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土装番
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作り変えられたセックスドールの行方 1話先行公開版

 世間一般へと目新しいテクノロジーが進出し浸透する頃には、隠れた世界ではさらなる未知の技術が確立されているということは、よく見られる光景である。  人間そっくりのアンドロイドが家電量販店で売られるようになったある時代。お世辞にも挙動は全てが完全に人間らしいとは言えないものだった。  細かく作り込まれているが、ふとした時にどこか不自然さを感じさせる動作や返答。合ってはいるものの微妙に噛み合っていないこともある会話。  容姿や声などの特に気になるわかりやすい箇所の問題はクリアされていたが、細かな課題はどうしても残されていた。  これは、まだ人間とアンドロイドの区別がはっきりとついていた時代の話である。 * * * 「ありがとうございました! またお待ちしております!」  都内のとある喫茶店。そこで、耳の奥を突き抜けるような、元気で胸がどきりとするような魅力ある声で接客するスタッフの一人の伊藤美佳。  20歳の彼女は、通り過ぎ様に男達の視線を奪ってしまう程の美しく可愛らしい容姿を持っており、その笑顔は頼むつもりの無かった注文を追加させてしまう程の力があるという。  絶妙なツリ目気味の大きな瞳に、顔立ちを引き立てるしゅっとした鼻筋。流れるようなサラサラとしたミディアムヘアー。完璧なまでに整った顔全体のバランスが、一つ一つの動作に倍以上の魅了を溢れ出させる。  体型も制服越しにわかる程に綺麗に整っており、特に胸は純白の衣服が映える程に大きく、客のみならず男女問わず同僚の目線すらも釘付けにした。 「いらっしゃいませ! 何名様ですか?」  はきはきとした喋りで、天が二物も三物も与えたと言わんばかりの姿をこれでもかと振りまく彼女は、いつしか店のシンボルとも言える存在になっていた。 「いやあマジ可愛いね……仕事終わったら、俺とどっか行かない?」 「ああ……すみません。私、この仕事が終わったらすぐに用事があるんです」  その高嶺の花とも言える美佳には、花の蜜に吸い寄せられるようにしばしばナンパや誘いが行われる。  時には同じ女性からの誘いも来ることがあったりと、まさしく天然の魔性を秘めていた。 「はいすみません。当店ではそのような行為は禁止されてますので、そういうのはもっと違う場所でやってくださいね」  そのような事態が起こる度、先輩によって割り込むように断りの対処を入れられる。  逆上や強引な誘いを断つという理由も含め、ある程度なんとかなりそうな相手以外には二人以上での応対を心がけていた。 「なんならあんたでもいいんだけど? 美人だし、エロいことしてくれそうじゃん?」 「あいにく間に合ってますんで。これ以上無駄な応対させるようだったら警察呼ぶわよ?」 「あぁ? 俺達は客だ」 「あの、もしもし警察ですか? あのですね」  逆ギレしようとした厄介客が音を立てて立ち上がろうとした瞬間、その後ろではちゃっかりと美佳が携帯を手に取り、警察へと電話しているらしい発言を口にしていた。  まさかこんなにも早く呼び出そうとするとはとたじろいだ客達は、一気に態度を鎮めた。 「そうそう、最初からそうすればいいの。では、迷惑にならないうちに早く帰ってくださいね」 「く、クソ……!」  厄介客は、不愉快そうな顔で舌打ちをしながらいそいそと店内を去っていった。  二度と来んなとにらみつける先輩。すぐに美佳の状態を確認する。 「大丈夫だった? 警察呼んだみたいだけど」 「ああこれですか? 呼んだふりですよ。こうでもしないと収まってくれないかなと思って」 「………………あっはっは! いい根性してるじゃない美佳! そういうとこ大好きよ」 「ありがとうございます先輩」  見せかけの電話であることを、足跡残さず去っていった後で明かす美佳。  スタッフ達の連携とサービスの良さ、そして何よりアニメやドラマの中と見まごうような華のある従業員達。  そんな彼女達を求めて、男女玉石混交の客達はこぞって足を運んでいた。 「それじゃあ、お疲れ様でーす!」 「お疲れ美佳。今日の接客も良かったよ、みんなあんたに釘付けで」 「そう言ってもらえると嬉しいです。先輩こそ、今日のあの変な人への対応、すごかったし助かりました」 「たまーにいるからね、ああいう厄介なの。ったく、あんたの可愛い顔をちょっとでも分けてもらえれば、客もおとなしく言うこと聞いてくれるのかねえ」 「先輩だって美人じゃないですか。背も高くてスタイルもよくて……」 「さすがに及ばないわよ! でも、美佳に褒められると素直に嬉しいわ。ただ、それだったらもうちょっと胸のボリュームも欲しかったかな、あんたみたいに!」 「きゃっ! もう、すぐそういうことするんだから!」  6歳程年上の美女と言って差し支えのない先輩と仲睦まじく、冗談や本音を言いながら会話する美佳。  周囲とも溶け込み、華を咲かせるように皆の雰囲気を明るくする彼女は、まさしく希望に満ちた女神のような存在だった。  勤務時間を終えた美佳は制服を脱ぎ、私服へと着替えて店を去っていく。  道中で夕食を買い、街の美味しそうなテイクアウト窓口に何度か目移りしながらも、真っ直ぐと自分の家までの帰路を歩いていく。  途中、美佳は真新し目のレストランの前を通り過ぎる直前、その店頭の光景に思わず目を惹かれた。 「いらっしゃいませ! こちら、新規開店致しましたパルムカフェとなります! 現在開店記念としてコーヒー及びサイドメニューの割引キャンペーンを行っています! 当店自慢の豆からこだわり抜いたコーヒーと、思わず手を出したくなるような食事の数々をお楽しみください!」  目新しい装いの綺麗な外観に、よくある開店祝いの花スタンド。  そして、入口すぐ側で道行く歩行者に宣伝をしているのは、カフェが所有する女性型アンドロイドだった。  発音や言動はとても自然で、声もそれが聴こえた方向を無意識に向いてしまう程に心地良く通りも良い。  何よりその容姿が心惹かれるほどに美しい。  おそらくアンドロイドの身体に合わせて仕立てられたであろう、トップモデルのような綺麗な線のくびれた美容体型に、こんもりと盛り上がる乳房。  左に右に向きを変えて宣伝する度に靡く長髪、そして計算された人工の美を形にした大人の女性的顔立ち。  美佳の口から思わず綺麗だなあ……と、声が漏れるほどに、そのアンドロイドは魅力に満ち溢れていた。 「いつかはあんな美人のロボットがもっと街中に溢れるのかな……私はその方が嬉しいけど」 「なあそこのロボット。どっかうまい中華料理とか知らねえか?」 「………………申し訳ありません。私はちょっとそれについてはわからないですね……」 「チッ、使えねえやつ」  明らかに専門でない相手に質問した通りすがりの男。アンドロイドは回答不能の質問に、数秒程思考的無表情の間を置いてから、おそらくはそうプログラムされたであろうテンプレートの返事を返した。 「ああ、ああいうのいるよね……」  困っているらしい姿を見て可愛らしいと思いつつ、厄介な人はアンドロイドにも厄介だよねと、遠くから同情しながら去っていく。  人間と完全に寄り添う存在になった、というにはまた程遠いが、人々の暮らしに少しずつ溶け込むようになったアンドロイドは、共存共栄までの道を確実に歩んでいた。  人工物と言えども、美男美女が街に溢れれば、こんなに眼や耳が幸せなことはない。  果たして未来はどんなことになっているんだろうと思いを馳せながら、美佳は相変わらずの天然の美貌を振り撒きつつ、改めて真っ直ぐ家へと帰っていった。 * * *  そんなある日。いつもよりも遅い時間にその日の勤務を終えていつものように自宅を目指していた美佳は、すっかりと暗くなった夜道を、街灯を頼りにいそいそと歩いていた。 「思ったより遅くなっちゃった……早く帰らないと」  今日の出勤が終わり、明日から数日間の休みをもらった美佳。今は慌てた状態で脳内がいっぱいだが、次の日からの楽しみに心をワクワクさせていた。  人間の熱意に満ちた中心都市なだけあって、昼や夕方よりは明らかに少ないが、夜遅くとなっても人通りは存在している。  しかし所々に明かりの届いていない道や影に隠れた場所も大きく増えており、治安がとても良いとはいえ安心できない部分もあった。 「たぶんもうあそこは閉まってるよね……まあ、寄り道なんてできないか」  ほんのちょっとだけ脳裏を過ぎった、ちょっと道草を食ってみたいなという欲望。懐の多少の余裕が彼女をそうさせようとしたが、今はそれよりも早く帰るに越したことはない。  改めて自宅までの足を進めようとして、ちょうど通行人からの視線も向かいにくく闇に隠れた場所の横を通り過ぎようとしたその時、突如美佳は尋常ではない力を持って身体を捕まれ、影の中へと引っ張り込まれてしまった。 「きゃっ…………!!」  ほんの一瞬の出来事に心をぐしゃぐしゃにされるような戸惑いが生まれるが、なんとか誰かに助けを求めようと美佳は悲鳴を上げようとした。  だが、相手側は相当に手慣れているのか、即座に口を塞ぎつつ首を締め、息を吸えないようにと呼吸の段階からの対策を施していた。  まるで人間離れしたような力だが、首から伝わる手の感触は屈強な男のそれではなく、むしろ柔らかく心地よい女性に近い手をしていた。 「あ…………が…………ぁ…………ぁ…………」  謎の暴漢の正体を確かめようにも、首が回らず身体も動かせない。  抵抗の力はどんどん弱まっていき、両手にも力が入らなくなっていく。  そして、美佳の反抗も虚しく、彼女の意識はそのまま闇の中へと堕ちてしまった。 「対象のセックスドール素体の意識レベル低下を確認。速やかに移送します」  誰もいない暗闇の中で、呟くような小さな声ではきはきと口にされる無感情な女性の声。  誰に対して言っているのかもわからない独り言を虚空へ向けて喋った後、その人物は軽々と美佳の身体を持ち上げ、決してひと目につかないように道を選択しながら、跡形も残さずこの場を去っていった。   * * *  「人格エミュレートモードにて起動します………………んん……あ……れ…………私は…………」  突如何者かに襲われ、そのまま気を失った美佳。  どれだけの間眠っていたのかわからないが、目を覚ますとそこは、ドラマや映画で見るような手術室のような天井をした白い部屋だった。  唸るような小さい機械音以外は不気味な程に静かで、人の気配を微塵も感じない。  自分はどこかへ誘拐されてしまったのだろうか。今は下手に動かずにいたほうがいいのだろうかと悩み、ともかく誰もいないなら少し歩いてみようと考え起き上がろうとした。  だが不思議なことに、意識ははっきりとしているのに起き上がれるような感覚が全く感じられなかった。  まるで最初から首から下などなかったかのように、指一本の挙動すら感じられずにいた。  一体自分に何が起きているんだと考えたその時、脳内に突然何者かの声が流れ込んできた。 「A00102、伊藤美佳は正常に稼働中。電子頭脳内の不具合はありません。人格エミュレート、問題なし」  人生の中で一度も聞き覚えのない、施設案内の音声ガイドのように無機質な女性の声。  しかもそれが、耳からではなく脳に直接響いてきている。  明らかに異常な事態にも関わらず、逃げることもその為の行動を起こすことも叶わない状況。   「だ、誰かいるんですか? 誰が話しかけてるんですか?」  なんとか声を出すことのできた美佳は、誰でもいいからせめて人の存在を認識しておきたいと、呼びかけるように声を出すが、外からの反応は全く見られない。  それどころか、なんだか自分の声が高音質のスピーカーのようになんだか明瞭すぎるような違和感も覚えた。 「何がどうなってるの!? 私は一体どうなって……」 「思考、反応、返答、いずれも異常無し。正常に伊藤美佳を再現しています。続いて、これよりセックスドールモードの起動テストを開始します」  怯えるような反抗するような、どっちつかずの反応を見せる美佳だが、脳内に響く謎の声が発した言葉の直後、ふっと魂が消えたかのように無表情へと変わり果てた。  まるで萎えていくかのような瞬間的な変貌っぷり。それから美佳は、淡々と何も感じていなかったかのように口を開いた。 「セックスドールモードを起動しました。本日は当機体を起動していただき誠にありがとうございます」  先程まで感情を発露していた者と同一人物とは到底思えないような変化。  上下左右になんとか状況を確認しようとせわしなく動いていた瞳は、釘刺されたように天井を真っ直ぐ見つめ、誰に言っているかもわからないような丁寧な言動を口にする。  自らをセックスドールと名乗る美佳。  彼女は同意もなしに連れ去られた後、全身を容赦なく切り捌かれ、全身という全身の至る場所から生身の器官が取り捨てられ、その全てを金属の骨格やシリコンの肌、オリジナルの形を再現した人工子宮、体液タンクなどの新しい器官を組み込まれてしまっていた。  脳を含め、彼女の身体にはもう生身である場所はどこにも存在しない。それまでの積み上げた人生の記憶も人格も、脳に刻まれた全てがただの電子情報となり、金属の電子頭脳に改めて組み込まれていた。  そして今彼女の身体は、後頭部がぽっかりと空いた、台の上に乗る電子頭脳から伸びたケーブルに繋がった頭部、産毛一つない艶めく上半身、3つの穴を外部の管から繋がれた下半身と、機械部品を曝け出された断面を覗かせながらバラバラに手術台の上に置かれていた。  そして、美佳の身体は今、改造の最終段階へと突入していた。 「伊藤美佳、性行為時の仕様を口頭説明してください」 「かしこまりました。当機体、人名伊藤美佳はセックスドールとして生まれ変わりました。私の女性器は、人間だった頃のそれを忠実に再現されております、膣部は人間が心地良いと感じる体温に調整しながら、電動操作によって的確な刺激を与えます。膣部奥には、私の子宮を再現した精液タンクが実装されています。当機体の女性器ユニットは取り外すことは不可能ですが、直接洗浄液を注入することで自動洗浄を行います」  自分の身体の仕様を、まるで家電製品のような説明で淡々と感情のない声で喋り続ける美佳。  誰もいない場所ではきはきと口に出す姿は、さながら誰も通っていない道で流されるデモ音声のようだった。 「かつては排泄口であったアナルは、セックスドールへと改造されたことによって性機能を実装されました。古くなった人工体液、及び乳液、溜め込まれた精液のの排出時にアナルを使用しますが、主な用途は女性器ユニットと同様の性玩具としての使用となります。アナル内で射精された精液は、吸入後に子宮ユニットへと溜め込まれます。生殖器の使用とは別の趣向を体感したくなった時、是非ともご使用ください。胸部ユニットは、人間だった時の肌、乳房の感触を忠実に再現しつつ、性感によって乳首に実装されたノズルから乳液を排出する使用となっております。要望によって、乳液以外の液体の排出も可能となりますので、お客様のご要望をお聞かせください」 「仕様説明時の不具合は見られません。続けて、機能面の簡易テストを行います」 「下半身、胴体部との接続を確認しました」  ケーブルこそ繋がれていたが信号の受信をカットされていたバラバラの身体が、外部からの操作によって、離れ離れのまま一つの機体へと生まれ変わる。  断面部から微小な駆動音が鳴らされ、割れ目の肉やアナル、乳首、四肢の指がぴくぴくと動作確認の如く小さく動く。  2つの性器とへそに繋がれていた管が取り除かれ、下半身が180度ひっくり返された後、膝を曲げて尻を強調するような姿勢となる。  その状態から、簡易的に男性器を模した、人工愛液を塗られた二本の先端穴つきバイブが前後の穴にずぶずぶと挿入されていった。  上半身が一瞬だけがくんと震え、胸が柔らかそうに揺れる。 「膣内及びアナル内へと挿入されました。肉壁の調節を開始します」  生娘のような反応すら見せることもなく、人間だった頃は処女だった美佳の膣は白い棒をいやらしく咥え、プログラムされた極上のテクニックで膣壁を動かした。 「下半身からの快楽信号を確認。性感反応の発生。現在人工愛液が補充されていません。愛液タンクを補充してください」  あくまで動作確認であるために、自ら精製できない体液は補充されておらず、中の容器は空っぽのまま。  それでも扇情的な姿勢を取っている下半身は、アナルや膣を突かれる度に気持ちよさそうにがくっと震えている。  そこから発される快楽信号を、美佳の電子頭脳が処理しているが、今の彼女は機械的にセックスドールとしての役目を果たす状態となっているため、人形のような無表情は一切代わることはなかった。 「動作正常。不具合は見られません。続いて、粘液吸引のテストを行います。擬似精液を放出」  相変わらず脳内に響くシステマチックな女性の声。  その指示の後、バイブの先に空けられた穴から、同時に温かく感じる温度まで調整された粘液が放出された。  男性の平均的な射精の勢いを再現したそれは、アナルと子宮それぞれを刺激し快感に浸らせる。  美佳は頭部と上半身を無表情のままガタガタと痙攣させ、下半身はそれよりも少しだけ激しく、かつこの行為に気持ちよさを覚えているんだと感じさせる具合で腰を震わせた。  注がれた擬似精液は、一滴残さず子宮ユニット内部へと送られ、たぷたぷと偽物の子袋を冷たい愛で満たした。 「擬似精液の受諾を確認しました。動作に異常はありません。もっと欲しいです。射精テストを継続しますか?」 「いいえ。伊藤美佳の電子頭脳に想定されていない反応を確認。現テスト中には必要ない反応と判断されました。ただちに調整を行います」  初めて膣内に受けた温かい粘液の刺激が人格データや電子頭脳に影響したのか、不必要な要求を行った美佳。  下手にハミ出した部分は予期せぬエラーの原因になるとして、外部からの女性音声はその場で介入を行い、セックスドール人格の調整を行った。 「かしこまりました………………プログラムの変更が行われました。完成度を向上させていただき、感謝致します」  自分の中身を作り変えられるというのに、それを大人しく受け入れ感謝の言葉まで述べた美佳。  ロボットアームによって下半身は再びひっくり返され、バイブが引っこ抜かれると、どろっと透明の液が2つの性器から僅かに漏れだしてきた。  人間のそれにしか見えない姿が、さらに艶めかしさを増進させる。 「続いて胸部テストを行います」 「かしこまりました」  下半身が逆さの状態のまま、淡々とテストの続行を受け入れる美佳。  今度は両乳房に大きなロボットアームがあてがわれ、首の断面に細く透明なホースと繋がったノズルが取り付けられる。  そして、今回はテストとして乳液の代わりに、なんの変哲もない水が喉から乳液タンクに注入されていった。  その間美佳の口はぽかんと開けられており、舌が何かを飲み込むような動作を連動して実行している。  一定量まで注がれると、ロボットアームが胸を掴みながら激しく胸の形を歪ませるように揉みしだき、乳輪と乳首にあたる部位をこりこりと刺激した。   「胸部からの快楽信号を確認。間もなく、快感による噴乳が行われます」  人間の頃であれば痛いと確実に口に出していたであろう激しい揉みしだきにも何も言わず、それそのものを気持ちいいと感じて電子頭脳を揺さぶられる美佳。  己のデータの情報を口にしながら乳首を勃たせ、宣言通りに乳頭から透明の液体をたらりと溢れ出させた。  刺激をスライムの如く形が変わる程に胸を弄ぶ程に、面白いように快感の液を漏れ出させていく美佳。  その状態をしばらく続けると、注入された水が全て胸から吐き出されてしまった。 「乳液タンク内に残存した液体がありません。補充を開始します…………補充へ移行できません」  残り香の水滴が、ピンク色の先端からこぼれる。  中身がなくなったことにより、彼女に組み込まれた自動補充機能が作動したが、現在はそれが行える状態ではない。  性感反応に震える胸から離れているロボットアーム。続けて、電子頭脳内へ再び無機質な声が話しかける。 「性感反応は正常に機能していますか?」 「はい。現在不具合は検出されていません。もっとしてください。テストを継続しますか?」 「伊藤美佳の応答能力に異常が見られます。現時点では保留。最終調整前にフォーマットを行います」 「テストを継続しますか? データ検出としては不十分と判断します」 「再起動後、予定通り電子頭脳以外の全ボディパーツ接続。その後、最終調整へと入ります」 「テストを継続しますか? 快楽信号の検出を必要とし外部からの命令が入力されました。これより、再起動します」  あまりの気持ちよさに電脳が蕩け始めたからか、さらなるテストの継続を求め始めるセックスドール人格の美佳。  だがそんな要求もエラーとして淡々と認識され、調整事項として記録された後で強制的に再起動を施された。  美佳は発言や思考を最優先の外部命令に上書きされ、入力通りに再起動を実行した。  その間に、接続部に繋がれていたケーブルが全て取り除かれ、離れ離れになっていた頭部、上半身、下半身が一つの姿へと戻る。  後頭部以外の機械的な面は完璧に閉じられており、所々に見られる継ぎ目のカモフラージュさえしてしまえば、どこからどう見ても可憐で魅力的な人間の女性の姿にしか見えなかった。  ガラス玉のように意思のない瞳と、ラブドールのように動かない顔を除けば。 「起動しました。前回の稼働終了時から継続し、セックスドールモードで起動しています」  完璧な人体の形になり、無表情でシステムメッセージを話す姿は、さながら映像作品内のアンドロイド起動シーンのようにも見える。 「応答への異常無し。最終調整へと入る前に、人格エミュレートモードでの起動を行います」 「かしこまりました。人格エミュレートモードを起動します」  完成まであと一歩。美佳は命令通りに人格エミュレートモードを再び起動させ、本来の彼女の人格を呼び起こした。  鉄面皮が柔らかくなり、そして戸惑いと恐怖の表情が生まれ始める。 「な、なんで私、裸に……!? えっ、私の毛が……肌もつるつるしてて……えっ、えっ」  白々しいとすら思えてしまいそうな、自身の身体への反応。  元から全身の毛量そのものは薄くても、僅かな毛や陰毛には度々悩まされていた。それが綺麗サッパリなくなっている。  白い肌も度を越して触れたときの感触が心地良く、それでいて人肌の温かさは保たれたまま。  何より一番彼女が戸惑ったのは、身体の所々に見える奇妙な線だった。  まるでここから切り離せますと言わんばかりのとてもうっすらとした隙間。そこに爪を当ててみると、明らかな引っ掛かりが存在した。 「伊藤美佳の人格データは正常に稼働中。反応に問題はありません」 「なにこれ……頭の中から声が……いったい誰なの!? 私に何をしたの!?」  誰も室内へ、声を荒げて答える美佳。  電子頭脳内に恐怖を示す信号が激しく検出される。 「これより、セックスドールとしての最終調整に入ります」 「セックスドールって……私に売春でもさせる気なんですか!?」  脳内の声はその質問に答えようとしない。  何か抜け道や出口は無いかと周囲を見渡したその時、自身の後方に何やら怪しい脳に近い形をした金属部品の塊を発見した。  何本ものケーブルがそこから伸びており、それを辿ると、自分の方へと繋がっているように見えた。  美佳の脳裏に、背筋が凍るような予感が過る。  「い、いや…………そんな…………そんなの…………」  そんな予測が当たるわけがない。現実逃避にも近い拒絶を何度も何度も脳内で唱えながら、怯えた顔で恐る恐る両手を後頭部へと持っていく。 「――――!!??」  美佳の予感は当たってしまった。  あるはずの頭皮と髪が無く、頭の中が空っぽになってしまっていた。  信じたくはない。だがそうだとしか思えない。あの金属の塊は自分の脳なのだと。  胸中の恐怖がその一瞬で頂点に達し、美佳は耐えられず悲鳴を上げた。 「いやあああああ………………命令を受信しました。調整のため、スリープモードに入ります」  襲いかかった非現実に泣き叫んだ直後、美佳の表情はまたしても中身を入れ替えられたように無に帰った。  涙液が実装されていない彼女の目からは、涙は一滴も流れていなかった。 「人格エミュレートモード、異常無し。サンプルデータ取得完了。これより最終工程へと入ります」  再び仰向けになった美佳。心からの叫びも簡単に切り替えられてしまった彼女は、あとは完成の時を待つだけ。  無数のロボットアームが電子頭脳に手を付け、プログラムへの調整も加えられる。  この場所で起きた事象の記憶は全て削除され、それまでの間を保管するように捏造された記憶が組み込まれる。  それは彼女がこれから、人間のフリをして生活するために必要なカバーであった。 「推定作業時間、11分。作業は順調に継続中」  こうして、人間を原料にして作られた、完璧な女体と性機能を実装したセックスドールが誕生した。 * * * 「んん……ん………………あれ、私…………床で寝ちゃってたのかな……」  夜遅い時間に、リビングの床を背にして起き上がった美佳。  一体なんで床で寝ちゃったんだろうと、記憶の中を掻き出して思い出してみる。 「………………ああそっか、疲れてそのまま横になっちゃったんだっけ」    ぼんやりとした曖昧な記憶に疑問を抱かず納得する美佳。  自身の身体に起きた悲劇的な事実に叫んだ記憶も、自身の身体がセックスドールに生まれ変わったことも全て削除され、そんな事が起きたなどと考えることすらない程にさっぱりと調整されてしまっていた。  各部位の継ぎ目はシーリングによって見えなくなり、人格エミュレート時には自分では認識できないようにプログラムされ、自分の予備パーツがあったとしても、それが自分に使われるものだとは思いもしない。  思考制御を加えられた彼女は、これまでと何も変わっていないと思考し、中身が丸々作り変えられたなどと知ることもなかった。   「お風呂入って寝ようかな……えっと、仕事は明後日だから……それまではぐったりできそうかな」  人間としてのロールを行い、日常的な行為はこれまで通り続ける美佳。  まるで人形の一人遊びのような行動だが、彼女がセックスドールとして稼働するその時までは、過去の行動やルーティンを基準にして人間のフリを続けることとなる。 「ふああ…………でも、なんだか変に身体が軽い…………すっきりしたのかな……? まあいっか」  伊藤美佳という元人間のセックスドール。無数に自宅へ持ち込まれた自身の擬似体液や洗浄液が詰め込まれた、無かったはずのダンボールを不思議に思うこともなく、今までの人間としての日常通り、彼女は身体を清潔に保つ為の入浴へと向かっていった。


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