純粋無垢な人型 1話先行公開版
Added 2020-04-12 15:17:19 +0000 UTCとある日本の、雰囲気は現代にどこか似ている遠い未来での話。 母親の腹の中から産まれた人間と、工場やハンドメイドで造られたアンドロイドの境界線は今や曖昧になり、交流しコミュニケーションを取ってもまるで人間同士のように接するようになった。 それぞれ人体には無い機能、アンドロイドには無い能力と、同じ人の形をしながら違う存在との共存は、少しずつ人間社会にアンドロイドへの人権意識が芽生え始める礎となっていった。 それに連なり進歩した、自分もアンドロイドになりたいと言って、身体の一部や脳まで含めた全身をシリコンや金属部品に置き換える機械化手術も、いつの間にか誰もが受けられる身近な物となるまで普及していった。 そんな有機物と無機物が混ざり合う時代。だが、近年ではまた新たなブームが生まれつつあった。 それは、用意された人格データやそれに手を加えて編集するものではなく、0から人格データを育て、アンドロイドとの親密な仲を築くというものである。 所謂ペットブームと似通ったようなものか、既に人格が形成されている機械人形ではなく、全く育っていない真っ更かつ純粋無垢な、白紙の状態から交流し、自分好みに育てていくというものである。 市販の完成品や、部品を購入し一から組み立てて触れ合うのも自由。その容姿も、様々な年代や性別、体型、造形も自由であり、理想の相手を作ることが可能となっている。 人生経験豊富そうな容姿でありながら、赤子の様に状態という歪な存在でも、アンドロイドであればそれが許される。 理想の相手を育て上げるブームは大きく広まり、機械人形への扱いは、人扱いと物扱いが奇妙に入り混じった混沌とした関係が築かれていたのだった。 * * * 「07:00となりました。タイマー設定に従い、スリープモードを解除します…………あーよく寝た。楽しみな日はいっぱい寝たくなるのよね」 とあるマンションの一室にて、誰もいない部屋で無機質なシステムメッセージを発して起床する、元人間の野中美月。 ほんのりと茶色よりの黒色なさらさらとしたミディアムヘアーに、メディアモデルとして掲載されていても全く違和感の無い、美術品のように綺麗な大人びた顔立ち。 女性としてはそこそこの高身長かつ、機械化する以前から非常に整ったモデル体型に、思わずずっと見ていたくなるような大きな乳房。 天が二物も三物も与えたその容姿を持った美月は、たった一枚の寝間着を着た状態でベッドの中に入り、まるで棺桶に入れられたような人間味のない直立の姿勢で眠りについていた。 スリープモードから目覚めてベッドから抜け出すと、寝間着の下から強く目立つ胸の盛り上がりが陽の光に晒される。 眼球内のレンズのピントを合わせ、電子頭脳内でスケジュールを確認してから、ゆっくりと機能復帰明けでまだ本調子でない機能を起こしながら、どこか眠たそうに洗面所へと移動する。 「あー、今日は体液交換日だったわね。こういう時だけ人間の身体が恋しくなるなぁ……勝手に代謝でどうにかなってたんだし」 鏡で機械化してから殆ど手を加える必要も無くなった自分の整った容姿を眺めつつ、僅かに発生している寝癖を手直ししている途中で、機械の身体で少々煩わしく思うルーティンが今日行う必要があったことを思い出す。 こんなことなら、昨日寝る前、風呂に入らずそのまま眠れば良かったと、非効率的な前日の行動をちょっとだけ悔やむ美月。 そう言っても過去の行動は変わらないと、美月は髪の手入れを終えると、そのまま寝間着を全て脱ぎ、色気に満ち溢れた女体を露わにした。 汗などかかず、垢も発生しない今の身体なら、下着も衣服も常に清潔に保たれる。 言うなれば、ショッピングモールのマネキンが服を着ているのと何ら変わらない。 「人工体液用意しないとね」 それから美月は、全裸のまま一旦浴室前から離れ、日常の空間に肉感的な魅力を振り撒きながら、自室の押し入れに収納されている人工体液タンクを一つ取り出した。 その横のケース内には、無数の性玩具や換装可能な性パーツが保存されている。 2リットルのペットボトル程の大きさがあるそれを手に、美月は改めて浴室に向かい、ぬるま湯のシャワーを捻って、一度全身にそれを浴びた。 樹脂で作られた皮膚が水滴を弾き、人工物的に水を滴らせる。 人間であれば少々肌寒いと感じるような温度だが、美月は電子頭脳内で温感センサーの数値をいじり、どんな温度でも平気になるように調整していた。 普段であれば、人間とほぼ同等の感覚となるように設定されているが、少しだけ水温調節が面倒臭いという感情の反応が現れている為、自分をいじることで手間を省いたのだった。 「ん……あっ…………ああ…………」 美月は女性器ユニットからほんの少しだけ人工愛液を分泌し、軽く二本指に纏わせる。 艶っぽい喘ぎ声を小さく上げ、それを膣内へ挿入すると、くちゅくちゅとその場で手淫を始める。 「あああ、あ、あ…………あっ、あああっ!」 その動作がトリガーとなり、美月は陰部から淫らに人工愛液を激しく排出し始めた。 人間では明らかに異常な量である程の無味無臭の粘液を噴き出し、機体内の残存液を吐き出していく。 身体中にほとばしる性感が乳首を勃たせ、ひくひくと身体中のセンサー反応を鋭くする。 そして、放出の勢いが弱まったところで、膣肉が二本指を強く締め付け固定する。 そして、電子頭脳内で操作を行い、女性器ユニットの接続を切り離すと、周囲の作り物の人肌と一緒に股間の割れ目が前面にかちゃりとせり出してきた。 身体との直接の接続が絶たれても、無線によって繋がっている女性器ユニットは指への締め付けを解か無い。 美月が手を引っ張ると、淫靡で生々しいピンク色をした肉筒の側面と、膣内に挿入された液体を溜め込むための卵巣のついていない子宮ユニットと一緒にパーツとしての生殖器がずるりと引き抜かれた。 「はぁ……はぁ…………あっ……ああ…………通常タイプだったら、アナルから排出できるのよね…………ん…………あたしセクサロイドタイプだからなぁ……」 ある理由によって、機械化手術の際に通常タイプではなくセクサロイドタイプを選択した美月。 その為、身体中の機能は性行為に特化しており、本来の人間では出来ないような倒錯的な行為も可能となっている。 通常であれば、全身金属製品で構成されているために必要のない呼吸も、セクサロイドタイプでは人間の性的な仕草を作り出す用途として簡易的に実装されている。 美月は取り外した性器を道具のように左手で握り、水の排出をシャワーから蛇口に切り替えて勢いを弱める。 まっすぐ一本に流れるぬるま湯。指で真上を向いている割れ目を拡げ、肉穴を空気に晒し、そのまま流れるそれを直接注いでいった。 「ああっ……あっ! はあああ……ああんっ!」 身体から離れていながら、無線接続によって繋がっている美月本体と女性器ユニット。 子宮ユニットから膣内までぬるま湯で満たされていく。 全体をひくひくと震わせ、指で中を掻き混ぜて残った人工愛液を洗い流す。 女性器ユニットをひっくり返して割れ目を真下に向け、溜まった水分を全て吐き出し、肉筒を軽く握って下に小さく振り、ぽたぽたと流れるのが水滴程度になるまで動かす。 「あっ、あっ……ああ……は……ぁ………快楽信号切ったほうが……あっ……作業捗るけど……ん……あっ……切りたくないのよね…………」 セクサロイドタイプであるが故に、その基盤に人格データが引っ張られ、快楽信号の発信を切らず、性器を弄るように動かしながら自身を構成するパーツの洗浄を行う美月。 水分滴る生殖器を改めて股間へつけ直すと、今度はぬるま湯から水に切り替えた蛇口を咥え、息が詰まるようなこともなく、流し込まれる水をスムーズに飲み込んでいった。 「ん……んぐ……ん……っ…………ぅ…………ふぅ…………」 ごくごくの飲み込むような仕草もなく、ただペットボトルの中に注ぐように水を受け入れていく美月。 本来であれば、蛇口に直接口をつけて飲み込むなど抵抗が生まれるものだが、今の美月は生身ではなく樹脂と金属の塊。 たとえ口をつけても、蛇口にホースが付けられたのと何ら変わりはない。 「これくらいでいいかな…………あっ…………ああっ! あぁぁ…………」 人間と同様の様相を持つ口内から喉を通り、自動的に体内の乳液タンク、体液タンクへと分けられていく水道水。 本来であれば補充する液体によって分類分けされるが、今回はどちらでも同じである為にとにかく量を注ぎ込んだ。 たぷたぷと機体内で揺れる水。美月は自らピンク色の乳首を指で弄ると、乳液タンク内が踊り出す。 同時に、体液タンク内を洗い出す為に下半身を揺らしてゆすぎ、新しい体液を受け入れる為のリフレッシュを行った。 そして、興奮から勃ち上がった両乳の乳頭、それに隠れたノズルから、先程愛液を排出し尽くした陰部から、特殊な趣味のマネキンのように、同時に飲み込んだばかりの水道水を放出していった。 「あああっ! はああっ、あっ、あはっ、あんっ、ああああっ!! んん……あっ、は……はぁ……ぁ…………きもちいい…………やっぱり、これがいいから……あ……やめられないわ……」 セクサロイドタイプとしての快楽信号に特化した性能と身体を存分に楽しみながら、全身に感覚を散らすようにくねくねといやらしく動く美月。 飲み込んだ水の排出が終了し、タンク内の残存液が全て無くなったことを確認すると、持ち出した人工体液タンクを手に取り、世の男性にアピールするような手付きで蓋を取り、色気に満ちた仕草でノズルを口に含む。 口端から漏れないようにしっかりと唇を閉じると、美月はそこから無色透明、無味無臭の粘液をごくごくを飲み込んだ。 喉を通り、とぷとぷと体液タンクへと溜まっていく。 そして、電子頭脳内で満タンになったことを確認すると、口から卑猥な雰囲気を醸す水糸を引きながら口を離した。 「ぷはっ……ああ…………これで終了ね。人格エミュレートしてると、気持ちよくなっちゃって時間かかるわね」 特殊な自慰行為も兼ねた洗浄と補充を終え、水道を止めて浴室を出る美月。 鏡に写った彼女の身体は、女神のように美しく、人工と自然の両方が備わった素敵なフォルムを生み出していた。 タオルで体表面の水滴を拭き取り、眼球や耳の中、口内、膣内まで拭っていく。 自然と唾液や汗、垢が発声しない彼女の身体では、そのような奥まで手入れするような拭き方でも、コップを拭くのと変わらない。 「えーっと、配達予定時刻は16:30だから、まだまだ時間あるわね。ちょっと自己点検してから外に出よっと」 洗浄と補充を終え、服を着直した美月は、電子頭脳内のスケジュールを確認してから、この後の予定を人格データの気分と照らし合わせて大まかに決定した。 この日は美月の休日。いようと思えば朝から夜まで家にいられる。 しかしそんな時だからこそ、自由を謳歌したいとも思う。 美月は出発前の点検にと首を180度回転させて取り外しながら自室へと向かい、頭部と電子頭脳の具合を確かめに向かった。 機械化から時間が経ち、元人間とは思えない程にすっかりと機械的な暮らしに慣れ、染まった美月。 そんな彼女に、今日は同じ機械の仲間が生まれる日でもあったのだった。 * * * その日の夕焼けが消え始めた時間帯。一度外出を楽しんでから自宅へと戻ってきて寛いでいた美月の元に、玄関からの呼び出し音が鳴らされた。 「はーい! 今行きます!」 電子頭脳内で玄関モニターの映像を受信し、外の様子を確かめると、そこには一人の女性配達員と複数の小分けにされたダンボールの荷物。 他に配達の予定も無かったため、これは間違いないと期待を沸き立たせながら、美月はボディラインの目立つ部屋着のまま玄関に向かい、ドアを開けた。 「こんばんは、美月さん宛の荷物ですね。サインは既に受信しているので結構です。この荷物は強い刺激を加えないように気をつけてくださいね。それじゃあ運びます」 可愛らしい音声と容姿を持つアンドロイドの配達員が、元気に説明と同時に荷物の運搬を、美月と協力して進めていく。 玄関から廊下に次々と入り込んでいく重めかつ縦長のダンボール。 手のひらのセンサーから伝わってくる、内部アイテムの動作。それが伝わって来るごとに、この後のお楽しみへの期待が高まってくる。 しっかりと室内に押し込められると、配達員は天使のような笑顔を見せて頭を下げた。 「ありがとうございました! またよろしくお願いします!」 プログラムされた決まり文句を口にして、配達員はドアを閉じてその場を去っていった。 ようやく届いた念願の商品。注文してからこの日を心待ちにしていた美月は、早速リビングへと軽々と持ち運んでいった。 「セクサロイドタイプでも、しっかり人間の時より出力があるのがいいわね」 人間の頃であれば運ぶのにも一苦労しそうな重量の箱を、何の支障もないままゆっくりと優しく床に置く。 カッターを持ち出し、箱に包装されたテープを切り、中身を開放する準備はついに整った。 「うふふ…………ようやくのご対面ね……せーのっ」 自分の中でタイミングを決め、美月はついに蓋を左右に開いてその中を露わにした。 そこに詰め込まれていたのは、無数の緩衝材に包まれた、女性型アンドロイドのパーツ一式だった。 「すっごい……本当にあたしの注文通りの娘が来てる……!」 頭部、胴体、四肢、着脱可能な女性器ユニット、説明書をダウンロードする為のQRコード、人間らしさを再現する為の人工体液。 最低限ながらも必要な物品は全て、箱の中に収められていた。 箱の中で動いていなくてもその素晴らしい髪質が伺い知れる、金髪のセミロングヘアー。 美月よりも少々年下に感じられつつ、思春期頃の幼さを少しだけ残しながらも、閉じていても分かる大きな眼と綺麗な鼻筋、今にも重ねたくなる薄めの柔らかそうな唇が合わさった大人びた完璧な顔の造形。 今からでもラブドールのように揉みしだきたくなる、形よく柔らかそうなふっくらとした乳房。 人造物という利点を最大限に生かした、美術品のようにすらっとした手足。 バラバラでありながらも女性的魅力が詰まった肢体。 そんな胸躍る造形でありながら、ぽっかりと背徳的に空いている股間の穴と、取り外し可能な、再現度の高い子宮ユニットが備わった女性器ユニット。 美月の下腹部に備わっている、造形や質感こそ近いものの、卵巣も無く造り物感がどこか感じられるそれとは明らかにクオリティの差が感じられた。 「あはっ……これがあたしの同居人……なんだか、今からでも変になっちゃいそう……!」 興奮から頬を赤らめながら、眼球内のカメラからQRコードを読み取り、説明書をダウンロードする美月。 一度前屈みの状態で固まりつつ、一通り全ページをさらっと確認すると、美月は早速全パーツを床の上へと移動させた。 その姿はさながら、バラバラ死体の発見現場のようでもある。 「よーし、気合い入れて組み立てるわ!」 美月は己の内側に沸き起こる感情のままに、早速女性型アンドロイドの組み立てに入り始めた。 1からパーツごとに組み立てるのではなく、出来合いのパーツを接続するだけではあるため、工程の大部分は一般人でもかなりやりやすいものとなっている。 「紙の説明書じゃなくてよかったわ。一々他の動作に手を割く必要もないし」 電子頭脳内で説明書をめくりつつ、なるべく不具合を起こさないように慎重にアンドロイドを組み上げていく美月。 みるみるうちにその人体は形を成していき、首から下は完全に女性の女体の姿を完璧に生み出していた。 「あとはこの頭部を接続してと……」 最後の作業として、美月は体温の感じられない冷たい女体の背中を左手で持ち上げ、後頭部を右手で支えて接続部を合わせる。 顔が背中を向いた状態でくっつけ、自分の身体で行うそれと同じ要領で180度回転させると、かちっという音と共に頭部と身体は完全に繋がった。 「他人の首外しや接続するのって初めてだから、なんか少し変な感じね」 自分自身に行うそれはもう慣れたものだが、他者にするのは滅多にないことだなと思いながら、改めて床に寝かせる美月。 一旦充電ケーブルを引っ張る為に立ち上がると、この機体の人工物として計算された人体の美しさが、人格データに焼き付くように突き刺さる。 「ああ……早く起動したい…………出来ればすぐに充電を終えてね……?」 人格データからいくつもの種類で発生する興奮によって、ほんの少しだけ陰部が濡れた美月。 コンセントに接続された早速アンドロイド用の充電ケーブルをすぐに引っ張り出し、首筋の皮膚カバー下にある充電端子へと繋げた。 あとは起動可能な残量までチャージされるのを待つのみ。 こんな可愛い娘のためならいつまでも待っていられるかもしれない。 身体が火照ったかのようにするすると部屋着を脱ぎ、下着まで取って、目の前の眠り姫と同じ姿になると、美月は早く起動したいと首筋の端子横にある起動スイッチに手を置く。 1秒、1分、10分。インターネットに無線接続している美月には、コンマ一秒までの時間まで正確に計測できる。 待ち遠しくても、人格データの感情値を調整してなんとか耐えて我慢する。 「もうそろそろいいわよね……もう12分31秒も経ってるんだし……」 溢れる期待が抑えきれず、美月はもういい所まで充電完了しているだろうと、迷わず電源ボタンを長押しした。 女性型アンドロイドの身体から、微小な駆動音が耳に入ってくる。 そして、ずっと閉じられていた目蓋が開き、水晶のような瞳の奥で光る赤い光が灯り始めた。 「初回起動を確認しました。この度は我が社の製品であるカスタムモデル、HM―305IEを購入して頂き、誠にありがとうございます。ユーザー名は、野中 美月 様で間違いないですか?」 起動後、一切身体を動かさず、天井を無機質な瞳で見つめながら、画一化された電子音声で初回メッセージを発する女性型アンドロイド。 この部分まで人間らしさを追求する必要は無いという判断が垣間見える、どこかとぎれとぎれな喋りで、電子頭脳に予めインストールされている顧客情報を読み上げる。 「ええ、野中美月で間違いないわ」 「了解しました。野中 美月 様は購入時点で、照合の為の音声ファイル、個人認証コードを提出していただいていますので、現時点で本人確認は終了しました。ご協力誠にありがとうございます」 そう言うとアンドロイドは、反動も無しに上半身をスムーズに起こし、正座の姿勢に切り替えて美月の方を向く。 対面になっても、予め作り上げられた擬似人格の存在しない彼女は、無感情な表情のまま美月をじっと見つめ続ける。 「本来であれば、本人登録の為の体液摂取による遺伝子情報解析が必要となりますが、野中 美月 様は機械化改造を受けて生身が存在しない身体だという情報を受けておりますので、個人認証コード、顔、声紋、思考ルーティンを代替情報として登録します。個人情報を追加しますか?」 「いいえ、このままでいいわ」 「かしこまりました。それでは、アンドロイド向けメニューとして存在しております、無線接続を行いますので、アクセスポイントの開放をお願いします」 その直後、美月の電子頭脳に目の前のアンドロイドからの接続リクエストが届けられる。 美月はそれを迷わず受諾し、起動したばかりの機械人形と中枢同士で繋がった。 「野中 美月 様のネットワークを確認しました」 接続してすぐに、それまで期待とわずかな肉欲に満ちていた、楽しげな美月の表情がふっと消え、ポーズを保ったまま無機質な雰囲気を醸し出した。 「新しい外部機器を確認しました。HM―305IEからのリクエストを確認しました。野中美月のストレージ、位置情報、個人情ほアクセスを許可しました」 それまでと同じ声でありながら、人間らしい感情の無い淡々とした声でシステムメッセージを発する美月。 自らの発言を、リクエストを受けた権限へのアクセスを全て許可することで中断し、すぐに元の人格エミュレートを行う本来の状態へと戻った。 「ありがとうございます。当機体は、販売されている他機種とは違い、予め製作された擬似人格、人格データは存在しておりません。その代わり、ユーザーの行動、行為、指導によって学習し、購入者が思い描く理想の人格を形成する物となっております。尚、人格データは後からインストールも可能となっておりますので、ご自由に使用してください」 人間そっくりでありながら、人格という大切な部分すらも道具のようにカテゴリ分けし、自分を製品として説明し続けるアンドロイド。 「それでは最後に、当機体の呼称を設定してください。もしユーザーから設定されない場合は、自動生成により当機体の名前を決定致します」 少々長めの初期設定も、ようやく終わりの時が近づいた。 最後に待ち受けていた、万物において大切な要素となる名前の決定。 美月は決済を決定した後で、既に彼女につける予定の名前は考え終わっていた。 「それじゃあね……貴女の名前は『杏菜』でどう? あたしの名字と合わせて『野中 杏菜』で」 「かしこまりました。それでは、私の名前は杏菜 でよろしいですか?」 「ええ、それでいいわ」 「かしこまりました。当機体の名称は後からでも変更可能となっておりますので、気が変わった際には自由に変更してください」 名前を決定した直後、杏菜の挙動にどこか人間的な自然さが細かく付与されたように感じる。 淡々と喋っていた時のような、形だけの人間味しかない姿から、未だ機械的な要素は多くありながらも人間に近づこうとしているロボットらしい雰囲気へと変化したように思えた。 「ありがとうございます、野中美月様。これにて、私の初期設定は終了となります。これから末永く、私、杏菜をよろしくお願いします」 お固い表情は変わらないが、フルネームを呼ぶときの不自然な隙間は消え、滑らかな動作で頭をゆっくりと下げた。 その細かな変化が、可愛らしい、保護したいという人間的感情と、こんな魅力的な女性型アンドロイドと絡みたいというセクサロイド的欲求の両方を擽った。 「美月様、私の中にはまだ人工体液が補充されていません。人間らしい挙動のクオリティを高める為、人工体液の補充を…………?」 人間の模倣を完璧に近い状態とするための体液補充を推奨しようとした次の瞬間、美月は情欲に満ちた眼差しと興奮に染まった作り物の吐息と一緒に、全裸で杏菜の身体に覆い被さった。 杏菜はメッセージを中断し、じっと所有者の顔を見つめる。 「どうしましたか美月様。人工体液の補充を」 「あはっ…………ねえ杏菜……杏菜って、あたしと同じように経口摂取で補充するのよね……?」 「はい。それが通常の補充方法となっております」 「それじゃあ……あたしの体液を口移ししましょうよ。ね? 貴女のことを見てたらもう我慢できなくなってきたの……」 樹脂で造られた人工皮膚同士を重ねあうと、体重と重力に合わせて皮膚がたわみ、大きな乳房同士が潰れ合う。 人工的に再現された体温と、起動したばかりでまだ冷たい杏菜の身体が密着し、無機物の女体が色気を発しながらくっつく。 その言葉に杏菜は、レンズを収縮させて現在想定しうる限りの返答を演算し、口を開く。 「私との性行為をご希望ですか? 申し訳ありません。私には女性用の性行為プログラムがインストールされておらず、また、リクエストされていなかったため、男性用の性行為プログラムも実装されておりません。美月様の要望に応えることは……」 「そんなのいいのよ……そんなこといったら、あたしだって元々男相手のプログラムしか無かったんだから。あたしが美月にいっぱい絡んであげるから……美月は私の女性器ユニットをいじって? ね?」 「………………かしこまりました」 時間が止まったように動かない、少々の演算時間を経た後、杏菜はそれを了承し、右手を美月のクリトリスへと移動させて指で触れた。 「あっ……ん…………ありがと杏菜…………じゃ……あ……あたしからも……ん…………」 ピンク色の秘肉を再現された樹脂下に密集したセンサーから伝わる、アンドロイドの冷たい指の感触。 電子頭脳にほとばしる快楽信号が、人格データを強く刺激する。 美月は口内の人工唾液をいつもより大きく分泌し、ぽかんと開かれた杏菜の口に熱いキスを交わした。 作り物の舌同士を絡ませあい、次々と体液タンクから送られてくる無色透明の液を、淫靡な音と共に流し込んでいく。 「ん……あっ……ああっ! む……ん……ぅ……キスなんて…………ああんっ! いつぶりかしら……あああっ! そうね、8ヶ月と14日ぶり……ん………む……はああっ!」 唇同士を重ねて塞がった状態の再現音声と、明瞭な発音をスピーカーから同じように発し、シリコンの肉が絡み合う水音を出していく美月。 快楽信号から導き出される快感の生声を発する一方で、杏菜は淡々と美月の舌と唇の動作に合わせて自身も同様に動かし、流し込まれる体液をごくごくと受け入れていった。 実質的にはペットボトル内の水を移し替えているのと変わらない、ただ形が女なだけの無機物同士の液体交換。 人工体液は少しずつ、杏菜のタンク内へと注がれていく。 「その日に最後のキスをしたのですか? 相手はどんな方でしょうか」 杏菜も同じようにノイズのない綺麗な声で質問を返す。 そんなことをしている間も、杏菜は命令通りに、陰核を弄り続け、噴き出す人工愛液を指に纏いながらずっと同じ調子で刺激していった。 「あっ、あっ……それは……ん……んん……ああっ! あまり言いたくな……あんっ! 杏菜……ぁ……起動したばかりなのに……はあ、あ……ああっ! すごく上手くて……きもちいい……あっ……ああんっ!」 「かしこまりました。質問を中断します。美月様の女性器ユニットが濡れてきていますが、刺激を継続しますか?」 「もっと……ん…………あっ……もっとしてぇ………あんっ、ああっ! もうすぐ……いっちゃいそう……あっ、はああっ、あ、はぁ……はああんっ!!」 口と膣部以外からは一切の体液が発生しない、美月側が一方的な女体同士のセックス。 起動してから時間が経ったこともあって、杏菜側の体温も人肌のそれに近づき、つるつるとした人工皮膚同士が汗もなく擦れ合う。 杏菜からの手淫と、敏感な感覚からもたらされるキスと同時に、美月は両手で己の乳房と乳首を揉みしだき弄くり、さらなる快楽信号を発していく。 そうして、久方ぶりの他者との絡み合いを続け、美月の人格データは何度も受信しては処理され続けた快楽信号によって間もなく絶頂の反応を示そうとしていた。 「あっ、あっ、あぁぁぁ……はあああっ!! 杏菜ぁっ! きもちいい、すごくいいわ! あんっ! あっあっ、あああっっ!! いくぅっ! イクうううううう!!!」 男性向けに調整されている絶頂の音声を叫びながら、美月は柔らかく唇がふさがれたまま激しい絶頂の声を上げた。 女性器ユニットから噴き出す、味もニオイも無い透明な液。 杏菜の装着されたばかりの割れ目と太もも、ずっと陰核を触れ続けていた指にかかり、卑猥に濡らした。 妖艶な糸を引きながら一旦口を離し、偽物の吐息を出しながら、愛おしそうに杏菜の顔を見つめる。 一方、口元だけを艶めかせながら無表情で見つめ続ける杏菜は、絶頂の声を聞いて、同様に一度指の動作を止めた。 「はぁ……はぁ……ぁ…………ん…………杏菜……ぁ…………」 「はい……なんでしょうか?」 「今……あっ……どれくらい……補充されてる……? あっ……は……ぁ…………」 「現在11%程補充されています」 「あら……それだけ……あっ…………ん…………」 「口移しによる補充を一時中断されるならば、ただいま女性器ユニットより排出された体液を回収します」 そう言うと杏菜は、覆いかぶさっている美月を優しく横へ移動させ、横向きの状態を作らせる。 触れ合っていた股間や太ももが離れると、人工愛液の糸が二人の間で作り上げられた。 顔を股間部近づけるように移動させると、美月の人工唾液の絡まった舌を出した。 「えっ、なに、杏菜これから何し……あああっっ!!」 そして、杏菜は舌で女性器ユニット周辺の愛液を舐めとり、ごくんと飲み込んでタンク内に補充し、自身の体液とした。 性行為に関するプログラムが実装されていない杏菜が導き出した、肉体的交渉による体液補充から繋がる回収行為。 当然この間、彼女にはセックスをしようという意志は無く、あくまでその液体が本来の目的でしかない。 しかしその刺激が、絶頂に達したばかりの美月にさらなる快感を与え、電子頭脳に負荷をかけた。 舐め取っては潮を噴き、今度は周囲に漏らさないように口で塞ぎながら無味無臭の潮を口で受け止める。 そんなやり取りがしばらく続き、リミッターとしてようやく膣液の放出が止まると、杏菜はそれを検知して女性器ユニットから口を離した。 「現在体液タンク内は24%補充されています」 ピンク色に満ちた空間を無自覚に作り出しながらも、未だ無感情な声で説明を続ける杏菜。 徹底的に舌で攻められ続けた美月は、人工涙液と唾液をだらしなく垂らしながら、ぴくん、ぴくんと規則的に痙攣しつつぐったりとしていた。 「あっ、あ、あ、あ…………きもち……いい………あぁぁ…………」 「美月様。続けて口移しによる体液補充を行いますか? 美月様の口から唾液が漏れ出しています」 「あはっ……は……ぁ…………はぁ…………そ、そ、そうね…………そうし、する、わ……」 「かしこまりました」 最終的には、まるで杏菜が美月を引っ張るような形で、最後まで肉体交渉による体液補充を行った。 ぐったりと自律稼働する気も失った美月は、杏菜の学習した舌の動作で口内を攻められつつ、蜂が蜜を分け与えるようにタンク内の液を渡し続けていった。 こうして新しい二人暮らしの日々は、色欲に満ち溢れた慌ただしい一日から始まったのだった。