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土装番
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自分同士の玩具弄り 1話先行公開版

 現代から離れたある未来。金属部品や樹脂、様々な無機物の部品によって製造された、人間そっくりな機械人形のアンドロイドが人々の世界に入り混じるようになった時代。  人間もまた、アンドロイドという完璧な存在に近づくことを求め、機械化という生まれ持った肉の身体を捨てる技術を求め、それは結実した。  それは富裕層のみの特権から、次第に一般層にも手を出せる程の身近な物へと変化し、いつしか人間は気軽に機械の身体を手に入れられるようになった。  大好きなアンドロイドと同じ身体になり喜ぶ者。人間だった頃から性別も見た目も大きく変えて新たな人生を歩み始める者。  機械化はやむに大きな恩恵と変化を与え、より多様な趣向とアイデンティティを作り出すことになった。  そんな中で、機械になることで生身では不可能な事に手を出す者も少なくなかった。  それは退廃的なものであったり、思わぬところで人々の役に立つものだったりもする。  これは、ある女性が機械化した後に、奇妙な日常へと舵を切るようになる物語である。 * * * 「では、これから麻酔を行います。次に目覚めた時には生身を失い、機械の身体となっています。よろしいですか?」 「……はい、お願いします」  季節は冬のとある島国の首都、そこに建つ巨大な機械化施設の一角にて、一人の全裸姿の女性が今、産まれた時からずっと一緒にいた生身の身体を捨て去ろうとしていた。  彼女の名前は白倉麗奈。年齢は二十代後半で、その容姿は誰もが美人と認める程に優れていた。  ほのかに蒼さを感じさせる、流水のようにさらさらとした額出しセミロングヘアーに、そんな清楚な雰囲気がとても似合うような、大人の色気を醸し出すしゅっとした非常に整った顔立ち。  大きく宝石のように輝く瞳と文句の付け所のない鼻筋に薄めの唇。  日頃から運動を欠かさなかったのもあって引き締まっているという雰囲気で身体は細く、それでいて乳房はハリがありつつもそこらのグラビアアイドルよりもはっきりと豊満と言える程に大きい。  脚も平均よりも長くしなやかで、まるで美の女神が産み落とした存在と言っても過言ではなかった。  そんな彼女がなぜ機械化に踏み切ったのか。そこには深い事情があるわけでもなく、ほぼ成り行きと言ってもおかしくない理由があった。  麗奈は以前まで、ある大手企業でひたすら燃えるように働く会社員の一人だった。  その仕事振りはひたすらに有能であり、それでいて自分自身の管理にも手を抜かない。  そんな彼女の優秀さが評価され、給与は同期や他の社員達よりも多くなっていった。  毎日がひたすらに忙しく、エンジンをフル稼働させているような状況だった麗奈。  そして、いつの間にか貯金額が相当な額になっていたある日、彼女の気力は一気に減退してしまった。  ひたすら走り続けていた結果か、美容以外で自分に見向きすることが少なすぎたのだった。  糸がプツンと切れたように、麗奈はそのまま会社を止め、ボディケアは欠かさないながらもひたすらに自宅でぐったりとする日々が続くようになった。  食事はデリバリーを頼み、それ以外は無気力に毎日を過ごし続けていたある日、彼女の脳内にある単語が浮かんだ。 『…………機械化かぁ』  ふわふわと突然出てきた、機械化という単語。  今まで麗奈はそれに見向きをすることもなく、時々回ってくるニュースやレポートを流し見程度に視界に入るだけだった。  だが、唐突なそれが気になりだしたのだった。  それから麗奈は、様々な機械化サービスや機械化後の体験レポートを読み漁った。  結果、今の貯金ならば予算面の不安も一切無く全身機械化を行えると知った。  善は急げと、麗奈は非常に良質な機械化サービスを提供する大手企業のプランを申し込んだ。    そして、現在に至る。   「では、麻酔を注射します。起動するときまでお休みなさい」  肌に空気を感じつつ、腕にチクっと痛みを覚える麗奈。  もうこういう注射の痛みも最後なのかも、機械化したらどんなことをしよう、色んなと思いながら、彼女の意識は何の前触れも無く突然遮断された。  目蓋を閉じ、安らかに寝息をつく彼女の周囲に、三体の手術着を着た、助手の女性型アンドロイドと、全身機械化した女性担当医が待機した。 「これより、白倉 麗奈 さんの肉体置換手術コースによる機械化手術を開始します。私の送信する合図と共に開始してください」 「「「よろしくお願いします」」」  一糸乱れぬ電子音声で応える助手達。  間もなく、担当医からの合図を受信し、何の迷いも無く手を付けていった。  まず、白色の人工血液を注入し、特定部位の材質変換を行う。  循環が行き届くと、麗奈の全身からは生きているような血色は無くなり、より本来の白い肌よりもさらに白くなっていった。  時折ぴくっ、と身体の節々が脊髄反射のように動くが、それらを気に留める様子は無い。  しばらく人工血液を注入し続けたところで、麗奈の首にレーザーメスによる手が加えられた。  食材に手を加えるようにスムーズに切られていく首。赤い血液は一切出ることはなく、その代わり白い人工血液が断面から流れ出した。  首と胴体が切り離されると、頭部を失った極上の女体がびくっと震える。  目を瞑ったままの頭部を手に取ると、助手にそれを手渡し頭部を固定。後頭部にレーザーメスを当て、頭皮と頭蓋骨を切り離した。  その奥から表れたのは、すっかりと色が代わり、本来のそれの大きさよりも数段小さい銀色の金属の塊となった麗奈の脳。  ここに今の彼女が全て詰まっており、間もなく電子頭脳の一部となる。  金属脳をゆっくりと取り出し、予め用意された電子頭脳へとそれをセット。起動に向けたセットアップ作業を行う。  それと並行し、頭部と胴体それぞれにも手が加えられていく。  皮膚や筋肉を切断しつつ元々の骨を取り出し、用意された金属骨格を次々と埋め込み接続していく。  別に用意された作業台の上には、白骨死体の如き麗奈の骨が並べられている。  既にほぼ全ての内臓は不要物として分解されており、唯一女性器部分と子宮のみ、まるで独立したような形で変化を加えられている。  そんな空っぽの女体に、助手達はプログラムされた設計図に従い、バッテリーや体液タンク、摂食タンクなど、様々なパーツを組み込んでいく。  麗奈の身体は膨らみを取り戻し、元の形を少しずつ取り戻していった。  それから皮膚加工、様々な箇所へのケーブル接続、四肢や腹部などの着脱加工処理、女性器ユニットへの加工作業など、おおよそ人間への行為とは到底思えないような作業が続いていく。  機械化手術には種類が存在し、脳のみを金属に変換し、電子データへと変換された中身を全て新しく製造された、いくらでも替えの利く機械の身体へと移す方法も存在する。  今回、麗奈がこのようなオリジナルの肉体を素材にする方法を選んだのは、どうせ変わるなら生身を残さずやっちゃった方が後悔とかもしなくて済むだろうという思い切った理由からだった。 「…………新しいデバイスを確認しました。認識した機体を標準機器として登録します」  そして、電子頭脳の調整が終了し、外部端末とケーブルで接続されたまま、生まれ変わった身体にそれが組み込まれる。  それまでの人生で発したことのないような無感情な声でシステムメッセージを喋ると、端末からのアシストによって設定が次々と決定されていった。   「これより動作テストを開始します」  電脳と身体が繋がった後は、複数項目の動作テストを経て、人格エミュレートに入り、ようやく機械化の全工程が終了となる。  完全に生まれ変わるまで一日とかかっておらず、人間の身体を捨てることはここまで手軽な物となったのだった。 「…………動作テストの全タスクが終了しました。外部機器からの命令を受信しました。テストプログラムを終了後、人格エミュレートを実行します………………」  天井に向かって音声を発しながら、ぱくぱくとそれに合わせて口を動かす麗奈。  とても元人間だったとは思えない程の機械ぶりだが、頭の中には彼女のこれまでの人生全てが詰まっている。  詠唱のようなシステムメッセージを口にした後、麗奈は一度目を閉じる。  そして、再び目を開くと、彼女の表情には生きているような自然さが戻ってきた。 「…………あれ、もう終わった……んですか?」 「はい、機械化の全工程が終了しました。最後に、電子頭脳へと移行したことで様々な脳内操作が可能となりましたので、簡単な操作に慣れるための最終テストに移ります。大丈夫ですか?」 「は、はい……大丈夫です」  目覚めたばかりの彼女にはまだ実感が沸かない。だが、ちょっと身体を動かすだけでもなんだか以前よりも大きく違うのがすぐにでも理解できた。  まだまだ変わったばかり。その自覚は少しずつ芽生えていくこととなる。 「…………本当に変わったのかしら。軽くなった感じはするけど……まあ、これからわかるかな」  こうして、また一人の女性が人間の身体を捨て去り、新たな人生へと歩みだしたのだった。 * * *  機械化から二日後の朝。麗奈は生まれ変わった自分の身体を、自宅で大いに楽しんでいた。  アンドロイドが無線接続を可能とする電子機器も接続出来るようになっており、家電側にはいまやその機能は標準装備となっている。  そんな家電と自分の電子頭脳を接続し、自分が手を触れずともそれを操作できるようになった。  わざわざ足を運ばなくとも、脳内のメニューによってなんでもできる。  さらには、自分の身体と専用のパーツを取り替え、自らに様々な機能を付与することもできる。  ネット上の画像や動画も自身のストレージ内に保存しいつでも引き出せるし、ストリーミング再生も脳内で楽しめる。  新たなソフトウェアもインストール可能で、今よりも更に拡張性を感じられる。  自由度の上がった身体。機械化から今日に至るまで色んなことを試し、その便利さも強く実感した麗奈。  そんな彼女が、スリープモードから復帰した早朝から始めたこと。それは、自慰行為だった。 「んん……あ、ああっ!! ああんっ!!」  自分の女性器ユニットを取り外せることを知った麗奈は、自らそれを身体から離して股間から引きずり出す。  とても肉感的な、わずかに濡れた陰毛一本も存在しない割れ目に周囲の人工皮膚。  その奥からは、股間の穴から伸びる数本のケーブルと、人間の膣内を再現する肉筒、そして自ら受精する機能を失った実質精液タンクの子宮が備わっている。  触れるだけでも、ぞくぞくと股間から背筋まで快感がほとばしり、室内の気温の低さに一切関係なく全身を震わせる。  冬にも関わらず、暖房器具もつけずに全裸姿でいられるのは、彼女が温感センサーをOFFにしているからである。  そして、麗奈は割れ目を顔の前まで持っていき、クリトリスを舐めたり、肉筒や子宮を揉みしだき、乳房を乳首ごと弄るなどして肉体的快楽に入り浸った。  人間の時に感じていた、起きたばかりの気だるさもなく、いつでも日中のように活動できる。  それ故に、彼女は毎回夜に行っていた性的行為を朝に試してみたのだった。 「あ、あ、あ、ああっ! あああああああっっ!!!」  思った通り、電子頭脳に響き続ける快感は人間だった頃とは比べ物にならない。  朝だからと言って意識が鈍ることもなく、むしろ清々しい気分で自由に身体が動く。  肉体的な枷から開放された彼女は、思い立つままに性感帯を虐め続け、人間には不可能なやり方で攻め続ける。  そして、麗奈は機械となって初めての絶頂に達し、人工の潮を噴き出した。 「あ……あはっ……顔……かかっちゃったわね…………あんっ……」  割れ目から噴き出した人工愛液は、冷えた室内の温度によって冷やされ、人間の平均体温よりも明らかに冷たくなっている。  愛液を纏った、ケーブルに繋がれている蜜壺の入り口は、まるで独立した生物のようにひくひくといやらしく蠢き、より大きな性を求めているような雰囲気を見せていた。  快楽信号の処理に連動して、彼女の乳首も固くなりぴくっ、と揺れているが、現在乳内の人工乳腺には液体が補充されていない為、一滴の水も出なかった。  電子頭脳に溜まった快楽信号やいくつものデータの処理に追われて動作が重くなる  機械の身体でもこんなことあるんだと思いながら、麗奈は冷たい床の上でぐったりとしばらく沈み続けていった。  それから三十分程経過し、腹部の上に微振動を起こす女性器ユニットを置いたまま天井を見つめ続けていた麗奈は、ぽつりと独り言をつぶやいた。 「あーー…………これからどうしよ…………」  麗奈は現在仕事に就いておらず、ひたすら溜め込んだ貯金で生活している状態。  元々の給料がかなり良かったのもあって、とても環境の良いマンションに済んではいるが、このまま消費し続ければいずれ住めなくなってしまう。  しかし、今はまだ仕事をする気が全く出てこず、ひたすら赴くままに日々を過ごしていたい気分でもある。  どうせならもっと機械の身体を楽しむことをしたい。が、ほぼ衝動的に手術に踏み切ったこともあって、とにかくこれをやってみたいという目標もない。  少しだけ気になることはあるが、複数の方向から負担と危険が押し寄せるので手も出せない。  ちょっとした壁に当たったような気分になりながら、麗奈はゆっくりと、精神的に気怠そうな雰囲気を醸しながら立ち上がる。  すると、腹部に乗っていた女性器ユニットがぶらんとぶら下がり、繋がったコードがピンと張った。 「あんっ!! あっ……装着し忘れてたわ……」  電化製品に起こりうるハプニングでも生じる快楽信号に、全身が震え人格データが反応する。  自分のあそこがぶら下がるって一体どんな状況なんだろうと、気持ちよくなりながらもこの変な光景を少しだけ面白がりながら、振り子のように触れる生殖器を持ち上げ、股間にかちっとはめた。  リビングから自室に戻り、ふと大きな押し入れを開ける。  するとそこには、標本の如く収納された人間一人分の骨格が保管されていた。  それは、麗奈が記念にと持ち帰ったかつて人間だった証である。   「……もう二日も経ったんだなあ。早いもんよね。人間を捨てるのも思ったよりなんてことなかったし」  衝動的とはいえ、世界が大きく変わった運命の日。  身体も軽く自由も利く。だが、まだ物足りなさが彼女の胸中にはあった。 「…………ちょっと散歩行こっかな」  おそらく部屋の中で迷っても延々と演算をし続けるだけだろうと、麗奈は気分転換に少し外出することにした。  元々大それた目的があって機械化したわけではない分、いきなり大きな目標が浮上するわけでもない。  色々見ていくうちに何か見つかるだろうと思いながら、麗奈は人間だった頃と変わらない所作で、外出の準備を整えた。  どこに行こう、買い物でもしようかな。適当な目的を思考しつつ、ポストの中身を軽く確認したその時、彼女の興味を引く怪しい葉書が一通届いていた。 「…………なになに、機械化推進団体『トランスマシーナリーズ』?」  見たことも聞いたこともない怪しい団体名に、警戒心を強める麗奈。  裏側には、アンドロイドだけが読み込める通話用QRコードの上に「機械化おめでとうございます。もし貴女がこれから機械になってやりたいことがあれば、お気軽にこちらから通話してください」という胡散臭い文章が載せられていた。 「………………なんか、どう考えても変な団体よね。けど、まあ試しにかけてみよっかな」  あまりにもキナ臭く、人間だった頃ならばとっととゴミ箱に突っ込んでいたであろう葉書。  だが、今の彼女は、ちょっと手を出してみてもいいかなという軽い気持ちで、そのQRコードを読み込み、通話を開始した。  この時代には、普通のそれとは別にアンドロイド専用のQRコードが存在している。  それを眼球内のカメラから読み込むと、記載された回線へとネットワーク経由で繋がり、通話が開始される。  機械にしか使えない便利な代物である。 『…………はい、通話をしていただきありがとうございます。こちらは機械化推進団体トランスマシーナリーズです』 『もしもし。あの……葉書からこちらに通話したんですけど……一体どういう団体なんですか』  現実世界では、麗奈は玄関に葉書を置いて外出し、鍵をかけている途中。  機械になると、通話中だということも表にさらけ出すことなく行動を並行させることも可能となっている。 『はい。私達トランスマシーナリーズは、機械化した方々がやりたいことを全力で支援する団体となっております。もし加入していただいた場合には、生活費や必要経費、破損時の修理費全額負担、機体製造など、手厚いサポートを提供させていただきます』  麗奈は黙って聞いているが、あまりにも胡散臭いとしか言いようがなく、そんな美味しいだけの話があってたまるかとも思考していた。  いつ切ろうかなとタイミングも伺いつつ、麗奈は適当や返事を返した。 『へぇ、すごいですね。でも、そんな話あるわけないでしょ』 『そう仰られると予想していました。もちろん、全てを無償でというわけにもいきません。こちらが手厚いサポートを行う代わりに、動作履歴やプログラムの挙動など、様々なデータをこちらに提供していただきたいのです。並びに、目的は簡単に叶えられるような物では私共のサービスを提供するわけにはいきません。あくまで、機械化でしか叶えられない事柄に限定されます』  麗奈は外を歩きながら悩んでいた。しっかりと交換条件は持ちかけているものの、その提供したデータをどのように使うのか。  そもそも根本からして怪しいのに、信用に足るのだろうか。  そんな疑いを巡らせていたが、今の退屈な麗奈には、疑心よりも好奇心の方が勝った。 『……わかったわ。だけど、何か怪しいと思ったり知らずに危害を加えようものなら、即通報するから』 『かしこまりました。ご協力ありがとうございます。心配せずとも、私共は協力者からは大きな信頼を得ています。それでは、まず指定する場所へと来ていただきたいのです。住所は……』    了承したとみるや、一気に話を進め始めた受付係。  自分達の団体が利用している住所と周囲の360度一人称視点画像が送信され、同時に電子頭脳内のマップアプリに反映される周辺店舗情報がピン留めされた。 『送信完了しました。最初の訪問では、目的と必要事項を伝えてくれることと、バックアップデータを提供していただければそれで大丈夫です』    『わかりました、ありがとうございます』 『こちらこそありがとうございます。皆さんで一緒に、機械の身体を楽しみましょう』  その言葉を最後に、受付との連絡は終了し、麗奈の視界も正面を捉えられ、歩く速さも戻っていた 「…………なんか怪しいの引っ張ってきちゃったかしら」  ああは言ったものの、得体の知れない相手はやはり警戒せざるを得ない。  だが、提示された条件は魅力的そのもの。事実、彼女の足は既に、登録された地点までの最短徒歩ルートを歩いている。  あれだけの支援を宣言されたならば、麗奈が機械化してから特にやりたかったことができるかもしれない。  その望みに賭けているのも、彼女が謎の団体に興味を惹かれ始めている理由でもあった。 「あたしのやりたいことは……!」  麗奈のやりたいこと、それは生身ではまず不可能。  元々それを思っていたわけではなく、機械化に関することを調べるうちに、可能ならとやってみたかったこと。  並びに、それは莫大な金が無ければ出来なかった。  それが出来るならば、自分の機械としての新たな人生は大きく前進する。  麗奈はまた半信半疑。それでもこの退屈を破る為に、ちょっとだけ気持ちを込めながら歩くのだった。    * * *  その日の夕方。麗奈は見た目には何も変わっていない様子で自宅に帰ってきた。  だが、彼女の表情は喜び的。まるで、自分を遮る壁が取っ払われたかのようだった 「心配して損した、まさか本当の本当にサポートしてくれるなんて……」     どう演算しても稚拙な詐欺としか思えなかった葉書は、まさかの本物だった。  何があってもいいようにと、麗奈は通報や最大音量でのブザーなど、いくつもの準備をしてトランスマシーナリーズ本部へと向かった。  しかしその先に待ち受けていたのは、受付嬢からの新規参入する者への歓迎の言葉だった。  捕らえられてバラバラにされるわけでもなく、洗脳するわけでもない。本当にただただ支援してくれようとしていたのだ。  そんな予想外の温かなムードに解された麗奈は、自分がしたいことを受付嬢に直接、はっきりと伝えた。 『かしこまりました。実はそれをシたいという女性はよくいらっしゃるのですが、もう一つがユニークですね。では、早速麗奈様の内部データを……』    その願望はすぐに受理され、代わりに己の全データのコピーを明け渡した。  そして、それを以て麗奈は団体の一員となり、喉から手が出るような支援の数々を手に入れたのだった。  麗奈が抱く機械化後の目的は二つ存在する。  そのうちの一つは、受付嬢によれば最短で次の日の昼までに達成されるらしい。  そしてもう一つ。それは機械化した当初から達成可能な物ではあったが、別の問題がついて回っていた。  それが無くなったことで、麗奈は帰宅した直後、悦びと衝動から一気に私服を下着まで脱がして、その場で濡れた肉壷の中に二本の指を挿入した。   「あんっ……! あはっ……ずっと……気になってたのよね……痛覚を全部……快楽信号に変換して……あっ……気持ちよくなるって……ああっ!」  指で割れ目を拡げたり、内壁を爪で引っ掻いたりと、これまでの自慰よりもさらに激しく性器を虐め始める麗奈。  しばらく弄り続け、人工愛液が分泌され始めたところで、自ら女性器ユニットを取り外し引きずり出した。 「もう……遠慮する必要もないものね……こうやって……あああああっっ!! シ……シても…………あ゛っ!?」  そして、左手で肉筒を掴みつつ、右手の指を二本から五本、手首、腕まで徐々に挿入し、ついには爪が子宮内まで届く程に奥まで突っ込んでいった。  麗奈がやりたかったことの二つ目。それは、自ら性器を強く傷つけたり、ボディを破損させるなどを行い、それにより発生したエラーや神経系信号を快楽信号に変換し、爆発するような快感を味わってみることである。  機械化する以前、彼女が読んだ機械化レポのいくつかに、破損や自壊、設定改竄を用いたオナニーやセックスの体験を記した記事があった。  思わずそれに目が惹かれ、興味を持った。  だが、それには常に修理費や機材代といった費用面の壁が大きくのしかかった。  貯金で暮らしている現状、それに手を出せばすぐさまスクラップになるのは目に見えている。  保険に入っていても、なんどもするわけにもいかない。  だからこそ、トランスマシーナリーズから差し伸べられた手は、救い以外の何者でもなかった。  そうして、麗奈の理性のタガは外れ、自分の女性器ユニットに強烈な刺激を与え始めたのだ。 「あ゛っ!! あ、あ、ああっ!! こ、こんなの……お゛っ!? 人間だった時……ぃぃっ!! だったら、絶対……痛くて仕方な……ひあああああっっ!!」  入口となる肉裂は腕に押されて拡がり、肉筒はパンパンに張りながらぶるぶるとマッサージ機のように振動している。  子宮ユニット内が引っ掻かれ、摘まれ、穿られる度、人間ならば頭がおかしくなってしまいそうな程の気持ちよさが人格データへと襲ってきた。  電子頭脳で処理される快楽が全身にほとばしり、仰け反らせずにはいられなくなる。  背中が反り、両乳房が強調されながら柔らかそうに揺れ、帰宅途中に自ら補充していた牛乳が乳首から噴き出してきた。  子宮内に収まっている右手も当然振動の影響を受け、それが連鎖してさらなる快感へと繋がっていく。  人工愛液が膣肉と腕の隙間から噴き出すが、それがシャワーのように乱れ飛び、腕と床、彼女の身体を濡らした、  そして、急激に襲ってきた膨大な快感に、麗奈のメモリは許容量に一瞬で達し、一気に絶頂へと達しようとしていた。 「あ゛っ! あ、あ、あんっ! あんっ! すご、いいいっ!! 負荷が、あ、ああ、かかって、あたしの、あああんっ!! 処理がおかしくなりそ……あんっ! あ、あ、あ、あああっ!! 気持ちよすぎて……あん! イクううっ! あ、ああああああっ!!!」  たった一人の室内で、麗奈は全身をばたばたと、床とぶつかる音がなる程に揺らし、絶頂の声を上げた。  女性器ユニットや乳首から液を噴き出し、口端からはだらしなく人工唾液がこぼれ、あまりの気持ちよさに人工涙液も溢れた。  快感の頂点に達し、ぴくっ、ぴくっ、と、幸せそうな顔で不規則に痙攣を起こす麗奈。  しかし、未だ性欲や肉欲が収まる気配は無く、もっと、もっと気持ちよくなりたいと思考し始めた。  どうせ壊れても修理できるのだから、いっそのことおかしくなっても……。  そう思考したその時、麗奈はある二つのことを思い出した。 「あっ…………あぁ…………そういえば、この身体……元々のを加工した……あんっ……奴じゃない……」  一つは、今の彼女の身体は、一部を無機物したパーツを使用した唯一無二の物であること。  別の量産パーツで充分代用が可能であるが、壊れれば修理は一応できても新たに作ることは出来ない。  いつでもいくらでも修理やパーツ交換が出来るようになったとはいえ、ふと思考したところで、麗奈はたった今そこに、勿体なさを感じたのだった。  二つ目は、まだ破損やエラーを快楽信号に変換するプログラムが組み込まれていないということ。  本来の肉体が発する反応や感覚に対しての変換は、現状でも一応可能となっている、  だが、内部部品やパーツの破損時には、現状ではまだ快楽信号が発生しない。壊れてもただ狂った機械になるだけである。  彼女が読んだレポートは、どれも設定変更だけでは至らないものが殆どで、機械化してから色々試したりとばたばたしていた麗奈はそれを失念していた。  うっかりしていたと、彼女は女性器ユニットから右腕をずるっと抜いた。  人工皮膚の表面を、冷たい人工愛液が覆う。 「ああっ!! ……んん……本番までは……ん……もう少し……お預けね…………」  このままヒートアップしておかしくなるところまで進めたかったが、麗奈はそっと両手で握り、派手な刺激を止めてペースを落とした。  だが、性欲の発散自体はまだまだし足りない。せっかく盛り上がったのにこのまま辞めてしまうのはとても惜しい。  麗奈はひくひくといやらしく蠢く女性器ユニットを顔に近づけ、クリトリスをぺろっと舐めつつ刺激した。 「ああんっ!! ん…………しばらく……こうしてようかな……あんっ!」  機械化して以降、驚き変わったことはいくつもあったが、今日ほど明確に以前と以降で分かたれた事柄は無かった。  明日以降の日常に思いを馳せながら、麗奈はケーブルのみで繋がった己の性器を、おかしくなったセクサロイドのように、しばらく刺激し続けたのだった。 * * *  次の日の正午過ぎ。団体側が提示した、一つ目の願望が達成される最速の時間。  わくわくと胸躍らせながら待機していた麗奈は、今か今かと時間を確認し続けていた。  そして、その時は訪れた。彼女の自宅に巨大なダンボールが届いたのである。  重量と質量を感じられる箱。麗奈はそれを自室まで運び、急いで中身を開けた。 「すごい……本当にまんまあたしだ……!」  中に収められていたのは、相違点が存在しないとしか思えない程に瓜二つな、麗奈そっくりの機体だった。  瞳を閉じ、全裸姿で白雪姫の如く、緩衝材という花に包まれている。  麗奈がやりたかったことの一つ目。それは、自分のコピーが欲しいというものだった。  身体から性格、思考まで全部完全に同一。  自分の容姿には自信があり、自分でも可愛いし美人だと思っている分、そんな大好きな自分が増えればより大好きになれるに違いない。  何より、思考も同じだから願望にも理解がある。  違いがあるとすれば、それがコピーであるというだけだろう。  より機械としてのこれからを充実させる為の存在。それが自分のコピーだと、麗奈は結論を出したのだった。 「構造全部同じだから……ここで電源入れてっと」  麗奈はコピーの首筋に手を回し、人工皮膚の柔らかく冷たい感触に頬を緩ませながら、皮膚カバーを開き電源ボタンを押した。  すると、コピーはゆっくり目を開き、瞳の奥に光を灯した。  レンズが収縮し、頭部から小さな動作音を鳴らすと、コピーは口を開いた。 『……電源が入力されました。これより起動します…………初回起動ですが、既に基本設定が入力されている為スキップします。システムチェック中…………完了しました。人格エミュレートを実行します…………』  自分と同じ声で発される、無感情なシステムメッセージ。  機械化後で起動した時も、こんな風に見えていたのかと思い返すと、少しだけ麗奈はちょっとだけ恥ずかしいような気分になった。  そして、コピー側の人格エミュレートが動き始めると、オリジナルと同様に柔らかな表情を見せ始め、自ら箱から抜け出し立ち上がった。 『…………あれ、一気に時間が飛んでる……あ、もしかして貴女がオリジナル?』 「ええそうよ。でも、コピーだって自覚があるの?」 『自分がコピーであるってプログラムされてるみたいなの。なんだか、貴女を見た瞬間にすぐ理解できたっていうか……ほら、トランスマシーナリーズでバックアップデータ渡した時と記憶が地続きだから、なんか気分的に変な感じなのよね』  コピーであるとプログラムされている事と、身体の元以外は全てが同じ。  まるでドッペルゲンガーと対面しているような気分になるが、麗奈は客観的に機械化した自分を見て、バッテリーを熱くしていた。  そしてそれは、同じ人格を持つコピーも同じことだった。 「ふうん……ま、自分に対して言うのってなんか変だけど……これからよろしくね」 『こっちこそ、よろしくねオリジナル』  99%同一人物との同棲生活。機械になったからこそ起こるとても奇妙な状況。  だが、それこそが彼女が望んだ新たな世界だった。  気力が抜けきり沈んでいた日常が、機械へと生まれ変わり、全てが塗り替わっていく。  こうして、麗奈同士の欲望にまみれた日常が幕を開けたのだった。

Comments

ありがとうございます! 二人のアオイや機械の身体みたいなコピーと気持ちよくなるジャンルといった感じですね。

土装番

なんか二人のアオイみたいな感じで良いですね

ごぼう


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