前回までの流れはこちらからどうぞ。
どんな服にしようか――。
太郎はめっちゃ考えていました。
変装して殿様を暗殺するという話だったハズ…しかし、健ちゃんは普通に色っぽい花魁風の衣装に身を包み、皆の視線を釘づけにしています。
これはもはや仮装大会の様相を呈しています。しかし、話自体はものすごく真面目な話であり、重い話なのです。きっと健ちゃんも、真面目に考えた結果なのでしょう。
(げんに、村の男たちは完全にワイワイしてるもんな…)
冷静に分析し、そしてそんな時に、呉服屋の扉が開きました。瞬間、太郎の心臓はどくんと飛び上がります。
ここで、様子を見よう。
あまり乗り気ではなかった猫ちゃんがどんな服を着て来るのかで、考えよう――。
そして出てきた猫ちゃんは――。
キラッキラの、何か変な鎧みたいなやつに身を包んでいました。
「にゃあああ…ボク、これが良いニャ。着てると落ち着くニャー」
「どうした猫ちゃん!!! お前は…お前はそんなんじゃなかっただろうに!!!」
太郎は心から叫び、そして泣きそうになります。あぁ、これで唯一の逃げである出オチさえも禁じられました。
これより大きなオチ、そうそう思いつきません。いや、オチというか、何かこれ…何か変なのです。
鎧にしては肌が見えすぎているし、いたるところに宝石ついてるし、周りに虫みたいな感じで四つくらい何か飛び回っているのです。
が、それを見た健ちゃんは目を丸くして、興奮したような声で言いました。
「そ…それはウチの呉服屋の奥底にしまい込んでいた、『某呪いで有名なあの国で発掘されしネコパワーを授けてもらえると噂の呪いの鎧』…! まさか着こなすものが現れるとは…!」
なんだって?
「にゃー…よくわかんニャいけど、コレすごいニャ…気持ちいいニャ…勝てる、ニャ…」
何だかよくわからないことを口走り始めた猫ちゃんが、ちょっとだけ心配です。
でも、爪とか武器もついてるし、これなら普通に戦っても強そうです。戦力として期待が持てます。
「…それで?」
ふいに、他愛のない一言がきました。
「太郎は、どうするの?」
もちろん、嫌味とかではありません。ただ聞いただけなのです。
が、太郎の心は押しつぶされそうでした。もう、どうしていいかわかりませんでした。
もはやコレ、普通に女装しただけじゃダメな気がしてきました。どうしよう、どうしよう…。
太郎は頭を抱え、その場にうずくまってしまいました。慌てて、健ちゃんが駆け寄ります。
「た、太郎? どうしたの? 大丈夫? …もしかして、急に怖くなっちゃったのかな?」
ハイ怖いです、この仮装大会が…とは言えず、黙り込む太郎。
しばらくの後、健ちゃんが続けます。
「良いのよ、太郎…無理しないで。気持ちだけ一緒に連れて行ってあげる。今辞めても、誰も太郎の事責めないと思うよ?」
とっても優しい、諭すような声でした。
目を見開き、振り向く太郎。そして、何かを言おうと口を開いたその時――。
「そぉぉぉぉぉおおおうさ、やめちまえぇぇぇぇぇえええええ! 荷物を降ろせば楽になる、何も考えずに、何も背負わずに生きていこうじゃないか息子よ!!! なぁっはははははははははっはぁ!!!!!!!!!」
「親父…」
殴り飛ばしてやりたい、親父の言葉。
聞くたびに悲しくなる、親父の言葉。
しかし、太郎はこの言葉で救われました。
「そうだ…何も背負う必要なんかないんだ。敵を討とうと思って、その為に俺は変装する。これで、いいんだ…」
無言のまま立ち上がり、スタスタと呉服屋の方へ歩き始める太郎。
「あ…太郎? 本当に、大丈夫? 無理してない?」
太郎の背に掛けられた問いに、太郎は背で返しました。
「ありがとう、健ちゃん…大丈夫、行って来るよ」
パタン、と閉められた扉。きっと、服を選んで出てくることでしょう。
「…太郎…。何があっても、この健吾朗お兄ちゃんが守ってあげるからね…!」
静かに誓い、そして今度は猫ちゃんの方を振り向きます。
「猫ちゃん。あなたも、何かあったらこの健吾朗お兄さんが――」
猫ちゃんは、本当の猫のように丸まって寝てました。
「にゃー…すぴー…」
「…この鎧、もしかして、本当に生態まで猫になっちゃうの…?」
一抹の不安が、出てきました。
続く(笑)
しょっち@気ままにやってきます
2022-04-16 14:11:48 +0000 UTC藤原妹紅
2022-04-16 14:06:39 +0000 UTC