※pixivより一部抜粋
これは、10年前にまだ俺が高校生だった頃の話。
家から自転車で30分のところにある、田舎の学校。
バスケットボール部に入っており、部活が終わった後同じ部活の友達である涼介とカラオケに行く約束をしていた。
全体練習が終わり、他の部員は皆先に帰ってしまったが、涼介はまだ体育館でフリースローの練習をしている。
「涼介~、まだ練習やんの??」
「後もうちょっとだけ!!もう少し付き合ってよ!」
ヒュッとボールをバスケットゴールに向かって投げているが、一向に入る気配は無い…。
仕方なく自分もフリースローの練習に付き合い、何球か投げていると、遠くからコーチの声が聞こえてきた。
「こらっ!何時だと思ってるの!早く帰りなさい!」
「うげっ!すみません!!すぐ片付けます!」
最近バスケットボール部のコーチに赴任した若い女性の先生。美人で授業も分かりやすいと評判だけど、部活になると熱心で少し怖い……。
涼介はコーチの先生に気があるのか、事ある毎に「可愛い…」とか「彼氏いるのかな」とか呟いている。今も先生に叱られているが、どことなく嬉しそうな表情をしていた。
「いや~悪い悪い!ここは俺が片付けとくからさ、先にカラオケ向かっててよ!」
「え?ほんと??任せていいの??」
「大丈夫だって!ほら、早く帰らないとまた先生に叱られるからさ!」
「お…おう。じゃあ先行ってるわ。お疲れ。」
何だか少し悪い気がしたが、涼介の言葉に甘えて先に更衣室へと向かった。ロッカーを開けて服を取り出す。
シートで汗を拭いて、部活着から制服へと着替える。
バッシュをロッカーに片付けて更衣室を後にする。
外に出ると、すっかり薄暗くなっていた。
心地よい風の冷たさが頬を掠めていく。
自転車置場に停めてある自転車に鍵を差して校門を出る。
ここからカラオケまで、住宅街を通って約15分。
すっかり人気の無い夜道は少し不気味だ。
車に気を付けながら自転車をこいでいると、
ブルルルル、ブルルルル…とポケットに入れていたガラケーが振動していた。…涼介からの着信だ。
「はい、もしもし?」
「あ~ごめん!ちょっと先生に捕まっちゃってさ……長くなりそうだから先にカラオケで歌っといてよ…じゃあまた後で」
「お、おう…じゃあまた…。」
どうやら遅くなるかもしれないらしい。
あいつのことだから、また何かやらかしたのだろうか?
この時は特に心配することなく、カラオケへの道のりを進んでいた。
「ふぅ…やっと着いた。」
住宅街にポツンとある24時間営業のカラオケ。
駐車場には車が数台泊まっている。
お世辞にも綺麗とは言えない外観のカラオケだが、意外といつも地域のお客さんで混んでいたりする。
自転車を停めて、店の中に入る。
受付に行くと、女性の店員が後ろを向いて何かをしている…。あ、携帯いじってる……。
「あの~…すみません」
「あ、はい」
やる気の無さそうな声で振り向いて返事をする店員さん。
「2人で2時間お願いしたいんですけど」
「あ、はーい。では12号室ご利用くださーい。ドリンクバーもご自由にご利用くださーい。」
…それだけ言い終わると、また俯いて携帯を触り始める店員さん。
12号室へと向かう途中、またポケットの携帯が鳴った。
「もしもし?」
「…いや…来ないで……」
「…?涼介…?」
「ひっ!?さ、触らないで…」
ガチャ。プー…プー…。
…電話が切れてしまった。
涼介に何かあったのだろうか?
まぁでも、どうせ驚かせようと悪ふざけしているのだろう。
とりあえずカラオケルームに入ることにした。
ソファー席に座り、デンモクを見てみる。
何歌おっかな~。
とりあえず最近流行りの曲を選択し、マイクを持って歌い始める。久しぶりのカラオケで、日頃の勉強や部活の疲れを吹き飛ばすかの如く気合いを入れて歌い上げる……ん?
ドアの奥に誰かの気配を感じるような気がする…。
誰だろう?店員さんかな?
それとも、大声を出しすぎたから隣の部屋から様子を見に来たのだろうか?
まぁいいや。
一曲歌い終わると喉が渇いた。
ドリンクバーで飲み物を入れて来ようかな。
部屋を出てフロントへと向かう。
通路を歩いていると、各部屋から楽しそうな歌声が聞こえてくる。
ドリンクバーで何を飲もうかな~。
コップを手に取り、氷を入れる。
許可・コーラや、ホワイトソーダがある。
適当にボタンを押して、ドリンクを持って通路を歩いていると、物陰に不気味な女の子が立っていることに気づいた。
(うわっ!?なんだあの人……??)
極力視線を合わせないようにして、12号室の部屋へと帰還する。………ん?……あれ?
机の上には、既に飲み物が入ったコップが置いてあった。
…持ってきてたっけ??まぁ、いいか。
とりあえず、もう一曲歌って時間を潰そう。
次は何を歌おうかな~とデンモクを操作して曲を入れる。
「~~♪」
気分良く歌っていると、またドアの外に誰か立っているような気配がした。…さっきの女の子かな……?
気を取り直してカラオケの方は最後まで何とか歌い終わった。…涼介はいつ来るのだろうか。
そうだ、何か食べ物でも注文しておこうかな。
受話器を取り、フロントに電話をする。
プルルルル、プルルルル
「あ、はい。」
気だるげな声で返事をする店員さん。
「あの~、食べ物の注文をしたいんですけど…」
「いいですよ~。何にします?」
「じゃあ、ピザお願いします」
「はーい。2,3分で部屋にお届けしまーす。」
数秒、間が空いてから店員に変な確認をされる。
「…君って、12号室で歌ってる男の子だよね?制服、高校生だよね?」
「…?はい、そうですけど…?」
「だよね~。」
ガチャ。
電話が切れてしまった。…何だったんだろう。
食べ物が来るまでの間、もう一曲何か歌おうかな。
気になる曲を入れて、マイクを持って歌い始める。
「~~~♪」
(…ん?また誰か扉の外に立っているような…)
店員さんかな?
…次の瞬間、バタン!!と勢い良く扉が開いてすぐに閉まった。走り去っていく女の影。
一体何だったのだろうか…。
一旦深呼吸をして歌い直して、曲が終わる。
「食べ物まだかな~…店員さん遅いな~。」
もう一度フロントに電話してみるが、繋がらなかった。
部屋を出て様子を見に行ってみよう。
受付に行くと、誰も立っていなかった。
どこに行ったのだろう…スタッフルームかな?
通路を歩いていると、「関係者以外立入禁止」の扉を見つけた。入ってみよう。
「あの~…すみません……」
「え?何勝手に入ってきてるの?ココ、スタッフルーム。で?何??」
「あの、注文した物がなかなか届かなくて……」
「食べ物でしょ?もう持って行ったけど。何?言いがかり?」
「いえ……す、すみません……」
店員の圧力に負けて、大人しくスタッフルームを後にする。おかしいなぁ…来てないと思うんだけどな……。
自分の部屋に戻ろうとすると、部屋から勢い良く誰か出てきて走り去っていった…。
(女の人だ……従業員なのか……??)
部屋に入ると、食べ物が置かれていた。
注文したピザではなく、なぜか「ポテト」があった。
「おっかしいな~。頼んだっけな……?」
まぁいいや。ポテトでもつまんで待つとしよう。
「ん…?うわ、何か入ってる!?」
一枚の紙が入っており、手書きのメッセージが書かれていた。
______________________
yukako.1101@yabai.ne.jp
私のメアド連絡してね
_______________________
何だこれ……さっきの女の人のメアドだろうか。
気味が悪いので一旦机の端に置いておこう。
とりあえず…せっかくカラオケにいるのだし、気分転換にもう一曲入れてみよう。
デンモクから歌いたい曲を入れて、歌い始める。
数分後、テレビの画面にノイズが走り、砂嵐の状態になってしまった……。
プルルルル、プルルルルルル…
ポケットに入っていた携帯が鳴り響く。
…涼介からだ!
「もしもし、涼介~?もう先に歌ってるよ~?」
「………ごめん、俺、カラオケには行かない……」
「え?どうしたの?」
「………」
無言のまま、プツリと電話が切れてしまった。
「うわ!?停電か!?」
いきなり、部屋の電気が消えて真っ暗になる。
扉を開けて外に出てみると、シーンとして誰の気配も感じない……。
フロントや受付にも誰もいない。
…店員さんもいないようだ……。
あれ、これは涼介の携帯だ。
何でこんなところに……?
非常灯の点いた廊下を歩いていると、誰かの携帯電話がいくつか落ちている。植木鉢にも捨てられたように、音楽の鳴り響くガラケーがあった。
(う~ん…外に出てみるか…ん?)
窓を見ると、外に涼介が立っている!!
「なんで………助けに来なかったの……?電話したじゃん…………もう、遅いよ。」
スッと、涼介はどこかに消えてしまった…。
とりあえず、部屋に戻ってみよう。
電気の消えた12号室に帰還する。
部屋に入った瞬間、バタっ!!とドアが開いて女の人が入ってきた!!
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?」
目の前が真っ暗になり、気を失ってしまった……。
coffeeプラン投稿 「ヒトカラ」涼介視点
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