「え、潜入捜査ですか?」
「ボス直々の命令だ。」
幹部に呼びつけられたフェネッカは、一枚のカードを渡された。
ドピンクのポップなフォントと共に、いかにもいかがわしいお店の名前が書いたポイントカードである。
「この店で一週間ほど働いてきて欲しいってさ。」
「これって…その、えっちなお店ですよね。」
「見りゃわかるだろ。だからお前にしか出来ないって言ってんだ。ちなみにうちの系列店な。」
「で、でも~……」
フェネッカの所属している会社…その実態はギャング団であるが、その事業の一角としてこういった風俗店の経営も営んでいる。
「最近、その店の従業員がどんどん辞めていくんだ。結構な給料は払ってるはずなのに、おかしいってな。その離職率の高さの原因を調べてこいとのことだ。」
「わざわざ潜入する必要があるんですか?」
「そりゃ上のものが直々出向いても、いいように取り繕うだけだろ。実態がどうなってるのか調べる必要がある。たとえば従業員に対するいじめや虐待が行われているとかな。」
その言葉を聞いて、フェネッカの気持ちも定まった。
「わかりました。任務、頑張ってきます!」
*
店は慢性的な人手不足らしく、ろくに面接もせずにあっという間に採用が決まってしまった。もちろん履歴書は偽造し、素性は隠している。上の人間だとわかったら警戒されるからだ。偽名も使った。
「フェデリカです。本日はよろしくお願いします……」
「笑顔が硬い!もっと自然にしろ」
「で、でもー……」
一糸まとわぬ姿で男の前に出るというのは、あまりにも恥ずかしかった。
せいぜい下着バーとかセクキャバくらいだと思っていた。それが、いきなり全裸になるように指示されるとは。
「は、はだかになる必要あるんですか…」
「風呂で服を着るやつがいるかね?」
「で、ですよねー」
店長による直々の研修が始まる。
「じゃあまずお互いの身体を洗うところからな。ボディソープを泡立てて、自分の胸に塗りたくるんだ。」
「は、はい……」
いきなりえっちなことをするのかと思って警戒していたが、とりあえずお風呂屋さんとして身体を洗うことが基本となるらしい。
だがそう思って安心していたのも、最初だけだった。