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弓道部のアイドル系美少女と僕と韓国人21

ガチャリ 扉を開けると、そこにはまたしても高そうな抽象画が飾ってあった。奈緒の身長の半分くらいはある。ホテルの部屋にも玄関というものがあるのだと奈緒はそこで初めて知った。 「すみませーん、お邪魔しま〜す」 中の様子を伺うように声を掛けてゆっくり進んでいくと、「こっちの部屋」とジュンインが呼ぶ声が聞こえた。 ジュンインの声がする部屋のドアをノックした。「こんにちは、奈緒です」ほどなくしてジュンインから応答が入った。「どうぞ」奈緒はドアを開けた。 そこはホテルの一室というにはあまりにも広かった。まず、奈緒の目に飛び込んできたのは、部屋の中央にあるグランドピアノだ。音楽室でしか見たことのないような大きなピアノが真ん中にどんと鎮座している。グランドピアノが置かれていても窮屈さを感じないのは部屋全体の広さのせいだ。おそらく、この部屋は奈緒の部屋の10倍くらいはあるように思われた。 「ジュンインさん?」 声の出どころを確かめようとして、奈緒が部屋の奥へと進んでいくと、ジュンインはグランドピアノの向こう側、テーブルやソファやテレビが置かれたリビングスペースにいた。ゆったりと腰をソファにおろし、何やらスマホでも見ているようだ。目線が下を向いている。 奈緒はジュンインの背中越しに声を掛ける。「あの〜、ジュンインさん、奈緒です」するとジュンインは顔だけこちらを振り向いて、「よくきたね。嬉しいよ」と言った後、「ごめん、今ちょっと手が離せないから飲み物用意してあげられないけど自分でできるかな?向こうにキッチンがあって、戸棚に紅茶やコーヒーが入ってる。ポットも自由に使って良いよ。冷たいものが飲みたかったら冷蔵庫の中のものはなんでも」と言った。 ジュンインの用意周到さは卓越していた。飲み物のありかを伝えるだけのこんな簡単な一つの会話の中にも、奈緒は普段の生活で感じられない洗練された気遣いを感じた。日本人の女子が韓国人男子にハマる理由の一つにエスコート力があるが、まさに奈緒はジュンインの細々した所作から韓国人男子のさりげない気遣いを感じ取っていたのである。 「ありがとうございます」 そう言うと、奈緒はジュンインに背を向けてキッチンの方へと向かった。キッチンのテーブルの上には、メロンやライチやバナナなどが盛られたカゴがあった。喉が乾いていたので奈緒は冷たいものが飲みたかった。冷蔵庫を開けてハングル文字が書かれたお茶をもらう。日本のお茶より少し甘みがあると思ったが、よく冷えていておいしかった。 コップを洗おうとしたとき、奈緒はシンクにコップが3つあることに気づいた。一つはジュンイン、一つはカオリだとすればあとの一つは一体誰のものだろうと奈緒は思った。ほのかに口紅の色が付いているコップが二つあるから、カオリの他にもう一人いたのはおそらく女性だろう。 「奈緒!」 そのとき、ソファの方からジュンインの呼ぶ声が聞こえた。「終わったよ、こっちきて!」奈緒はまるでやんちゃな男の子を世話するお母さんのようにジュンインの元へと向かった。ジュンインにこんな風に呼ばれていくというのは悪い気はしなかった。新婚の夫婦になったような気もした。奈緒は春人と両思いの仲になってからは、今流行りの韓日カップルのようにお互い甘え合うような関係が築ければ良いと思ったが、本物の韓国人であるジュンインも甘えることに関しては上手そうだった。 「ほら、見て!ハイスコア!」 ジュンインはスマホの画面を嬉しそうに奈緒の方に向けて指し示している。こういうところを見ると、やはりジュンインも自分と同じ17歳なのだと思う。世界をまたに掛けて活躍する大スターが、自分にだけ素顔を見せてくれるようで、奈緒は少しだけ誇らしい気持ちになった。 「ハイスコア!すごいです、ジュンインさん。いつもこのゲームやってるんですか?」 奈緒はゲームについて詳しくないが、ジュンインに話を合わせた。 「暇な時は大体これやってるかな。女に奉仕させてる時とかも」 「え?」 思わず奈緒は聞き返す。「女に奉仕させてる時?」ジュンインに対する黒い疑惑がもこもこと煙のようにまた盛り上がってくる。 「なんでもない。それより奈緒暑くない?上着脱いじゃいなよ」 ジュンインに言われて気づいたが、確かに少し暑かった。先程カオリに遊ばれたからかもしれないと奈緒は思った。あそこで無駄にくねくねと動いてスタミナを消耗してしまったのだ。 「このままで大丈夫ですよ。下キャミソールですし」 奈緒は夏用の薄いカーディガンを羽織っていたが、その下は黒のキャミソールだった。いくらなんでもジュンインの前でその姿になるわけにはいかない。 「良いよ、俺気にしないんで」 「いえ、大丈夫です」、「私が気にするんです」と言おうとした瞬間、ジュンインが氷のような目つきをしたのを奈緒は見た。 「何?暑くないの?」 ジュンインの質問は疑問文の形式がとられてはいたが、明らかに奈緒の回答に不満を持っていた。自分の言うことが聞けないのか。ゴタゴタ言わずに暑いなら上着を脱げば良いんだ、そんな迫力があった。奈緒はもとより、日本人の女子たちは男性からこうした強い圧力を持って話しかけられることはない。日本の男性は女性に遠慮してしまうのだ。だが、ジュンインは奈緒に対する遠慮など一切なく、自分の望みを果たすためなら奈緒にも如何様にでも厳しい態度で臨んでやると思わせる迫力があった。後にして思えば、これこそ奈緒や日本人女子が渇望していた「男らしさ」なのかもしれない。 「あ、いえ、脱ぎます」 自分の意見よりもジュンインの意見を優先させる。論理的に考えておかしいとわかっていても、体がジュンインの命令に従っていくのだ。心よりも一足先に体が、奈緒が忠誠を尽くすべきなのは誰なのか理解していた。 「奈緒って意外におっぱいでかいな。何カップ?」 学校の男子生徒なら絶対にしてこないような無神経な質問もジュンインは図々しくしてくる。自分が拒絶されることなどまったく想像もしていない。そして、悔しいことに奈緒は自分が軽く扱われていることを理解しながら、ジュンインからの質問を無視することができないのだ。口が、舌が、奈緒の心に反して勝手に動いてしまう。「Dです」 「Dか。今17だよな。ってことはまだ大きくなるな。揉みごたえありそうだね」 ジュンインがくっくと嬉しそうに笑う。よかった、下品な会話であっても、ジュンインの機嫌がよくなったと奈緒は思った。 「ほら、奈緒、こっち来いよ。一緒にテレビでも見ようぜ」 テレビには日本の男性アイドルがバラエティ番組で体を張った仕事をさせられている。服の中に風船を仕込んでだんだん膨らませていき、破裂した瞬間にのたうち回ってリアクションを取る。KPOPアイドルなら絶対にしないような仕事だ。綺麗な顔がリアクション時の変顔で台無しになっている。 「日本のアイドルってレベル低いよな」 ジュンインが言った。「顔も体も歌もダンスも全部KPOPにボロ負け。で、結局生き残る場所はバラエティ番組かあ。俺らがバラエティ番組にも進出したらどうなっちゃうんだろうね?ゲイのおっさん相手に体売るくらいしかないんじゃない?」 ジュンインはそう言ってまたくっくと笑う。奈緒は、日本のアイドルが好きだったことは別にないが、ジュンインにそう言われると日本人として反論したい心も出てくる。 「でも日本のアイドルも可愛い顔しててまだまだ人気ですよ。かわいさならKPOPアイドルにも負けてないと思いますけどね!」 そんな奈緒の精一杯の反論も、ジュンインはたった二言で粉砕した。 「それなら奈緒は何で俺たちが好きになったの?日本人よりも韓国人の方が好きだからでしょ?」 奈緒がぐうの音も出ずに黙っていると、「まあいいからこっち来いよ」とジュンインは再び自分が座っている横をぽんぽんと叩いた。奈緒と並んで座りたいらしい。 「今日、夜に塾があるので、あんまり長くはいられないと思います」 奈緒がそう言うと、ジュンインは「大丈夫大丈夫」とテレビを見ながら言った。その後、「そういえば」と思い出したように「身体チェックの結果は?」と聞いた。 「あ、えーっとAです。安心してください。私全然問題ないですから!」 奈緒は胸を張っていった。 「そうか、そりゃ問題ないな」 ジュンインはもう一度後ろを振り向き、奈緒の顔と胸、そして股間のあたりと足をじっくり眺めて笑った。


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