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06【間章:祝勝会と襲撃者】


◇神々のゲーム盤◇


??「どちらが人間を早く生み出せるか。この勝負も私の勝ちね」

セト「……」

??「そもそもこの私に、よりによって生物ランダムガチャで挑むぅ?

あんたそんな馬鹿な神じゃなかったでしょ。本当におぞましい。

昔からずっと嫌いだったけど、今のお前は神とすら呼べない。

そして、私に敵うと思っているその神経を疑う。これだから男って嫌いなのよ」

セト「負けは負けだ。ビビってんのか?」

??「はい、これで803102645個目。いい加減私に勝とうとか思うの諦めてくれない?

流石に飽きた。ていうか最初から退屈。

というかマゾなの? 気持ち悪。

あーあ、暇つぶし相手ならもっと良い子達が沢山いるのに――――」

セト「こちとら退屈で仕方ねえんだよ。俺が認識できる範囲に居たお前が悪い」

??「あぁあぁ、ホント最悪。ついてない。

――――で、人間できたけどどうすんの、次は?

退屈で退屈で仕方がないの。人間を増やすゲームでもする?

次からは人間の国同士で戦争させて勝敗決めるのもいいかもね。

負けたほうの国は自分の手で絶滅させるなんてどう?」

セト「……では次のゲームは……」


『――――――――――――』




【最下層:幻想郷は宴もたけなわ】


『幻想郷でパーティーが開かれるそうですよ?』なんて、

よりにもよって命廟ちゃんが楽しそうに言うものだから……

いったいどれだけのおしゃんてぃーな立食会が開かれるのかわくわくしていたら……

萃香「そぉれ!いっき!いっき!いっき!いっき!」

乱々「ごっごっごっごぷはぁもうだめもうむりしぬしぬやばいやばいしぬ!!」

霊夢「やめなさいよ倒れたやつから封印するからね」

のなめ「……いつもの宴会じゃん!」

魔理沙「お子様はいつものオレンジジュースな」

のなめ「ありがとーまりちゃん! もう飲まなきゃやってらんねぇ!」

無名異「ジュースだからと飲みすぎないように……」

のなめ「だっていつものお団子!おつまみ!ビールにお酒!

もっとこう、七面鳥の唐揚げとかヤツメウナギのパイとかそういう……

そういう食べたことない珍味を期待していました」

霊夢「毎月の宴会にそこまで手をかけられるわけ無いでしょ……

で、旅から久々に帰って来たって聞いたけどお土産。ほれ。プリーズ。ちょうだいっ!」

のなめ「え、ないよ」

霊夢「え?」

のなめ「幻想郷村には他の世界のものを持ち込んじゃだめなんだってー

そしたら思い出話ぐらいしかないけど巫女ちゃんってそういうの好きじゃないでしょ?

だからないよ」

霊夢「だーーーーつまんないつまんない! 私だってちょっとぐらい外に出てみたいのにーっ!」

無名異「一応結界を守る役割があるのだから……おちついてどうどう」

魔理沙「暴れるな座布団を投げるな―っ!」


……と、いつもの博麗神社での宴会を、

私はオレンジジュースを飲みながら楽しみました。

妖土真宗のみんなも、ほとんど全員集まってて……

ん?見慣れない子がいる……


ひかり子「この子は私の義理の妹の黒子ちゃんです。はい挨拶」

黒子「うぇーいシクヨロ! あ、日差しに弱いのでサングラス外せませーん!」

ちい「くろーちゃんなにやってるでちか……頭おかしくなったでち?」

ミント「だからこんな恥かくだけの演出やめようって言ったのに……ぷぷぷ」

黒鳥「くっなぜバレた!? 私の完璧な変装魔術が見破られるなんて……」

紫鸞「サングラスかけただけの変装を魔術とは呼ばないぞい」

無名異「元気そうで、何よりだが」

のなめ「……ママ、私あっちいってるね? 私、邪魔だから……」

ひかり子「待ちなさい。そもそもこの宴会は貴方が主役なのだから、

身内である私達が貴方を独占するべきよ、ええそうするべき。

星の叡智(アカシックレコード)にもそう書いてある」

黒鳥「あ、あんたを私の娘とは認めませんけど! でも、その、

……いやセトくんと私の娘としては認めたいね、私×セトくんは大正義だもんね!

ということで恨みっこなし。

これから好きになるために友達になりに来た。……だめかな?」

のなめ「……いいの? 私、たぶん、とっても、悪いことたくさんしたよ?」

黒鳥「ひかり子から聞いたけど、具体的な記憶ってないんでしょ。

罪悪感だけのふわふわ謝罪文で泣いちゃうぐらい、あなたは普通の子なんでしょ?

それならきっと、私が知ってる貴方ではない貴方と、いまここにいる貴方は別人よ。

私、切り替えの早い女なので!」

のなめ「……ともだち……」

黒鳥「それともなあに? いろんな子と友だちになってきて……私だけ仲間はずれ?」

のなめ「そ、そんなことしないっ! よ、よろしくね黒鳥ちゃん!」

黒鳥「いぇーい友達げっちゅー!」

本当のお母さん……って言っていいのか、わかんないけれど。

ちっちゃな身体でぎゅーっと全身つかって抱きしめてくれて。

なんだか、すごくほっとして、悲しくないのにまた涙が出てきそうだった。

黒鳥「……遠くから見てたら絶対に気がつけなかった。

形はにているけれど。記憶ははるか彼方に封じられているかもしれないけれど……

キミは、普通の人間の女の子だ。

この私が、誰にでも胸を張って、そう言える。だからもう、心配しないで」

のなめ「うぅ……涙が決壊するぅ……涙腺修理業者さんがほしいよう……」

ミント「気分を落ち着ける薬ならあるけど」

無名異「それはだめ」

ひかり子「仲良くなれそうでお姉さん安心だわーあ、私もジョッキ一杯」

紫鸞「節操の知らぬところで……ひかり子、よく頑張った。

久々に会ったせいか、なんだか見違えるほどたくましくなった気がするぞい」

ひかり子「上人様に褒められるなんて……わ、私はただ、上人様のように誰かに寄り添える素敵な女性になれたらいいなとおもって脳内イメージロールプレイングを出力しただけでアッ尊み秀吉スコスコ一夜城建った」

紫鸞「すこすこ一夜城ってなに!?」

乱々「ひかりこぉ~~~~~!!!!すきーーーーーーーーっ!

もうはなさなぃーーーーーーっ!! もうどこにもいかないでぇえ~~~~っ!!!」(ぎゅぽ、とビール瓶をひかり子の口に差し込みラッパ飲みをさせながら)

ひかり子「おぼぼぼぼっっぼぼぼぼぼ!!!!!」

ちい「今夜は寝かせないでちよぉ~~~!!!」

のなめ「はわわ大変だ……」

黒鳥「さぁ私達も飲んで飲んでどろどろぐちゃぐちゃに吐きあっちゃいましょうっ!」

のなめ「えっわtおぼぼぼぼぼぼぼぼ!!!!!!!」









のなめ「オエエエエエエエエエエエエエエッ!!!!」

ひかり子「うぶっぅ二日酔いきっつうっ……」

無名異「あれだけ飲んでいればまあそうなるな」

黒鳥「これでお愛顧♡ 過去はゲロに流してこれからよろしくね♡」

のなめ「うぅ、うん、よ、よろロロロロロロ!!!!」

ひかり子「はぁ、はぁ、私、私巻き添えなのなんで? うっもらいゲロしそうオエェッ」

乱々「大丈夫?」(ケロっとしている上に全て忘れている)

ひかり子「う、うんっ、なんでも、ないのっ……おえおえぇ」

ちい「こうしてみんな大人になっていくんでち!」

無名異「違うと思うよ」


END






◇賢人会議◇

紫鸞「……ということぞい」

黒鳥「謝っても、取り返しのつかない事態を引き起こしてしまいました。

……ですが、でも、それでも、私は……幻想郷のみんなを外に返すこと、

それを諦めたりはしません。だから、お願いします……」


紫「――――かつて、我々は3つのプランを画策し、

何れも尽く破綻しました。

幻想郷の表の管理者として、迷宮の創造神である貴方に問いましょう。

【1つ目、ブラックボックス領域をなぜセト神は手出しができないのか】

【2つ目、烏墨黒鳥および无名のなめ両名を絶命させた場合何が起こりうるか】

【3つ目、外へ通じる道はどこにあるのか】

……この3つの問いの答えをもって、私を納得させなさい」

皆故「八雲様。

2つ目については、私からそれはするべきではない……と箴言させていただきます」

紫鸞「拙僧も感情としては反対ぞい。だが、それでは納得せぬのだろう」

紫「ええ。私は今でも2つ目……プランBこそが解決の糸口であると信じている。

そして、今。手の届く距離に2つのカードが揃った。

……あまりじらさないでくださいね?」

黒鳥「一つずつ、私の持っているすべての情報を開示します。

【1つ目】について。……このブラックボックス領域は、

もともとは外から来た神、ええと、ホルス神から見えないように作り出した領域です。

前回、私はセトと妖土真宗のメンバー全員を迷宮に取り込み……

その後、ホルス神の欠片が飛来して、みんなを苦しめるように私に指図しました。

……それが、嫌だったので。私は誰の目も届かない最下層に、アジトを作りました。

えっと、ここに幻想郷がおさまったのは多分偶然かも知れないけれど。

幻想郷の性質と一番相性が良かったのかも、しれません。憶測です。

……このような経緯があったので、おそらくセトの目が届かないのは、

あのセトの存在級位がホルスの欠片と同等か、それ未満であるから……

だと、考えています。私の創造神としての権限を全てセトに移譲しても

あのセトくんは、弱すぎる」

紫「……弱い? あの神が?」

黒鳥「セトくんはとっても強い神さまなんです。

だって、この世界の創造神である私が信仰している神さまなんですよ?

本来、負けるはずなんてない。負けるなんて許さない。……

でも。

……私は……


……前回、セトを外に返す時に。【一欠片だけ返さなかった】

爪の先でちょっとかりっとして、私はそれを大事に抱えて眠りにつこうとした。

普通、生きてるはずなんかない。でもセトは違う。

胴体と四肢を切り離されても生きている。なら、それがもっと細かくなったら? 

生きていた。生きていたんです。

私が気が付かないぐらい、矮小で脆弱な無力な神さまになっても、

……生きて、いたんです。私が、側にいて欲しいって、願ってしまったから、

それを叶える為に……

何万倍にも引き伸ばされた仮想空間の中で、五感全てを封じられた状態で……


……は、話がそれました。でも、

セトくんは私の権限を持っているから強く見えるだけで。

それ以外は本当に、吹けば飛ぶぐらいに弱くなっています。

だから、ええと、この世界に閉じ込めようとする愛憎牢獄の神に勝てないし、

勝てなかった。ホルスの欠片よりも小さい存在だから、

ブラックボックス領域を見ることすらできない。

……これが、1つ目の問にたいする、私の答えです」


紫「1つ目については納得をしましょう。では次」

皆故「すこし、休憩をはさみませんか? 黒鳥さんの気分を落ち着けたほうが、

より円滑な議論ができるでしょう」

紫鸞「いや、時間はない。そうであろう?」

紫「私が日の出までに顔を見せなかった場合、

【无名のなめを抹殺する】……そう伝えてありますわ」

黒鳥「ふ、2つ目! ええと、愛憎牢獄の神と无名のなめが完全な同一存在であるなら……

確かに、黒幕なので、倒せば異変が終わる……

でも、それは幻想郷での理です。愛憎牢獄の理は……とっても単純で。

【愛憎牢獄内の全ての生命に永遠を保証する】……です。

……愛憎牢獄を作った神、ネイト神は後付の信仰によって

神としてのアイデンティティが肥大化していくのを恐れました。

具体的には、原初の神……だとか、地母神だとか。

あまりにも、一柱の神に荷が重い属性を……彼女は、己が変化する前に切り離した。

切り離した属性が、物質化したものがこの【愛憎牢獄】です。

幾層もの世界を創造し、我が子を永久に抱擁する母体。

外から来たモノを、我が子として絶対に手放さない愛の牢獄。

【外来生命体が全て生存している限り、愛憎牢獄という神の存在は揺るがない】

……逆に考えると、誰か一人でも死ねば……愛憎牢獄という神は崩壊する」

紫「そうね。崩壊した後、どうなるの?」

黒鳥「……これは、その、霊夢さんから聞いた話なんですけれど。

御神木として祀っていた木を、祀らなくなってしまった話では

……消えてしまったんですよね?」

紫「ええ。埋め合わせとして外の世界の木が世界ごと入ってきました」

黒鳥「……だから、多分、幻想郷も……私達も。愛憎牢獄の神を殺した時点で、

多分、消滅に巻き込まれるのではないかと、考えています。

愛憎牢獄の神を殺すこと。それは……外来生命体の誰一人も欠けさせてはならない。

……そ、そして、その。これは、さっき、自分の目でみて、よく見て、気がついたことなんですけれど、

のなめちゃんは―――――セトくんが少しだけ、混ざっていました」



紫「……つまり、セト神は私達に【殺すな】と命じているようなものね」

皆故「そんなことが出来るのでしょうか? 確かに、

それほどまでに細分化されても尚生存しているということは……

出来るのかも知れませんが……」

黒鳥「えっと、これも、前回のことになるんですけれど。前回はネベトちゃんが……

致命傷を負った時に、そう、していたはずです。だから、理論上は可能です」

紫鸞「拙僧がこの目でしかと見た。……だ、が、なぜ、やつはそのような事を?」

黒鳥「……ごめんなさい、セトくんと、愛憎牢獄の神との戦いは……

つらくて、目を背けたくて、見ないようにしていて、あまり、語れることがないです。

でも、セトくんはなぜか……愛憎牢獄の神によく似た少女を、娘として、

妖土真宗のみんなに育てさせて……

……だから、これは、多分、セトくんが一人で戦うのをやめてくれて、

最後に仲間を頼ってくれた、と、信じたいです。

……答えのない、問題に、正解を出すために……

私達に与えられた、選択肢がのなめちゃん。……

ごめんなさい、あまり、納得させられるような、根拠を提示できませんでした。」

紫「……貴方を信頼できるかどうか。この2つ目の問に正解が出るのはそこですわ。

とりあえず保留にして、3つ目の答えを聞きましょう」

黒鳥「脱出口は、本来ならここに在るはずです。

前回、ここから外への道を開いたので……閉ざされているだけで、探せば多分、

痕跡が見つかるはず。

最もそれを開けようとした時に愛憎牢獄の神からの妨害は、必ずあるはず、

……そして、完全な神に対抗できる戦力は、この世界にはありません。

この世界へ取り込まれた生命体は【弱体化補正】がかけられていて……

えっと、これも前回私がセトくんを弱くする時につかった手法で……

具体的には、霊力・魔力・思想・思考……それらが減弱していることにすら気がつけないほどに、

みんなはとても弱く、なっています。

本来ならば、紫さんの能力で外に出られても、おかしくはない……ですよね?」

紫「そうね。私の友人の力があれば、プランC……脱出口を探すまでもなく、

バックドアを生み出して脱出していたでしょうね」

黒鳥「外来生命体の生存を保証することで、

愛憎牢獄の神は子を守る母としての地母神性を完全なものとする。

お互いに不死であり続け、永遠にゆりかごの中で戯れ合う……

……のなめちゃんを殺すことは、多分物理的には可能だけど。

今、私の目に映る範囲に、愛憎牢獄の神は見当たらなくて……

それって、のなめちゃんを殺しても、人間の无名のなめという存在は消えるだけで

愛憎牢獄の神が、再び姿を表すんじゃないかな、っていう予測をしています。

そして、そうなったら……多分私達は二度と出られない……

だから、愛憎牢獄の神が、无名のなめという存在に収まっている今が、

多分ラストチャンスで……その期間を、その人間の一生を短くすることは、

私達の首を絞めることになるのではないか、と、考えています……

これが、私の、3つ目の問に対する、答えです」

紫「ありがとう。貴方を信じるかどうかは別として、まずは礼を。

さて、どうしたものかしらね……」

黒鳥「……4つ目。愛憎牢獄の、外には、現在ブラックホールが発生しています。

これを、どうにかしない限り……私達が、たとえ外に出たとしても……逆戻り。です」

紫「そうね。それは、どうすれば良いと思う? 

そもそも、貴方のお腹の中からどうしてそんなものが出てきたのかしら?」

黒鳥「愛憎牢獄というアイテムが、肉体をまとって、

私という存在を外に生み出しました。

……それは、愛するひとに、還ってきてほしかったから。

でも、私という形が、一番愛した存在は……はるか遠くの砂漠の国に帰ってしまった。

だから……だから、もっと、世界を飲み込んで、

幻想郷という小さな匣を覆そうとして……愛憎牢獄は、肥大化し続けた結果……

情報過密によるブラックホールを発生させて、幻想郷を飲み込んだ。

……外には、私が一番信じている、とっても強くて素敵な神さまがいるんです。

他力本願だけど、私は、いつもそう。

セトくんなら、きっと、私達の手を取って、暗闇から救い出してくれるって……

……勝手に信じて、その結果セトくんが沢山苦しんだのに、まだ、そう信じてる。

4つ目の難題に対する答えを、私は、こう考えています。

だから……私のことは信じなくて、いいから……セトくんのことを、信じてほしいです。

勝手なわがままだと、わかっています。

信じられないぐらい、つらい思いを、沢山させたことも、わかっています。

……おねがいします。」


紫「…………結局、全て、かの神の思い通りに事が進む。とても、不愉快ですわ。

けれど、……ああ、だから私の思考がまとまらないわけね?

信じてみたくなってしまうわ。藁にもすがりたくなる。

――――暗雲が立ち込める世界から、夜明けに導く神を」

隠岐奈「話終わった? じゃ、私この子借りてくからあとヨロ」

黒鳥「ぎゃっ!? いきなり後ろから出てこないであっ助けて誘拐されるーっ!」

紫「では勝手口捜索をお願いね。こちらはいつもどおり幻想郷運営に尽力いたしましょう」

紫鸞「ちょ、ちょっと抹殺命令の撤回マジで頼むぞいっ!?」

紫「そんな物騒な命令誰に命じるというのですか。幻想郷に似つかわしく有りませんわ」

紫鸞「えっ!?」

皆故「では、今後も四季の移ろいをより華やかに。各所に通達させていただきます」

紫「有り難いわ~庭が毎日鮮やかになるだけで気分が違うもの」

紫鸞「ちょ、ちょっっとっ! 拙僧めっちゃ奥の手とか用意していたのにっ!!

上人八奥義の泣き落としとか土下座とかっ!」

黒鳥「な、なんなんだよぉーーーーーーーっ!」

隠岐奈「あっはっは、紫と腹のさぐりあいをしようとか千年ぐらい早かったね~」




◇END◇

















のなめ「うぅ……まだ頭の奥がぐるぎゅるぐわわわってしてる……」

無名異「流石に心配だな……人里の町医者のところまで行けるか?」

のなめ「む、無理かも……ままついてきてぇ……」

無名異「わかった。肩を貸す、あとエチケット袋もって」

のなめ「うん、ありがとぅ……うべぼぼ」

無名異「あーよしよし……」



のなめ「……そいえば、ほろーちゃん、いなかったね」

無名異「そうだな。……きっと別の世界を旅しているのだろう。

珠烏殿は、旅をすることを夢見ていたから……」

のなめ「そっか……」



なんとなく、会話が、続かない。

どうしてだろう。あんなに大好きなママ、なのに。

なんだか、距離感を感じてしまう。

……ううん、私は、いずれ、ママとは違う人生を歩むことに、なるから。

だから、ずっと、こうやって、横に並んで歩いていることは……

できないって、わかってる。


でも、だからこそ! 今、この一緒にいられる時間を、大切にしたいのに……

どうして、なんだろ。

どうして……心が、もやもやって、するんだろう?


のなめ「……ママ、どうして、私の名前……【のなめ】なの?

全然、ママの名前と関係ない、よね……」

無名異「? 関係大アリだぞ。ほら、英語で無名はNoName、

ひらがなで、のなめ。ほら私の娘だ」

のなめ「……あ、そうなんだ……

ご、ごめんね? なんだか、ママって私のこと好きじゃないのかもって、

なんか、変だね。不安に思うことなんて、ないのにさ……」

無名異「……最初は、好きじゃなかった。

言うこと聞いてくれないし、手間がかかるし、問題ばかり起こすし」

のなめ「あ、あう……ごめんなさい、お皿いっぱい割りました……」

無名異「私の焼いた壺を変なオブジェ扱いするし、

栓抜き型埴輪を埴輪型栓抜きとか言うし。好きな食べ物も好きな色も、全然違うし……」

のなめ「う、うぅ……どうして家族やれてたのか不安になってきた……」

無名異「……そして。私の亡き友人にとてもそっくりだった。

正直、セトの嫌がらせかと最初は思った。

セトをとても憎んだし、悪趣味なことをする……って何度も怒りを覚えた」

のなめ「え、えぇぇぇ!? それは、最悪、だ……パパ、何考えてるんだよう……

はは、そりゃ、ママは私のこと嫌いなわけだ……」

無名異「でも。キミは、私の亡き友人とは全然にてない。ちっとも似てない。

いやもう今では似てるところなんて髪の毛の色ぐらいしかないな!

ある時から亡き友人の写し身としてではなく……貴方という存在として認識できて

その時からとっても大好きになった。

そしたら、辛かった思い出も、全部反転して……今では全てが愛おしい」

のなめ「……い、いつ? わかんない、ごめんね、ずっとママ、優しかったから……」

無名異「ひみつ。それに、これがわからない貴方だから、好きなんだ」

のなめ「い、いじわるぅ……! もう、ママなんて大好き!」

無名異「ふふ、私もだ」


……不安は、ただの不安で。やっぱり、ママは優しくて。

私は幸せで。

だから、へんな感じだったのは――――――ママのせいではなくて、


幽香「ごきげんよう。そして、さようなら」


素敵な日傘を差したお姉さんが、にこやかに笑みを浮かべて……


次の瞬間、私のお腹に大きな穴が開いて、痛いはずなのに、ちっとも……痛くなかった



◇襲撃者


頭がぼーっとする、お腹より、下を見ようとすると、頭ががりがり変なかんじする。

ママが、泣きながら、なんとかしようってしてるけど、

その遠くで、お姉さんが、にっこりしてるから……ママ、にげて、ほしい、な……?


のなめ「……え、あ、……ま、ま……?」

無名異「喋らないで! 今止血を、あ、あ、…ああぁぁ……っ」

幽香「手当は無駄。私が仕損じるわけがないでしょう」

無名異「黙れッッ!! くそ、失いたくない、絶対に助ける、助ける、やだ、いやだ、死なせたくない、嫌だ、死なないでよ、私は、私はッッッ」

幽香「ずっとね、見ていたの。私の幻想郷、私が愛した幻想郷。

一体誰が、こんなくだらない牢獄に閉じ込めて変質させたのかしらって。

……ずっと、よ。貴方が幻想郷に来る前から、幻想郷に来てから、外に出てから……

ああ、疲れた。何も知らないふりして、普通の妖怪の幽香さん。

……でも、これで終わるわ」

のなめ「……に、にげ……」

無名異「逃げないっ、死ぬなら一緒に死んでやるッ! だから、だからっ……」


ままがしぬなんてやだよ。私は、ね、もういいの。十分旅したもん。

だから、もういいよ、だから、ままだけは、幸せになってほしいよ。

なのに、どうして、ママは悲しそうな顔するの。

どうしよう。どうしようもない。ああ、私はなんて無力なんだろう。


『――――――――――――』


……ああ、これって、負けなのかぁ。

貴方の勝ち星だ。やったね。

……つぎ、つぎ? つぎも、たたかうの?

やだなぁ…… 嫌だ? どうして? 私はもう嫌だよ。 何故? 退屈だわ。


ぐるぐる、ぐるぐる。記憶がぐるりと反転していく。

きっとこれは走馬灯だ。


『人間の駒に憑依して競おうじゃないか』


「……へえ、それ、面白いの?」


たしか、こんな感じに、答えたの。そしたら、面白いって、言ったんだ。


『不自由な身で、周囲にある全てを利用して勝つ……

まあまあ面白いぞ。お前も見ていただろう』


「……あー、あれね。ほろーめいきゅーってやつ。

あんたあれそんなに面白かったの? 傍から見たらクソゲーだったけどね。

いいわ。やってやろうじゃん。まあ――――これが事実上の決勝戦。

次挑んできたら、貴方細胞全部失うことになるからね?

まあ、肉体に依存しなくても生存できるっていうなら、ご自由にどうぞ」


『生きて俺のもとにたどり着けるもんならやってみろ』


かちん、と、シャッターが切られて、視界が暗転する。

私の人生はここで幕引きなんだ。

次は、私ではない私が、きっと――――また、ひどいこと、するんだね






/retake






まぶたを閉じているのに、朝日が眩しくて、おもたーい目をゆっくり開いたら……

なんか、お布団の上に不審者が!


鳶子「やあやあお目覚めかね? 僕の愛しのハ」

のなめ「だれかーーーー! だれか、不審者がっ! ママにげっ……」

鳶子「だからぁ、そのママを探しに行く途中で倒れたから、

キミを介抱してあげてるんじゃないか。僕に惚れてもいいよ?」

白菊「あ、お目覚めですか? ツアー再開は明日からにしましょうか」

鳶子「よろしくねー。はい、これチップ」

白菊「今後もご贔屓によろしくおねがいしますっ!」

のなめ「うぅー……あれあれ? うん? なんか、変な感じ……

ううぅ……まって、私は何をしていたんだっけ?」


頭ががんがん重たくて、なんだか吐き気がひどい。何でだろう?

お腹をおそるおそるゆっくり擦ると、ちゃんとぷにぷにのお腹があることに安堵する。

……なんで、安心したの? うううん???

すがるように、鳶子ちゃんの目を見たら――――


カチン、って音がなったような気がして


のなめ「仕方がないからデートの下見に付き合ってるんだった。

くぅ、ツアー料金全部そっち持ちだから何も抵抗できねぇ!」

鳶子「思い出してくれたようで何より! まぁ、この第二世界は広いからね。

なんたって、星間飛行前提の巨大生命資料館!

一体キミのママは何処に行っちゃったんだか」

のなめ「うぇぇ、待ち合わせ場所思い出せないぃ! 地球に帰りたいぃ!」

鳶子「はっはっは。すぐには帰らないほうが良いかもね。

なにせ――――いや、これは今語るべきときではない」

のなめ「この、思わせぶりな口調で色々はぐらかす不審者が側にいるなんてやだぁーーー!!」

鳶子「あーっはっはっはっは!」

白菊「救護室ではお静かにお願いしますねー?」

鳶子「ほい白菊。追加のチップ」

白菊「やったーっ!」

鳶子ちゃんの高笑いが、こだまする。

だけどなぜか、白菊さんの笑顔に――――しらないお姉さんの笑顔が重なって、

胸が、きゅって、苦しくなった。

はやくママに会いたいよ。そうじゃないと、なんだか、すごく、不安で不安で、

怖くて怖くて――――正気じゃいられない。








皆故「……どうして」

幽香「どうして? 幻想郷が好きだから。幻想郷を壊す輩が許せない。

だから、誰かがやらなくてはいけない……違う?」

皆故「……私の言葉では足りなかった、それは理解できます。ですが、

それでも……っ! 今日だけは、待ってほしいとっ!」

幽香「決行日は今日しかなかった。

神の目が届かないこの世界で、紫と隠岐奈が他に目を向けている今、この日以外に」

皆故「……じゃあ、どうして、貴方はそんなに、悲しそうな顔をしているのですかっ!

私は、貴方のそんな顔を見たくはなかったっ!

……貴方と、この幻想郷の四季を彩る仕事は……とても、とても楽しかった。

だから、壊したくなかったのにっ……」

幽香「貴方のこと、長い間だったけど。とても素敵な友人だと思ってる。

でもね。私、友人少ない方だけど……もうひとり、居たの。

そいつはね? 私のことリスペクトしない最低のじゃじゃ馬でさ。

大きな厄介事ひとりで抱え込んで、全然私に相談してくれなかった。

――――そして、一人で抱え込んで。そいつだけ、幻想郷を救うために死んだ」

皆故「……貴方は、そのご友人と同じことを、したかったのですか。

幻想郷を、救って、一人で……罪を背負って……

私を、悲しませたかったのですか……」

幽香「かもね。ありがとう、私の最後の友人。私のこと、忘れないでね」

皆故「……貴方の、友人を、覚えているひとが、居なくなってしまうでは、

ありませんか……

こんな、こんなの、理不尽だ……っ! あんまりだ……!」


私は、季節の移ろいを司るだけの、無力な神さまだ。

忘却の力なんて、後付だからちょっとしかない。

ただ、毎日を色鮮やかに飾れば……

きっとつらい過去も塵に消えて真っ白に、なってしまうから。

だから、セトという神から与えられた仕事を、こなしていた。

……そんなときに、素敵なガーデンを持つという彼女の元を訪ねて、

私は、己の浅慮さを恥じ入った。

それほどまでに、風見幽香の手入れする四季の庭は、素晴らしくて――――

辛い毎日を、忘れてしまうほどに、美しくて。素敵だった。

……そんな、すごいひとと、友達になれて、嬉しくて!

それから毎日、とっても、とっても、楽しかったのに……


ああ、忘れたくなんてない。すばらしき日常を、忘れたくないのに……

くるりと反転して、心を蝕む棘になり、思い返すだけで気が遠くなる。



皆故「……ああ、どうか。誰でもいい。もう一度、やり直すチャンスが欲しい。

次は――――私が、もっと、ちゃんとするからっ……!

だから、もう、何も失いたくなんてない!」


神さまなのに、無力だから。何かに祈るしか、私にはできない。

こんな無力な神さま、見たことなんてない。

きっと……力のある神さまからしてみたら、笑い飛ばせるほど、滑稽なんだろうな。


??「……本当に、やり直したら……彼女を止められるかい?

キミが、頑張らないとどうしても過去は変わらない。

この運命の袋小路を突破するには、誰かの強い意志が必要で――――

キミは【すべてを忘れても思い出せるのか】?」


目をあけて、空を見上げるとしらないひとが語りかけてくる。

ああ、神さまでも悪魔でもなんでも良い!


皆故「名前も、能力も、何もかも忘れたって私は思い出した!

何度でも、何度でも思い出してみせるっ!

だから……お願いします。私の、友人を……止める機会を、ください……」


??「――――そう。いいね、好きだよ、愛している。素敵だ!

こんなに請われて応えない神なんてナイナイ! 

さあ、僕の手を取って。世界をぐるりと回転させよう。

一度っきりの奇跡なら、何度でも起こしてあげよう

――――だって、僕は――――最も可能性に満ちた、無限の神!」


迷わず手をとると、神はニヒルな笑顔を浮かべて笑う。

その顔は、獲物を前に品定めをする悪魔のようで、けれど、私にとっては

どんな救いの神よりも、頼もしく映る。


/



皆故「……すみません、八雲様。私は席を外させていただきます。

少しだけ、成すべきことを残してきたのを、思い出しました」

紫「あら、そう? 貴方が居ると場が和むから、いて欲しいのだけれど」

皆故「……本当に、申し訳ないです。でも、私のたいせつな友人が……待ってますから」

紫「そう。幽香によろしくね、あの子が他者を気に入るなんて稀なのよ」

皆故「はい。伝えておきます。それでは……」


私は、胸騒ぎだけを頼りに、外にでる。友人の姿を探す。

もしかして、もしかして――――考えすぎかもしれないけれど、

でも、彼女はとても気高くて……人一倍、物事を背負い込む方だから、

――――


皆故「幽香さんっ!」

幽香「……あら、どうしたの? 今日は会議の日だから、オフでしょ。

私、今日は人里を散歩する気分なのよね」

皆故「そ、その。えっと。あの……はぁ、はぁ、ちょっと、まって息切れが」

幽香「……大丈夫? 少し休んだほうが良いと思うけど。

そこの甘味屋、空いてそうだし入りましょ。落ち着いたら何があったのか、聞かせてね?」

皆故「は、はいっ……す、すみませんっ……」


……その後、結局私は何を幽香さんに話そうとしていたのか、

これっぽっちも思い出せなくて、とってもとっても笑われてしまった。

でも、おいしいぜんざいを食べながら、二人で他愛のない会話をして、夕日を眺めて、

仲良く帰路についたとき…………


これで、よかったんだ。って……よくわからないけど、安心した。

最近忘れっぽいから、今後は気をつけないとなぁ……


















06【間章:祝勝会と襲撃者】

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