ある日の夕方。
学校から帰りリビングに行くと、教育テレビが流れていた。
手を洗っておやつに用意してくれたお饅頭を食べていると、テレビでは古典落語をアニメ風に解説しているコーナーに。
ぼんやりと眺めていた内容は、「まんじゅうこわい」というお話だった。
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長屋に若者たちが集まり、皆何が怖いのかを話し合っている。「ヘビ」や「お化け」など皆それぞれ怖いものを挙げていく中で、ひとりだけ「怖いものなんて存在しない!」と強がってある素振りの男がいた。
他の男が、「本当に怖いものはないのか」と尋ねてみると、渋々といった様子で「実は…まんじゅうが怖くて怖くてたまらない」と言う。
そこで、他の男達はイタズラを思い付いて、後日皆でお金を出し合ってその男の家に沢山のまんじゅうを手土産に持っていって反応をからかってみることになった。
寝ている男の側に山盛りのまんじゅうを置いて様子を窺っていると、起きた男はわざとらしく狼狽して「こんな怖いものは食べてなくしてしまえ~!」と言いながら次々口に運んでいく。しまいには、「美味しすぎて怖い~」などと言う始末。
他の男達も騙されたと気付き男を問い詰め、「本当に怖いものは何だ!」と聞くと、「そうだなぁ…濃いお茶が一杯」と答えていたのだった。
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「ふ~ん…これはもしかして、学校で使えるかも!」
最近クラスの中では"こちょこちょ遊び"が流行っている。
くすぐるのが好きな女子が多く、男子を一方的に追いかけまわして多勢に無勢で押さえつけて泣いてごめんなさいするまでこちょこちょとくすぐっている光景をよく見るように。
少しでも男子が「やりすぎだ!」とか反論したり、女子をくすぐり返そうとしようものならすぐさま数の暴力で取り押さえてこちょこちょの刑にされてしまう。
ほんの少しだけ、自分もされてみたいと思っているのだけれど中々そんな勇気は出ないし恥ずかしい気持ちもあった。
だけど、さっきの落語のようにわざと「こちょこちょがこわい」と女子にアピールをすれば、面白がってくすぐってくれるんじゃないかと思い付いたのだ。
我ながら名案を思い付いてしまったと得意気な顔になる。
早速、明日学校に行って試してみようと心に誓った。
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翌日のこと。
朝起きて着替えてご飯を食べて小学校へ。
家から歩いて15分くらい。
今日は昨日考えていた"作戦"を試す日だ。
問題はいつどのタイミングで誰に言うかだ。
やっぱり、普段話している隣の席の女子に言うのが一番言いやすい気がする。
ここは自分の演技力が試されるところ。
頭の中で何度もシミュレーションをしていたのだった。
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「おはよ~!」
「おはよう~健太くん!」
4年2組の教室に入ると、珍しく隣の席のミカが早く登校していたようだった。
今ならまだ他に人は少ないし…あの話をする絶好のチャンスだ!
「な、なあミカ」
「ん~?なあに?どうかしたの?」
「その…怖いものとかって何かある?」
「え?何よいきなり?」
「い、いやその…何か気になっちゃって~ははっ…」
唐突な話題に、ミカは少し不審げな顔をしていた。
それでも一応ちゃんと質問には答えてくれた。
「ん~怖いものねぇ…大きな蜘蛛とか見るとビクってなっちゃうかな~…って、やめてよ?まさか私にイタズラ仕掛けるつもりじゃないわよね?」
「そ、そんなことしないよ~!」
「ふーん!じゃああんたの怖いものも教えなさいよ!」
心の中で(キタッッッ!)とガッツポーズ。
ここで怪しまれてはいけないから、本当に怖そうな感じで少しおどおどとした素振りを見せてみる。
「じ、実は…こちょこちょが怖いんだ……」
「…へ?こちょこちょ?何で??」
「ぇっと…その…何て言うか苦しそうだし笑い死にしちゃったらどうしようかと思うと…怖くて…」
「っぷっ、あはははははははは!なにそれおもしろ~い!こちょこちょなんかで死ぬわけないじゃん!あははっ!!ちょっと、朝から笑かさないでよ~あははっ!!」
…あれ?何か思っていた反応と違うような…。
楽しそうに笑うミカの周りに、登校してきた他の女子達が集まってくる。
「なになに~?ミカどうしたの~そんなに笑って?」
「何か面白いことでもあったの~?」
「ちょ、聞いてよ~!ケンタがさあ、こちょこちょされるのが怖いってすっごい演技くさい顔で言うからもうおかしくって!あははっ♪」
「んなっ!?ち、違うし!!演技とかしてないし!」
「嘘つき~♪バレバレだし、あんたの意図もお見通しだから~♪ねぇねぇ、本当はケンタもこちょこちょされたかったんでしょ~?正直におねだりしてくれたらくすぐってあげてもいいよ~?」
目の前で見せつけるように指をワキワキされ、ニヤニヤとミカに見つめられる。
まさか何もかもバレバレだったなんてぇぇっ!!
あまりの恥ずかしさで穴があったら入りたい気分…。
気まずい上に恥ずかしくて、席から立ち上がって逃げようとするも…
「こらこら、どこ行くのかなぁ?」
「まだ話終わってないでしょ~?」
「なっ!?は、離せって!!」
他の女子達に通せんぼされて両腕を左右からがっつりと押さえつけられてしまう。
「そんなにこちょこちょされたいならお望み通りやってあげようよ!皆、床に押さえつけちゃって!」
ミカがそう言うと、他の女子に服や腕を引っ張られて無理やり教室の床に仰向けで押し倒されてしまう。
「うわっ!?は、離してぇぇっ!!」
「はいはい、暴れない暴れない~♪」
「本当はこちょこちょされたいくせに!」
「顔が喜んでるよ~?嬉しいんでしょー?」
気付けば両手両足を1本ずつ上に乗られてしっかりと体重をかけて女子に押さえつけられてしまう。
そして、ミカは腰の上辺りに馬乗りになる。
5人がかりで押さえつけられてしまえば、多少力が強くても全く抵抗もできず逃げられない無防備な体勢になってしまう。
女子達もそのことをよく理解しており、まるで集団で獲物を追い詰めて狩りをしているライオンのような勝ち誇ったニヤニヤした表情で見下ろされ、不覚にもゾクゾクドキドキとしてしまった。
「ほら、やっぱり全く抵抗する素振り見せないじゃん!こちょこちょされたかったんだもんね?正直に言いなさい!」
「ち、違うってば!ほんとに怖いからっ!」
「そう。まだ嘘つくんだね。じゃあ皆、いつもと違って優しくこちょこちょして分からせてあげようよ!」
「ミカがそう言うならわかった!ケンタくんが素直になれるように優しくこちょこちょの刑にしてあげる~♪」
女子達は一斉に細長い指先を身体に這わせてくるけれど、期待していたよりも遥かに弱いくすぐったい刺激だった。
「っっぁぁっ~~~んぁぁっひゃめっ、んぁぁっあひっ、んっっぐっ、なっ…なんでぇっぁぁっ…だめっ、ぁぁぁぁっくひゅぐったぃぃっぁぁぁぁっ~~」
左腕を押さえている女子は優しく片手で左腋の下をこしょこしょとくすぐりながら、もう片方の手で首筋をさわさわと撫でてくる。まるで猫とじゃれあうような優しい手つきで首筋を撫でられると、くすぐったくてゾクゾクとして恥ずかしい声で悶えてしまう。
右腕を押さえている女子はニヤニヤと顔を覗き込みながら、右腋の下と首筋の右半分をねちねち優しくこしょこしょと意地悪にくすぐってくる。
これだけでもゾクゾクとして既に笑いを堪えるのに必死なのに、下半身では膝の上にそれぞれ馬乗りされて上履きを脱がされ、靴下越しに敏感な土踏まずをこちょこちょと撫でられてしまう。
トドメとばかりにミカがしっかりと身体の中心に馬乗りをして、服の中に手を入れて優しくお腹や脇腹を指先でこしょこしょと撫でまわし、時折乳首や胸の辺りまでいやらしく責められて変な声が漏れてしまう。
「ケンタってば、涎垂らしてあへあへ笑っちゃって恥ずかしいね?もっと恥ずかしい思いさせられたいのかな?それとも、そろそろ正直にこちょこちょされたかったって白状してくれる?」
「んぁぁぁぁっくっぁぁぁっひゃらぁぁぁっこれはずかひぃぃぃっぁぁぁっんっっ~~だめっ、だめぇぇぇっ!!」
「ふ~ん?言わないならこのままずーっと優しくこちょこちょして、次の休み時間もお昼休みも放課後も毎日おかしくなるまでいじめてあげよっか?」
「ケンタくんそんなに我慢しなくていいのに~?こちょこちょされて思いっきり笑った方がきっも気持ちいいよ?」
「そうそう、素直な男の子の方がかっこいいよ~?」
全身のくすぐったいところを優しくこちょこちょくすぐられるもどかしさと、自分の考えをミカや他の女子も全てお見通しな状況…ふと視線を見渡してみると登校してきた他の男子や女子達が物珍しそうに見物していてさらに恥ずかしくてたまらない。
「ぁぁぁっわ、わかったぁぁっ言うから!言うからやめてよぉぉっ!!」
「おっ、言っちゃいなさい♪」
「こ、こちょこちょしたくださぃぃっお、思いっきり…おかしくなるまでくすぐってくださぃぃっ…!!」
意を決しておねだりすると、ニヤニヤとくすぐっていた女子達も(えっ…)といった少しドン引きしているような顔で見下ろしていた。
(え?なになに?ケンタくんこちょこちょされるの好きなの?)
(今おかしくなるまでって言ったよな…?)
(うわ~ドMだったんだ~♪)
「ぅっ…ち、ちがっ!!無理やり言わされて……!!」
野次馬達がクスクスと笑っており、必死に反論するも誰もまともに聞いてはくれない様子だ。
「ふふっ♪みんな聞いたよね~?ケンタくん、実はクラスの女子におかしくなるまでこちょこちょされたいってずっと思ってたんだって~!ほら、皆も手伝って一緒にこちょこちょしてあげようよ!」
ミカが教室の空気を変えるように、他の女子達へ呼び掛ける。最初はみんな戸惑い気味だったけれど、「ミカがそこまで言うなら手伝ってあげる!」といった様子で1人…また1人と自分の身体に手を這わせてくる。
「うひっ!?…ちょ、こ、この人数でくすぐられるのは本当に怖いってぇぇっー!」
「まだまんじゅうこわいの話してる?はいはい、誘い受け上手ですね~♪」
ミカに的確なことを言われるが、今度は本当に恐怖を感じていた。だけど、今さら自分が何を言っても内心では期待していると思っているのだろう。
10人以上の女子達が、一斉に身体の上に指を置いてこちょこちょこちょこちょ~♪と手加減なしでくすぐり始める。
「いひゃっ!?ぎゃぁぁぁぁっあはっ!!?ぁぁぁぁぁっやばぃぃっぁぁぁっくひゅぐっだぃぃっぁぁぁぁぁっあはっぁぁぁぁぁぁっいひゃぁぁぁぁっひゃめでぇぇっぁぁぁぁぁぁぁぁっあはははははははは!!!お、おかひくなるぅぅっぁぁぁぁぁぁぁぁっあははははははははは!!!!」
先ほどまでのこちょこちょがお遊び程度に感じられるほどのくすぐったさに思わず本気で笑い狂って暴れてしまう。
「ちょっと!そんなに動かないでよね!」
「もっとしっかり体重かけて押さえつけて!こちょこちょはやめちゃダメだからね!」
女子達は抜群のチームワークで四肢や関節を押さえつけながら弱いところを一切手加減無しで指をバラバラに素早くこちょこちょと動かしながらくすぐり続けている。
唯一動かせる頭をイヤイヤと左右に振っていると、「床にぶつけたら危ないから」と、学級委員長の真面目な女子まで加担して顔を太ももで挟み込まれて固定されてしまう。
そして、淡々と表情を変えずに首筋や喉仏の辺りをこしょこしょと指で撫でられて情けなくひぃひぃ涎を垂らして笑い狂ってしまう。
「あはっぁぁぁぁぁっも、もうひゃめでぇぇっぁぁぁぁぁぁぁぁっあはっっぁぁぁっくひゅぐっだいのもういやだってばぁぁぁぁっあはっぁぁぁぁぁぁっおかひくなるぅぅっ!」
「え?さっき自分でおかしくなるまでこちょこちょしてって言ってたわよね?」
「そうそう、本当はくすぐられたいんだよね~♪ほら、ありがとうございますは?」
「ねぇ、これから毎日こちょこちょしていじめてくださいっておねだりしてみてよ!言うまで絶対やめないからね?」
その後も始業のチャイムが鳴るギリギリまで、クラスの女子達から執拗にくすぐられ続けていたのだった。
授業の合間の短い休みや、給食の後の昼休みの時間も当然のように捕まって押さえつけられてこちょこちょ拷問の続きをされ、恥ずかしいおねだりを散々叫ばされてしまう。
その声が隣のクラスにも伝わっていたようで、他のクラスの女子達にも廊下でくすぐられることが増えた。
まさか「こちょこちょこわい」がこんなことになるなんて……おかしくなりそうなくすぐったさに身悶えながら遅い後悔に苛まれていたのだった。