数日前、僕はリネアと一線を超えてしまった。
リネアの積極的なアプローチをかわしきれなかったとでも言うのだろうか。
それは心の底で求めていたことであるし、素敵な時間になるはずだった。
確かに筆舌に尽くしがたい素敵な体験だった。
だがあることに気付いてしまい、後ろから脳天を殴打されたような気持ちになった。
リネアは処女ではなかった。
わかってはいたんだ。薄々そうなんじゃないかとは。
リネアの垢抜けた積極性とスキンシップ、誰とでも親しくできる性格の明るさ、そしてなにより美人であること。そんな彼女が17歳まで純潔を貫いているはずがない。
どうやら魔法学園の先輩相手に、興味半分で処女を捨ててしまったらしい。その先輩ともその後恋人になったわけでもなく、今は交友も無いと言うが。
でもそんな軽い気持ちで身体を開く人だったとは。
だから僕とのセックスにも抵抗がなかったんだ。誠実な気持ちで挑んだ自分がなんだか滑稽に見えてくる。
わかっているんだ。僕と会う前の話なんだし、そんなことでくよくよする自分はどうかしている。過去はどうあれ、今、自分の隣にいる。それは最高のことじゃないか。
だが自分でも理解できないほどにショックを受けていて、どこか心にポッカリと穴が空いていた。
「レクトくん、どうしたの?なんかへんな顔してる。」
なんとなくリネアと顔を合わせるのが気まずくて、あれから避けるようなかたちになっていた。そんな僕を心配して訪ねてきたのがキアラである。
彼女は僕にとって大切な人だ。とはいえリネアのように恋愛対象として見ているわけではない。いや、あえて見ないようにしている。
そう、キアラは僕が守るべき、大切な人なんだ。
*
『まったく、厄介な性格だね、君も。』
「お前は!!」
頭の中に声が響く。僕の中に秘められたもう一つの人格。
ヴァリアントとして変身を繰り返すうちに次第に存在感を増してきて、隙あらば身体を乗っ取ろうとしてくる厄介な人格だ。
『そんなに処女が好きなら、目の前のキアラを押し倒せばいいだろう。たぶんあの子は処女だぞ。』
「何を言ってる!そんなことするわけないだろ!それに処女かどうかなんてわからないし……」
『じゃあ、確かめてみればいいじゃないか。』
「確かめるって…」
『そう、突っ込んでしまえばわかる。』
「僕はキアラにそんなことできないよ!」
『ははは、君の心の奥に秘めた妄想を、僕に隠せると思ったかい?相棒。欲望通り、覚悟を決めて一線を超えろ。』
「なにが相棒だ、ふざけるな!」
『しょうがないな……僕がかわりに確かめてやるよ。』
*
キアラは全く抵抗すること無く、誘いに応じた。
僕の中の人格の主導権が変わっていたことにも気付いてないようだった。
言われるがままに服を脱ぎ、身体を開く。
彼女は……――処女だった。
「うう………痛い……すごく痛い」
『大丈夫かい?キアラ』
「…痛いけど、我慢できないほどじゃない。」
『君の具合は最高だよ』
「今日のレクトくん、……なんか変。でもちょっと嬉しい。」
『こうして繋がることができたからね。』
「うん……いつものレクトくんは全然振り向いてくれない……。」
『<僕>は君だけを見ているさ。くくく』
「嬉しい……。」
僕はただその様子を、眺めていることしかできなかった。
キアラの膣内はリネアと比べてあまりにも狭く、きつい。
その感覚は共有しているが、そこにいるのは僕ではないのだ。
肉体も感覚も僕だけど、キアラが見ているのは僕ではない。<僕>だ。
あんな簡単にキアラが身体を開くとは思っていなかった。
それは僕が好きだったからなのか、<僕>に惹かれたからなのか。
今となってはそれもわからない。
*
この日の過ちは後にリネアにも知られてしまい、僕はますます厄介な状況に追い込まれることになる。
だがそれも全て僕の心の弱さが原因だ。
いっそ消えてしまいたい。
気がつけば、<僕>に主導権を任せて、眠ることが増えていった。
ねこトトラ@猫虎屋
2020-10-15 21:19:59 +0000 UTCカイビャク
2020-10-15 09:58:25 +0000 UTC