小学3年生の冬、家では毎日のようにお姉ちゃんに喧嘩を売ってはその度に徹底的にくすぐり倒されてごめんなさいする日々を繰り返していた。
「ほぉら、こちょこちょこちょこちょ~!早くごめんなさいした方が身のためだよ?」
「ぎゃぁぁぁぁっあはっっぁぁぁっじぬっっぁぁぁぁっご、ごめんなひゃっっぁぁぁぁぁぁっぐぁぁぁっぁぁぁっぎ、ギブぅぅっぁぁぁぁぁぁぁっあはははははははは!!」
今日もお姉ちゃんと軽く言い合いになり、一か八かで押し倒そうとするも小学6年生で身長も力も強くて合気道を習っている姉に勝てる筈もなく、一瞬にして組伏せられて仰向けにされ、首に太ももを巻き付けられて絞められながら腋の下を情け容赦なくこちょこちょされていた。
あまりのくすぐったさと苦しさに必死にギブアップして「ごめんなさい」を言おうとするが、手で口を塞がれたりくすぐりで妨害されて意地悪されてしまい、顔は涙や涎で既にぐしゃぐしゃになって戦意は完全に喪失していた。
「そろそろ反省した?」
「ひぃぃっっは、はんぜぃじまじたからぁぁぁぁっぁぁぁっいひゃらぁぁぁっもうゆるじでくださぃぃぃぃっぁぁぁぁぁぁぁぁっごめんなざぃぃぃぃっぁぁぁぁぁっあははははははははははははははははは!!」
「そろそろ限界みたいだから今日はこの辺で勘弁してあげる。これに懲りたら私に喧嘩売ろうなんて考えないことね。分かった?」
「っげほっ、ごほっ、…っわ、わかりましたぁ……」
お姉ちゃんのお仕置きから解放された頃にはもうすっかり息絶え絶えでしばらくの間立ち上がれたいほどに体力を消耗してしまっていた。
お姉ちゃんには絶対に勝てない……
その時、ふとある考えが閃いた。
いつもは反抗してことごとく負かされているけれど、逆にお姉ちゃんに甘えてみたらどんな反応をするのだろうか。
上手くいけば、油断している隙にくすぐって勝てるかもしれない…!
早速今日の夜、寝る前に作戦を実行してみようと密かに心に決めたのだった。
**
お風呂に入って夜ご飯を食べた後、部屋に戻ろうとするお姉ちゃんに思いきって話しかけてみる。
「お、お姉ちゃん……!」
「ん?なに?」
少し気だるげに、面倒そうに返事をして振り返るお姉ちゃんに、いつもとは違って少しだけ気弱な態度を示してみる。
「そ、その…今日…一緒に寝たいんだけど……」
急に恥ずかしさが込み上げてきて、お姉ちゃんの顔を直視できず斜め下を向いてしまう。
流石に怒られるだろう…?それとも馬鹿にされるだろうか…
少し反応に間があり、恐る恐る顔を上げてみると…
「…ふふっ♪いいけど、どうしたの急に~?甘えたくなったの?やっぱりまだまだ子供だもんね?先に部屋で寝て待っててね♪」
「え…あ……うん…ありがとう……」
予想に反して、お姉ちゃんはだらしなく優しい笑みを浮かべていて、何故か分からないけれど少し嬉しそうな様子だった。
歯磨きやトイレを済ませ、言われた通り自分の部屋のベッドに大人しく入って待つことに。
どうしよう…寝たフリをしてみようか…
自分で言っておきながらも、どんな風にお姉ちゃんと話せばいいのか分からなくなっていた。
__数分後、部屋の扉が静かに開いた音がした。
布団を頭からごっぽりと被り直して待っていると…
「もう寝ちゃった?」
「………すぅ……すぅ……」
「寝たフリしてるのバレバレだよ?」
「…ぇっ!?」
思わず布団から顔を出してしまい、クスクスと笑われてしまった。お姉ちゃんは本当に一緒に寝るつもりなのか、ベッドの上に乗って布団の中に身体を入れて横になり始める。
月明かりだけが頼りの薄暗い部屋の中、布団が擦れる音が大きく響いている。
お姉ちゃんと向き合うような形で寝るのは何だか恥ずかしくて寝返りをうって向きを変えようかと思っていた矢先、背中に手をまわされてぎゅっと抱き寄せられ、お姉ちゃんの胸に顔を埋めてしまうような体勢になる。
「んっ!?んんっっ!!」
「ふふっ♪よしよし、いっぱい甘えていいからね?」
まるで小さな子供をあやすかのように優しく頭や背中を撫でられ、脚も胴体に絡み付かれて逃げられないようにしっかりと抱き締められる。
いい匂いがして暖かくて、抵抗しようにも力が抜けていくような感覚に包まれていく。
だけど、段々と息苦しくなってきて、もごもごと暴れているとようやく少しだけ身体が離れて自由になる。
「っぷはぁっ、はぁっ…お、お姉ちゃんいきなり何するんだよ…!」
「ん?ごめんね?苦しかった?」
お姉ちゃんも少し下にさがり、顔の位置が同じになる。
いつもより優しい雰囲気と表情に、どうすればいいのか段々と不安になってしまう…
そうだ…!当初の作戦通り、お姉ちゃんに不意打ちでくすぐってみることに。どんな反応をするのだろう…
「お姉ちゃん、目をつぶって?」
「え?うん…いいけど…?」
お姉ちゃんが目を閉じたことを確認して、布団の中でゆっくりと脇腹に手を伸ばそうとするが…
パシッ、と。
お姉ちゃんに触れる直前で手首を掴まれて布団から出され、両手を万歳で押さえつけられてしまった。
仰向けの状態で身体の上にお姉ちゃんが寝そべるように乗ってきて、片手で両手首を掴まれて頭上で押さえつけられながら顔を覗き込まれてしまう。
「ねぇ、今何しようとした?正直に言って?」
「ひっ……!?あっ…えっと…ぎゅーして欲しくて…」
一か八かの駄目元で咄嗟に誤魔化してしまった。
もしくすぐろうとしたことがバレたら…一晩中お仕置きされてしまうかましれないと思い、ガタガタと震える。
「……かわいい…」
「ん……?え……?」
「そっか~♪ぎゅーして欲しかったんだぁ?やっぱり甘えん坊だったんだね~?ほら、おいで♪」
「ぇっ…!?いや、ちょっ、冗談だってぇ…や、やめてぇ恥ずかしいからぁぁっ……」
上に乗られてしっかりと抱き締められて密着され、ジタバタと抵抗しようとする手足も絡め取られて動けないようにされてしまう。
お姉ちゃんの様子がおかしい……
いつものお姉ちゃんじゃない……
何か変な物でも食べたのだろうか?
普段の怖くて理不尽なお姉ちゃんよりかはマシだけれど、何だか違和感を感じて心がむずむずとしてしまう。
必死に暴れようともがいていると、服の中にするりとお姉ちゃんのくすぐったい手が侵入して「んひぃぃっ!?」と情けない声が口から漏れてしまった。
「そんなに照れちゃって~♪可愛いね?」
「う、うるひゃい…も、もういいから離れてよぉ…」
「だぁめ。自分で言ったんだから責任取ってね?寝るまで離さないから。」
腋の窪みにピタリと指を添えられて動けない。
少しでも下手に抵抗すれば、いつでもくすぐれるぞという脅しの意図を感じる。
お姉ちゃんの指が触れているだけでもくすぐったくて我慢できず、体温も上がって段々と汗ばんでしまう。
カリっ…こちょ…こちょこちょ……
「ひゃっっ!?んひぃっ!?や、やめっ…」
「夜だから静かにして?いい子にできるよね?」
「い、いい子になるからぁや、やめてよぉ…」
「そう?じゃあいい子にはご褒美あげる。優しくこちょこちょしながら寝かしつけてあげるね」
「な、なんでそうなるのっ…んひぃぃっぁぁっ、あひっっ…んぁぁぁっ…だめぇっ…んひぃぃっ…ひっっ…」
優しくソフトに、指先でくすぐったい皮膚の表面を撫でて刺激するかのようにゆっくりと身体の上を這いまわる。
腋を閉じても無駄な抵抗だと言わんばかりに窪みをカリカリとくすぐられたり、耳に息を「ふ~っ♪」と吹き掛けられてゾクゾクと力が抜けて抵抗できなくなってしまう。
いつもお姉ちゃんにくすぐられる時は、ハードで容赦のないこちょこちょばかりだったから、甘く優しい蕩けるようなくすぐり方に驚きの気持ちも強かった。
「ゾクゾクしてくすぐったいでしょ~?涎垂らしちゃって気持ちいいの?これから毎晩くすぐりながら寝かしつけてあげよっか?」
「ひぃぃっんぁぁっひゃらっっぁぁっ……んっ…も、もういいからぁっや、やめてよぉぉ…っっぁぁっば、ばかぁぁっ!お姉ちゃんの変態ぃぃっんひぃっ…」
「ふ~んそんなこと言うんだぁ?でも今日だけは許してあげる♪素直におねだりできたご褒美だからね」
我慢できなくなって、お姉ちゃんにいつものような生意気な事を言ったのになぜか許されてしまい、さらに困惑してどうすればいいのか分からなくなってしまう…
一体何がどうなってお姉ちゃんの変なスイッチを入れてしまったのだろう……?
お腹をわしゃわしゃと優しく撫でられ、胸や腋の下も人差し指でさわさわカリカリと愛撫されてしまう。
下半身はお姉ちゃんの脚で挟み込むようにして固定され、腕で頭を抱き寄せるような形で添い寝されて耳元で「こちょこちょ~♪」と囁かれてしまう。
逃げることも抵抗することも許されず、くすぐったくて身体に力も入らない…
されるがままにこちょこちょされ続けておかしくなりそうだった。
「っぁぁっ、も、もういいでしょ~!し、しつこいってぇぇっひゃめろよぉぉ!!」
「しつこい??そっか~…そんなこと言うならいつもみたいに死ぬほどくすぐったくされる方がいいの?」
「ひぃぃっ!?や、やだぁぁごめんなさぃぃっ…ほ、本当にもう寝るからぁぁこちょこちょやめてくださぃぃ」
「あ~…そうね、ごめんごめん。じゃあ寝よっか♪おやすみ」
「っはぁっ…はぁっ……お、おやすみなさい……」
ようやく服の中から手を引き抜かれたものの、再びぎゅっと密着されて動けない…
こんなことになるなら「一緒に寝よう」なんて言わなければよかったと、少しだけ後悔。
だけど、暖かくて程よく笑い疲れて…
目を閉じてからあっという間に睡魔に襲われ、気付けばぐっすりと深い眠りに堕ちていった。
**
「…んんっ……ん………えっ!?」
「すぅ……すぅ……」
朝起きて真っ先に目の前に飛び込んで来たのは気持ち良さそうに眠っているお姉ちゃんの顔だった。
そう言えば昨日…お姉ちゃんと寝ることになったんだっけ…
お姉ちゃんの両手はしっかりと身体に抱きつかれていて、とりあえず起こしてみることに。
「ね、姉ちゃん…起きてよ!朝だよ…!」
恐る恐る起き上がって肩を揺らしてみる。
ふと何気なく、首筋をくすぐってみようと指を近付けた瞬間…
「ねぇ、何しようとした?」
「うわぁっ!?び、びっくりした……」
普通に話しかけてきてきたお姉ちゃんにびっくりしてひっくり返りそうになってしまう。
まさか…寝たフリしてたのか……?
「あ、えっと…起こそうと思って…」
「ふふっ♪そういうことにしといてあげる。じゃあ私も起きて着替えてくるね」
「あ…う、うん……」
お姉ちゃんは何事も無かったかのように部屋を出ていき、ようやく一人の時間になって「ふぅ…」と息を吐く。
お姉ちゃんに甘えるのもほどほどにしておこう……
お姉ちゃんの見てはいけないような一面に触れた気分になり、しばらくの間むず痒いような気持ちで過ごしていた_