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絵の依頼を受けるということ

以前僕は「絵を描くということ」という記事をこちらに書かせていただいたことがあります。

僕は今大変ありがたいことにイラストの依頼をもらってそのお金で生活をさせていただいています。


その上で今年、僕の中で絵の依頼というものに対して気持ちや考えがずいぶん変わりましたので、

その事をここに書きたいと思います。


僕は今絵の依頼においても「自分が描きたいと思うもの」をとても大事にしています。

それが描きたいものでなくなったら、意味のないものであるとすら考えています。


このような事を言うと無責任だとか、わがままだとか横暴だとか思う方もいらっしゃるでしょう。

不真面目だと考える方もいらっしゃるかもしれません。


実際僕は今までそのように考えていて、相手の要求を優先して、依頼物を完成させていました。

最初に依頼されていたものと全く違うものに変わってしまったということもしばしばありました。


そしてそうやって出来上がったキャラクターは、たぶんそれを依頼した人にも、他の誰にも、大切にされることなく、いつの間にかすっと消えていくのを、僕はただ何もできず黙って、じっと耐えて一人でただ悲しむだけでした。


そこに残ったものは、もう誰に思い出される事もなく、何かに使われることもなく、ただ忘れ去られていくだけの、虚しい時間だけでした。

僕はただ、とても頑張ってどうにか形にしようと必死でもがいた記憶があるのですが、それを誰に共有できるわけでもなく、わかってもらえるわけもなく、何かに繋がるわけでもなく、それがただただ悲しかったなと思います。


それでもきっと、続けていれば、大きな仕事に繋がれば、それを知ってくれた誰かが、そしてその実績が自分にとって良いものになるだろうと、そう思っていました。


でもそれは間違っていました。


振り返ってみれば、今僕がこうして仕事を続けられて、絵を描き続けていられるのはどんな作品のおかげか、

それは依頼した方に作りたいものがあり、僕に描いてもらいたいイラストがあり、その物作りを一緒にさせていただいた作品だったんです。


僕はこのイラストレーターという仕事を始めた頃、それまでやったことのない依頼をいただくことがありました。

「しっかり者の妹」という作品です。

僕はその当時、そういった作品に触れたことがなく、単純に面白いなと思ってその依頼をお受けしました。

しっかり者の妹という作品は、音声サークル(という呼び方が適切なのかどうか、恐れ多いのですが…)である、妄想研究所様が恐らく個人で作っておられるものなのですが、

僕がとても驚いたのは、この作品には並々ならぬ熱意とこだわりがあり、

「このキャラクターはこういうものである」という明確なイメージがあったのです。

この子はこういう性格だから、こういう表情はしない、こういう服は着ないから、こういう服を着る…といった、

明確なビジョンが存在していたのです。


僕は今でもその時の事をとても印象深く覚えています。

何度も何度もやり直しをしたこともありましたし、大変だったこともありましたが、

僕はその結果として、すごくいいものができた、と確信していました。

そして何より、僕が描いたものをとても大切にしてくださいました。

「このラフの時のこの目の表情がとてもよかったから、この感じを再現してもらいたい」

と、線画を提出した時に言われた事があります。

実際、顔の修正というのは本来とても敏感なものなのですが、普通のリテイクと明確に何が違うのか、

それはこのリテイクというのはそもそもの原点である僕のラフから感じたもの、というのをとても大事にしてくださっていることです。


だから僕はその思いを信じて、依頼をこなすことができました。

そうやって出来上がった「しっかり者の妹」が原点となり、その後もご依頼をいただいた音声作品がたくさんたくさんありまして、皆さんに触れられて愛していただいたおかげで、

今年はたくさん音声作品を受けさせていただきました。

同じようにキャラクターにこだわりを持っている、この子はこういうキャラクターであるというイメージを持っている方がやはりたくさんいらっしゃいました。


僕が絵の依頼を受ける上で、描きたいものというのは、

依頼された方が一番いいと思えるイラストなんです。

たぶん本来はその方が作れればいいと思っているけれど、

代わりに描かせていただく、お手伝いさせていただくという思いで描くイラストです。


だからもし、それがなかったらそれはたぶん僕の描きたいイラストではない、ということです。

ただもちろんそこまで明確なイメージを持つことというのはとてもむずかしいことであると承知しています。

でも僕はもしこれから絵を描いていく、依頼を受けるのであればなるべくはお互いが作りたい物、

僕に作ってもらいたいもの、相手が作りたいもの、僕が描きたいものというのを大事にしたいなと今はそういう思いです。


「しっかり者の妹」はたぶん僕にとってはとても大切な作品であり、

キャラクターを作るという意味を教えてくれた作品であり、

これからも大切な作品であり続ける作品であると信じています。


そして僕はこれから、自分にとって描きたいものとは何かということを信じてこれから描いていきたいと思っているので、

それをここに残しておきたいと思います。


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