弓道部のアイドル系美少女と僕と韓国人15
Added 2021-07-20 12:53:57 +0000 UTC「え?」 奈緒は目を丸くしてカオリに聞き返した。今この女性が言った言葉を素直に受け取れなかったからだ。 「大丈夫よ、メンバーっていうか、ジュンインには許可取ってあるから、よかったら少し中でお茶でもしない?ジュンインも日本人のファンと交流したがってるし」 世界的スターCCIの一番人気メンバー・ジュンインの楽屋に行く。日本中の、いや、世界中の女子たちが喉から手を出して欲しがる極上の誘いが奈緒の前にぶら下がっていた。春人がいなければもちろんすぐさま首を縦に振っていただろう。隣を見ると、春人が怪訝そうな顔をしてカオリを見ている。無理もない。ライブ会場で言われなければ、詐欺を疑ってしまうような非現実的な提案なのだ。 カオリはそこでようやく奈緒の周りの人間に気づいた。 「あなたは、さっきジュンインが言ってた……」 カオリは春人の方を見て言った。確かにジュンインが言っていた通りの子だとカオリは思った。年はジュンインと同じくらいだろうか。それにしてはあまりに幼い。顔は子供のように肉付きがよく、その割に体型は華奢だ。身長も、160センチ代後半のカオリよりも少し高いくらいだった。こんな男を相手にしなければいけない日本人女子はつくづく運がない。やっぱり自分のしようとしていることは正解だと改めてカオリは思った。 「もしかして二人は付き合ってるわけじゃないよね?」 「なっ」 初対面の人間にするとは思えないカオリのずけずけした物言いに春人はめんくらった。奈緒との関係を、そんな風にストレートに問いただされたのは初めてだった。 「付き合ってませんよ」 春人が答える前に奈緒がそう答える。確かにそれは事実なのだけれど、すでにお互いの気持ちを信じている春人からすると、奈緒のその回答は少し冷たく感じた。 「あはは。そりゃそっか」 当たり前だとでも言わんばかりのカオリの発言にも春人は腹を立てる。今はそうかもしれないが、あと9ヶ月もして卒業の時期になったらきっと俺たちは付き合っているはずだと春人はそう思っていた。 「それで、どうする?悪いんだけど男の子たちはセキュリティの関係でバックヤードには入れないの。女の子二人だったら大丈夫なんだけど」 カオリは亜里沙の方をちらりと見る。この子はジュンインが言っていた情けない男の子の横にいる女の子とは違うとカオリは思った。すでに韓国化が始まっている子だ。自分が背中を押さなくてもあとは坂道を転げ落ちていくだけだ。だが、目の前の清純な女の子を完全に落とすためにはこの子が必要だとカオリは思った。 「えー」 奈緒と亜里沙は顔を見合わせた。本心ではもちろん行きたい。だが、それを阻むように二人の日本男児が無言の圧をかけてくるのだ。面と向かって行くなとは言わないが、春人と佐々木はただ黙っているだけで気持ちを察しろと言わんばかりの雰囲気を醸し出している。 結局、佐々木が男らしい寛大さを存分にアピールするためにこう言った。 「亜里沙、奈緒ちゃん行ってきなよ。俺たちは角のドトールで待ってるからさ。終わったらLINEちょうだい」 春人の非難めいた目つきを尻目に奈緒と亜里沙は手を合わせた。 「本当に?ありがとう、なんかごめんね。じゃあ後で連絡するから」 そう言うと二人はさっきまでの逡巡はどこへやら、るんるん気分でカオリとともにバックヤードへ向かっていった。二人の方を顧みることもしない。カオリと楽しそうに何かを話している。 「すごいよな、KPOPアイドルって。俺亜里沙と付き合っててあんな顔見たことないよ。目だけじゃなくて顔も輝くんだな、女って」 「お前、何で二人を行かせたんだよ。あのまま黙ってれば断れそうだったのに」 「それじゃ可哀想だろ?確かにお前は気に入らないかもしれないけど、今日くらいは二人を楽しませてやろうぜ。まさかジュンインが奈緒ちゃんを気に入って付き合うとか思ってないよな?」 「いや、さすがにそりゃないけどさ。ちょっと無防備すぎかなって。アイドルとは言え向こうも男なんだから、呼ばれたくらいでほいほいついてっちゃダメだろ」 「まあまあ、そう怒るなって。どうせちょっと話してお土産でももらって帰ってくるだろ。ドトールは奢ってやるからそれで許せ」 春人と佐々木はドトールに入ると、それぞれアイスコーヒーとアイスミルクティーを注文した。座席は隣との間がクッションの壁で仕切られたファミレスのような作りになっており、隣の席の人の姿は見えないものの何を話しているかだけはわかった。どうやら隣の女性二人組も、春人たちと同じくCCIのファンミーティングに参加していたようだ。 「でもさぁ、ジュンインにいじられてた男の子、ちょっとかわいそうだったね」 「あー、あの子ね。あれはいじられるでしょ。だってジュンインに質問されてるのに何にもまともに答えられないんだもん」 「実際自分があの状況になったらちゃんと答えられるかなあ。ジュンインがこっち見て私に何か喋りかけてる!って思っただけで気絶しちゃうかも」 「それは弱すぎ。どこから来たのかくらいはさすがに答えられるでしょ」 「まあそれくらいはね。でもそれ以上は何も言えないかも」 「それで十分でしょ。だってあの男の子は何も言えなかったんだから」 「あはは。確かにそうかもね。てかジュンインが言ってた通り日本の男って本当によわっちいよね」 「あれ、あの子意味理解してたのかな?韓国語理解してたらやばくない?」 「大丈夫でしょー。韓国語わからなそうだからジュンインも言ったんじゃない?」 「だよね。でもいくら少人数とは言えライブのMCであれが言えるのはすごいわー。ジュンイン様マジいたずらっ子。ああいうところも子宮にくるわ〜」 ——- 隣の席では、春人と佐々木がお通夜のような雰囲気で女子たちの会話を聞いていた。 ひそひそ声で二人は話す。 「春人、まあ気にするなよ。あそこにいる女なんてみんな盲目になってるんだからさ。どっちかって言うとあそこで喋らせたジュンインが悪いだろ」 「いや、いいんだよ。確かにあの時の俺はダサかったし。ジュンインもすごいと思ったよ。あれだけ見たら弱っちいって言われてもしょうがないかもしれない」 そう言いながらも、春人は腹の中のムカムカをどこにぶつければ良いかわかりかねた。思い出すのは小学生の時。自分が好きだった女の子が、自分をいじめていた男子に告白したことだ。その当時の春人は身長はクラスで一番低く、いじられる標的になりやすかった。その男子は、女子の前だろうが何だろうが気にせず春人の背の低さを揶揄ったり、プロレス技の実験台にしたりしてきた。春人が好きだった女の子は、その男子に春人がいじめられた後、春人の方に寄ってきて同情してくれていたから、春人はこの子とは両思いなのだと思っていたら、あっさりいじめっ子の男子に取られてしまった。その女の子が言っていた「男らしい人が好き」という発言は今でも忘れられない。 「ま、女なんてこんなもんだよ。もちろん亜里沙と奈緒ちゃんは違うけどな」 ——— 一方その頃、奈緒と亜里沙はずっと夢見てきたあの男の裸を目の当たりにしていた。
Comments
おお!とうとう・・・
カズミ
2021-07-20 14:17:00 +0000 UTC