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弓道部のアイドル系美少女と僕と韓国人16

「あっ、ごめんなさい、その……」 楽屋のドアを開けた瞬間目に飛び込んできた光景に驚いた奈緒は、一瞬固まった後、ドアを閉めようとした。 「いいよ。入ってきなよ」 ジュンインはまるでビーチで日光浴をしている人のように、突然入ってきた奈緒にも、その驚いた声にもまったく動じなかった。 「でも……」 ジュンインは楽屋のパイプ椅子に腰掛けて靴下を脱いでいるところだった。すでに靴下以外のほとんどの衣装はジュンインの肌を離れて横の机に無造作に置かれている。つまるところ、ジュンインはパンツ一丁だった。 「普通だよ。このくらい。ライブ後だしね。カオリに連れられてきたんでしょ?カオリ、ベッドの上だけじゃなくても仕事ができるんだな」 奈緒はジュンインの言ったことの後半の部分は意味がよくわからなかったが、前半の部分に関しては、そういえば部活で上半身裸になっている男子たちを見たこともあった。スポーツの後、服を脱いで汗を乾かしているだけと考えれば普通のことなのかもしれない。 「おじゃまします」 奈緒はそろりと楽屋に足を踏み入れた。そこは、世界的スーパースターの楽屋というにはあまりにも質素だった。折り畳み式の長机の上には電気ポットと紙コップと様々なペットボトルが置かれている。その横に、ライブで使ったジュンインの衣装が脱ぎたてで置いてある。一応皮張りの2人掛けソファも置いてあるが、ジュンインはそちらには座らずにパイプ椅子に座っていたのだった。 ライブ終わりのジュンインの楽屋。この部屋に入れるプラチナチケットは、きっと100万円あっても買えないだろう。奈緒は世界中のファンに抜け駆けしているような気になった。 「あれ、もう一人いたんだ」 奈緒の後ろから、亜里沙が、こちらも恐る恐る入ってきた。信じられないといった顔でジュンインを見つめている。日頃夢見て憧れ続けた存在。自慰の材料にもするほど性的に魅力を感じている存在でもある。実在するかどうかすら疑われたスーパースターがこうして自分の存在を認めて話しかけてきたのだから。 「あ、はい。あの、カオリさんが良いって」 亜里沙は咄嗟に弁解めいたことを言ってしまう。 「はは。咎めてるわけじゃないんだよ。なにしろ、カオリの話だと今日は1人だけの予定って聞いてたからね」 「いつもファンの人を楽屋に招待してくれるんですか」 ようやく質問ができる程度には平常心を取り戻しつつあった奈緒がそう聞いた。 「カオリが帯同してくれるときは大体そうだね。あ、カオリは俺の身の回りのお世話なんかをしてくれるマネージャー兼家政婦さん的な役割なんだけど。ほら、俺って自分で言うのもなんだけどちょっとだけ人気者じゃん?普通の女の子に会うのも結構苦労するんだよね。だからカオリがライブ終わりにこうして連れてきてくれる」 「そうだったんですね」 奈緒と亜里沙はカオリのお眼鏡にかなった喜びを深く噛み締めた。あの時カオリが話しかけてくれなければ、今頃奈緒と亜里沙は、あのうだつのあがらない二人とドトールにいたのだ。天国と地獄と言っては春人と佐々木に失礼だが、そのくらいの差はあるように思われた。 「でも日本では初めてだよな?カオリ」 「そうですね。ジュンインさん」 「今回はどうしてこの2人を選んだの?」 「それは、うーん、すごく純粋そうだったから?」 カオリは二人の前でなんと表現して良いかわからずに抽象的な答え方をした。本当のことを言うと、奈緒が本物の男を知り、性接待要員になる姿を見たかったからだ。「純粋って」と二人は恥ずかしそうに笑った。 カオリとジュンイン。そして奈緒と亜里沙。四人は、狭い楽屋の中で互いに次の言葉を探っていた。特に奈緒と亜里沙は、これからどうにかしてジュンインと話を盛り上げるために頭をフル回転させていた。数秒の沈黙でも、場を支配しているのは圧倒的に一番年少のジュンインだった。カオリは今年20、亜里沙は18、そして奈緒とジュンインが17だった。それでも、ジュンインから発せられる男性的威厳というものは、目に見えないオーラが体を包むように、奈緒と亜里沙を包んでいた。 「ジュンインさんの体、すごいですね」 亜里沙が沈黙を破った。カオリはやっぱりねと言わんばかりにほくそ笑んだ。この子はすでにジュンインに奉仕したいという気持ちを隠しきれていないのだ。 「そうかな?まあダンスやってるから余分な肉は無くなるよね」 ジュンインの肌は白かったが、近くで見ても筋肉による陰影がよくわかった。浅く掘られた彫刻のようでもある。韓国人は体毛が薄い人が多いというがその通りで、亜里沙の目に見える範囲、ジュンインの体には無駄な毛一本生えていなかった。もしかすると自分よりも体毛が薄いのではないかと亜里沙は思った。 汗で濡れた体をうちわでパタパタと仰いでいる。滴り落ちる汗の粒は、ジュンインの滑らかな額から鼻の横に流れ、それから顎まで到達してポトリと床に落ちた。床に落ちた汗粒の美しさにさえ、亜里沙は魅了された。 「ジュンインの体に夢中って感じじゃない?亜里沙ちゃん。すごいでしょ、周りにこんな男の子いる?」 「いないです。マジでヤバすぎる」 「そうでしょ。私も最初にジュンインの体を見た時驚いた。まだ子供みたいな顔してるのに、こんなにかっこいい体してる子がいるんだって」 「触ってもいいよ」 ジュンインが亜里沙に向けて言った。 「え、いいんですか?」 別に何ていうことはない。ただ、筋肉自慢の男の子の体に触って確かめるだけだ。柔道部の太った男子の腕にぶら下がったこともある。だが、ジュンインの体に触れることは、亜里沙にとってそうした学生同士の戯れとは別の意味合いを持つような気がしてならなかった。何かもっと、オスとメスの交わりのような……。 「遠慮しないで、ほら」 ジュンインがパイプ椅子から立ち上がって亜里沙の方に歩いてくる。奈緒の横を通り過ぎる時、奈緒はその清浄な汗の匂いを好ましく嗅いだ。汗ですら、ジュンインは何か神聖なものに変えてしまうのだ。 「つかまえた」 亜里沙の手首を両手でがっちりとホールドしたジュンインは、その手を自分の体の背中に回させた。亜里沙がジュンインに抱きつくような格好になった。 「え?」 後ろではカオリがニヤリと笑ったがジュンインの胸で視界が塞がれている亜里沙は当然それに気づかない。 「この距離ならよくわかるでしょ?俺の体が」 「あっ、あの……」 普段は勝ち気な亜里沙は、一つ年下のジュンインに完全に手のひらの上で転がされていた。こんな風に亜里沙を扱う男は今までいなかった。亜里沙の美貌におそれをなして遠巻きに眺めているか、それでなければわざと亜里沙に嫌われることをして興味を惹こうとしてくる小学生のような男子ばかりだった。 「大丈夫だよ。ゆっくり深呼吸して」 「はい……」 ジュンインにそう言われ、亜里沙は鼻から大きく息を吸った。100%純粋なジュンインの匂いが鼻を通って体を満たしていくような気がした。この頃になるとジュンインの汗は8割方引いていて、かすかに香水の匂いがした。 「いい匂い……」 亜里沙がそう言うと、ジュンインは亜里沙の顎を親指と人差し指で持ち上げ、自分の顔の方を向かせて言った。 「これが韓国人の匂いだ。覚えとけよ?」 ジュンインが「スイッチ」を入れたことに、カオリだけが気づいていた。恋焦がれ続けたイケメンに見つめられながらそう言われて亜里沙はまたも従順な返事をした。 「……はい」 この間、わずか30秒だった。すでに亜里沙を堕としたという確信を持ったジュンインは、奈緒の方を振り返り、両手を広げて見せて一言だけ言った。 「くるか?」


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