機械化しようとしたら異世界へ飛ばされたので、その世界の住人を機械化して支配することにした 1話先行公開版
Added 2019-06-12 12:04:21 +0000 UTCとある遠い未来。無数に連なる機械工学と人間工学の進歩によって、人間とそっくりに動作する機械、アンドロイドが生まれた。 その成長速度は非常に早く、最初は見た目以外人間には劣っていたものの、時が経つに連れて人間と同等、そして人間を超える程のスペックを有するようになっていた。 それはサイボーグ分野にも影響し、身体の一部から始まり、全身、脳以外の全て、さらには脳を含めた全身を機械化し、アンドロイドと同一の存在になることも可能となった。 人々は今の自分を簡単にさらなる次元へと導いてくれる機械化技術に次々と惹かれ、たちまち人々は肉体を捨てていくようになっていった。 しかし、その恩恵を大きく受けられるのは一部の階層の人間のみ。アンドロイド、そして機械化した人間は上位層、肉体を持ったままの人間は下流層と認識され、その間には大きく断絶した格差が発生するようになった。 下流層の人間は機械化の恩恵を受けられないどころか、劣悪なサービスを受けて一人ではまともに動くこともできない従順な機械人形と化してしまう者も少なくなかった。 アンドロイドへの羨望、本来の肉体への蔑視が積み重なった結果、一定の年齢を過ぎれば機械化するのは当たり前、しない者は劣等市民という差別的な価値観まで根付く程になっていた。 「ほら加奈子、見ろよあそこ。また肉の身体持ってるんだって」 「うわっ、きっもー! よくあんな穢い身体でいられるわよねー! とっとと機械化しちゃえばいいのに」 「バカ。したくてもできないんだろ。ったく、生身でいたい人の気がしれねえな」 「ほんとほんと。ねえ涼ちゃん、今日の夜、脳で繋げあいっこしよっか? 最近してなかったでしょ?」 「そういやそうだな。よーし、今日は果てんなよな?」 「大丈夫だって! ちゃんとバッテリー満タンだし、予備だってあるしぃ……パーソナルデータ焼き切れるまでやってもいいんだからね?」 人間側からしたら理解の出来ないような会話も公然と行われる人間社会。 流行りや倫理すらも人間とアンドロイドを筆頭とした機械達とは大きく乖離していた。 もはや人間は、金属の人間に支配される他なかった。 「ようやくだ……ようやく俺は機械に生まれ変われるんだ……」 そんな世界で一人、ビルの屋上で今にも人間を辞めようとしている男が一人いた。 彼の名前は海堂陽介、人間である。 高校、大学と、金銭の問題で機械化することができず、日常的に侮辱的な行為を行われ続けていた。 クラスの美少女には、電子頭脳持ってない人なんて感情値的に無理と罵られる始末。 運動能力でも大きな差をつけられ、電子頭脳同士の通信によって影で中傷を行われたり、時にわざと外部スピーカーから聞こえるように発生したり。 そのようなことが積み重なり、彼は必死に貯めたお金で、機械化するための器具を購入したのだった。 今までは大掛かりな設備を用いての機械化手術が行われていたが、今では手軽に手に入るナノマシンを使用し、即効性から遅効性まで、ユーザーの好みで自ら機械化できるまでになっていた。 だがその性能は怪しいものも多く、中途半端に変わってしまう不良品やそもそも変わることのない詐欺商品も蔓延していた。 陽介が買ったのも、ネット通販で購入した注射セット、ナノマシン注入20回分という怪しい代物である。 もし完全に機械化できなかった時の為に用意された予備という触れ込みだが、その時点で効果に非常に強い疑問を抱いてしまう。 だが、そんなことも頭の隅に置こうとしてしまう程に陽介は追い込まれていた。 予備なら予備で失敗もできる。とにかく機械化しなければどうにもならないという強迫観念。 アンドロイドと同じにならなければ未来はない。そう自分に言い聞かせるように、陽介は無機物がそこら中に蔓延る街を見下ろしながら、それらと一緒になるという意思を固める為に、そして誰にも見られないようにと屋上へ出向き、針を差し込む勇気を振り絞っていた。 「…………本当に、これでなれるんだろうか」 だが、いくら精神を削られいたとしても、理性は思考に割り込んでくる。正規品では無いという理由が、その機械へと生まれ変わる意思を揺らがせる。 問題が起きていることなど知っている。まともでいられる保証もないが、自分の懐ではそれくらいしかできない。 人間と機械の狭間で葛藤していたその時、陽介がいた屋上に二人の訪問者がやってきた。 「あっ、ほら見て! 本当にいるじゃん!」 「でしょー? あたしの新型レンズが見間違えるわけないって」 「ごめんねー。後で情報修正しとくね」 そこに現れたのは、露出度の高い服装をした二人の若い容姿をした制服姿の女性だった。 会話内容から察するに、どうやら二人もアンドロイドやサイボーグの類らしい。 「見てよあれ。今どき注射式のナノマシンで機械化しようとしてるんだけど」 「うっわ! 知識のアプデできてないどころじゃないじゃん! カプセル飲めばいいのに…!あっ、もしかしてその金すらないとか?」 「もうやめたげなよー。フレシストにそんな知能あるわけ無いじゃん」 肉体を持っているものへの差別用語を混ぜながら、陽介を罵倒しつつ近づいて来る女性二人。 生身な人間への加虐的な行為も実質的に見逃されている昨今では、近づかれたら何をされるかわからない。 陽介は慌ててナノマシンを注射しようとしたとき、手元からその注射器がこぼれ落ちてしまった。 「ああっ!」 精神の奥底から動揺し、落としてはならないと身体を前のめりにして手を伸ばした。 だが、物理法則は残酷にも、その全身を注射器と一緒に空中へと投げ出させてしまった。 陽介の身体が、人工の灯り照らす夜へと投げ出される。 「うわああああああああああ!!!」 ここまでようやくたどり着いたのに、もうすぐで人生の大きな一歩を踏み出せそうだったのに、俺の人生はここで終わってしまうのか。 こんな情けないきっかけで生が終わってしまうのか。 陽介は落ちている間も、叫びながら必死にこのまま死にたくないと念じ続けた。 そして、その声は下へと落ちて二人の耳にも届かなくなった。 「あーあ、死んじゃった。人間ってバックアップも取れないんだから不便よねー。死んじゃったら修理すらしてもらえないんだもの」 「解体もされず腐るだけだしねー。うわっ、この辺り生物臭いんだけど」 「あっ、そういえばあいつ地面に落ちたら街汚れちゃうじゃん。うわー最悪。これあたし達罪に問われたりしない?」 「…………今検証したけど、この場合は私達は罪に問われなさそうね。過去の判例でもそうなってる」 「ああよかった……フレシストのせいで思考制御や制限なんて刑罰かかったら溜まったもんじゃないもの」 「ほんとそれ。じゃあ……あとで口直しに私の家に行く?」 「行く行く! 人工皮膚張り替えたって言ってたからさ、どれだけ気持ちいいのか確かめたいなあ」 「もう、気が早いんだから……」 人一人の死を目の当たりにしても、肉を持った奴が死んだだけと一切意に介さず、二人の女性はこれから行われる刺激的な情事を思考して回路を走らせながら、そのまま気まぐれに訪れた屋上を去っていった。 * * * 「んん……う…………」 大きな動揺とハプニングによって、ビルの屋上から真っ逆さまに落ちてしまった陽介。 地面の物体がほぼ見えないような高さならばまず助からないはず。だが、なぜだかはわからないが、意識があることに朧気ながらも陽介は思っていた。 果たしてこれは夢なのか、走馬灯というやつなのか、はたまた死後の世界にたどり着いてしまったのか。 なんだか妙に、服の上から湿った土の感触と柔らかな草木の気配も感じる。 自分が住んでいた都市にはそんなものは一切排除されていたはず。陽介はゆっくりとまぶたを開けると、そこは見知らぬ森の中だった。 「…………えっ? こ、ここは……?」 こんな場所は知らない。そもそも見たこともない。自分が捨てられたのかと思っても、身体中に落ちた衝撃から来る痛みすらない時点でおかしい。 何か異常は無いのかと服やポケットを触りながら周囲を見渡すと、充電ほぼ満タンの携帯端末と、すぐ側にナノマシン入りの注射器が落ちていた。 中身は全く減っておらず、予備の分もきっちりと揃えられている。あの足を踏み外した瞬間は、そもそもあの場所にいたことそのものが夢だったのか。 だがそれでは、今の手持ちの説明がつかない。 「一体何がどうなってんだ……ん?」 状況の何もかもが理解できない。そう思いながら改めて周囲を見渡していたその時、目の前の茂みからガサゴソと何かが迫ってくる音が聞こえた。 こんなどこかもわからず人気もない森の中で、遭遇するモノと言えばまず野生動物のみ。 わけもわからず命が救われたが、またもや危機に晒されるのかと、陽介は驚き動けなくなった足をなんとか整える。 そして、その音の主が目の前に現れた。 「…………何だこいつ……?」 視界に現れたのはその姿は、どこか透き通るような翠色の身体を持った、妖精と形容できるような、狐を思わせる姿の小さな動物だった。 このような動物は図鑑でも映像媒体でもネットでも見たことがない。新種なのかと考えたが、今の陽介にはそれからどうしようかと考える余裕もなかった。 「うわっ!」 直後、その動物は威嚇するように全身に電撃を走らせた後、そのままどこかへ去っていった。 現実離れした存在が目の前を通り過ぎていったことにあ然とする陽介。 ひとまず状況を整理するために携帯端末を起動させるが、電波は入っておらず、GPSも動いておらず、当然マップも機能していない。 幸い無線操作等のネットを介在しない機能は使えるが、今の状況では意味もない。 「ここがどこだかもわかんねえけど、とにかく動かないとどうしようもないな」 何がいるかもわからない上に食料もない現状で止まっていては、おそらく野垂れ死んでしまう。 陽介はひとまずなんでもいいから動いてみようと立ち上がった次の瞬間、前方から何者かがナイフを持って飛びかかってきた。 「うわああっ! な、なんだ一体!?」 「あーあ、気づかれちゃったか」 反射的に陽介は全身を使って、転がりつつも全力で避けていく。 わけもわからず姿勢を整え、その闖入者へと視線を合わせる。 「結構ちゃんと気配消せてたはずなのに。まだまだ未熟ねあたし」 そこにいたのは、露出度の高い身軽な服装と、無数の装備を備える革装備に身を包んだ、身長の高く日を弾くような綺麗な肌を持った金髪の、少々目立つくらいの大きさの乳を持つ女性だった。 成人女性でありながらどこか幼さの残る美人の顔立ち。一見すると、所謂盗賊のような出で立ちである。 女性はくるくるとナイフを回し、自身の不甲斐なさを悔いていた。 「な、なんだよお前! いきなり襲ってきて!?」 「んー? そんな無防備でここに突っ立ってるのが悪いんでしょ? 自分から剥ぎ取ってくださいって言ってるようなもんじゃない。ん? あなたの服装……」 女性は陽介の所持品や服装に強い興味が湧き、じろじろと見回す。 「その服装、装備、所持品。どれも見たこともないものばかりね……ふふっ、とんでもないお宝見つけちゃった。とっとと売り飛ばせば、莫大な富があたしの元に……ふふふ…………」 いまいちその内容が掴めない陽介。見るからに日本人ではない相手が、勉強していたのかもしれないにしても日本語ペラペラなことにも強い違和感がある。 頭上にハテナマークを浮かべていると、その女性は再び突っ込んできた。 「なっ、なんなんだよだから!!」 「黙って殺されなさいよ! 一々奴隷として売り飛ばすのも面倒くさいし、その所持品剥ぎ取れればあたしはそれでいいんだから!」 盗賊にしてはやや野蛮な方向の思考をしている女性。 丸腰な陽介にひたすら一撃を叩き込もうと、殺意を持ってナイフを振り回しては真っ直ぐ突きに行く。 それを陽介は、とにかく必死に避ける。どうやら衣服を傷つけないように立ち回っているのか、狙いは主に頭部や首。 大きく立ち回ればなんとかギリギリ避けられるが、体力は明らかに女性側の方が上で、動作の練度も全然違う。 「このままじゃ殺られる……こうなったら!」 不幸にも対抗する術は持っていない。このままではいつか体力が尽きて殺されるだろう。 そうなる前にと、陽介は決死の反撃を決意した。 手元にある武器となる物は、ナノマシンの注射器のみ。せめてこれが喉元にでも突き刺せれば、逃げる時間くらいは稼げるかもしれない。 陽介はしっかりと狙いを定め、動く度に少々大きめな胸を柔らかそうに揺らしている盗賊を睨みつけた。 「へえ、やる気なんだ。でも、あんたなんかが勝てるわけ無いでしょ!」 当然そのような強がりを本気で警戒するわけもなく、盗賊はこれで最後と言わんばかりに正面から突っ込んでいった。 だが陽介は、それに対して同じく真正面から迷わず走り出した。 「うおおおおりゃあああああああ!!!!」 「げっ……!」 予想外の行動に、盗賊は思わずたじろいだ。 間隔が詰められたことによって距離感が狂い、ナイフを叩き込むまでの準備が完了できず、致命傷を叩き込むことが不可能になってしまった。 仕方なく迎撃のためにナイフを正面に向けるが、それでも怯む様子も無い。 向けられた武器に目もくれず、陽介は思いっきり盗賊の身体に飛び込み、押し倒しながら首元に注射器を突き刺した。 「ぎゃあっ…………!」 首元から広がった一瞬の鋭い痛みに声を上げる盗賊。 陽介は勢いのままに中身のナノマシンを押し出し、引き抜いてから距離を取った。 それから予備の分を拾い集め逃げようとしたが、盗賊は予想よりも早く起き上がってきた。 「ぐ……な、なにしてくれてんのよ……ただの獲物のクセに……!」 背後から聞こえてくる強い怨嗟の声。狙いをつけた奪われるだけだったはずの獲物に一撃を加えられたことに、心底プライドを傷つけられたのだろう。 静かな森の中で、ナイフを強く握る音が聞こえる。 「決めたわ。あんたは今ここで殺してや…………あああ……?」 殺意に満ちた逆恨み節をぶつけ、もう装備品の価値など関係あるかと心臓を狙いに走り出したその時、それまでの強気な声とは違う戸惑いと動揺の呻き声が聞こえてきた。 うっかり数秒で追いつかれるかと思いきや、苦しみ始めた様子に困惑しながらも、陽介は油断させるためのフリという可能性も考えず、改めて後方を振り向いた。 「ああ……あああ……あああっ! な、ななにここここれれれは!? お、お前、あたしに一体なななななになになにををを……いいいいっ!!」 ナイフを捨てて、両手で頭を押さえながら上下左右にふらふら揺れ動く盗賊。 ここで陽介は、攻撃に夢中でナノマシンを注入してしまっていたことに気づいた。 ということは、目の前で苦しんでいるのは、機械化による影響なのか。やはりこれは不良品だったのかと肝を冷やしながら、陽介はそののたうつ姿をじっと見続けていた。 「なんなのよ! 一体なななな、いやあっ! あたしが変わって、頭の中が変に変にににににいい!!?」 いやだいやだいやだいやだいやだ、あたしの意識が何かに侵されていく。 頭の中が塗り替わっていく。思考がぼやけてるのかクリアなのかもわからない。なにもかもがグチャグチャになっていく。 神経細胞がナノマシンによって置換され……神経細胞ってなに? ナノマシンってなに? 意味がわからないわからない不明不明不明。あたしの意識が意識は人格データは、人格データとは何でしょう? 記憶に無い、ないわ。検出不能。 一体あたしは何を考えているの? あたしは何を思考して……最適化して最適化して最適化して…………。 「あたまが、あたまが変に……お前、何の魔法を、ををを……ああ……あ……あああ…………」 気になるワードをつぶやいて唸ったところで、盗賊の苦悶に満ちた表情はふっと無に帰った。 頭を押さえたポーズでぴたっと動作を止め、ぴくりとも動かない。 すると、直後に彼女の口がぱくぱくと再び息を吹き返した。 「対象の全ニューロンの変換完了。生体脳は全て置換され、全身を制御する為の電子頭脳として生まれ変わりました」 それまでの激情に満ちた言動から一転、彼女の言葉はまるで感情を失ったように無機質なものとなった。 だが同時に、陽介の背筋がぞくっと凍えた。もしこれを自分に打っていたら、ここまでの苦しみが襲ってきていたのだろうかと。 「続けて、四肢、胴体、骨格、内蔵器系の変換作業へと移ります。作業終了までしばらくお待ち下さい」 硬直したままぺらぺらと喋った後、盗賊はすっと上半身を起こし、展示されたマネキン人形のような綺麗な直立の姿勢となった。 それから彼女の身体には、進行度が表出する程の変化が現れ始めた。 涙で潤んでいた生物的な眼球はどこか硬質な素材に入れ代わり、瞳の奥にはカメラのようなレンズが新たに構成された。 僅かなニキビなどのルックスを阻害する要因は全て排除され、口内も皮膚もシミのような汚れ一つない美しいモノへと生まれ変わった。 たたでさえ扇情的な体型も整えられながら、カルシウムで構成された骨格は全て金属やセラミックに置き換わり、ほぼ全ての内蔵器が分解のち再構成。バッテリーや燃料タンクなどの稼働や人間らしい動作な必要な部品に再生した。 そこそこに大きな乳房は、柔らかさをそのままに液体の排出口に。子宮は妊娠機能を失いながらも形、感触、色をそのままに、人間らしい性行為を楽しむ為の膣から繋がる性液タンクに変性した。 見た目と生殖器官を保ったまま全身の構造が作り変えられた盗賊。 柔軟性の無い眼球の動作で周囲を見渡した後、ゆっくりと陽介に近づいていく。 反撃されるのでは、と最初は考えたが、その疑いはすぐに消え失せた。 「変換作業が終了しました。当機体はこれより、人間としての機能を終了し、ロボットとしての稼働を開始します。どうぞ、なんなりとお申し付けください」 感情のこもっていない、抑揚のはっきりとした脱人間宣言。 だが、まるで従順に誰かに付き従うような物言い。これがもし自分に施されていたかと思うと恐怖でしかない。 やはりあのナノマシンは粗悪品、または奴隷を作るための偽造商品だったのかと、そして二重の意味で九死に一生を得たことに、陽介はほっと胸を撫で下ろした。 「ビックリさせやがって……お前、俺の言うことを聞くのか?」 「はい。現在周辺にはあなた以外の人物は観測できません。並びに、無線通信も正常に行えず、あなたが所持している携帯端末以外への接続が不可能です。その為、現時点ではあなたの命令に従うことを優先します」 まるで通信手段があればすぐにどこかへ繋げるというような言動に、ますます奴隷集めの線が濃厚になったと感じる陽介。 だが今はそんなことは関係ない。と、ここであるアイデアが浮かび上がる。 「そうだ。お前、俺を所有者に登録できるのか?」 「はい、可能です。当機体から携帯端末にアプリを送信しますので、それから登録手続きを行っていただければ、所有者として登録できます」 そのような機能も搭載されるようになるのかと考えると、ますます使わなくてよかったと安心する陽介。 今は安全の為にも、登録しない手はないと、陽介は早速その手を進めることにした。 「外部機器との無線接続を行いました。アプリからの登録手続きを受諾。これより、海堂陽介様をマスターとして登録します。しばらくお待ち下さい…………」 激しく撹乱するように、殺すために動き回っていた彼女は、今は出会ったばかりの相手を主人と認めるための動作を行っている。 それをおかしいと思うことは決してない。従順な機械人形としてその機能を全うしていた。 そして、瞳の奥が点滅する。 「登録完了しました。陽介様、なんなりとお申し付けください」 突如敵意と略奪心を持って襲ってきた女盗賊が、たった一度の攻勢によって従順な下僕となった。 まだにわかには信じ難いが、その是非はこれからわかることだろう。 陽介は本当に何でも言うことを聞くのか、一つ一つ確かめてみることにする。 「よし、まずはお前の名前を言え」 「はい、陽介様。人間だった頃の名前でよろしいでしょうか?」 「ん? ああ……そういや機械化されると自動的に型番が付くんだったな。人間の頃の名前にしろ」 「かしこまりました。私の名前はアメリア=ペレスです。ご希望であれば、私の名前を変更することも可能です。その際に、この名前は過去の記憶データとして保存されます」 自分の側にいたであろう親から名付けられた名前を、簡単に変更できる一データとして扱う姿が哀れに思える。 機械化は現代に置いて莫大なる恩恵が存在する。だが、それが電子機器であることには変わらず、スペックが低く作り変えられてしまえば、他の高スペック機体に電化製品のように扱われてしまうこともある。 使われる機械としての従属的な性質を強調して造り変えられたであろうアメリアは、自分の言動に一切の疑問を持たなかった。 「いや、名前はそのままでいい」 「かしこまりました。他に何かご命令はありますか?」 常にマスターからの指示を待つ機械人形。 現代の機械化は、本人の技量をそのままにさらなる強化を施すこともできるが、はたしてこのナノマシンはそれも考慮しているのだろうか。 ひとまずの安全を確保したい陽介は、アメリアに手練と見込んでの命令を下した。 「この周囲に何か生物の反応はあるか。それらしい危険が無いならこっちに来い」 「かしこまりました。周辺一帯のサーチを行います」 高性能センサーと化した視覚、人間の時よりも繊細に聞き取る聴覚、記憶上に存在するアメリアの蓄積データから、命令通りに危険性の有無をその場で確認する。 一切の瞬きもせずに周囲を歩きながら見回した後、アメリアは再び陽介の元へと戻ってきた。 「周辺の安全性を確認しました」 マスターに望んだ情報の報告を済ませ、真っ直ぐ近づいてくるアメリア。 極上の女体が肌を晒して、じっと綺麗な姿勢で立っている姿に、陽介は内心の欲情が湧き出してくる。 だがその前に、陽介には晴らしたい感情が存在した。 「よし。アメリア、そこで跪け」 「かしこまりました」 言われるがままに膝を付き、見上げるようにして首を上へ向ける。そして、陽介は歯を食いしばり、アメリアの顔を強く右手で引っ叩いた。 風が透き通る森の中に、乾いた音が響き渡る。 アメリアの頭は叩かれた力に抵抗せず右を向くが、その表情には痛いという反応は無かった。 そして、再度意思疎通を行う為に正面を向き直す。陽介の表情には、長年の積もりに積もった感情と優越感が混ざったようなどろどろとした何かが表れていた。 「なあアメリア、お前が俺の所有物ってことは、お前に何してもいいんだよな?」 「はい、なんなりとお申し付けください。私は耐久性も考慮して製作されており、ナノマシンによる自動修復も、最新の機種よりは劣りますが搭載されています」 人間と同様の、そしてそれ以上の能力を身につけるために、性能の向上が積み重なっていった結果、ナノマシンに備わった機械の自己修復機能。 しかしそれはまだ完全というわけではなく、最高性能のアンドロイドを持ってしても自己修復の能力は人間には少々劣る。 それならば潤沢な予備部品を使って修理、または交換した方が早いと合理的な判断が成されてしまっているが、それでも機能自体は健在である。 アメリアを造り変えたナノマシンの修復性能は低い。無いよりはマシ程度。 だが、その情報は陽介にとっては大きな朗報だった。 「そうか。んじゃあ……こうしてやるよ!」 陽介は爆発した欲望に身を任せ、アメリアの衣服を強引に全て脱がし、草木が生い茂る地面に押し倒した。 クッションのように柔らかな肌に、内側から発せられるとってつけたような体温。 無理やり押さえつけられたにも関わらず、アメリアは無表情のままじっと所有者の顔を捉え続けた。 「私との性行為をご希望ですか? 潤滑液を分泌させますのでしばらくお待ち下さい」 ズボンの下で一物がいきりたつ。我慢できずに脱ぎ捨てて放り投げ、その生々しい姿を晒した。 アメリアは仮面のような表情の下で、ひくひくと女性器を動かしては湿らせていく。 そうして、所有者の男性器を受け入れる準備が整った。 「お待たせいたしました。どうぞ、私の膣内へ挿入してください。私は商品価値を高めるため、素材の生殖器を活かしたセクサロイド機能を搭載しております。私の女性器ユニットは、タンク内の潤滑液がっ……」 説明セリフを全て言い終わる前に、陽介は熱く立った棒を膣の中へと力強く挿入した。 その勢いに、アメリアの身体はぐらりと揺れ、それに合わせて胸も揺れるが、痛がるような仕草やリアクションは一切なかった。 膣肉の気持ちよさに一気に理性が飛んだのか、陽介は一心不乱に腰を振り始めた。 ぐちゃりと愛液が絡みついた肉棒が激しく摩擦し、欲望をさらに高めていく。 アメリアもその反応と挙動に身を任せ、ぐにぐにと肉壺を電動オナホのように動かしていった。 「性的快感指数が上昇しています。とてもきもちいいです陽介様」 きもちいいとは言いながら、その台詞は情熱的な感情はこもっておらず、事務的に発しているのみ。 実際彼女の電子頭脳には気持ちいいと認識しているのかもしれないが、それが一切態度に出ていない。 人形らしい無表情のまま、肉感的な下半身を所有者に合わせてガクガク前後させ、とろとろと潤滑液を漏れ出させた。 「はぁ……はぁ…………いきなり殺そうとしてきやがって……うっ……ぐ…………もうお前は俺の道具なんだからな…………ぅ…………」 「はい。私は陽介様に仕えるロボットとして生まれ変わりました。陽介様に仕えることができて、私はとても幸せです」 息を切らせて性欲に流されるままに強引に胸を揉みしだき、一方的に犯す気分に浸る陽介と、それをされるがままに全て受け入れ、女性器ユニットや胸部、そして全身から発信される信号を電子頭脳内で処理しつつ所有者が求める発言を演算して口にするアメリア。 見知らぬ静かな自然の中で、そんな奇妙な二人の性交がしばらく続く。 「ううっ……! うっ、は……ぁ……はぁ…………」 人間のそれを原料にした極上の膣ユニットから与えられる快感が突き刺さり、陽介は堪らず自らの精を撃ち込んだ。 生殖器に放たれた白濁液は、分泌された人工愛液と共に奥まで吸入され、精液の保管庫となった子宮ユニットへと溜め込まれる。 その一連の動作で発生する快楽信号に、アメリアは無表情のまま全身をガクガクと震わせた。 「ありがとうございます陽介様。陽介様の精液は私の子宮ユニットへと補充されました。これよりDNAの解析を行い、保存を」 「少し黙ってろ」 一度目の射精によって冷えた頭に、ずっと淡々とした喋りがやや癪に障ったのか、陽介はアメリアが所持していたナイフを取り、首から顎下へと通るように突き刺した。 相手が人間ならば戸惑うどころかそもそもやることすらない攻撃行為だが、目の前の女は自分に全てを捧げた機械人形であり、そもそも自分を殺そうとした盗賊。罪悪感も何もない。 ましてや、自分はずっとアンドロイドやサイボーグ達に惨めな目に合わされ続けてきた。 その溜まりに溜まった強い情念が、さらに強く武器を握らせる。 「行いまがっ!? あが……が……#3…………損傷ハッせい。システムチェック。とと、当機体へのダメージは軽微。発声機構二損傷アり。動作系統へノ障害発生。今すぐに異物ヲ除去しテください」 首元にナイフが突き刺さっても、血の一滴すら流れない全裸の女性。 がくん、がくんと全身を震わせながら淡々と、リップシンクの切れた動かない口からシステムメッセージを発する。 刺さった場所が悪かったのか、アメリアが首を動かそうとすると、金属同士が圧力によって圧し折り曲げられているような鈍い金属音と摩擦音が鳴り響き、頭部ががくがくと揺れ動き震える。 「しばらくこのままにしてろ。でもまだ俺はヤリたりねえからな。俺の気が済むまでオナホになりやがれ」 「かしこままマママりました、陽介様」 ぎぎ……ぎぎ……と、おおよそ人体からはなりえない冷たい音と、壊れかけの音声を鳴らしながら、陽介は再び損傷した機械人形の膣へと挿入して二回戦へと入った。 破損による影響なのか、彼女の女性器ユニットから溢れる人工愛液は、先程よりも増えているようにも見えた。 「陽介様、とてモ気持ちいい、きもちいいでス。もっとしてしてしてください。私はもっと陽介さままマママの精液を」 「もう少し黙ってろって言っただろうが!」 「#&37#……あが……ガ……申し訳ありませませセセン、陽介様」 突き刺した刃を捻り、内部機構を傷つけて誤作動を起こさせる陽介。 その度にアメリアの全身が震える様がどこか面白く癖になり、二回目からは彼の右手は、彼女の肩ではなくナイフの柄を握るようになった。 腰を打ち付けて揺れる度にアメリアが激しくビクンと損傷によって痙攣し、膣の締りがよくなっていく。 先程まで自分を殺そうとしていた相手がここまで倒錯的なセクサロイドへと変貌するとは。 本来は自分に注入するはずだったナノマシンだが、それが悪意を持った粗悪品だということもわかり、陽介は強運によって一時的な肉欲と幸福を手に入れた。 「陽介様……ようスけささささまァ……ぁ……」 身包みを剥がしに来たことなどとうに忘れて、自身の全てを主人の為に捧げるようになったアメリアは、作り変えられた全身の肉と、首元の損傷部位から発せられる快感に染まり、陽介がこの日飽きるまでずっとその魅力に満ち溢れた身体を揺らし続けた。 * * * 土と落ち葉、雑草連なる地面だということ忘れ、溜まりに溜まった精を解放して果てた陽介は、仰向けの状態で地面に転がっていた。 その一方、ナイフが抜かれたアメリアは、皮膚が破れ中身を晒している首元を気にすることなく、放置された周辺の物品を整理していた。 今彼女の下腹部では、愛液と混ざりあったザーメンがこぽこぽと妊娠しない子宮の中でうねっている。 「何がなんだか結局わかんねえけど、ようやく気が晴れた……さて、これからどうすっかな……おいアメリア、ここがどこだか知ってるか」 アメリアが損傷した首をかくかくと錆びたような動作で動かし、陽介の方を向く。 「はい。ここはリュミノイル王国領の街、カイネオの外れにある森林地帯です」 「…………?? リュミノイル……王国? カイネオ……??」 時代が進む度に国名は町名は大きな出来事によって移り変わる。 だとしても、そんな場所の名前は陽介の記憶には一片たりとも存在していなかった。 少しずつ少しずつ塞がっていく首元の傷を見ながらも、陽介は次々と浮かび上がる疑問をぶつけていった。 「ちょっと待てよ。アンドロイドやロボットや、機械化した人々は?」 「アンドロイドやロボットという単語は、ナノマシン内のプリセット辞典に存在していますが、当機体の記憶データには存在しません。類似語としてアイアンゴーレムという種族が確認できます」 「アイアンゴーレム……それじゃあ、日本は? 中国は? アメリカは? イギリスは? ロシアは? お前……アメリアの記憶には無いのか?」 「ただいま提示された国名は、当機体の記憶には存在しません。並びに、プリセットのマップと、記憶データ内に存在する地図情報も一致しません。ただちにアップデートを行ってください」 陽介は開いた口が塞がらなかった。 ほんの少しだけ湧いた疑問と、そこから導き出された可能性。あり得ない情報と現象。 そもそも自分は、とてつもなく高いビルの上から落ちたはずである。まず肉片になっていただろう。 それなのに、いきなりこんな場所で倒れていた。何もかも辻褄が合わない。 だが、ここまでの他者からもたらされた新しい情報が提示されれば、いやでもそれを確信するしかなかった。 「まさか俺…………知らない世界へ来ちまったのか……?」 常識を超越した現象を受けて呆然としている陽介の姿を、アメリアはきゅいい……と首元から小さな駆動音を鳴らしながら、瞳の奥のレンズでじっと見つめ続けていた。
Comments
異世界に存在しない未知の技術が襲ってくる…
土装番
2019-06-14 12:17:20 +0000 UTC「異世界からの機械魔神: Ex-machina」
R.G
2019-06-13 01:37:48 +0000 UTC