「あんた、よく来たわね。」
キャトラに呼ばれて宿屋の一室に行くと、そこには3人の少女が裸で待っていた。
足元には、したり顔のキャトラがちょこんと座っていた。
「ここに3人の女の子がいるでしょ。」
ルウシェ、ルカ、ツキミのいずれも、服を一切纏っていない。
「好きな子を、選びなさい。」
キャトラはそう言い放った。
――わけがわからない。
あまりにも唐突な選択肢だった。
「あ、あの!私、主様に子供を授けて頂けると聞いたのですが……。これから……何をするのでしょう。殿方の前でこの格好は少々恥ずかしいのですが……。」
ルウシェが胸と下半身を必死に隠しながら言う。
―-子供を……?
あまり想像していないワードだった。
「ルウシェは相変わらず世間知らずなのね~。裸にならないと子供は作れないじゃない。これから、3人のうちの一人に、子供を作ってもらうわ。」
キャトラは得意げな表情でそう言う。
「あんたもわからないって顔してるわね。しょうがないわ。キャトラさんが全部教えてあげるんだから。」
―はじめからそうして欲しい。
キャトラの説明は続いた。
「あんたが闇の王子だってことは、みんなもう知ってるわね。
闇の王子自体は、数万年も前から生き続けてるの。
でもどうみても少年でしょ。一応今年で16歳だったかしら。この〈器〉の年齢はね。」
〈器〉という言葉に、ひどく重きを置いて言う。
「闇の王や光の王がそうであるように、闇の王子もまた〈器〉を乗り換えて生き続けてるのよ。時が来たら新しい〈器〉を身に着けて若返る。そうやって何万年も生きてきたのよ。
でも今の〈器〉に乗り換える時はちょっと失敗しちゃって。それでしばらく記憶喪失になってたみたいね。」
確かに記憶がまだ完全でない部分があった。だいぶ思い出してきたとはいえ、未だに自分が闇の王子だという実感はそれほどない。
「あんたは自分の直接の子供しか〈器〉にできないのよ。だから誰かに子供を産んでもらって、その子が大きくなってきた頃にその〈器〉に乗り換える。これから子供を作ったとして、まあ30歳くらいになったらその時が来るわ。その前にまず〈器〉を準備しておかないといけないのよ。」
―乗り換えたら元の肉体はどうなるんだろうか
「もちろん消失するわ。あなた、お父さんのこと覚えてる?」
そういえば、自分には父がいたかどうかの記憶が全く無い。そのことを不思議に思ったこともないが。
「そう、あんたの父はあんた自身なのよ。だから乗り換えた時点で存在しなくなる。あんたの精神と融合して、文字通り一体になるのね。
ちなみにあんたの母はヘレナよ。先代もこんな感じに候補を出して、その時あんたがヘレナを選んだのね。きっと覚えてないでしょうけど。」
「くしゅん」
ツキミが可愛いくしゃみをした。無理もない、何も着ないでここにいるんだから。
3人は、キャトラの言うことを黙ってじっと聞いていた。
「だからあんたの〈器〉を産む候補の子を、アタシが選んでおいたのよ。
3人共、健康状態、子供を宿すための身体の準備、母性愛、バッチリ適正あるわ!
好きな子を選びなさい。」
改めて3人を見る。裸である意味はやっと理解できた。しかしなぜ3人もいるのだろうか。
「〈器〉といってもまるまるクローンができるわけじゃないわ。母親によって個性も見た目も能力もずいぶん変わるのよ。
ツキミが産む子は優しくて気立ての良い子になるでしょうね。
ルカの子供は力強くて勇敢な子になるわ。
ルウシェから生まれた子は、真面目で誠実な子になるんじゃないかしら。
キャトラさんの見立てではね!
だから次の代の自分が、一番なりたいタイプを選びなさい。」
―だいたい趣旨はわかったが、しかし3人の意思はどうなんだろうか。
できればみんなの意思を尊重しておきたかった。3人に尋ねる。
「私は、もともと寿命が短かったの。でもみんなのおかげでこうして生きていられる。だからママになって命を繋げるのは嬉しいかなー。それに保母さんのアルバイトしてた時、自分の赤ちゃんが欲しいなー!って思ってたの。」
ツキミは微笑みながらそう言った。
「私は!正直こういうことをするは不本意なんですが!
でも愛の守護天使として、闇の王子の器を見守るこの役目、やったりますよ!」
ルカはそう意気込んだ。
「わたくしは主様の子を授かるのでしたら異存はありません。
精一杯ご奉仕させていただきます……。
あ、でもその前に騎士様に伝えておかないといけませんね。」
ルウシェはまだ恥ずかしそうに身体を隠しながらもそう言った。
「ホラ、みんな異存は無いみたいでしょ。
だからあんたの好みで選びなさい。」
―でも、アイリスが……
そう、アイリス。自分のパートナーは彼女の他にはいないと思っていた。
「アイリスは、駄目よ。アイリスも器の身体なの。
あんたとアイリスは、結ばれちゃいけない存在なのよ。
永遠のパートナーだけど、永遠に交わることは許されない。皮肉なものね。」
アイリスはどうやって器を作るのだろうか。やはり誰か異性に抱かれてその見に宿すのだろうか。できればあまり考えたくないことだった。
「慎重に選びなさい。幼いあんたを育てるお母さんになるのよ。誰の母乳を飲んで育ちたいのかしら。それに、あんたの遺伝子の半分はこの中の誰かの特性を引き継ぐのよ。よーく考えなさい。」
そう言われてもなかなか選ぶのは難しかった。
三人ともとても魅力的だ。母性に溢れ、その芯には優しさが籠もっている。
自分の母になってくれるかもしれない女性だ。慎重に選ぶに越したことはない。
「まぁ、すぐには選べないわね。
そうね。これから身体の相性を確かめてみなさい。
誰が一番あんたの母親に相応しいか、実際に抱いて、確かめてみるといいわ。
アタシがみんなの母乳が出るようにしておいたから、それも飲み比べて判断材料にしなさい。」
ごくりと喉がなる。
実のところ、子供を作るという本能が役目を感じて強く反応していた。そこははち切れんばかりに膨張している。
作りたい……!彼女たちの身体の最奥に遺伝子を送り込んで、自らの分身となる存在をその母体に宿らせたい!その乳をしゃぶり尽くしたい……!
「ただし、誰かの膣内に射精した時点で、その子に決定よ。
選ばれなかった子は、記憶を消して、また普通の冒険者として過ごしてもらうわ。
そして選ばれた子は、妊娠するまで毎晩あんたと交わることになるわ。
まあ、あんたと相性がいい子を選んだから、たぶん半年もしないうちに受精するはずね。その後は、〈器〉としての準備が整う15歳の誕生日まで、母親として育ててもらうことになるわね。」
母となるというのは大変なことなのだ。まさに人生を変えてしまう。それを選ぶ権利が自分には果たしてあるのだろうか。
「それともうひとつ。この子たち3人は一度も男に穢されたことがない。みんな処女よ。
もちろん、そういう子だけをアタシが選んだんだからね。
その意味をよーく考えてから、抱くことね。
判断材料にするために、全員と交わってもいいけど、最初から選ぶつもりがない子は、手を出さないであげるのが優しさね。その子は、いずれ別の男に身を捧げることになるんだから……。」
まさに人生を賭けた選択が迫っていた……
続き
新規一転06
2019-06-11 23:54:26 +0000 UTC