さて、ティッツィ・モルガネのアクリルフィギュア原画、メイキングの後編である。
前編ではラフから下描きまでを解説した。上の画像のいちばん右が、そうして完成した下描きである。今回は、そこからペン入れと彩色について解説していきたいと思う。
とか言いつつ早々、胸のあたりまでペン入れを進めたのだが、どうもイマイチになってしまった。実は、前回の下描きから今回のペン入れまで、およそ半年ほど間が空いている。
もともとこのアクリルフィギュアは、今年のゴールデンウィークに開催されるコミケ用に制作を進めていたもので、スケジュールからして4月頭に入稿する予定だった。ところがご存知の通り、今年のコミケは2回とも中止が決定し、発表するイベントが無くなってしまったのだ。そのうちどこかのタイミングで仕上げて、通販のみでも販売しようかと思っていたが、他の仕事で忙しく手をつけられないまま、ズルズルときてしまった。ああ、どうしようか──というタイミングで、11月23日のコミティア134の開催が決定したので、これ幸いとイベントに合わせて完成できるよう、作業を再開したというわけである。
とはいえ半年ぶりに続きを描くので、ちょっと色気を出して、前髪の具合とかを下描きからアレンジしてペン入れしたところ、これがどうも前より悪くなってしまった。半年前とはいえ、あの時はあの時で、自分はきちんと完成した仕事をしていたのだな、とあらためて納得した次第である。変な色気は出さず、あの時の自分を信じて、そのまま忠実にペン入れをしよう。というわけで前回同様、やり直すときは潔く。すっぱりと最初からペン入れをやり直すことにする。
ペン入れは、下描きをまた薄い水色でコピーし、その上からシャープペンシルでなぞる形で入れていく。主線は0.7mmのカラー芯(紫)、それ以外は0.2mmや0.3mmの黒芯で描く(こんな変な色使いでいいのかと思うかもしれないが、これについては後述する)。特にレースの模様や、髪の細かい描き込みは0.2mm、0.3mmの出番だ。
前述した通り、下描きがしっかりしていることは確認できたので、余計なことはせずに忠実にペン入れを進めていく。難所は、実は足元の植物。花をはじめ、植物を描くのはとても苦手である。しかし、「蝋燭姫」を描いたときに取材でバラ園を訪れており、その時に撮った大量の植物写真の資料を参考にすることで、毎回なんとかなっている。今回もその資料の中から良さげなのをプリントアウトし、横目に見ながらチマチマと植物を描いた。
また、両面印刷のアクリルフィギュアというグッズの特性上、どうしても表面と裏面とで外側の輪郭線を完全に一致させる必要がある──のだが、これがアナログ線画での作業では非常に難しい。デジタルならばコピー&ペースト&反転で一瞬だが、アナログではそうもいかない。トレスして丁寧になぞったり、あるいは機械でコピーをしても、微妙なズレや傾きが出てしまい、完全に一致させることができない。これをどう解決するかプランを練りつつ、線画の段階では、表面のペン入れが終わったあとに一旦スキャンして、外側の輪郭線のみのデータを作り反転したものをプリントアウトし、その輪郭線の上に裏面のペン入れをしていくというやり方をした。裏面の輪郭線が茶色いのは、一旦スキャンして色調整した表面の輪郭線を使っているからである。
この線画をスキャンして、デジタルで色補正すると、このようになる。
薄い水色の下描き線を飛ばし、紫と黒とが混在していたシャーペンの線を一色(セピア)にする。股間のファー付きGストリングスのみ、ピンクの線にした。これをもとに彩色していくわけなのだが、いきなりデジタルで塗らずに、ふたたび紙に出力して、まずはアナログで作業をする。アナログである程度下塗りをしたほうが、デジタルでの作業が楽になるからだ。出力は自宅のプリンタではなく、TIFFデータをUSBメモリに入れて、歩いて5分のセブンイレブンのマルチコピー機でプリントアウトする。自宅のプリンタよりも遥かに綺麗に印刷されるし、作業の合間のちょっとした気分転換にもなる。セブンカフェのホットコーヒーとか買っちゃったりして。ただし、プリントした絵を絶対に見られないように、細心の注意を払わなければならない。
プリントアウトした線画に、色鉛筆で下塗りをする。使用するのはいつもの原稿と同じ、三菱のアーテレーズというブランドのもので、色のラインナップが独特で綺麗なのに加えて、消しゴムでも消せる優れものだ。
帽子の内側、オペラグローブ、金髪、ストッキングのストライプ、足元の草などを塗っておく。できるだけムラが出ないようにと丁寧に塗ると、ほんの少しだけムラがでて、いい感じに情報量が増える。髪の毛は色鉛筆で濃淡をコントロールすると、デジタルよりも素早く質感を描けるので、この時点でほとんど描き込んでしまう。
また、別の紙にコピックで、ざっくりと肌の塗りをしたものも用意しておく。
デジタルではPHOTOSHOP ELEMENTS 8(化石のようなソフト)と、非常に小さい板タブを使って作業していくのだが、ブラシでの塗りがあまり得意ではないので、コピックのデータをレイヤー化して重ねることで下塗りのベースにしている。肌のデータは他のパーツと違いかなりいじくるので、応用が効くようわざわざ別の紙で作っているというわけだ。……逆に面倒臭くないか、それ。
さて、ようやくアナログでの作業も終わり、デジタルでの塗り作業に入っていく。といってもデジタル特有の、何か特別な技術があるわけでもないので、パーツごとにレイヤーを作って、単純にブラシで塗っていくだけである。
ざっくりと下塗りが終わった段階。あとは細かい部分をアップにも耐えられるよう、細かくチマチマチマチマと仕上げていくだけ。
帽子の裏地の模様とか、ネックレスをキラキラさせたりとか。
尻とか髪とか、ストッキングのレース部分とか。
乳輪とか。マジでこれが一番難しかった。最近の自分の好みとして、乳輪自体は突出しておらず(いわゆるパフィーニップルではない状態)、サイズは大きく、色は薄く、境目にブツブツがあるタイプの乳輪が好きなのだけれど、描くのが非常に難しい。毎回、そろそろ乳輪用のブラシを自作しないとな…と思いながら、今回も試行錯誤しつつ、なんとか手作業で描いた。絵全体のトータルのレイヤーは100枚くらいだが、その半分が肌の部分で、さらにその半分くらいが乳輪じゃないだろうか。
と、いうわけで完成。なかなか自分でも、頑張った内容だと思う。かなり、下描きのラフで固めたイメージに、近いものが出来上がったのではないだろうか。とはいえあくまで「アクリルフィギュア」というグッズ用の原画なので、これが実際に印刷されて、グッズとして手元に置いてみてどう見えるかというのは、また別の話。業者さんに発注する際に色校正プランをつけてもらって、念入りに印刷具合をチェックしていく。
1回目の色校正で送られてきたのが、この3パターンのサンプル。一見、真ん中や右側のものが明るく良さそうに見えるが、これらは彩度を高くした結果、肌全体が黄色っぽくなってしまい、肌の奥に塗り込めたピンク色がなくなってしまっている。ので、一番左側をベースに調整したデータを送り、2回目の色校正を制作してもらう。さらにそこから調整をして、3回目。なんとか、いい感じの印刷にこぎつけることができた。
缶ビール(ノンアル)と並んでいるのが、3回目の色校正サンプル。でかい。もちろんサンプルなので、実物は絵柄に沿った黒線でアクリルが切り抜かれた状態になる。これにもう少しだけ修正を加えて入稿し、現在イベント(11月23日のコミティア134)に向けて本製作を開始してもらっている状態。できれば現物を見て購入を検討してほしいので、コミティア以後もちょくちょくイベントに参加する予定ではいるが(直近だと12月5日の第1回TAMAコミ)、BOOTHの通販のほうでも取り扱う予定。よろしくです。
それでは、また。