エレノアは少し油断してしまった。
お風呂から上がるタイミングにあわせて乾燥機をつけたはずなのに、少しだけ早く上がってしまった。お気にいりのパジャマがまだ乾いていない。部屋に戻って別の部屋着を着ようかとも思ったけれど、あと3分という表示を見てそのまま待つことにする。
下着にTシャツという姿のまま、リビングの端に設置された自販機で炭酸飲料を買い、喉を潤す。火照った身体にキンキンに冷えたドリングが染み渡る。
そこで、背後に気配を感じた。
「あ、あなたは……」
赤髪の少年。シェアハウスの同居人だ。彼は何も言わずにじっと眺めている。
いや、髪が赤くない。ほとんど黒化してしまっている。目は鋭く光っており、その口の端はにやりと笑っていた。
「その姿……覚醒…して!」
彼は普段は人畜無害の草食系のような少年だが、覚醒状態になると闇の王子としての一面が表面化する。
エレノアの故郷は、未来の世界は、彼によって滅ぼされた。
故にこうして近くに居るのも彼を監視するのが1つのであった。再び暴走の兆候が現れようものなら、自らの手で始末するために。
「止めなくては……」
アイリスが居ない今、彼の暴走を止められるのは自分だけだ。光の王としての力は失ったものの、昔使っていたタリスマンに、いくらか力が残されてる。普段から持ち歩いているものだが、シャワーのために部屋に置いてきてしまった。部屋に戻れば……
「……離して、ください…。」
がっちりと腕を握られていた。その力は振りほどけないほど強い。
「んっ!」
両腕に強く引き寄せられ抱きしめられた。身動きが取れない。完全に拘束されてしまった。
『エレ……ノア』
耳元で囁かれて、どきんと胸が鳴る。
今の所、闇のソウルが外に強く放出されている気配はない。ただ興奮しているだけのようにも見える。彼が風呂上がりの自分の姿を見て興奮したのかと思うと、少しだけ不思議な気持ちがした。
アイリスさんという人がいながら、この人は何を考えているんだろう。内心どきどきしながらも、原因を探る。
だがシャンプーの香りをしたエレノアの匂いを嗅いで、性的興奮を爆発させているのは確かだった。
少し乱暴にリビングのソファに横たえられ、下着を剥ぎ取られた。
見ると彼の下半身には異常なまでに凶暴化したものがそそり立っていた。
今からあれに犯されるということを想像すると、心臓が高鳴る。
「部屋で……部屋に行きませんか……!」
ここはシェアハウスのリビングであり、共同スペースだ。いつ他の人が入ってくるかわからない。
それに部屋に行けば約束のタリスマンがあるし、避妊具だって置いてある。なぜか備え付けの机の引き出しに入っていたのだ。その時はなにかの冗談だと思っていたが、それが必要になるとは思ってもいなかった。
だが彼はそれをむしろ「部屋でしよう」という同意の返事と汲み取ったようで、手が止まることはなかった。最低限の前戯のあと、その凶悪な一物がねじ込まれる。
「はうう……っ!」
ずしん、と強い衝撃が全身を貫いた。
風呂上がりで火照った身体に熱いものが押し込まれる。
隣の部屋からは、シェリルが合唱の練習をする声や、エディがバカでかい音量でダンスミュージックを掛けているのが聞こえる。すぐそこに二人がいるのだ。いつ扉が開いて、この姿を見られるかわからない。恥ずかしくてそれだけは避けたかった。
溢れ出そうになる声を必死に押し殺して、息を潜めた。
「ん……ンッ……」
そんなことを考えているうちに痛みではなく別の感覚が沸き起こってくるのを感じる。
大きすぎるそれが、穴の一番奥、子宮の入り口を執拗に突き上げるたびに、お腹の底から熱い光がちらつきはじめる。深く突き上げられるたびに、満たされるような深い悦びが広がっていく。否応がなしに快感を引き出してくれる彼のそれが、ひどく愛おしく感じた。
緩やかなピストン運動だったそれが、急にピッチが早くなった。
彼の顔に余裕が無くなっていく。次に起こる事態の予想をして、焦りを覚えた。
「だめ……なかは……だめです……っ!」
それだけは避けなくてはならない。身体を重ねることは一時の過ちとしてあったとしても、それが行わなれてしまうと気の迷いでは済まなくなってしまう。万が一、妊娠でもしてしまったら……
そのことを考えた瞬間、どきんと胸が高鳴った。
彼とアイリスは長い時を経てパートナーとなった二人だ。身体の関係があるのかは知らないが、少なくともその間にはまだ子供はいない。もし先に自分がそうなるとしたら……アイリスと並び立つ存在になることができるかもしれない。
そんなことが脳裏によぎった直後に、へその下からこみ上げていた光の快感が脳天にまで達する。
「はあっ……はあああっ!!」
ピストンが止まって、びくびくと痙攣するように体内のそれが律動した。
ああ、中に出されたんだ……。
快感の余韻に包まれ、ぼんやりとした意識の中、彼のそれが引き抜かれてどろりと溢れる感触がしたときに、初めてそれを実感する。
なんだか少しだけ誇らしい気持ちもあった。
*
「ごめん…本当にごめん!」
事が済んだ後の”赤髪”はひたすらに平謝りだった。
そんな彼を見て、なんだか拍子抜けした感じがする。
どうやら世界の崩壊に至るような深刻な黒化ではなく、一時的な発作のようなものだったらしい。性的に満足すると、それは収まるようだ。
アイリスが近くに居ない今、この家に住んでいる他の女性はシズとシェリルのみ。
シズは電子体だし、シェリルは幼すぎるので、処理できるのはエレノアしか居ないということだ。
「次は……ちゃんとつけてくださいね。」
エレノアは少しの間だけこの奇妙な関係を続けることにした。