ティナは卒業後、特に他にやりたいこともなかったのでおじさんの会社で働いている。
会社といっても名義上はそう登録されているだけで、その実態はギャング団である。
リゾートホテルの経営、用心棒、そしてセックス産業が、このサビーノ商会の事業の三本柱である。
ギャングのシノギといえばワスカの葉を始めとした薬の販売がメジャーだが、ヴィンセントはそれを嫌っており、その手のものには一切手を出していない。
ティナはもっぱら用心棒として、敵対的なチンピラをぶっとばすのが仕事だったが、性産業のほうにも一枚噛まされていた。
やって来たのはヴィンセント所有のリゾートホテルに面したプライベートビーチ。プライベートといってもすぐ隣に公共の海水浴場が隣接しているので人の気配はそれなりにある。
「また撮るんですか?言っっておきますけど、絶対に嫌です。」
ティナはここで何度か"撮影"された経験がある。
「おや、そんなに撮って欲しいかい?残念だなぁ。今日はカメラマンだ。」
「え、カメラ?」
ブラッドが手渡したのはプロ仕様の大きなビデオカメラだった。
「壊すなよ~高いんだからな~」
「壊さないです!でもちょっとかっこいいかも…」
カメラで撮られることはあっても、自分が撮影する側に回ったことはない。ティナは興味津々にスイッチをいじくり回す。
「それで、何を撮るの?」
「もう呼んであるさ。よーしお前ら、スタンバイしろ」
他に5人ほどのスタッフがレフ板や集音マイクなどを持って忙しく走り回る。そのうち一人が今日の主役を連れてきた。
「え!ノアじゃない」
「お久しぶりなのです。」
まさかの知り合いだった。茶熊学園の同級生で、放課後一緒に食べ歩きをしたりすることもある仲である。卒業後はどうしたのか、それから会うことはなかったが、こんなところで再会することになるとは。
「はあ…んっ……やあ…っ…!」
男優に抱かれて嬌声を上げるノアの姿を、ティナは複雑な心境でカメラに収めていた。
なんでこんな撮影に応じたのか、聞きたくても聞くことができなかった。
第一、ノアにはネモというパートナーがいたはず。その二人のアツアツな姿を何度も見せつけられていただけに、疑問は深まるばかりである。
それにしても綺麗だと思った。
普段穏やかで、半分眠っているんじゃないかというくらいにゆったりと話すあのノアが、こんなに乱れて喘いでいるなんて。なんだか別人を見ているようだ。
髪を振り乱し、全身で感じているその姿は美しかった。それは決して演技ではなく、心の底から気持ちよさを感じていることが表情からよくわかる。
(顔だけじゃなく全身を撮って。あと結合部アップも)
インカムに指示が入る。気がつけばずっと顔ばかり撮ってしまっていた。
重たいカメラを持ち上げながら、全身を舐めるように移していく。結合部にフォーカスを当てると、ぐちょぐちょといやらしく出入りしている姿に釘付けになった。
(あんなに太いのが出たり入ったりして…痛くないのかな)
でも痛くないことをティナは知っていた。ティナ自身も中で味わったことがある。それは一番奥まで突き上げてきて、たまらなく切ない気持ちになるのだ。
「出すぞっ!!」
激しいピストンがぐっと止まって、腰が律動する。中まで見えなくても、膣内に出されているのがよくわかる。その一瞬を取り逃さないように、しっかりとカメラに収めた。
男優が抜き取ると、どろりと白濁がこぼれ落ちる。中に出されて恍惚としたノアの表情もしっかりとレンズに収めた。
これで一旦終わりかと思ったら、すぐに男優が交代する。
男優は一度射精するとどうしても動きの精度が落ちてしまう。そのため一度の撮影で数人の男優を用意することもあるが、途中で変わっていることは気づかれないことも多い。もっともほとんどの視聴者は男優が代わったことなど気にすることがないのだが。
極力男優の顔は映さないようにして、ノアの表情の変化を撮り続けた。
*
結局撮影は二時間以上になり、三人の男優に次々と中出しされて、さすがのノアもぐったりとした様子だった。
そんなノアをシャワールームに連れて行って、身体を洗ってあげる。
同性ながら惚れ惚れするような美しく透き通った白い肌で、思わず抱きしめたくなるほどに綺麗だった。
女優の身体的ケアやメンタルケアも大事な仕事の一つである。
「ノア…もしかして辛いことでもあったの?」
「どうしてですか?」
「ネモさんと別れちゃったとか…」
「とんでもないのです。ネモはいつも一緒です。」
「そうなの!?」
それはちょっと驚きだった。てっきり別れて自暴自棄になったのかとでも思ったからだ。
色々事情を聞いてみると、ネモは帝国と連邦の双方から狙われているらしく、表立って働くことができない。加えてアルゴノート号が故障しているため、その修理費に法外な費用がかかっているそうだった。
「お金のため……ですか」
「そうなのです。でもみなさん優しかったのです。」
「うーん、わたしが言うのもなんですが、あんまりこの業界には顔突っ込まないほうがいいと思いますよ。」
「そうですね。これはナイショですよ」
ノアがいたずらそうに笑い、思わずつられて笑ってしまった。
*
ひと仕事終えてブラッドがねぎらいの声をかけてきた。
「どうだい、カメラマンは」
「結構、面白かったです。」
「がっつり食いついてたもんな。しかしあんなにアップばっかりだと絵にならんぞ。ちゃんとバランスも考えろ。」
「はあい」
「見てるだけだと欲求不満になるだろ。次は女優として撮ってやろうか」
「嫌・で・す」
「まあそれは冗談だが、次のビデオで撮る女優を探していてな。誰か撮ってみたい素材はいないか?」
「ええ、撮ってみたい人ですか?」
ティナは知り合いの顔を思い浮かべる。ノアの意外な姿を撮れたのは結構楽しかった。
ほかに同級生といえばオスクロルやセツナなどがいるが……。セツナは男っ気が全くなさそうで、女の子集団の中にいつも居た記憶がある。ああいう子が男に抱かれたらどんな表情を見せるんだろう
「セツナさんとか…どうかな」
「セツナ=アラヤか。よし、さっそく探してこよう。」
「ええー!本当に撮るんですか?」
自分の一言が同級生の運命を変えてしまうかもしれない。軽率な発言を少し後悔する。
「もちろん、本人が望むなら、な。」
果たしてこのあらくれたギャングのお願いをセツナは断りきれるだろうか。彼女の幸運を密かに願った。
ねこトトラ@猫虎屋
2022-05-16 17:03:20 +0000 UTCD4C
2022-05-15 10:47:46 +0000 UTC