【リクエスト】クロエ・フォン・アインツベルンの願い
Added 2022-09-26 11:00:00 +0000 UTCそれは、不意の出来事だった。 並行世界に飛ばされて数日。 荒廃した冬木市の状況を確認していたクロエ・フォン・アインツベルンは、何者かによる奇襲を受けた。 感知の隙間を縫うようにして放たれたその魔法の直撃を受けた彼女は瞬間的に意識を昏倒させ、僅かな間に意識を取り戻す。 しかしその時にはすでに、得体の知れない空間に閉じ込められていた。 時の流れも物理法則も狂った、外界からは不干渉の結界であることは理解できた。 しかし、肝心の結界を解く方法が見えない。 理由はただ一つ、彼女が解析眼を正しく機能させることができなかったからだ。 そして、機能させることができないのは―――。 「いったいどういうつもりなんだか…」 クロエが灰色に歪む空間にたたずむ人物を一瞥して呟く。 「…ほんと、なんでこんなことに…」 そこにいたのは、自分と同じアーチャーのクラスカードの影響を色濃く受けた朱と黒のコントラストの服に身を包み、銀髪と浅黒い肌、黄金に輝く瞳を持った、少女―――クロエ・フォン・アインツベルン。 聖杯の中身にして、「生きたい」という己が願望が顕現させた「もう一人のイリヤスフィール・フォン・アインツベルン」、クロエ自身だった。 「…方法は分からないけど、魔力を無理やり分けられた、って感じね」 「そうみたいね。そのせいで、いろいろと制限が掛けられてる感じがする」 彼女は内在する魔力によって、その存在を世界に留め置くことができている。 魔力の量が減少すれば、扱うことのできる力に制限が掛かり、さらにそれを下回れば、彼女のすべてが消滅してしまう。 そんな彼女が、敵からの術式によって分裂させられてしまった。 そのために、普段内在しているはずの魔力が大きく目減りしている。 力をうまく扱えない理由は、それだ。 さらに言えばそれは、彼女にとっては存在消滅の危機を感じさせるものだった。 「それで…どうする?」 「魔力返して欲しいんだけど…素直に応じてくれる?」 「ありえないわね」 「でしょうね」 目の前の存在がただの魔力の塊か何かであれば、そのまま触れるなり飲み込むなりして魔力を補給できただろう。 しかし、相手は意志のある一人の存在だ。 自分と同じ姿形をし、自分と同じ考え方を持った、まさに自分自身だ。 二人は、互いを見つめ合って、はぁ、と大きくため息を吐いた。 クロエ・フォン・アインツベルンは、激情的な部分がないでもない。 しかし、基本的には冷静で、常に周囲を見渡すことのできる余裕を持っている。 そんな彼女は、この危機に際しても、残り少ない魔力を使って相手を屈服させようとするような選択肢を選ぶことはない。 しかしそれでも、相手から一方的に魔力を吸収する必要があった。 他者から魔力の供給を受ける方法は、粘膜や肌の接触、体液の摂取。 しかし、相手が自分に魔力を返す気がない以上、奪い合いになることは必至だった。 「覚悟はいいわね?」 「そっちこそ」 二人はそう短く言葉を交わすと、互いの頬に手を当てて、ためらうことなく唇を重ねた。 普段、基本的な供給を受けているイリヤとする際には、水が高いところから低いところへ流れていくように、自然に魔力が流れ込んでくる。 しかし、今は状況が違う。 相手もまた、自分の魔力を吸おうとしてくる気配が感じられた。 クロエは意識を集中させ、その流れに逆らいながら、相手から魔力を啜ろうと相手の口内に舌を侵入させていく。 舌同士が交わった。 しかしそれは、イリヤとするときのような互いを受け入れている行為とは程遠い。 相手に舌に舌を絡みつけて締め付ける。 口内の唾液を舐めとるようにして飲み下す。 相手の魔力を、文字通り貪り合う。 相手が自分の唾液を舐めとる度に、僅かに魔力が減少するのが感じられた。 それを補うために、相手の唾液を舐めとり、舌を絡めて粘膜を密着させる。 クロエの体に取り込まれた魔力が、クロエによって奪われ、さらにそれを奪い返すという循環が、二人の間に生じていた。 同じ特性を持つもの同士の奪い合いは、一見すれば不毛そのものにみえるだろう。 そんな魔力の奔流と、粘膜同士の接触という刺激の強い快感に、クロエ達は知らず知らずのうちに、頬を紅潮させ、思考が鈍くなり始めていた。 「ぷはっ…ふぅ…ふぅ…これじゃあ、埒が明かないわね」 「ふぅ、はぁ…そうね…だったら、してみる?」 クロエはそう言って、ランサー衣装のショーツの股の部分を指先でなぞる。 それを受けたクロエは、ふん、と相手を鼻で笑って、指先で同じ部分を撫で返した。 「いいわよ…こっちの方が効率が良いしね…」 「私の魔力を吸い尽くせると思ってるの…?」 「思ってるわよ?」 二人はそう言いながら、履いていたショーツを脱いで地面に体を横たえる。 互いの太ももを枕にするようにして頭を載せると、ためらいなく相手の秘所へと口付けた。 クロエ達の秘所は、キスを続けていたことで、すでにじっとりと湿っていた。 そこに舌を這わせるだけで、魔力を含んだ体液が体に取り込まれる。 さらに小さな陰核に吸い付き、秘所の中へと舌を捻じ込んだ。 自分の陰核を包み込む暖かな感触と、秘所の中に入り込んでくる舌の動きに苦悶しながらも、クロエ達は相手の秘所から口を離さない。 「んっ…ふっ…んぐっ…」 「あっ…んんっ…んぐっ」 二人は、喉の奥でくぐもった悲鳴を漏らせつつ、相手から魔力を吸収するために、一心不乱に舐め合いを続ける。 そしてその一心不乱の舐め合いは、魔力のやり取りだけではなく、互いの体へ快感を提供し続けていた。 秘所の中から舌を抜いたクロエが、相手の陰核に吸い付いたその瞬間、相手はビクッと体を震わせて、その瞬間に自分の股間から口を離す。 その僅かな瞬間、これまで奪い合いだったやり取りが、片方のクロエによる搾取になった。 口を離してしまったクロエが仕返しとばかりにクロエの陰核に吸い付くと、吸い付かれたクロエも相手の股間から口を離して怯んでしまう。 すぐに態勢を立て直し、互いの秘所に吸い付き合う二人だったが、二人の脳裏にも同じ思考がめぐっていた。 一方的に吸い続けるには、相手に快感を与えて無力化する必要がある…! そこからの行動は早かった。 クロエ達は口だけではなく、秘所に指を突き入れて、小さな突起がプツプツと隆起する膣内の一部を重点的に擦り始めた。 「はぁっ…んんっ…あぁぁぁっ!」 「んぐっ…あぁっ…んんんんっ!」 二人は腰をヒク付かせ、身を捩りながらも相手の秘所から手と口を離さない。 どれだけ快感を覚えようとも、どれだけ魔力を奪われようとも、手を緩めれば自分自身が一方的に「吸われる」側になるという自覚と危機感があった。 「んぶっ…ちゅっ…はぁっ、いい加減、イキなさいよ…!」 「んちゅっ…ちゅぱっ…んんっ…あ、あんたこそ、諦めなさい!」 陰核に吸い付き、指で膣内を擦り、溢れ出て来た愛液を啜りながら、そう言い合いをする。 しかしそれは、互いの限界が近いことを表す一つの証左でもあった。 「んんっ…ふぅ…はぁ、あぁっ!」 「んぐっ…んんっ、はぁっ…あぁっ!」 喉の奥から漏れ出る喘ぎ声が徐々に高まり、啜り合い、抽挿する水音は一層激しさを増していく。 「はぁっんんっふぅっ……んっ…んんんんんんんっ!!!」 「んぐっ、んんっ…はぁっ…んんっ…んんんんんんっ!!!」 二人は、互いの秘所に吸い付き合いながらも絶頂した。 ビクンビクンと腰を逸らせて、全身を震わせる。 それでもなお、二人は互いの秘所から漏れ出る愛液を啜り合っていた。 「はぁっ…んっ…んんっ…んぐっ…」 「んんっ…ふぅ…んんっ…ちゅぱっ…」 「んぐっ…んんっ、んんんっ…んっ、んんんっ!!」 「ちゅっ…んんっ…んっんっんっ…んんっ、んんんんn!!!」 「ふぅ…ふぅ…んんっ…んぐっ…ちゅぅっ」 「ふぅ…ふぅ…んぐっ…ふぅ…ちゅぱっ」 二人は互いに攻め合い、何度も絶頂を繰り返した。 いつ終わるとも知れない攻め合いの中で、一方のクロエは、自身の体に現れた異変に気付いていた。 魔力が目減りしている感覚がある。 奪い合いを初めてから、わずかではあるものの、自分の魔力が相手に奪われているように感じられていた。 そのことに、クロエは内心、うっすらと焦りを感じ始める。 魔力は基本的に、水のような性質を持つ。 意識して吸い取ろうとしない限りは、強い方から弱い方へ、多い方から少ない方へと流れ込む。 しかし現状、クロエ達が互いの魔力を吸おうとする力はほとんど拮抗状態にあった。 ただし、それには僅かなタイミングの差があり、厳密にいえば二人の魔力は振り子のように一方が大きくなっても、すぐにそれをもう一方が吸収する、という波がある。 その波の幅が、次第に大きくなっているようにクロエには感じられていた。 差が大きくなってしまっても、魔力を吸収する力に悪影響は出ない。 むしろ、魔力の性質上、少なくなった方がより強力に魔力を吸うことが可能になるはずだ。 だから、今は向こうに波が行っているだけ…大丈夫なはず… そう、クロエは自分自身を安心させる。 そんの僅かな、些細な集中力の乱れが、彼女の攻め手をおろそかにさせていた。 不意に彼女の陰核にクロエの舌が絡みつき、その先端が薄い皮を押しのけて陰核本体に擦り付けられたのだ。 「んんっ!?はぁっ、んいやぁっ!!!」 次の瞬間、彼女はその快感に耐えかねて、クロエの秘所から口が離れ、身を捩らせて絶頂してしまう。 全身が脱力し、ほんの寸瞬、体の自由が効かなくなる。 その隙を、クロエは見逃さなかった。 クロエは、絶頂した彼女を煽ることも、嘲ることもなく、噴き出した愛液を舐めとり、秘所に舌を侵入させる。 大きな絶頂を感じたばかりのクロエにとって、それはあまりに刺激的過ぎた。 そして、攻めることのできない間にも、彼女の魔力は徐々にクロエに奪われていく。 傾いた天秤を元に戻すことは不可能だった。 反撃を試みたクロエだったが、まるで吸い上げられるように、全身から力が抜けていく。 快感が強くなるのに反して、指先の末端から感覚が薄れ始め、思考すらおぼつかなくなってくるように感じられた。 苦しさも、痛みもない。 むしろ、快楽に飲まれるような心地良ささえ覚えるほどだった。 クロエは、そんな感覚にまどろみ、そっと目を閉じる。 「クロ」 声がした。 好きかと問われれば、返答に困る。 けれど、誰よりも親しい大切な妹、もう一人の自分、イリヤスフィールの声だ。 そんな彼女の笑顔が脳裏に浮かぶ。 そして、その隣には大切な友人、美遊の姿もあった。 次の瞬間、クロエは締め上げられるような胸の痛みを感じた。 そして反射的に、自分に覆いかぶさっていたもう一人の自分を、全身の力を振り絞って突き飛ばした。 「ったいわね…!」 そう言って、突き飛ばされたクロエは素早く身を起こして態勢を立て直し、そして、もう一人の自分を見て、全身を硬直させた。 目の前で、クロエが大粒の涙をこぼしていた。 全身を強張らせ、自分に敵愾心のこもった視線を送りながら、ジリジリと這うようにして距離を取ろうとしている。 それはまるで、瀕死の獣のような姿だった。 クロエは、その姿を見て、かつての自分を思い起こしていた。 ―――消えたくない…!ただ生きていたい…! そして、大きくため息を吐く。 「………そうだよね、ごめん」 それはかつて、彼女の唯一の望みだった。 でも今は、もっと重い意味を持っている。 そのことを誰よりも理解していたのは、まぎれもない、クロエ自身だ。 生きたいと望む目の前の少女の願いを絶ち、自分だけが生き残る…その選択肢を、今の彼女は選べなかった。 「…違う方法を考えよう」 クロエはそう言って、怯えてすくむもう一人の自分に這い寄ると、そっと唇を重ねた。 舌を口内に差し入れて、ゆっくりと自分の唾液を送り込む。 それを躊躇いがちに舌で受け止めたクロエは、静かにゴクリと喉を鳴らした。 魔力が体に行き渡り、微かに発光し薄らぎ始めていた彼女の姿がはっきりとした輪郭を取り戻す。 魔力を受け取ったクロエは、自分の体に力が戻ったことを確かめると、いつの間にか胸を締め付けていた恐怖から解放された。 その安心感から、彼女は自分に魔力を分け与えてくれたクロエを抱き寄せる。 クロエも彼女を抱き返し、ふぅ、と大きく息を吐いた。 肌同士の接触で魔力を奪うためではない。 それは、二人にとって、不毛な争いを終わらせるための、相手を思いやる意志を見せるための触れ合いだった。 「……ね」 「なに?」 「……………ありがと」 「…別に」 二人は、抱き合い、地面に転げたまま、そう言葉を交わす。 「…それで、どうするつもり…?」 「…どうしようかな…」 「…私からずいぶん魔力供給したけど、あれ、まだ見えない?」 クロエの言葉に、クロエは周囲に視線を走らせる。 自分たちを覆っている結界の術式は、ぼんやりとしていて解読ができない。 「…うん、うっすらしててよく分からない」 「そう…」 それを聞いたクロエは、そう応じてふぅ、と息を吐いた。 頭をクリアにして、思考を走らせる。 自分達が結界を破れないのは、力が半減しているせいだ。 元の力を取り戻せば、おそらくは容易に突破することができるような代物なのだろう。 だから敵は、魔力を半分に分けたのかもしれない。 もしそうだとすれば、考えられる「次善」の策は、ある。 「それなら、もう少しあげる」 「はぁ!?」 クロエの言葉に、もう一人のクロエはそう驚きの声を上げて顔を上げた。 そんな彼女の金色の瞳をジッと見つめたクロエは、意を決して頷いてみせる。 「消えたくはないけど…この結界を破れないようじゃ、どのみち二人そろって消えることになる」 彼女は、現界しているだけで魔力を消費し続ける。 崩壊した冬木市には、大気に相当量の魔力が満ちていたために心配はしていなかったが、この結界の中には魔力は満ちていない。 時間の経過とともにお互いの魔力が減少すれば、どちらが消滅するまで魔力を吸い取ったとしても、結界を突破できなくなってしまう可能性もあった。 それなら、残された策は一つ。 自らが限界ギリギリまで魔力をもう一人の自分に提供する。 そしてもう一人の自分に、結界の突破を託す。 それが、「二人」でこの結界から脱出する、唯一の現実的な方法のように思えた。 「…そうね、分かった」 そんなクロエの考えと想いを、もう一人のクロエはつぶさに汲み取った。 そして、クロエの唇に自分の唇を重ねた。 クロエの体から魔力が吸い出されていく。 再び体がうっすらと発光し始め、感覚が薄くなり、意識も遠退きだす。 そんな彼女から唇を離したクロエは、ぐったりとしな垂れ掛かるようにして倒れそうになった彼女の体を両腕で抱き留め、魔力供給が行われた力を使って目を凝らした。 結界の表面に浮かんでいた術式とそれを取り扱うための魔法図が、まるで数列かコンピュータの基盤配置のように捉えられる。 すばやく、しかし見落としなく周囲に視線を走らせたクロエは、探していたものを見つけた。 それは、この結界を構成する術式の心臓部たる法則を含有した魔法陣だった。 クロエは、僅かに魔力だけを使って顕現させた弓に、ほんの少しの魔力を込めた矢を番え、弦を引き絞った。 狙いを定めて解き放たれた矢は、心臓部の術式に命中する。 次の瞬間、周囲の空間に亀裂が走り、砕け散るようにして結界が消滅した。 「クロ、しっかりっ!」 結界を破壊し、周囲に敵の姿がないことを確かめたクロエは、すぐさま抱きかかえていたもう一人の名を呼びながら、唇を重ねる。 彼女の体に魔力を送り込むと、やがて発光が収まり、瞑っていた目が開かれた。 「…やったの?」 「まぁ、なんとか」 そう言い合って、二人はようやく胸を撫で下ろし、初めて互いに笑顔を見せた。 そんなとき、 「クロ、大丈夫!?」 と声が聞こえた。 ハッとして顔を上げるとそこには、彼女の姉とは認められない妹、自分が守るべき、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンが居た。 「ねえ、大丈夫?何があったの―――!?」 イリヤは地上に降り立つと、クロエに歩み寄る途中で息を飲んだ。 クロエがその膝に抱いていた人物もまた、クロエであることに気付いたからだった。 「ク、クロが…二人…!?」 混乱するイリヤをよそに、クロエ達は小悪魔のようにニタリ、と表情を歪ませる。 「ちょうどよかった…」 そう言って、ゆらりと立ち上がった二人が「死霊かゾンビに見えた」と、のちにイリヤは語った。 ユラユラとおぼつかない足取りでイリヤに群がったクロエ達が、競うようにして唇に吸い付き、彼女が行動不能になるまで魔力を吸い続けたのは言うまでもない。