『藤子不二雄』の総合ファンクラブであるネオ・ユートピアさんが、藤子不二雄A先生の追悼号を制作するとのことで、ちょっとしたご縁があってお声がけいただきました。藤子A先生(安孫子先生)について、1ページ、何でも描いてもらえれば、とのこと。さて、何を描いたものか……。
不朽の名作『まんが道』はもちろん何度も読み返したし。『忍者ハットリくん』も好きだったな〜、子供の頃に読んで、面白い!というより「怖い!」という感情の方が強かった。某漫画家さんのアシスタントに行ったとき、隣の席の人が元藤子プロ(A先生)の方で、藤子A先生の面白エピソード聞いたりもしたし……。ただ、せっかく1ページ描くならば、自分にしか描けない内容を描いた方がいいのでは?
実は、一度だけ藤子A先生を生で見ることができた機会があったんですよ。
友人の漫画家・室井大資が『レイリ』という作品で、第3回さいとう・たかを賞を受賞しました。その際にノコノコ着いてったので、授賞式と、その後のさいとう・たかをプロの新年パーティーに参加させていただくことができました。2020年の1月なので、本当にコロナの直前で、そういう意味でも非常に貴重な機会でした。
さいとう・たかを賞のトロフィー。
ゴルゴ13のような、合作(分業)作品を評価する賞なので、トロフィーも原作者・作画担当者・編集者の3人分あります。クリスタルのゴルゴの中に例の骸骨が刻まれているという、かっこいいデザイン。
さて、その授賞式の後に行われたさいとう・たかをプロの新年会で、さいとう先生の隣に立ち、開会のスピーチをしていたのが藤子A先生だったんですよね。その様子がたいそう面白かったのを覚えていたので、その話を描くことにしました。前述した通り本当にコロナの直前だったので、藤子A先生とさいとう先生が並んで壇上にいらした、最後の機会だったんじゃないでしょうか。あらためて、貴重なものを目撃させていただいたと思います。
ここからは作画のメイキング。まず、ネームのラフを描きます。この時点では特にキャラクターのデザインなどを決めずに、コマ割りとセリフの配分を考えます。1ページにどこまでエピソードを詰め込めるか苦心しました。
何とか入りそうではある。
次に、スケッチを何点か。実在の人物が出てくる話なので、とにかく似てなければ話にならない。
丁寧に描いて似せる、というよりは、スピーディーに「自分の中で印象を掴む」のが目的です。
他の登場人物もスケッチしたり、
『まんが道』本編や、そこから派生した絵柄の練習とかもしていきます。
『まんが道』本編から、激河大介もスケッチします。本編初期から登場し、出番自体は少ないものの、強烈なキャラクターと劇画への愛情で、満賀と才野に非常に刺激を与えた人物です。その関西弁のキャラクターから「モデルはさいとう・たかを氏では?」と言われていましたが、一方で藤子A先生とさいとう先生が出会ったのはお互いプロになった後だということや、続編の『愛…知りそめし頃に…』に激河大介とは別にさいとう・たかを先生本人が登場するとのことで、モデル説を否定する話も出てきています。
こちらの藤子不二雄研究家・稲垣高広氏のブログにて、藤子A先生を囲んで話した際に、激河大介とさいとう・たかをの関係についての話が記されています。また、単純な個人の読者としての私見なんですが、『劇画バカたち!』『劇画漂流』といった、さいとう先生と非常に近しかった人々が描いたさいとう・たかを像と、激河大介のキャラクターが、ものすごい一致するんですよね。なので、さいとう先生をイメージしたキャラクターだというのは、非常にしっくり来ます。
閑話休題。スケッチを色々したところで、ラフネームをブラッシュアップしていきます。
できるだけ『まんが道』本編っぽい絵柄で描きたいな〜と思ったんですが、やっぱり難しいですね。
ネームをベースに、さらに下描きをしていきます。
タイトルが『思い出』じゃなく『想い出』なのは、藤子F先生の『未来の想い出』をリスペクトしているから。他のエッセイ漫画のタイトルでも何度か使ってます。
主線をペン入れして、
ベタや仕上げの処理をしていきます。ここまでアナログ作業。トーンは、ちょっと失敗が怖いんでデジタルで仕上げることにします。
藤子A先生といえば、やっぱり『ンマ〜イ!』と、顔が真っ黒になる演出。今回の原稿にも盛り込めてよかった。
こちらの完成原稿は、『Neo Utopia63号「藤子不二雄A先生追悼号」』に収録されています。8月13日のコミックマーケット100が初出になるそうです。
たぶん、コミケ以外にも委託・通販などもあると思うので、わかり次第Twitter等で告知させていただきます。よろしくお願いします。
最後におまけ絵をちょろっと。次はなんかイラストで更新できると良いなと思っています。では、また次回で。