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弓道部のアイドル系美少女と僕と韓国人③

日曜日、春人と佐々木は、春人の家に集合し、亜里沙の家に向かった。亜里沙の家はほんの5分ほど歩いたところにある。道中、佐々木は自分を誘ってくれたことのお礼を春人に繰り返し言った。 「月並みな言い方だけど、やっぱり持つべきものは友達だよな。まさかこんなに早くセッティングしてくれるとは思わなかったよ。お前なら水面下で着々と動いてくれてると思ってたけどさ」 実際はその逆で、春人は佐々木を誘うつもりはなかった。奈緒と遊べることの嬉しさという感じたことのない幸福感に一瞬心を掻き乱された結果、佐々木も誘うことになってしまった、というのが正しい。だが、この状況になってはそうも言っていられない。佐々木がいるこの状況を自分に有利に使えなければ次のチャンスは巡ってこないかもしれない。春人はそう思った。 できれば2:2の状況を作り出したい。佐々木が亜里沙に夢中になっている間(そして亜里沙が佐々木の相手に手一杯になっている間)、春人は奈緒と親睦を深めるための穏やかでゆっくりとした時間を過ごそうと思っていた。その時間のための知識もちゃんと入れてある。徹夜でCCIの情報をインターネットから仕入れられる限りは読み続け、即席CCIファンとなった今の春人は、CCIに関するどんな質問が来ても即座に答えられそうだった。 これは佐々木も同じである。「佐々木もKPOPにハマっている」と春人が亜里沙に言った以上、当然佐々木にもKPOPを勉強してきてもらわなければいけない。佐々木はこの日のためにAppleMusicに加入し、聞ける限りのCCIの曲とKPOPの人気曲を空で歌えるようになっていた。もちろん純日本人の佐々木に韓国語の意味はわからないが。 ピンポーン 亜里沙の家につき呼び鈴を鳴らすと、亜里沙はタンクトップにショートデニム姿で扉を開けた。無防備すぎるその姿に幼馴染の春人でさえ少しドギマギしてしまう。春人が佐々木の方をちらりと見ると、佐々木にとってはさらに刺激の強い格好だったと見え、顔を真っ赤にしてたちすくんでいた。 「どうしたの?入らないの?」 数秒ののちに亜里沙がそう言って佐々木はやっと我に帰ったくらいであった。 「まだ奈緒ちゃんはきてないの。ストリーミングは14時からだからまだ全然大丈夫なんだけどね」 亜里沙は自分の部屋の扉を閉めながら言った。 小学生ぶりに入った亜里沙の部屋。ポケモンシールが至る所に貼ってあった当時と違い、今は部屋のあちこちにKPOPのアイドルグループのポスターが貼られている。韓国語で何かを書いたルーズリーフのようなものも貼られている。どうやら亜里沙の韓国語学習は本気らしい。 「部屋が韓国一色じゃん」 小さな太極旗まで机の上に飾ってある光景を見ながら春人は言った。 「もうね、CCIにハマってからは日本人に一切興味持てなくなった。今はほぼ韓国だけで生きてる」 「随分変わったなあ。中学生の頃はジャニーズばっかり聴いてたのに。西川担とか言ってなかったっけ?」 「あー、西川くんね。西川くんも可愛いけど、今はジュンイン様のことしか考えられないの。ジュンイン様見てるだけで子宮がキュンキュンしちゃう」 「お前そんな奴だったか」 「KPOP沼は深いんだよ」 そう自信満々に言う亜里沙を見て佐々木も流石に引いているだろうと春人は思ったが、佐々木は、亜里沙の無邪気に好きなものを好きという性格も好きらしく、目を細めながら亜里沙の方を見ていた。 「そういえば佐々木くんもCCIが好きなんだよね?」 亜里沙が佐々木に聞いた。 「うん。俺はCCIだけじゃなくてKPOP全体が好きなんだけどね。韓国の文化ってすごいよな。料理も美味しいし、イケメンや美女が多いし。まあ俺はCCIが一番好きなんだけど。この点は亜里沙ちゃんと一緒かな」 具体的なことを何一つ述べずに佐々木の調子の良い発言が展開されていく。おそらく佐々木は韓国料理もキムチくらいしか食べたことがないだろうと春人は思った。 「じゃあ、奈緒ちゃんが来るまで過去のライブ映像見てよっか!」 「お、おう」 まったく気乗りしない春人は遠慮がちに答え、佐々木は亜里沙と一緒にいられるならなんでも良いと言わんばかりに目を輝かせて頷いた。


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