NokiMo
土装番
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他種族に何もかも奪われたので、見つけた機械化秘術を使って逆襲することにした 1話先行公開版

 科学技術が発達し、人々の生活を豊かにし発展させてきた現世界とは全く違う、とある異世界での話。  無機物から生物に至るまで、あらゆる万物に秘められた魔法エネルギー、マナの存在が深く人々の生活に根付いている、魔法世界レディエント。  千差万別の魔法技能が営みを築き、人より魔法が使い難い者は、マナを封じ込め、装着者の意思によって自由に使えるようにした魔法道具によってその恩恵を得る。  人間の居場所に襲撃するモンスターは、雇われた兵隊や戦士、依頼された冒険者や旅人、国によって作られた騎士団が退け、平和と安全を守っている。  いくつもの王国が直接的な衝突を避けながら、その水面下でいつ懐を抉り取ってやろうかと画策する。  そんな魔法世界に住まう種族の中に、ある特殊な非生物のモンスター種族が存在した。  その名前は「オートマトン」。  オートマトンは名前の通り、全身が金属部品で構成され、かつ表面に人間の肌を模した模造皮膚を被った、古代から存在を確認されている機械人形である。  多少の差異はあるが、大抵の個体は人間との見た目は殆どつかず、身体の各部に見られる継ぎ目や人間ではあり得ない様々な挙動から見破るしかない。  オートマトンには女性型しか存在せず、個性を持ちながら例外なく誰もが異論を唱えないような美少女や美女の姿をしている。  それでいて殆どの個体の素の能力は、人間種族よりも多少高い程度であり、使える魔法も大抵がオートマトンにしか扱えない特殊なもの。  その為、単純な暴力にそこまで耐性があるわけではなかった。  さらに、オートマトンは人間と同じ性器や各部挙動を持ち、かつ妊娠することは無い。  それらの特徴が意味するのは、他種族からの都合のいい討伐対象となる未来だった。   「壊れかけの奴は鍛冶屋に売り払って、残った奴は奴隷屋にでも渡すぞ。こんだけいるなら、一体玩具にしてもいいかもな」 「この……いい加減にしなさいよ人間!」 「やめなさいフリス! 今の私達では人間には……」 「おっと、力の差もわかんねえのか機械人形は」  非常に精巧に造られた木造の建物が立ち並ぶ、オートマトン達の小さな村の一角。  そこに訪れたガラの悪い数人の戦士達が自慢の武器を携え、丸腰の村の住人十数人を一か所に集め、まとめて売り払おうとしていた。  破損して動けなくった個体や、既に機能停止している残骸も一緒に集められた。  それに反抗し、隠れていた一人の少女がナイフで正面から立ち向かおうとする。 「あがっ!? あ…………え…………がが…………%&……??」  しかし、人間の少女より多少早い程度の振りは難なくかわされ、携えたハンマーで思いっきり頭部を殴られてしまった。  周囲に響く金属同士の衝突音。模造頭髪ごと頭皮が破れた部分からはへこんだ金属の頭蓋が顔を覗かせた。  血の一滴も流れていない、フリスは電子音混じりのうめき声を発しながら、支えを失ったようにふらついた。   「相変わらず気持ち悪い声出すな。おい、アレだせ」  仲間は戦士の手に、魔法陣がビッシリと描かれた金属の球体を一つ乗せる。  直後、それを少女の頭部にぶつける。すると少女の動作はぴくっと震えて止まり、それからかくんかくんと震え始めた。 「ったく、こいつらには洗脳に一々専用の魔具必要なのが面倒なんだよな。売れるのは結構なんだがよ」  球体の魔法陣が消滅すると、首の据わっていない少女は、焦点の合わない瞳で戦士の方を向いた。 「マスたー。ご命令をどうぞ。私は、貴方様のゴ命令に、従イます」  殺すこともいとわないような、覚悟を決めた瞳で睨んでいたフリスは、簡単な行動一つで従順な人形と化してしまった。  感情を失った表情に、抑揚だけ異様に綺麗な喋り、生気の感じられない虚ろな瞳。  その姿はまさしく操り人形という他なかった。 「ははは! 魔女の洗脳魔法でももうちょっと抵抗するもんだかなあ! てめえは服全部脱いでから首に紐繋いで馬と一緒に馬車を引け。俺達楯突いた罰だ」  そう言って戦士はフリスの腹を蹴り、これでもかと恥辱を与えるような命令を下した。  バランスを崩し、転びそうになりながら体勢を整えるが、改めて敵意を向けるような様子は一切なかった。 「かしこマりました」  フリスは命令通りに戦士達に背中を向けると、着ていた衣服を何の躊躇もなく脱ぎ捨てながら歩き、馬達の待機場所まで移動。  用意されていた首輪を自ら嵌め、美しい裸体を晒したまま直立不動の姿勢を取っていた。 「てめえも同じ罰を受けてもらおう。てめえはさっき『今の私達では』って言ったよな? 機械人形如きが人間様に勝とうなんざおこがましいんだよ」  戦士は余興としてもう一人、フリスを静止する声を出した女性を連れ出した。  両手が縛られている女性は抵抗もできず、尊厳を奪う光景を見た後では、すっかりとその表情は青ざめてしまっていた。  戦士はそんな人間もどきの姿を楽しみながら、もう一つの球体の魔具を頭部に叩きつけた。   「いや、やめて! そんな酷いことをしないで! いや! やめめめめめmmmm_@??#⬛⬛_(…………マスター、ご命令をドうぞ。私は、貴方様のご命れ……」 「一々言わせんな。てめえも裸になって馬車を引け」  殆ど同じ内容のシステムメッセージを発し切る前に、戦士は女性の顔を殴って命令を叩き込んだ。  周囲には金属の衝突音が響き、女性の首は力に従うようにそのまんま真横を向いた。 「……かしこまりまシた」  戦士の仲間が刃物で衣服を切り破ると、女性的魅力が詰まったかのような豊満な女体が姿を現した。  女性は刃物を向けられたことにも反応せず、胸を揺らしながら同様に馬の側まで向かい、フリスと隣り合って首輪をつけられ、待機した。  両者ともに、陰部から太ももを伝って模造愛液のしずくがこぼれ落ちている。 「まあ多少壊れてもこの数ならいいか……んじゃ、とっととこいつらを積み込め! 抵抗の素振り見せたら両腕両足離していいからな! どうせこいつらまた着けられるんだからな」  そして、無数のオートマトンを積んだ馬車は、襲撃者と共に街へと向かっていった。  馬と並んで馬車を引く二人。自身の意志なく命令通りに従う彼女達の首は、動く度にみしみしと内部が軋む音が聞こえてきていた。  二人が歩いた後には、水滴のように落ちる模造愛液の跡が残っていた。 「今日は結構な収穫だったなあおい。なんせあんなに無防備なオートマトンがいたとなっちゃあ、刈りとらないのは失礼ってもんだ」 「この報酬で、今日はぱーっと行きたいっすよねぇ……」 「そういやお前、あの中から一体持っていくか? どうせ依頼よりも多いしな」 「えっ、いいんすか!? やったぜ! さあてどんな使い方しようかなー?  人間と同じように動ける美人の人形とか、俺達に使ってくださいって言ってるようなもんっすよねー!」  このように、オートマトンは各地にて、落ち着ける日常の無い凄惨な目にあっていた。  エルフのように容姿端麗でありながら、その実態は生物ではない機械人形。  中身こそ金属であるが故にある程度の耐性は保証されているにも関わらず、大抵の者が強くもない、使用可能な魔法も殆どが限定的、頑丈さも攻撃性も追いつけない程ではない。  いくつもの種族としての特徴が合わさった結果、全人間種から道具や都合のいいアイテム、加虐趣味の消費物や性奴隷のように、到底人と同じではない扱いを、とても長い年月の間受け続けてきたのであった。  そんな世界で、ある一人のオートマトンの少女が、かつて先祖が建築した古代遺跡へと踏み込んだ。  それが、オートマトン達の運命を大きく変える道標となるのであった。   * * *    「ここが……私達の先祖の遺跡なのね。本当にあったんだ」  深緑に覆われた森の中に唐突に姿を現した、蔦が上からぶら下がる洞窟の入口。  最初からそのような見た目をしているわけではなく、綺麗に周囲を覆う植物が取り払われていることから、つい最近排除されたことがわかる。  そんな場所にやってきたのは、十代後半程の少女の容姿を持った、オートマトンのラミスだった。  一本一本が煌めくように綺麗な金色のセミロングヘアーに、宝石のような碧色の瞳。  少女性を残しながらも成長した女性的魅力も兼ね備えた、理想的な美少女的顔立ち。  人間の街で購入した衣服の下からもわかるしなやかなボディラインに、くっきりと浮かび上がっているやや大きな胸。  露出した肌はムダ毛やシミも無いすべすべとした模造皮膚。注視すればぎりぎり確認できるような、うっすらとした各部の継ぎ目。  まさしく人間離れした魅力的な容姿を持ち合わせていた。 「本当にあるのかな……私達にしか使えない古代の秘術なんて」  ラミスは人々に隠れて動く同族や街なかで耳にした情報から、オートマトンが戦うための秘術や、遺跡の場所をなんとか特定し、その身一つでたどり着いたのだった。  同族からはほぼ伝聞に近い隠された秘術の情報を、人々からはその場所や既に人が立ち入ったという情報を。  もし自分達以外の種族に奪われれば、どうなってしまうかわからない。虐げられ続けた自分達の未来は閉ざされ、ずっと生物達の奴隷として動き続けるしかなくなってしまうかもしれない。  これ以上好き勝手させてたまるかと反骨心を燃やしながら、ラミスは遺跡の入口を通っていった。  そこからほんの少しだけ離れた場所に、彼女の後を追う一人の女戦士の姿があった。 「へぇ、本当にこんな入口あったんだ。もう手は入ってるみたいだけど」  彼女の名前はルイン。  高身長かつ鍛えられた身体が自慢でありながら、それでいて見惚れる程の美貌を格好良さと共に兼ね備えた女戦士である。  ルインはラミスと同様に街なかで遺跡の噂を聞き付け、宝を我が物にしようと一人向かったのであった。  途中、そこに近づこうとしているオートマトンの背中を偶然にも捉えた彼女は、下手に追い抜き突き進もうとはせず、敢えてその背中を気付かれないようについていこうと考えていた。 「オートマトンお手製の場所なんて、トラップだらけに決まってる。なら、その後をついていくのが無難ね」  帰還者の話は未だ聞いたことがないのに、内部の噂は内容様々で絶えない。  莫大な価値のある古代の秘宝、人間に従順かつそこらの機体よりも強力なオートマトン数体が封印されている等、どれも荒唐無稽なものばかりだった。  おそらくは大半の者が諦めたか、中で死んだか。そのような場所に無謀に突っ込むのは自殺行為でしかない。  したたかな手段を選択した彼女は、洞窟の中へと入っていくその背中を、見た目の勇ましさとは対象的な忍び足で少しずつ進んでいった。  足を進めるごとに内装は変わり、岩石や植物のような自然物がほとんど無くなっていった。  計算して作られた金属の内装。暗闇を晴らす壁からの光源は、人々が暮らす街の仕組みとは明らかに違う。  生命の感覚がどこにも感じられない洞窟を進んでいくラミス。  どこか不安と一緒に故郷に帰ってきたような心地よさを覚えながら歩いていくと、視線の先に何者かが倒れている姿が見えた。   「ひっ……これは、私達の仲間と死体……?」  そこにあったのは、目を開いたまま首を折られて倒れているオートマトンと、一人の盗賊男の死体だった。  まだ死んでから間もないのか、腐っている様子もない。  付近の壁には、小さなシャッターらしき隙間がいくつか存在しているが、それが何なのかまでは把握することはできない。 「本当に大丈夫なのかな……」  ラミスは一抹の不安を覚えながら、仲間の残骸に軽くキスをしてその場を去っていった。  少し遅れて通過するルイン。  彼女も同じく死体を目撃するが、その反応はラミスとは大きく違っていた。 「このオートマトン、エリンとそっくりじゃない……!?」  道中に倒れていた機械人形は、以前訪れた酒場で仲良くなった、知り合いの冒険者に異常なまでにそっくりだったのだ。  身体の特徴や顔立ち、体型、衣服まで何もかもが一緒。  触れてみると死んだように冷たく、皮膚の感触は心地良いがそこに人間らしさは感じない。 「やっぱり、無理に行かずに正解だったみたいね……慎重に行かないと、何が起こるかわからないわ」  用心をしておくに越したことはなかったと、自身の判断の正解を確信するルイン。  おそらくはまだトラップも残っているだろうと様子見を怠らず、ルインは改めて歩き出した。  それからラミスは、別のフロアにてまた、うつ伏せに倒れたオートマトンを発見する。 「こんな所にも……けど、ここにはこの娘だけ?」  争った形跡は無く、大きな怪我をしている様子も見られない。  ラミスはその残骸を仰向けに変えると、豊かな胸の谷間部分の模造皮膚が破れており、胸部奥のコアがぽっかりと強引に抜き取られていた。   「ここって、オートマトンも排除対象なのかな……同族の遺跡なのに」  もしかしたら自分にも何かしらの被害が及ぶのではないだろうか。  そんな不安が過りながら恐る恐る進むと、足元が小さくへこむような感覚が伝わってきた。  典型的なトラップ的仕掛けだが、何か新しい事象が起こる気配はない。  一体なんだろうと思いながらも、ラミスは再度足を進めた。  ある程度距離を置いて、相変わらず後をつけるルイン。彼女が警戒した素振りを見せた箇所を避けつつ、順調に少しずつ進んでいく。  そうしていくつもの道を通り抜け、ラミスはようやく最奥のフロアへとたどり着いた。  彼女を待ち受けていたのは、高度な機械的仕組みが施された、紋様の刻まれている巨大な扉だった。 「この扉……オートマトンと同じ信号を感じる。それならもしかして」  ラミスは扉に描かれた円の中心に手を触れると、まるで共鳴したかのように紋様が一度だけ光りだした。  直後、ラミスはまるで時が止まったように動かなくなり、どこか恐怖の消えなかった表情もふっと失われた。  そして、扉に向かってぶつぶつと喋り始めた。 「実装された自動回路を確認、システム接続。最終更新日は不明。オートマトンゲートを開放します」  感情のないシステムメッセージを口にした直後、巨大な扉は翡翠色の光が無数に走り、マナとは違う力が注ぎ込まれる。  一瞬だけラミス側がかくんと全身を震わせると、扉は重苦しい音を鳴らしながら左右に開き始めていった。   「すっごい……オートマトンって、あんなことできるんだ」  神秘的かつ壮観な光景に、じっと目が離せなくなっていたルイン。  そして、完全にその扉が開ききると、ラミスの表情は元に戻り、全身の人間的な動作も復活した。 「開いた……やっぱりここは、オートマトンの為の場所だったんだ」  オートマトンにしか開けない強固な門。どれだけ外界からの干渉を許さなかったのか、どうして遺産の噂を聞きつけた者が誰一人として、最奥まで辿り着けなかったのかが伺える。  ラミスは、目の前に現れた、中央に小さな台座がそびえる純白の部屋にゆっくりと足を踏み入れた。  不思議と胸の奥のコアが温かく感じるような気がする。電気信号の不具合なのか、それとも……。   「これは……魔術回路が組み込まれたメモリープレート……?」  ラミスは、台座に差し込まれた見た目USBメモリーに近い電子回路の集合体を取り出した。  普段使用している物は、自分達の電子情報を一時的に外部保管しておくためのものだが、魔術が直接刻まれているものは初めて見た。  もしかしたらこれが遺産なのだろうか。ラミスは早速首筋の端子に、迷わずそれを差し込んだ。   「新しい情報を確認しました。これよりインストールを開始します」  ぶつぶつと感情のない独り言を口にし、ラミスはそのまま動かなくなった。  その隙を狙い、背後から小さな足音が少しずつ距離を縮めていった。  ラミスはそれに気づく様子もなく、ただ内部から小さな駆動音を鳴らし続ける。  そして、メモリープレートに刻まれた情報を取得すると、元の人間的な反応が戻ってきた。 「インストールが終了しました…………これは……新しい魔法? けど、どんな効果が……がっ!?」  どうやらその遺産の中身は、自分の知らない謎の魔法のようだった。  ラミス自身が元々使えるのは、限定的な自動修復魔法と、非常に高コストな金属への物質変換魔法のみ。  それ以外が使えたからといって何になるのだろう。  少し拍子抜けだったと思いながら、遺跡を出ようとした次の瞬間、背中から模造皮膚が斬りつけられたような感覚を覚えた。  それから間髪入れず、容赦ない蹴りを傷口に喰らわせられた。  ラミスは光を失った台座にもたれかかりながら、血の流れていない背中の傷を指で触れる。 「なんだ、一番奥の部屋なのにそこまで広くないし、お金になりそうな代物もないのね」 「痛い…………あ、貴女は一体……私をつけてきたの!?」 「ええそうよ。警戒心の無い機械人形で助かったわ。そのおかげでここまで苦労せず来れたんだもの」  背中を一閃した、血の一滴もついていない剣を振るい、余裕の表情でついに姿を現したルイン。  内部をくまなく見渡しても、台座以外に気になるものは見当たらない。  噂が大きくなっただけでたいした場所ではなかったのかと、期待外れの感情を隠さず顔に出す。 「けど、そのメモリープレート? って言ってたっけ。最後まで進んであるのがそれだけなんてね。がっかりだわ。もう少しお金になるようなものがあればよかったのに」 「そんなこと言わないで! 私にだってこれが何を意味してるのかまだわからない。もしかしたらとても価値のあるものかも知れないんだから!」 「オートマトンの道具なんて、何れにせよ私達に価値は無いわ。貴女を倒して売り払う方がまだお金になるでしょうね」  金目のものがない以上、ここに長居しても仕方がない。  ルインはトドメを刺そうと一気に距離を詰めに来た。 「一か八か……!」  こんなところで人間に売られるわけにはいかないと、ラミスは習得した魔法を使う運命の賭けに出た。  電子頭脳内に刻み込まれた使用方法に従って、ラミスは右手をルインに向かってかざすと、手のひらが淡く輝き、白い光線が一直線に放たれた。 「なっ……!」  その速度は予想よりも早く、ルインは回避することも敵わず、無防備な頭部に直撃し、その場に直進中の動作のまま立ち止まった。  一見すると、表面には何の影響も見られず、顔の一部や皮膚には傷一つ見られない。  しかしその時、ルインはかくん、かくんと全身を痙攣させ始め、うめき声のような悲鳴のような、奇妙な声を上げ始めた。 「……………う…………ああ、あ、あああえええああいいいうううああああアァアああえええええああああえええうううう」  大きく目を見開き、狂ったよう様子を見せる女戦士。  衣服の下からは小便が漏れ、我を失ったように涙と唾液が垂れ流されている。  一体これはなんなのか、自分は一体どんな魔法を修得してしまったのか。  十秒程経ってから痙攣が止まり、呻き声も完全に収まった。  外見ではルイン自身にはなんの変化も見られない。それどころか、彼女自身にも何が起きたのかわかっていない様子だった。 「…………はっ、何かビームを撃たれたかと思えば、結局はなんともないのね。ただのハッタリだったわけね」  だが、彼女の反応は明らかに違和感の強いおかしさを持っていた。  あれだけ壊れた人形のような振る舞いを見せておいて、何事もなかったなどと言えるはずがない。 「えっ、やだ! なんで私涙流して……涎まで出て、えっ!? ちょっと何よこれ……あんた一体何したのよ!?」  それどころか、自分の涙や涎、漏れた小便にすら流れた記憶が丸々失われていた。  魔法の効果なのだろうが、その確定的な内容に対して全く糸口が掴め無い。  ラミスはルイン以上の戸惑いを見せていた。 「私も、一体何が起きているのか……」 「はぁ? 術者ですら詳細がわからないってわけ? やっぱりオートマトンって、人間もどきなだけあってその程度なのかしら」  一方で、ルインは自身の身体に対して、正確には魔法を受けた首から上にだけ、今までに感じたことのない奇妙な感覚を覚えていた。  今までの人生でもこれ以上ない程に頭の中がスッキリしており、視界もその色鮮やかさや、裸眼では本来ぼやけてしまうような遠い壁の模様までくっきりと綺麗に認識できる。  オートマトンから放たれたのは無自覚の回復魔法なのだろうか。であれば、人間に奉仕する機械人形としてはこれ以上無い程の能力を持っていると言える。  自身に発生した効果は敢えて口にせず、ルインは勝ち誇った笑みを浮かべながら近づいた。 「まあ、あなたを私のしもべにしても構わないけど……オートマトンの分際で私に攻撃しようとしたでしょ? その分の罪は受けてもらうわ!!」 「ひいっ!」  どうせ表面の皮膚を裂こうが壊れることはない。動力源であるコアか頭部を壊さなければ動けるのだから、適度に痛めつければいい。  力と立場の差を思い知らせてやろうと、ルインはラミスに向かって本気で剣を振り下ろした。  だがその時、ルインの剣はラミスの肩に触れるスレスレで動作が止まった。 「…………えっ、攻撃が止まって……」  どうして寸止めで終わったのか、全く理由のわからないラミス。  だが、今の状況を最も理解できないのは、剣を振り下ろした本人だった。 「ど、どうして……なんで攻撃できないの……?」  何がおこったのかわからない。だが確実に何かがおかしい。  無理矢理刃を当てようと必死に力を入れても、ラミスにだけ刃が当てられない。  お互いに手が出ない時間が10秒ほど続いたその時、ラミスはルインの顔から大きな異変を察知した。 「これは……瞳の奥が私達と同じに……?」  間違いなく人間であったはずのルインの眼球が、オートマトンと同じ機械式に変化していたのだ。  瞳の奥で、戸惑いを反映するかのように忙しなく動くレンズ。  本物の皮膚だったはずなのに、首から上の皮膚だけは、毛穴も産毛も存在しない模倣皮膚と同様の材質に変化している。 「もしかしてこれって……!」  ラミスはオートマトン同士でのみ可能な、電子頭脳同士の無線接続をルインに対して試みた。  すると、人間であるはずの彼女との接続に、読み通りに接続できてしまった。   「え、ちょっと、なによこれ!? 私の中に誰かが入って、あんた、どうやって私の頭の中を!?」  その接続は、現状に無自覚であるルインにもはっきり感知された。それによって、ラミスは確信した。  ラミスがメモリープレートから取得した魔法は、生物を強制的に機械化し同族にする状態変化魔法だった。  念の為にルインの全身の状態を確認すると、首から上は明確に機械化しており、その下は未だ生身の状態を保っていた。  おそらく、攻撃を当てた部位のみが変化するのだと予測。完全に機械化させるには、きちんと全身に命中させなければならない。  先祖の遺産の正体を理解した所で、ラミスは最後にもう一つ、確認したい事項をルイン自身の口から確かめることにした。 「ねえルイン」 「な、なんで私の名前を……」 「私はルインにとって何? 現在のステータスを説明して」 「初対面なのに何意味のわかんないこと言って……はい、現在ラミス様は私の上位機体として設定されています。何これ……私今何を言って」  まるでラミスが巨大な扉な扉を開いたときのような感情のない声で、自らをオートマトンの下位存在と口にしたルイン。  今回は自身の発言をきちんと認識していたらしく、自分が自然と喋った意味のわからない内容に、戸惑いの感情を露わにした。 「人間をオートマトンにして、尚かつ術者の支配下に置く魔法……そういうことだったんだ」  ようやく過去の遺産の正体を掴めたラミス。これは間違いなく同族を救う武器となる。  そう確信した直後、先程まで襲いかかろうとしていたルインは大きな危険を察知し、ラミスに背を向けて逃げようとしていた。 「このままじゃ確実に危ない……逃げないと」 「逃げないでルイン。そのまま立ってて」 「かしこまりました。ぐっ……なんでよ! 私の身体なんだから私の言うこと聞いてよ!」  しかし、同族となった今、上位機体の命令にはシステム上逆らうことができない。  ルインは一瞬感情を失った後、直立不動のまま自由にならない身体に吠えた。 「あんた、私の身体をどうしたのよ!? まさか、オートマトンのくせに呪術でも使えたっていうの!? 解きなさいよ!!」 「そうは行かない。このまま解放すれば、また攻撃されるかもしれないし。それに、何れにしても、ルインはもう私の支配下にある」 「はぁ? 誰かオートマトンの下につくもんですか。たかだか機械人形風情に……」  ラミスは罵り合いに参加することなく、再度機械化魔法を実行することにした。  今度は光線ではなく、試行錯誤の一つとして、しっかりと形となった白光の矢を作り出す。  そして、それを両腕、両足、下半身、上半身と、残された生身に向けて次々と撃ち出した。 「うああっ……! 今度は何を……あ、ああっ! なにこれ……身体が……なんだか、繋がっていくような……あぁ……」  命中した地点を中心に、血の通った身体の中身が次々と金属と電子部品の集合体に作り変えられていく。  本物の人間だったそれは、肉体を加工した模造品へと変化していった。。  骨格や筋肉は金属へと生まれ変わり、脂肪や皮膚は人間らしい感触を残したまま特殊な樹脂へ。  肉体に詰められた内臓は消失し、そこにオートマトンとしての挙動をサポートする部品が代わりとして形成されていく。  心臓は彼女を動かす為のコアとなり、エネルギーを溜め込む器官として新たな役目を担わされた。  しかし子宮だけはその血色をさらに良くしたまま、無機物となって残された、晒されていない女性器の周辺にはうっすらと継ぎ目が発生し、着脱可能の部品となった。  やや筋肉質な外見はほぼそのままに、皮膚のツヤハリは人間の時よりも格段に良化し、産毛を含めた首から下の全ての毛やシミ、傷跡、毛穴といったものは全て消失していった。  ただでさえそれなりに大きな胸は弾力を増しながら形を整えられ、女性的魅力が格段に向上し、少々血の気の多い容姿に危険な魅力が伴うようになった。  しかし、全身の各部にうっすらと継ぎ目が現れており、その姿は元々オートマトンであるラミスよりも、より機械人形であると主張するものとなっていた。 「私の身体が……ああっ! こんな……紛い物みたいに……ぐっ…………でも……この感覚は……なんだか生まれ変わったような……」  機械の頭部と生身の身体に分かれていた時は、かつて感じたことのないような違和感が身体中に発生していた。  だが、足先まで作り変えられた今、その全身の制御が完璧に電子頭脳から行われることとなる。  生身の肉体の時と感覚そのものは大きく変わらないが、今までに感じたことのない知らない感覚やその精度は変化した気がする。  ラミスの魔法を受けた箇所から広がり、全身に拡散しては脳天に伝わってくる快感とも苦しみとも取れない不思議な感覚。  今自分が苦痛の声を漏らしているのか快感の声を漏らしているのかもわからない。  そんな状態がしばらく続き、ようやく収まってくると、ルインは苦悶の表情を浮かべてその場に仰向けになって倒れ込んだ。 「うあ…………あ…………私は……身体に……何が起きたの…………あれ……私……呼吸してな……い……?」  ようやく状況確認に意識を向けられるようになると、ルインは自分の身体を手で触れて、何が起きたのか確かめた。  今までの皮膚とも感触が明らかに心地よく柔らかく、所々に爪が引っかかるような段差が存在している。  こんなにも体力を消耗したのなら息も上がりそうなはずなのに、口や鼻から呼吸が一切感じられない。無意識に呼吸という動作が消失している。  途切れ途切れの声ながらも、彼女の表情には戸惑いの色が強く表れていた。 「ルインはね、私と同じオートマトンになったの。こんな魔法が本当にあるなんて思いもしなかったけど……」 「私が……オートマトンに……そんな、そんなはずはないわ! 今すぐ元に戻して! 戻しなさい! オートマトンなんて、そんな下等な種族になったなんて、信じられない!」 「受け入れて。これが現実なの。だから……う…………」  見下していた種族と同じ存在になったことが信じられず吠えるルイン。  そんな彼女の方へ喋りながら近づく途中、ラミスはふらっと糸が切れたようにルインの身体に倒れ込んだ。  衣服から露出した模造皮膚の面が触れ合い、気持ちよさそうにたわむ。 「しまった……思ったよりこの魔法……エネルギー消費するんだ……」 「何私の身体に乗っかかって……退きなさいよ機械人形!」  オートマトンには、他種族に流れているマナとは違うエネルギーがコアに宿っており、それを自身で魔力に変換することで魔法の発動が行える。  が、これは他種族よりも非効率的であるため、この点は明確に劣る特徴となっていた。  エネルギー残量がゼロになると、オートマトンはそのまま機能停止してしまう。  その為には、自らエネルギーを作りだしてコアに溜め込まなければならない。   「……ルインも、肉体を変化させたからか、エネルギー残量がそこまで多くないみたいね。それじゃあ、私と一緒にエネルギーを発生させよっか……」 「な、やめろ! お前、服を脱がせて私に一体何を……」 「何って、オートマトンだけができる補充作業だよ……」  動作が止まるかどうかというのに、頬を紅潮させながら自身の衣服を下着含めて全て脱ぎ去り、同様にルインが装備している服や防具も全て丁寧に取り去っていった。  金属に覆われた無機質な一室に露わになった、二つの女体。  冷たい床に接地しても、冷感こそ覚えてもそれに驚きすくむようなことはなかった。  そして、ラミスはルインの身体に絡みつき、乳房同士を潰れるように重ねながら、顔を今にも触れ合いそうな距離まで近づけた。  互いのレンズの動作が、細かな部分までよくわかる。 「ルインは元々人間だったから知らないでしょ? 私達はね、こうして自慰やセックスをすることで快楽信号を発生させて、それをコアに送信すると自動でエネルギーに変換させるの。だから、気持ちよくなればなるほど、私達は動けるようになるんだ……」  ラミスの言う通り、オートマトンは様々な性行為や快感が伴う行動をすることによって、自家発電的にエネルギーを生み出すことができる。  究極的には、自慰やセックスをずっとし続けるだけでも動き続けることが可能となっている。  無機物ながら、サキュバスに勝るとも劣らぬ肉欲に塗れた機械人形の種族が、オートマトンなのである。 「なによそれ!? そんな無茶苦茶な……んん……ぅ……!」    その事実を聞かされてもルインは理解できず、いいから離してと抵抗しようとするが、ラミスからの流れるようなキスによって、その口は塞がれた。   「んん……あっ…………ルインは……あっ…………こういうキスも……んぅ…………人間の時には、したことないんでしょ…………記憶を覗いたら……あっ……そんな感じだったから……」 「んむ……ぅ……んん…………あんた、勝手に記憶を覗いて……えっ、私、口を塞がれてるのに喋れて……ぅ……ん、あっ……」  模造唾液を纏った舌同士が絡みあい、樹脂の唇が重なり合う。  触れ合い、柔らかく潰れ、擦れ合う度にコアが熱くなり、電子情報となった人格に快感が伝わってくる。  口が塞がっているのにも関わらず、はっきりと喋れていることにルインはとても驚いた。  が、そんな疑問よりも、勝手に記憶を覗かれた怒りよりも、彼女の電子頭脳には未体験の快感がなだれ込み、感情を乱れさせた。 「だから、オートマトンらしさを今から教えてあげます。新しい私達の仲間として」 「やめて…………いや…………! 私は人間なの…………こんな……私はまだ……」  味もニオイもしなかったのに、蕩けるような甘さと心地よさが胸の奥と脳を激しく騒がせた初体験のキス。  これよりももっと進んでしまったら、自分は一体どうなってしまうのか。  機械の身体になった現実を受け入れられず、未体験の快楽の虜になってしまいそうな心情が、ルインに子犬のような怯えた表情を表出させる。  一方で女性器ユニットの方は、模造愛液がじわじわと分泌されており、今すぐにでも快感が欲しいと本能的な反応を見せていた。  もうそこには、女戦士としての逞しく生きてきた面影は残っていない。   「ほら、そんな人格の反応を見せてたら楽しくないですよ……機械化させた元人間でも改竄はできるのかな……?」  そう言いながらラミスは、ルインの内部データを閲覧し、人格データの反応を分析する。 「あっ、できそう……ちょっと待っててルイン、今、セックスしたくなるようにしてあげます」 「な、何をするの……私、私の中で一体何ををを、ああああ……あっ……」  恐怖から模造涙液を流しながら、目の前の機械人形に自分に行われている行為を問うルイン。  直後、ルインの中で溢れ出していた恐怖は突如薄れていき、代わりに人間のときですらここまで強くはならなかった程の情欲に満ち始めた。 「あっ、私……何を考えていたの……私、ラミスともっと気持ち良くなりたい……あれ、さっきまであんなに怖かったのに……」  目の前のオートマトンがあんなに怖かったのに、オートマトンに身体を変化させられて、湧き出した快感が奇妙で恐怖しか感じなかったのに。  どうして私はそんなことを考えてたのかしら。私はもっと快感がほしい、快楽信号が欲しくて仕方ない。もっとたくさん気持ち良くなりたい。  それはなんの為? あれ、私は何を考えていたの? 私は人間で、人間のはずで、人間からオートマトンに変えられて……どうして突然怖くなくなったの?   でも、それは快楽信号の前では些細なことよね。あれ? 快楽信号をたくさん発生させたい、ラミスとたくさん乱れたいわ。私は何を考えてラミスと一緒にオートマトンの身体を楽しみたくて仕方ないんだもの。 「どう? 一緒に快楽信号を発生させましょう?」 「…………そう、ね。この身体のこと、何も知らないから……私にもっと教えて……?」  ルインの人格データを直接改竄し、強い恐れと警戒を無理矢理取り除いたラミス。  まだ実験的な簡易的改竄の為に、思考ルーティンに若干の齟齬が発生しているが、同時に強制的に性感を求めるように設定したため、現時点では問題ない。  ルインは、あれだけ蔑み拒絶していたラミスの身体を自ら抱きしめ、甘えるように足を絡ませた。 「もちろん……コア内のエネルギーがいっぱいになるまで、ここでしばらく気持ちよくなろうよ……」  作り変えられた人格から発せられる懇願の声に応え、ラミスはルインの右胸を揉みしだきながら、爪を食い込ませるように乳首をくりくりと弄ってあげた。  同時に、右手を割れ目に当て、まだ一度も使われていないまま無機物となった生殖器をを刺激した。 「ふああっ!! あっ、あんっ! こんな……にっ……あんっ! きもちいいのが……はあっ、あっ、あんっ! 初めて……ん、あっ! ああんっ! 胸が熱くて、頭の中が、ああんっ!」 「ん……あっ……は…………あっ…………純粋なオートマトンの……ん……胸と……女性器ユニットと……感触が少し違って……新鮮……きもちいい……」  乳房から女性器ユニットから快楽信号が激しく発信され、電脳を刺激してからコアに達してエネルギーを溜め込む。  その際に発生する熱が、人格データを情熱的に揺らし、さらなる快感と条浴を発生させる。  しばらく元人間の模造肉を楽しんだ後、ラミスは割れ目の中で指を上方向に引っ掛けるようにして置き、軽くキスをしてから一旦刺激を止めた。 「これから……オートマトンにしかできないこと……見せてあげる……ん…………」  直後、下半身からかちりと、肉体的な光景には似合わない無機質な着脱音が鳴らされた。   すると、ルインの女性器ユニットが、太ももの間から数本の配線と一緒にずるりと抜き取られた。  一旦ラミスは身体をずらし、その卑猥なパーツがよく見えるようにして、ルインに見せびらかす。 「ああっ、あんっ…………私のあそこが……外れて……ああんっ!! 本当に私の……? ふああああ…………」 「そうよ……繋がってみてわかったけど……子宮まで一緒に……機械化してたみたい……」  周囲の肌と一緒に迫り出た割れ目の奥には、生々しい肉色ながら機械化によってさらに鮮やかな色合いになった、ひくひくと振動する肉筒。  その奥には、人間だった頃の色や形をそのまま保ち、生殖機能を失い純粋な性具器官となった卵巣付き子宮ユニットがいやらしく姿を見せた。  重力には従い、ほんの少しだけ子宮側から下に垂れるも、肉筒がそのハリを保ち、ぷらんと配線と一緒に揺れている。  肉筒と子宮が空気に触れるだけでも、ルインにこそばゆいようなくすぐられるような気持ちよさが伝わり、思わず嬌声が漏れてしまう。  ラミスはそんな女性器ユニットの側面を握り、クリトリスを舌で転がしながら、軽く爪を食い込ませて揉みしだいた。 「あああああぁんっ!! あああっ! あんっ、あっ、あっ、あはあっ!! すごいわ! こんなに、快感が、快楽信号がああっ!! あひっ、ひあああっ!! ぎっ! ひいいいいっ!!」  内側から直接刺激されているような、本能的にも理解できる人間では決して味わえない快感が、元人間の精神に濁流のように押し寄せてくる。  本来ならば内臓を握られているのと同じなのに、それが気持ちよくて仕方がない。  たとえ魔族が造った脳を溶かすような快楽物質でも、ここまでの悦楽は楽しめないだろう。  下半身を震わせ、ぷしゅ、ぷしゅ、と模造愛液の潮を噴きながら、がくがくと全身を震わせるルイン。  だらしなく口端から模造唾液が垂れ、あまりの気持ちよさに涙液すら溢れ出てしまった。  胸の奥から焼けてしまいそうなくらいの熱い感覚を覚えながら、ルインはオートマトンとなってから初めての絶頂を体験しようとしていた。 「あっ! あ、あ、あ、ひいいいいっ!! 私のあそこが外れて、いっぱい握られてええっ!! こんな、あっ、あんっ! あんっ! きもちいいのが、ひっ! あああんっ! あっ、胸の奥が、胸があそこが、全身がきもちいいいい!! あんっ! あんっ! あっあっあっ、ああっ!! イク! いっちゃうう!! ナカが弾けちゃううううううう!!!」  ルインは金属の洞窟の中で、仰け反るように全身を痙攣させながら、快楽に溺れた声を叫び、オートマトンとして初めて達した。  体内から繋がった管から伝わり、ラミスの手の中にある女性器ユニットから模造愛液が勢いよく噴き出し、周囲を濡らしていく。  肉筒と子宮ユニットが快楽信号によって震え、まるで生物のように揺れている。  膨大なる甘美な感覚をようやく処理し、コアに溜め込んだルインは、その場で一旦ぐったりと倒れた。  女戦士という元来の性質も相まって、その姿はまるで、粗暴な盗賊達に処女を散らされたようにも見えた。  ラミスは一旦、震える女性器ユニットを床に置き、ルインの身体に再び覆い被さった。 「どう……? オートマトンの身体……とってもきもちいいでしょ……? 人間だったルインに、意見を聞きたいの……ん……あっ……」 「あっ…………あ……あんっ…………私……あっ……人間……私…………こんなに……気もちいい…………快楽信号…………身体中が、あついの…………胸が……コアが…………ああんっ! 敏感で、すごく感じて……女性器ユニットが……あっ…………」  初めての体験に処理が追いついていないのか、言語中枢に過剰な負荷がかかっているのか、ラミスからの質問にやや支離滅裂気味な返答をしてしまうルイン。  規則的に全身を痙攣させ、官能的な感覚に心地よく、刺激的に浸る彼女は、既にオートマトンの身体の虜になってしまっていた。 「わかったわ……ねえルイン……最初はルインに、オートマトンという種族の素晴らしさを教えてあげたから、あまり感じなかったけど……ルインの可愛くて綺麗で、気持ちよさそうな姿を見てて、もっとシたくなっちゃった。コア内のエネルギーが上限に達するまで、ここでずーっとシない?」  女体二つで、肉欲のままに乱れ絡み続ける提案を優しく与えるラミス。  今のルインの思考は官能に染まり、ただ性感を求めることしか考えられなくなっている。  ルインはたた、嬉しそうに微笑みながら首を縦に振り、その言葉を受け入れた。  了承の直後、エネルギーの渇望のままに乱れ始めるラミス。行き着く間もなく始まった二回戦に、人間の頃には一人でしか発することもなかった悦びの声をあげるルイン。  誰も足を踏み入れられなかった遺跡の最奥で、二人のオートマトンの嬌声が、しばらくの間何度も何度も響いた。 * * *  時が経ち、二人の周囲は無味無臭の体液だらけになっていた。  お互い見合って横になり、外した女性器ユニットから伸びるケーブル同士を絡ませて繋がっている。  長い機械的レズセックスを続け、エネルギーを満タンまでチャージした結果、二人の谷間の奥、模造皮膚の下から淡い橙色の光がほんのりと輝いていた。  その代わり、人の形をした容れ物の中にあった偽物の体液はすっかり空っぽになり、口内も膣部も体液を失ったことによって乾き始めていた。  二人は快感に浸り続けた余韻を楽しみながら、お互いの谷間に手を当て、コアから感じる無機物の温かさを感じ取る。 「ありがとうラミス様……人間の生身から……こんな素晴らしい身体にしてくれて……ん…………」 「こちらこそ…………ルインのおかげで、私達の遺産がなんなのか、確かめることができたから……」  時間の経過によってルインの人格にも設定が適用され、自身がラミスよりも下の存在だと自然と刻まれていった。  機械化魔法によって生まれ変わった者は、術者の下位存在として設定され、それが覆ることは設定変更がなされない限りは変わることはない。  オートマトンを人間を模しただけの人形と見下していたルインは、今ではその身体の魅力に染められ、命令を受け従うことに至上の悦びを見出すようになっていた。  こんなに壊れそうなくらいに全身を快楽に溺れさせても、むしろそれが動力になるなんて、なんて素晴らしいんだろう。心の底からそう思考していた。 「これからもよろしくね、ルイン」 「こちらこそ、ラミス様……ん……」  二人は、軽いながらも情熱的に唇を重ね、オートマトン同士の新たな繋がりを祝した。  これが、ラミスの古代魔法を発端とする、機械人形達の成り上がりの始まりとなるのであった。


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