰ることができなくても、せめてその種だけでも……。
そんな事を考え始めていた。