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土装番
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機械の侵食 3話 変化は知らないうちに 3/?

「こんばんはー! 今日もあたしを指名してくれてありがとね〜!」 「おお待ってたよふうなちゃん。今日もやっぱり美人だねえ!」  休憩を終え、再びキャストとして戻った柚希。  その間に何人か他のキャストともすれ違ったが、視界に入ったのは一瞬で、彼女の生まれ変わりより美しくなった姿はほんのわずかしか写らなかった。  だが、その一瞬だけでほんのりと印象は刻まれていた。  その直後、すぐさま指名が入った柚希。  普段は唯流ふうなという源氏名を使用しており、指名直後はいつも頭を切り替えて、自分の名前はふうなだと言い聞かせつつ、ポロッと本名を出さないように努めていた。  しかし脳が電子化した今、一時的に自身の登録名を瀬戸柚希から唯流ふうなへと時限的に変更することで、自分は生まれた時からその名前だと自己認識させた。  早速機械らしい機能を使いこなし、生まれ変わった自分を満喫する。 「……でもなんか、数日で綺麗になりすぎてない?」 「いいじゃないですか〜! あたしが綺麗になって悪いことなんて無いし!」 「それもそうか! ではいつものように乾杯しよう。シャンパンからいこっか!」    機械化技術の存在しない地球上では、たったの数十分の間に全身が機械仕掛けになったなどという発想はまず起こり得ない。  カメラアイから男の表情や反応を分析し、怪しまれている様子は一切ないと判断すると、柚希はいつものように、それでいてさらにはっきりとメリハリをつけた反応を示しながら、シャンパンの注がれたグラスを手に取った。 「それじゃあ、カンパーイ!」  それを一気に流し込み、満面の笑みを向ける。  柚希は日頃からアルコールに対しては普通程度の耐性で、場合によっては酔い潰れることも多々あった。  だが現在は、機体内に注がれたアルコールは何の影響も無く、成分分析された上でただの液体として処理される。  そのままアルコールとして残しておくことも、吸収または浄化することも機能として可能となっている。  苦手な味であれば味覚信号をカットすることで受け入れられるなど、柚希は早速機械の身体の便利さを享受していた。 「ずっと続いてたプロジェクトがようやく軌道に乗ってねえ。しかも私がコツコツ買い込んでた株が一気に跳ねたんだよ!」 「この間言ってたマティスって会社の株? 193円も上がったんですよね?」 「おおーよく覚えてたねふうなちゃん! しかも上がり幅まで細かく。もしかして、ふうなちゃんも買ってた?」 「ちょっとニュースでチラッと見てたんです」  今までの柚希であれば、すぐにサラッと過去の会話から引き出されることは無かった。  ストレージ内の記憶データから、男性との会話記録を確認しつつ、関連する内容と引き出す。  同時にネットワークとの無線接続を行い、話題に上がった会社の株価を一つ一つ確認して、即座に会話内容に反映する。  柚希はニュースや新聞など見ておらず、当然株価もチェックしていたわけではない。  男性との接客の為に、この場で検索し引き出してみせたのだった。 「やるねえ……そういう知的な女性は大好きだよ私は」 「あはっ、ありがとうございます」  男性に対する感情の内部値を変動させ、人間だった頃よりも好意的な反応と表情を作り出す柚希。  男性はいつも彼女のことを指名してくれているが、客としては良い人であってもそれ以外の感情は抱いていなかった。  だがこの時だけは、機能の実験と接客品質の向上も兼ねて、自身の人格動作に関する数値を弄って、まるで恋人を相手にしているような感情を獲得していたのだった。 「最近スカイパルという会社の社長が変わってね」 「スカイパルって……あの航空会社の?」 「ウチとも仕事しているから話は入ってきたけど驚いたね。あそこはいつも親族の男が社長をやってたのに、まさか親族ですらない女性がなるとは」 「そうだったんですね……でも、まだニュースにも出てないみたいですけど大丈夫なんですか?」  「まあもうそろそろ報道されるだろう。大丈夫大丈夫」  全く飲酒のペースを崩さずに、リアルタイムで会話に関連した内容を検索しつつ男の気分を気持ちよくしていく柚希。  それまでとは比べ物にならない程に上質な接客ぶり。人間だった頃には出来なかったこと、そもそも不可能な便利機能がいつでも簡単に使えるようになり、柚希自身もとても良い心地になっていた。 「ふふ……結構酔ってきちゃったぁ……」  摂取したアルコール量を計測し、人間であれば酩酊状態になるであろう基準値を超えていると認識すると、自動的に頬が赤くなり、人格データが酔っ払っているような反応を起こし始めた。  とろんと瞳を緩くしつつ、男の顔をレンズで捉えながら、優しく傾いて柔らかな身体を寄せていく。  両胸を寄せて谷間を強調し、まるではっきりとは言わず何かを求めているような雰囲気を引き出した。 「いいねぇふうなちゃん、とっても色っぽいよ。じゃあ……今日は行っちゃう?」 「えっ、いいの!? あたしも行きたいって思ってたー!」 「おっ、乗り気だねえ! それじゃあ……すまない、スペシアルルームの利用をお願いしたい」 「かしこまりました。では、料金の方を……」  男は付近に立っていたボーイに話しかけ、スペシアルルームの使用を申し込んだ。  いくつもの良いことがあったのだから、今日は景気づけに気に入っているキャストの身体を堪能しようと、男は思っていた。  実際、彼にとっての今日の本命はそれである。  生まれ変わった機械の身体を試したいと思っていた柚希も、今日は願ったり叶ったりだと、スペシアルルーム行きを喜んだ。  そして、ボーイの後ろをついていき、一室へと案内された二人。  やる気を見せんばかりに、最初に柚希が衣装を脱ぎ始めた。 「おっと、ちょっと気が早いよふうなちゃん……まだシャワーも浴び終えてないのに」 「そうだったわね……じゃあ、私待ってるから。出来る限り早く……戻ってきてね」  男は最低限の礼儀として、汗を流す為に備え付けのシャワーを浴びに行った。  その間、いち早く全裸姿になった柚希は、今だけまるで恋人のように想っている男性が戻ってくるのを心待ちにしていた。  それから、シャワーを浴び終えた男性が戻ってくる。  すると、柚希はベッドの上でぺたんと座り、待ちぼうけていた。   「やあ、待たせてしまったね」 「ううん、大丈夫よ。でも……早くシたくて仕方なかったのは間違いないかも」  柚希は男性の視界に性器部分がよく見えるように、少し股間部分を浮かせつつ両胸を改めて潰すように腕で挟み、性欲を煽るように強調していった。  思わず生唾を飲み込む男性。以前からとても色っぽいしとてもいい身体をしていたが、ここまでだっただろうか。  そんな疑問を感覚的に覚えつつも、男性は持ち運んだ避妊具を手に取り、自身の男性器に装着しようとした。  だがその時、柚希がそれに手を伸ばして取り上げた。 「ねえ……もしよかったら、今日は生でシない? 私ね、今妊娠しないから大丈夫よ」  男性はその言葉に耳を疑った。  これまで一度としてそのような提案もせず、必ず避妊具の確認を怠らなかった彼女が突然そのような事を言うなんて。  今の彼女は見てわかる程に発情しているが、一瞬の気の迷いで口にしている様子もない。いたって正気で避妊は必要無いと言っている。  妊娠しないという言葉も気になる。陥れようという雰囲気も無く、嘘をついている様子もない。 「本当にいいのか……? 嘘じゃないだろうね」  生で絡み合えるのなら是非ともしてみたい。そう思ったことは何度もあった。  理性と欲望の天秤が、目の前の淫猥な姿によって大きく欲望へと傾いた。   「もう、こんな時に嘘なんかつかないわ。さあ、早く……」  自ら指で拡げた柚希の割れ目は、既に淫欲を吐き出したと言わんばかりに濡れている。  今までは前戯や興奮を以て、生理現象として分泌されていた愛液。  それが現在では、タンクから排出される擬似的な粘液でしかなく、分泌も彼女のユニットに備わった自由自在な排出機能でしかない。  自分の意志で肉穴を濡れさせ、興奮の頂点にあるかのような姿を意図的に作り出す柚希。  男はそれに衝動的に飛びつき、容赦なく一物を固くした。 「じゃあ……遠慮なく挿れるよ……」 「もう、早くし…………あっ……あんっ!」  これまで何度もゴム越しに受け入れてきた男性器を、柚希は一切の障壁もないまま咥えていった。  触れ合った時点でも、鋭利な快楽信号が伝わりクリトリスがレバーのように動く。  それからより奥へと挿れられるごとに、生きた肉の感触が膣壁にはっきりと伝わってきた。  そして子宮口まで触れ合うと、柚希は我慢できず理性がふやけたような甘い声を漏らした。  実質的に全身が性感帯となった上に、女性器ユニットには特にセンサーが密集している分、触れ合うだけでも快感が押し寄せてくる。  挿入されたばかりなのに、その気持ちよさは人間だった頃とは比べ物にならない。  柚希は瞬間的に理解した。どうして規則を破ってまで奈穂がナマでのセックスを始めたのか。 「ああんっ! あんっ! もっと、もっと乱暴に……あっ……していいわ……あんっ!」  男が腰を振る一方で、動作の自由度が大きく増した柚希の膣肉は、まるで独立した生物のように動いて肉棒を掴みつつマッサージを実行した。  人工愛液に濡れた膣壁が、卑猥な音を建てながら腰振りに自動補正し、最高の肉欲を提供する。   「ふうなちゃんが……そういうなら……うっ…………」  男も若干違和感を覚えていた。こんなにもこの娘はセックスが上手かっただろうかと。  しかし天にも昇る心地が、その疑問を塗り潰していった。  男は沸き起こる衝動に身を任せ、露わになっている乳房に手を当て、欲望のままに強く揉みしだいた。 「ああんっ!! あんっ! そんな、あっ、あっ! とってもきもち……い……はあんっ!!」  握る手の強さは普通なら痛みばかり感じる程であり、揉まれた左乳房もひしゃげる程に形が変わっている。  だがそれが、柚希にはとても心地よくて仕方がなかった。  人間の頃であれば感じ得ないであろう未知の性感に、脊髄から何かが飛び出るような痙攣と喘ぎ声を起こした。  何をされても快楽信号が発信されていく、今この場の全てが気持ちよくて仕方がない。  今ならもう何をされてもいい。全身をぐちゃぐちゃにされてもいい。  各部から発信される信号が事細かに理解できるし、それらがどこから伝わってきているのか、不思議なくらいに解る。  こんな高速の思考処理や演算は、人間だった頃にはとても出来なかっただろう。  柚希はますます、機械の身体の愉悦に溺れていく。 「おねが……いぃっ! もっといっぱい……あんっ! あんっ! おかしくなるまでぇっ!! ああんっ!! いっぱい乱してぇっ!! あんっ! あ、あ、ああっ!!」  男は両手で胸を鷲掴みにし、それを支えにしながら何度も腰を振る。  これまで見せたことのない淫魔のような乱れっぷりに、膣内に収まった肉棒はより膨張していく。  女性器ユニットはそれに合わせて微調整を実行し、対象により最適な状態を作り直した。  快楽信号と連動して愛液が噴き出し、潤滑液となってより快適な性交を演出し、肉体的な性感の質を引き上げていく。  そうして、男の反応と男性器の状態変化から、柚希は射精寸前の兆候を捉えた。 「はあ……はぁ……ふうな……ちゃん……本当に出すよ……? うっ……」 「あっ、あっ、いいわ……あんっ! 私……受け止める準備いいっ!! できっ、て、るからぁっ! ああんっ!!」  男の言葉の前に、柚希は自ら子宮口を拡張し、いつでも精液を受け止められるように膣肉の吸い付きを強くする。  自分からも軽く下半身を動かしつつも、まるで電動オナホのように女性器ユニットを上下に微振動させ、刺激を煽っていく。  すっかりと瞳は蕩け、乳首は固くなり、乳頭からは乳液をいやらしくこぼしている。  しかし、どんな表情をしていても彼女のレンズは、しっかりと客の男の身体や顔を正確に写し捉えていた。  そして、最高級セクサロイドのサービスを受けたような男の性感は最高潮に達し、初めてお気に入りのキャストの膣内に欲望の塊をどくどくと注ぎ込んだ。   「あっ! あっ! あっ! あああああっっ!! イクうっ! こんなの初めてえっ! あ、あんっ! きもちいいのが、あああああああっっ!!」  柚希はそれと同時に身体を大きく仰け反らせ、母乳のような乳液を噴き出しながら、人生最大の快感を表す嬌声を叫び、絶頂に達した。  電子頭脳に負荷がかかる程の快楽信号に、柚希の身体はびくんっ、と一瞬非人間的な痙攣を起こした。  ぽかんと口をだらしなく開き、力の抜けた口端から人工唾液がとろんと糸を引く。  これだけの激しい性行為を交わすが、表面に付着しているのは男との汗のみで、彼女自身は一切汗をかいていなかった。 「あっ……ぁ……ナマがこんなに……きもちいい……なんてぇ…………知らなかったわ……あっ……」 「はぁ…………はぁ………ふうなちゃんすごいよ……こんなに……一つになれるなんて…………」  セックス後のピロートークも、淫らな空気が今まで以上に漂っている。  数値操作して生み出された好意と人生最大の快感が合わさり、まるで恋人同士が蜜月の時間を交わしたかのような濃密さが噴き出していた。 「でも……まだ満足してないの……もっと……もっとしましょうよ…………」 「もちろんだよこんなの……ふうなちゃんがいいなら…………」  だが、柚希はまだ満足しきっていなかった。  機械化したことによって彼女の行動原理に刻まれた快感の追求。  これまでのセックスやオナニーより何倍も、何十倍も気持ちよかったのに、まだシたくて仕方がないし、もっと快楽信号を求めたい。  柚希の理性の蓋は外れ、性欲の化身と化していたのだった。  そして、男もそれを了承し、満足するまで付き合おうと決めた。  この日、延長まで含めて最も長い時間、柚希はスペシアルルームの中に籠もったのだった。 * * * 「お疲れ様ー! なんか柚希すっごい盛り上がったみたいじゃん? あんな長い時間スペシアルルーム使うなんて初めてでしょ」 「そうなのよね……いやー延長まで入って思わず乗っちゃったっていうか。あの人他の客より優しく扱ってくれるからいいんだけどさ」  ウェパルの営業時間終了後。  スペシアルルームで乱れに乱れた後も、しっかりとキャストとしての仕事をこなした柚希は、改めて花蓮とロッカールームで話しながら着替えていた。  途中まで、長年連れ添った恋人のような感情を男に対して抱いていたが、男が退店して携帯端末のGPSを検知し、一定距離まで離れた瞬間に、彼に対しての好感度設定は元に戻っていた。  今では数ある客の一人としか認識していない。  登録名も閉店時間に合わせて自動で本名に戻し、瀬戸柚希という一人の元人間を取り戻していた。 「これからもっと貢いでくれそうじゃない? あれだけお熱になってたらさ」 「だといいんだけどねぇー」  いつもと変わらぬ会話を交わし、帰宅の準備が整った花蓮。  いざ帰宅しようとしたところで、ふと足が止まる。 「そうだ言い忘れてた。ちょっと柚希に伝言があったんだった」 「伝言? なにそれ」 「よくわかんないけど、スタッフ全員はけたら後でオーナーの部屋に来てほしいんだって。私もボーイ経由で聞いたからさ」 「ふーん。わかった、着替えたら行ってくる! ありがと花蓮、お疲れ様ー!」 「うん、お疲れ様ー!」  思い出した伝言を伝えてすっきりした花蓮は、真っ直ぐスタッフ用出入り口から店を出ていった。  闇に沈んだコンクリートの道を街頭が照らす中を、タクシーが見つかる場所まで歩いていく。  途中、彼女の脳内ではぼんやりと抱いた不思議な印象が渦巻いていた。 「…………なんか柚希、いきなり綺麗になってたような」 「こんなに一人で店にいるの初めてね……いっつも早めに帰……そろそろ行こうかしら」  室内のスタッフがいなくなり、静寂が流れるウェパル店内。  店内整理も終了し、キャストやボーイ達も全員退勤し終え、あとはいつ頃向かおうかとタイミングを計っていたその時、突如どこからか与えられた上位命令によって、柚希の思考は突如中断された。  数秒程、魂が抜けたかのような表情で一時停止した後、柚希は直前までの発言と繋がっていない独り言を口にしながら立ち上がり、一階上のオーナー室を目指して歩いていった。   「オーナー室行くのは初めてなのよね……でもなんの様なのかしら。マスターから直接命令を受けたりするのかな……」  奈穂から聞いた話がそのまま真実なら、新しい女性のオーナーがそこにいるはず。  現在柚希のマスターとして登録されている人物であり、その人の事を思考するだけで幸福感が溢れてくる。  しかし、新しく就任したことも知らなかったし、であれば当然姿も見たことがない。  一体どんな人物なのだろうか。期待を胸に抱きながら、柚希はオーナー室の扉を開いた。 「失礼します…………えっ?」 「あっ! お疲れ様です柚希さんっ!」  その先にいたのは見ず知らずのマスターであるオーナーではなく、いつの間にか新しく務めていた、キャラクター要素の強い雰囲気のキャストであるまりんだった。

Comments

言語共有をきっかけに次々と水面下で機械化は進んで行っていますね。 見知らぬ相手や家族、親族、同僚やクラスメイト、ファンや芸能人からと、少しずつ、次々と魔の手は伸びていってます。

土装番

スカイパルの社長も、機械化された女性なんだろうなぁ… (描写無くじわじわ背景で広がる機械化もそれはそれで美味しい

リドル


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