最近、通勤中の電車で視線を感じることがある。 ストーカー?それとも気のせい…? ふと視線を上げると、右斜め前に男子高校生が立っているのが見えた。 一瞬私と目が合ったとき、その高校生はすぐに目を反らしていた。 男の子にしては少し背が小さく、まだ顔にあどけなさが残る。高校1年生なのかな? 次の日、私は同じ時間、同じ車両に乗る。 すると次の駅で、あの高校生が車内に乗ってきた。 まるで誰かを探すようにキョロキョロと辺りを眺めている。私は本を読みながら、こっそりと彼を観察している。 そして、私を見つけると彼は少しほっとしたような、嬉しそうな表情をする。 間違いない。私に気があるに違いない。 最近マンネリとした仕事生活から、何か面白いこと起こらないかなぁと願っていた甲斐があったのだろう。 少しだけ、あの高校生と遊んでみようかな。 ある日、たまたま電車が空いている時のこと。 私は席に座って文庫本を開いて彼が来るのを待つ。 来ない可能性もあったが、それはそれでいい。 そんな心配も杞憂に終わり、まるで時計の歯車みたいに正確に彼が車両に入ってくる。 私はついついニヤリとした表情を浮かべてしまう。 慌てて視線を落とし本を読むフリをする。 彼はしばらく車内を見渡したあと、何かを決意した表情で私の隣に腰をかける。 猫背になって、ドキドキしているのが見るだけでわかる。ちらりと横顔を見ると、赤紅のように紅潮している。 (照れてる…♪かわいい) 彼から見たらきっと私は電車で本を読んでいる大人しそうな社会人の女性に見えているのだろうな。 可愛そうに。 私には人に言えない性癖があった。 それは、くすぐりだった。 どちらかと言えばくすぐられるよりも、くすぐる方が楽しいから好きだ。 小学生の頃、クラスにいる生意気な男の子を集団で押さえつけてくすぐったことがある。 普段あんなに生意気なのに、ちょっと身体を指先でこちょこちょってしただけなのに泣いてごめんなさいしている姿を見て、興奮を覚えた。 服を脱がしてパンツ1枚にして1時間くらいみんなでくすぐり続けたら、その男の子、おもらししちゃって白目向いて動かなくなっちゃった。ピクピクと身体が痙攣して、顔は涙や涎でぐちゃぐちゃになって嬉しそうにしている様子を見て、人をくすぐることにハマってしまった。 その後先生から叱られ、小学校で人をくすぐることは禁止になっちゃったけど。 中学と高校は女子校だったから、男の子をくすぐる経験は無かった。たまに同性からくすぐられることがあったけど、どうやら自分はくすぐりに強いらしい。 (小学生の時みたいに男の子を限界までくすぐりたい…) その欲求を抱えたまま社会人になってしまった。 そして、今私の隣にはおそらく私に気があるであろう男子高校生がいる。 このチャンスを逃したくなかったので、私は少しだけイタズラをすることにした。 猫背に丸くなった彼の背中を、白いシャツの上から指でツーーッてなぞり上げる。 「ひゃぅぅ!?」 小声で変な声を出して、真っ直ぐに姿勢を正す彼の様子に、思わず私も笑っちゃいそうになる。 私は何事も無かったかのように文庫本を読む。 そして数分後、彼はドキドキした様子で車両を降りていった。 こっそりと、彼のポケットに手紙を仕込んだ。 ぁぁ…明日が楽しみだ♪ 私は彼をくすぐるために、密かな準備をしていた。 鉄道会社に「最近、ある男子高校生にストーキングされている…彼を捕まえるために協力してほしい」という要請を出した。明日、7:20から30分間、 一番前の車両には私と彼しか乗ることができない。 私には彼が必ず指定した時刻に一番前の車両に来るであろうという確信があった。 まぁ、私の職業柄、彼をくすぐることなんて簡単なんだけどね。 くすぐりの"プロ"である私を、その気にさせた彼が悪い。 ーー 次の日、私は一番前の車両で彼を待つ。 私しかいない空間に、きっちりと時間通りに彼が乗り込んでくる。 少し不審がるような、期待するような表情を浮かべて、私の横に腰をかける。 (ぁぁ…かわいい♪)