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栞

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二人の馴れ初めの話

ある平日の話。 今日は仕事が午前中で片付いたので、久しぶりに午後から予定が空いている。 ふと思い立ってくすぐり拷問師の級友に連絡を取ってみると、珍しく仕事が休みで家で過ごしているらしい。 「丁度今お昼ご飯を作っているからよかったら遊びに来ない?」とのお誘い。 お互い仕事に育児に多忙で、またとない機会だ。 そうだ、手土産にケーキでも買っていこう。 最近ハマっている街角にある洋菓子店。 お洒落なレンガ造りのお店は今日も繁盛しているようだ。 「いらっしゃいませ~♪あ、椎名さんこんにちは!」 「こんにちは~陽咲ちゃん♪この前買ったショートケーキ美味しかったよ~!娘もおいしー!って喜んでた♪」 「それは良かったです♪ありがとうございます!あ、今日から秋限定のモンブランや、ビター風味のケーキ発売してるんですけど、良かったらどうですか?」 「あら、そうなの♪う~ん、じゃあ、その二つ頂けるかな?今日はこれから友達とランチなの」 「ありがとうございます~♪よいランチをお過ごしください♪」 「ありがとう、また来ますね♪」 笑顔が素敵な若い女の子の店員さん。 このお店が繁盛している理由も分かる。 ケーキを片手に住宅街を歩いていく。 秋に染まった街路樹の葉が散り落ちる。 住宅街の中でも、一際目立つ変わった建物が見えてきた。 まるで北欧にある小さなお城のようなお家。 門の前でインターホンを押す。 「はーい!待ってたよ~そのまま入ってきて!」 門を入ると、植物のトンネルのような小道があり、その先に玄関がある。 「お邪魔しま~す」 ガチャリと玄関を開けると、ホテルのエントランスのような赤絨毯の広間が広がっている。 「あゆみ~!久しぶりだね元気?」 「久しぶり~♪香子の方こそ元気だった?仕事忙しいんでしょ?あ、これケーキ買ってきたから、後で食べよ♪」 「おっ、ありがとう~!まぁとりあえず上がってよ!ご飯出来たから!」 「ありがとう~♪お邪魔します」 玄関から真っ直ぐ突き当たりの部屋に行くと、8人掛け程の横長のテーブルに、料理が二人分並べられていた。 パスタにサラダ、バケット、スープ。 出来立ての湯気が立ち上ぼりいい匂いがする。 「ほらほら、あゆみ座って!食べよ!」 「何だか学生の頃思い出すな~、いただきます♪」 トマトソースのパスタは手作りだろうか。 香子は昔っから"意外と"料理上手だった。 本人に言ったら怒られるけども。 「どう?美味しい?」 「凄く美味しいよ。ほんと、意外と料理上手なところは昔っから変わらないね♪」 「何だよ意外ってー!!」 「ふふっ、ごめんごめん♪学生の頃思い出しちゃって」 … 同じ学校で同じクラスだった香子は、人を暴力的なくすぐりで支配するのが得意だった。男勝りな性格で、歯向かうなら上級生はおろか先生にまでくすぐりで相手を捩じ伏せてしまう。誰も手が付けられないような、言ってしまえば不良であった。 私は、そんな香子のくすぐりにどうしても納得できなかった。 ある日、我慢できなくて直接香子に伝えに行った。 「ねぇ、話があるんだけど。」 「あ?何?話って。」 「私、あなたのやり方が気に入らないの。くすぐりはもっと楽しいことに使うものだよ?」 (ちょっ、あゆみ止めときなよ) (ヤバい…くすぐり殺されるって…) 周りのクラスメイトがひそひそと心配する中、私は堂々と香子の目を見つめていた。 そんな私の姿を見て、意外にも香子は静かに睨みを効かせていた。しばらくの間沈黙が続いた後、ようやく口を開いた。 「今日の放課後、私の家に来い。たっぷりと教育してやるよ。」 「ふふっ、楽しみにしてるね♪」 それが私と香子が出会ったきっかけ。 放課後、二人で歩きながら話しかけてみると、みんなから恐れられているイメージとは裏腹に普通の女の子だった。 「ねぇねぇ、いつも放課後何してるの~?」 「…別に何でもいいだろ。」 「そっか~♪ねぇ、香子はくすぐり好きなの?」 「………好きじゃねぇよ。ほら、着いたぞ。親いないから入れよ」 香子の家は小さなアパートの2階だった。 ここで母親と二人で暮らしているらしい。 入って鞄を置くなり、いきなり合気道のような技で気付けば私は畳の上で仰向けに組伏せられていた。 「いきなり押し倒すなんて…香子って大胆でエッチだね~?」 「いつまでその余裕続けられるかな?おらっ、こちょこちょこちょこちょ!」 片手で私の両手首を押さえつけたまま、もう片方の手で首筋や腋の下をこちょこちょとくすぐられる。 だけど、ごめんね? 私くすぐり効かないんだ♪ 「あ、あれ…!?これならどうだ!!」 押さえていた手首を離し、今度は両手を使って脇腹をもみもみとくすぐる香子。焦る様子を下からじっくり見守ってあげるくらいには余裕の表情をしていたのだろう。 そんな私を見て、香子はイライラしてしまった。 「くそっ!何で効かないんだよ!」 「教えてあげよっか?」 「…あ…?何だよ」 「ふふっ♪えいっ!」 私は香子の脇腹をさわさわとくすぐりながら押し倒し、耳に息を吹き掛ける。 「ふぁぁっ!?やっ、な、なにして…!」 力が抜けて抵抗できない隙に、両手を万歳させて床に押さえつけ、腕の上に馬乗りして、さらに太ももで顔を挟み込んで固定する。こうなってしまえばもう私の勝ちだよ。 「これでもう逃げられないね~?ねぇ、今どんな気持ち?」 「は、離せよ!!このっ!!バカ!」 「あ~そんなこと言うんだぁ?お仕置きにこちょこちょの刑だ~♪こちょこちょこちょこちょ~♪」 「っっぷっ、ぎゃぁぁぁぁっはははははははははははははははははははははははは!?ぁぁっひゃぁぁぁぅっははははひぃぃひゃめっ!!ひゃめろぉぉぉぁぁぁぁっく、くしゅぐっだぃっっはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!」 仕返しとばかりに香子の首筋や腋の下を思いっきりこちょこちょとくすぐる。 普段怖い顔しながら人をくすぐっている香子が、自分の指でくすぐられて我慢できずに情けなく笑い狂っている… その姿に興奮した私は、もっともーっとくすぐったさを与えたくなってしまった。 「あれ~?香子ちゃん私のこちょこちょ我慢できないんだ~?ねぇ、今どんな気持ち?子供の遊びのこちょこちょで情けなく笑わされる気分は?恥ずかしいね~♪」 「ぎゃぁぁぁぁぁっはははははははははははて、てめぇぇっぁぁぁっはははははははははははははははあ、後で覚えてろよぉぉぁぁぁぁっははははひはははははは!ひぎゃぁぁぁぁっひゃめっぁぁぁぁぁっひひひひ!」 「そんな笑いながら言われても何にも怖くないよーだ♪素直にごめんなさいできるまでこのままずーっとこちょばしてあげるね?こちょこちょこちょこちょこちょこちょ~♪」 それから、一切手を緩めることなく、弱いところをねちねちと容赦なくずーっとこちょこちょ。 決してくすぐったさに慣れさせないように、首筋と腋の下をばらばらにくすぐったり、不意打ちで脇腹に手を伸ばしてもみもみしたり、頭を横向けで固定してお耳を舌でいじめたり… どんなに止めてって言ってもやめてあげなかった。 だって、香子もクラスメイトの「やめて」って声を聞こえないフリしてくすぐり続けてたでしょ? 30分くらいその調子でずーっとこちょこちょ遊んでいたら、段々と素直な態度になっていった。 「ぁぁっひゃぁっぅぅごめんなざぃぃぃごめんなざぃぃっも、もうゆるじでくださぃぃぃなんでもしますからぁぁぁっひっぁぁぁじぬぅぅぅおかしくなるぅぅぅっ!!」 顔は涙や涎でぐしゃぐしゃになって、人に見せれないような恥ずかしい姿になっている。 抵抗して暴れる力も無くなって、全身汗だくで制服のシャツが濡れて下着が透けて見える。 スカートもめくれて、あそこもびしゃびしゃになっている。 「くしゅぐったいね~?どう?香子反省した?」 「はんぜいしましたからぁぁぁぅぅはははははははお、お願いもうひゃめてぇぇぇぇっぅぅ!」 「もうクラスのみんなや学校の生徒にこちょこちょ意地悪しない?」 「し、じませんからぁぁぁっははははははひや、約束しますぅぅぁぁぁっひぃぃっ!!」 「ふふっ♪じゃあ今日は許してあげます♪約束破ったら、また香子のこと今度はクラスのみんなの前でくすぐってあげるからね?」 「ひぃっ……はぁっ…はぁっ…わ、分かりました…」 いい子になれたご褒美に、優しく微笑みながら頭を撫でてあげると、子供みたいにうるうるとした目で私を見つめていた。 体力の回復した香子は、恥ずかしそうに立ち上がって「すぐ上がるから待ってろ」とシャワーを浴びに行ってしまった。 久しぶりに沢山人をくすぐって満足した私は大人しく待ってみることにした。 「お、お待たせ…」 約10分後、Tシャツに着替えた香子が戻ってきた。 何だかもじもじとしている…? 「どうしたの~?香子ちゃん?」 「…あ、あのさ、腹、減ってる?」 「え…?」 「飯作るから、良かったら、食べていきなよ」 「え、あ、ありがとう」 キッチンに立ち、テキパキと何かを作っている後ろ姿を見つめるのは、何だか不思議な気分だった。 暫くすると、パスタを運んできてくれた。 「ほら、ナポリタン作ったから食べよ?」 「いいの?じゃあお言葉に甘えて…頂きます♪」 香子の手料理。一口食べてみると、どことなく懐かしいようで、家庭的で優しい味がした。 「…どう?美味しい?」 「うん!すごく美味しいよ!香子って…意外と料理上手なんだね」 「意外ってなんだよ!まぁ…よかった」 話を聞いてみると、仕事で忙しい母親の代わりに香子が毎日料理を作っているらしい。 母親も帰りが遅くなることが多く、一人で先に食べる日が多いとか。 寂しさを埋める代わりに、誰かをくすぐって溜め込んでいたストレスを発散することに夢中になっていた結果、いつしかくすぐりで人を支配することに楽しさを見出だしたようだった。 「そうだったんだ…ごめんね、香子の気も知らずにめちゃくちゃくすぐっちゃって…」 「い、いやこっちこそいきなり押し倒してくすぐって…ごめん…それで…ありがとう。話を聞いてくれて。あゆみ…良かったら、友達になってよ」 もちろん… 「いいよ♪ねぇねぇ、私が毎日相手してくすぐってあげよっか♪」 「なっ!?く、くすぐりは勘弁してぇ!」 「ふふっ♪あははは!」 次の日から、学校で人が変わったように態度を改めた香子の姿に、最初はみんなびっくりしていたけど、次第に打ち解けて馴染むようになった。 毎日のように二人でくすぐったり、くすぐられたりしたのは良い思い出だ。 …… 「あ~、懐かしいな、そんなこともあったよな…」 照れると恥ずかしそうに誤魔化す癖は、大人になった今でも変わらないようだった。本当は全部覚えているくせに♪ ご飯を食べ終え、買ってきたケーキをつつきながら思出話に花を咲かせていた。 「そう言えば香子、仕事の方は順調?相変わらず忙しい?」 「ん、まぁまぁ忙しいけど、最初の3年間と比べたら暇な方かな。」 「あの頃毎日泣きながら私に電話かけてきたよね~♪『上司が鬼のように怖い~』って震えてたね~?」 「う、うるさい。自分よりも強くてくすぐり上手な上司に毎死ぬほどシゴかれてみろよ!私だって弱音の一つや二つ吐きたくなるよ…」 「本当に凄いよ、史上1人目のくすぐり拷問師になった香子は」 噂によると、平和な社会に落ち着くまでの間、香子を含むくすぐり拷問師の暗躍が大きく影響したらしい。 職業柄、親友であっても詳しくは教えてくれないけど、大変な仕事をしているのだと尊敬している。 話題は子供の話へと移った。 「うちは姉妹でよくこちょこちょ~♪って遊んでいるのを見るよ。茜の方はまだ少しくすぐりに抵抗があるけど、本当はくすぐられたいみたいな感じかな~♪栞はもう相変わらずこちょこちょしてー!って感じ」 「女の子二人だと仲良さそうだよな。うちはやんちゃな弟を香織が死ぬほどくすぐって躾をしてるのを見たことあるかな。でも、本当は凄く弟想いで良い子だよ」 「香織ちゃんね、学校でも優等生でしっかりしてる~って茜から聞いてるよ。将来は同じくすぐり拷問師目指してるの?」 「そうなんだよ~♪「ママみたいなくすぐり拷問師になりたい!」って言ってくれているし、才能はあるから有望な子だよ」 「本当凄いよね~♪あ、いけないもうこんな時間。そろそろ下の子が帰ってくるから、今日はこの辺でお開きにしよっか♪香子ありがとうまた会おうね♪」 「うん、また!こちらこそありがとうね、あゆみ!」 バイバイと手を振って別れを告げる。 楽しい時間はあっという間に過ぎてしまうけど、久しぶりに親友と話をできて和やかな気分で家を後にしたのであった。

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