日本人と韓国人の保健体育⑧
Added 2020-12-04 13:30:05 +0000 UTC夕暮れの図書室が静寂に包まれる。 僕は今麻里ちゃんが言った言葉を正確には理解できずにいた。 麻里ちゃんが、僕のことを好き?この僕のことが? 「麻里ちゃん、それって……」 僕は必死で言葉を繋ごうとする。 麻里ちゃんは頬を赤らめて下を向いている。 「本当はね、受験に受かったら言おうと思ってたの。中学に受かるまでは勉強に集中しないといけないっていうのは自分でもわかってたし。でも、圭吾くんがそんなこと聞いてくるから、思わず言っちゃった。ごめんね、聞かなかったことにして」 一言一言、言葉を絞り出すようにして話す麻里ちゃんの姿がとてつもなく愛おしい。 「ぼ、僕も」 「僕も麻里ちゃんのことずっと好きだった。それで、麻里ちゃんとまったく同じこと考えてたんだ。二人で中学に受かって、それで、卒業式の日に麻里ちゃんに告白しようって。でも、まさか麻里ちゃんも僕と同じ気持ちだったなんだ。本当に嬉しいよ、ああ、なんだか夢みたいだ」 「本当に?」 麻里ちゃんは、大きな目をこちらに向けた。 「本当だって。ずっと好きだったんだ。麻里ちゃん、僕と付き合ってほしい。絶対に幸せにするから」 「嬉しい。でも……」 でも? 「付き合うのは、受験が終わって中学に入ってからにしたいの。もちろん、受験の結果次第でどうこうってわけじゃなくて、自分が受験するって決めたから、今はそれを最後までやりきりたい。付き合うのはそのあとじゃだめかな?」 「も、もちろん。僕も同じ気持ちだよ。麻里ちゃん、一緒の中学に行って、カップルになろう!」 そのあと、照れながらも、いつも以上に勉強に気合が入った。 好きな人と肩を並べて、同じ目標に向かって努力する。なんて素晴らしいことなんだろう。 キーンコーンカーンコーン 下校時間のチャイムがなる。気がつけば、夕日はもう沈もうとしている。 僕たちは荷物をまとめて急ぎ足で図書室を出た。 出る間際、麻里ちゃんが、僕の肘をちょんとつついてこっちを向かせた。 僕が振り返ると、麻里ちゃんは僕に屈むように言い、僕が屈むと麻里ちゃんは僕のほっぺたにちゅっと可愛らしいキスをした。「続きは来年ね」という一言を添えて。 その夜の僕の「日課」がいつも以上に激しさを帯びたのは言うまでもない。 憧れていた存在、大好きだった存在、抱きしめたくてしかたなかった麻里ちゃんと両想いであることがわかったのだ。いつか、麻里ちゃんをこの腕に抱く日を夢見てきたが、そう遠くない未来、それは現実になるのだろう。